#1668 最奥へ到着!!最強アタッカー、シェリアが誰だ?
「あっという間に最奥まで来ちゃったわね」
「ランク1やランク4とはかなり勝手が変わって手強かったような気がするのですが、なぜかしら、とても楽だった気もしますわ」
「それ私も思ったわ! なんだかやりやすいのよねこのダンジョン!」
〈教会ダン〉80層。
到着するとみんな様々な感想を言い合いながらも、その様子はちょっと微妙顔。
シエラ、リーナ、ラナも顔を見合わせたかと思うと、俺の方に視線を向けた。
「ゼフィルスはどう思うかしら?」
「うむ。きっとこの教会を制圧するという攻略の仕方が〈エデン〉にマッチしていたからだろう。ギルドバトルにちょっと似てたし、常勝無敗の〈エデン〉なら楽勝だったってことだな!」
「確かに、それはあるわね!」
「わたくしもいつもギルドバトルでやる指揮みたいで、他の未踏破ダンジョンと比べて手探り感が少なかったように思えますわね」
「加えて、他の上級ダンジョンに比べて〈教会ダン〉は比較的フィールドの小さいダンジョンだし、六段階目ツリーが増えたことで一瞬で階層門を発見する術も得た。この辺がスピードアップとやりやすかった鍵だったんじゃないか?」
俺がそこまで言えば3人や他のみんなも「なるほど」と納得してたよ。
本日1月29日、木曜日。ダンジョン週間6日目だ。
〈天下一パイレーツ〉戦から5日ほど経過していた。
つまり〈教会ダン〉も5日で最奥まで来てしまったということ!
〈教会ダン〉は確かに手強いが、探索する場所に教会というシンボルが建っているため探索時間をカット出来るんだ。しかもフィールドも比較的小さいので思ったよりも攻略時間は短時間で済む。ダンジョン週間中であれば5日前後で攻略できると思ったよ!
ダンジョン週間最高!!
「よし、ではこれより最奥のボス戦を行なう! やりたい人は挙手を!」
「「「「「はい!」」」」」
俺は早速最奥ボス、その先陣を募集した!
しかしそこは訓練された〈エデン〉メンバー。
俺がボス戦メンバーを募ればしっかりほぼ全員が立候補してこの通りだ。
「よーし、それじゃあ最初のメンバーは、まず俺を確定として。中に居るボスはおそらく飛行タイプだから飛行にも対処できるタンクを選びたいところ。いや待て、エステルを入れてあれをやるのも手か?」
「あ、ゼフィルスがまた悪巧みをしようとしているわ!」
「悪巧みとは心外だ。ラナ、そんなことを言うのなら――」
「その悪巧み、私も混ぜなさい!」
「!!」
なんてこった。
ラナは先程天使や悪魔を殲滅しまくっていたしここは休憩を取ってもらおうかと思っていたのに! こんなことを言われてしまえば「よし、一緒にやろうぜ!」しか返せない!
「よし、一緒にやろうぜ!」
「いいわ! 私に任せなさい!」
ああ、ついオーケーしてしまった。
もしかして俺、ラナに操られてない?
ラナったら俺をその気にさせるのが上手いんだからまったく!
よーし、そうと決まればラナを主軸に決めていこう!
「よし、ならタンクはシエラだ」
「! 了解よ。ゼフィルスたちは私が守るわ」
シエラもかっこいいセリフを!
キリッとした顔でそんなことを言うものだからもうパナイ。
見ろ、他のタンクメンバーもシエラにそんなことを言われればおとなしく下がってしまったじゃないか! これが〈エデン〉サブマスターの貫禄だよ!
「アタッカーはまずエステル」
「ありがとうございます。微力を尽くします」
「そして最後は――シェリアいこうか」
「私ですか!?」
俺の言葉にびっくりした声を上げるシェリア。
そりゃそうだろう。初の最奥ボス戦にシェリアを選ぶのは久しぶりだ。
というかルルと一緒じゃないのも久しぶりかもしれない。
でも俺は知っている。シェリアはロリレンジャーと一緒じゃないほうが頼れるんだ。
「シェリア、そういえば組むのはとても久しいですね。一緒に頑張りましょう」
「ええ。少し驚きましたが、エステルと一緒というのは中々無かったですからね。私も楽しみになってきました」
面食らった表情から少しずつやる気オーラが出てくるシェリア。
普段ちょっとやべぇ雰囲気を纏っているシェリアだが、強さに関しては真剣だ。
また、エステルとシェリアは幼馴染みである。加えてその方向性は〈エデン〉の物理ダメージディーラー最強格と魔法ダメージディーラー最強格!
ボス戦ではどちらかが居ればいいため、なかなか2人が一緒ということは無かったんだ。
それが今回まさかの物魔両方ともゴーである。
さーてさて、いったいどうなってしまうのか。
俺は非常にワクワクしてきた。
作戦を言い渡す。
「ゼフィルス殿、それは……!」
「楽しそうだろ? それに、シェリアにも思う存分暴れてもらえるしな」
「エステルやシエラさんが守ってくださるのでしたら安心ですね。ようやく私も本気が出せます」
俺の作戦にやや驚愕のエステルと、腕まくりをしそうな勢いでやる気オーラを出すシェリア。
シェリアは正直、あまりに火力が強すぎて今までかなりセーブしているところがあった。
まだ六段階目ツリーを使った戦闘に慣れていないということもあり、どこまで力を解放していいかよく分からない部分があったんだ。
なにせシェリアは〈エデン〉最強の魔法アタッカー。
そのINT値は、素で1900を超え、六段階目ツリーのSUP36を持つ上級職しか覚えられないスキル『オーバーブースト』によって1.8倍となり、加えて防具やら武器やらの数値が入って、今や4000超えという〈エデン〉でトップクラスのステータスを保持している。
バフ無しのパッシブだけでINT4000とかマジやべぇ。
俺だって〈系統進化〉させる『勇者覚醒オーバーブースト』を取得したことで『身体強化』→『勇者覚醒』に進化し、全ステータスが1.8倍となっている。
あかんくらい強い。
そんな俺でもバフ無しのパッシブだけではINT1000を超える程度。いや、ステータスで1000ってかなり高いんだけどな。
これでアクティブスキル『勇気』を使って2.8倍しても2800程度までしかいかないんだからシェリアがどんだけパワフルじみているかが分かるだろう。
簡単にタンクのヘイトを超えてしまう可能性があるので今まで本気を出すのを躊躇していたというわけだ。
「準備完了です。いつでもいけますゼフィルス殿」
そこにいつもの「ゼフィルス様」と言って無音で背後に忍び寄るエルフの姿は無かった。
かっこいい。いつもそんな姿ならいいのに。
見ろ、他のメンバー、特に1年生ズからは「ほけー」っとした目で見られているぞ。ゼルレカが「だれ?」とボソッと呟いたセリフは、俺の耳にしっかり聞こえたんだぜ。
「腕が鳴りますね」
本気を出せると言えば、〈エデン〉物理アタッカー最強格のエステルもそうだ。
こちらはシェリアとは別の意味で鬼強い。あまりに強すぎてギルドバトルという、ヘイトが全く関与しないような場所も本気のあれを使うのを躊躇してしまったくらいなのだ。いや、〈天下一パイレーツ〉戦でちょっと使っちゃったかもしれないけど。それはともかく!
あまりに強くなりすぎてしまった〈エデン〉最強のアタッカーズがようやく本気が出せると聞いてウキウキしていた。
「料理アイテムはどうする? 今食べるなら夜ご飯は抜きになるだろう」
「なぜでしょう? 食べなくても勝てるような気がします」
俺の提案にエステルがそう返してきた。
最奥ボスに挑むのなら料理バフは必須。
それがセオリーだったが、今のエステルたちにはそんなもの不要とすら思っている様子。これが〈エデン〉最強のアタッカーだ。
「なら、ティーだけいただきましょう」
「こちらをどうぞ」
シエラが提案すればすかさずセレスタンが5人分のティーをお盆に載せて差し出してくる。いつ用意してたの!? もちろんいただきます!
「それとこれも必要よね! 『プレイア・ゴッドブレス』!」
「サンキューラナ!」
これで――準備完了。
「それじゃあ、行ってくるぜ!」
「「「いってらっしゃーい!」」」
見送ってくれるメンバーに手を振り、俺たちは最奥ボスの扉を潜っていった。




