#1667 レアイベントボスの壁画!今回は熊人全公開!?
ふう。
危なかった。エリサの宝箱がちょっと微妙だったおかげで今回は狂わなくてセーフだったぜ。
なぜかシエラが大盾を構えているのは俺を警戒しているわけじゃないと信じたい。
うん、きっと気のせいだろう。
「ゼフィルス?」
「はい?」
「正気なのね?」
「俺はいつだって正気さ!」
「嘘おっしゃい」
おかしい……シエラが俺の言葉を信じてくれないぞ!?
「こほん。それじゃあ、いくか」
「ええ。あそこね」
「――みんな! 次はあのレアイベントボスと一緒に出てきた大聖堂っぽいところへ向かうぞ! 付いてきたい人は俺に続けー!」
「「「「「おおー!」」」」」
もちろん参加は全員だ。ということで〈乗り物〉持ちの4人には〈イブキ〉を出してもらって時短時短。
みんなで仲良く大聖堂へと向かった。
「これは、教会よりも何倍も大きいですわね」
「立派立派!」
リーナが見上げ、カイリもテンション高めに頷く。
「先程までここには確かに何もありませんでしたわ。少なくともスキルにはなんの兆しも無かったと断言できますの」
「だね。私も反応が突然出て来て驚いちゃったよ」
「ん。『直感』も突然びびびって来た」
「俺の『直感』さんも珍しくビビッと来たぜ」
「珍しく?」
カルアも加わって『直感』の功績を称え始めたので俺も参加した。今回は本当に『直感』さんが反応してくれたからな!
うっかり漏れた「珍しく」の言葉にシエラが反応していた気がしたが、気のせいということにしておいた。
「こほん。とにかく入ってみようぜ! きっと壁画があるに違いない!」
「天使と悪魔の壁画かな? 確か〈夜ダン〉〈聖ダン〉〈魔界ダン〉でヒントが見つかったって話だったけど」
「もうヒントは見つかってる。もしかしたら関係無い壁画かも」
「ボスは堕天使だったよね。となると、もしかして新しい堕天使への職業が見つかったりして!」
シヅキ、エフィ、トモヨが揃ってそんな考察をする。
レアイベントボスが堕天使だったからな。そう考えてしまうのも無理はない。
だが、エフィの言う通り、すでにヒントは別のダンジョンで見つかっているのでここでは別の壁画だ。
大聖堂の超巨大扉を潜ると。
中はやはりというか教会風。
しかし、他の教会にはあった、ステンドグラスが無く、その代わりに巨大な壁画が何個も壁に貼られていたのだった。
「エステル、頼む」
「はい! 『絵解き』!」
すぐにエステルに壁画を解いてもらうと、すぐに絵の意味が分かってくる。
「これは、クマ? ひょっとして「熊人」の壁画ですか?」
「クマ! なんでクマ!?」
「うわ、こっちにもあるっすよ! それにこっちも! ひぃふぅみぃ、全部で上級職が12種もあるっす! 「猫人」の時よりも断然多いっす! あ、こっちは下級職のもあるっす!? こっちは6種っす!」
シュミネが驚き、ミジュが目を丸くし、ナキキがはしゃぐ。
そう、なんと壁画には合計18種もの「熊人」の職業のヒントが描かれていたのだ。
これで「熊人」の職業は全部である。下級職も上級職も全公開だ!
さすがは上級上位ダンジョン。公開の仕方が派手なんだぜ。
え? なぜ〈教会ダン〉の壁画が「熊人」なのかって?
ここは天使と悪魔が争う〈教会ダン〉。
徘徊型ボスは〈能天使〉=熊天使だった。
以前〈謎ダン〉では悪い熊=悪魔なんて問題もあっただろう?
つまり、天使だろうが悪魔だろうが熊へと繋がる――それが〈ダン活〉なのだ!(※〈ダン活〉独自のルールです)
よって天使と悪魔、両方が登場する〈教会ダン〉にはもう「熊人」の壁画しかないと、そう開発陣は考えたに違いない! 絶対に違いない!(断言)
「にゃ、にゃん!」
「大丈夫だカルア、「猫人」だって「熊人」に負けてないぞ」
思わずカルアがネコになっちゃうほどの衝撃を受けていた。リカが慌ててフォローしている。
ちなみに上級上位ダンジョンの場合、壁画の数が多いのが特徴だ。
〈猫猫ダン〉では中位職などの情報が出ていなかっただけで「猫人」の上級職だって負けてはいない。
「悪魔」の時のように、壁画の中には全職を公開していないところも多い。
ゲームでは、そういうのは他のクエストなんかで発見する場合が多かったんだよ。
ちなみに「熊人」は全職公開系である。
だから開発陣はクマ好きすぎだろ!
「こちらは下級職ですね。【熊戦士】【剛力戦熊】【インファイトベアー】【武装魔装熊】【熊掌者】【森の主】の6種」
「あ、ミジュが就いていた【熊掌者】があるっす! 高位職って書いてあるっすね!」
まずは「熊人」の下級職。シュミネが読み上げ、ナキキがはしゃいでミジュを振り回していた。だがミジュは、そのまま別の壁画に向かう。
「それでこれが多分、上級中位職の壁画――【アニマルベアマザー】【悪魔の熊】【ニセグマ】の3種」
「そうなんっすか! ……【ニセグマ】っす?」
この中で唯一の「熊人」であるミジュが的確に見抜いた。
「熊人」の壁画は中位職も入っているのだ。
そしてナキキよ、ナイス反応! 俺は密かにナキキへグーを送った。
「こっちは、上級職。聞き覚えの無い職業がたくさんある」
「そうなんですね。ミジュが知っているものは?」
「【覇道食雷森主】【暴食】【正義の熊】【森界の熊掌者】【装甲破壊熊】【世界チャンピオン】とかは知ってる。でも残りの3種は知らない」
「【野生生物界最強】【エネミープレクマント】【炎氷熊】ですか。確かに聞いたこともありませんね」
「私も初耳っす!」
シュミネがミジュから聞き出すが、ミジュはむむむ顔だ。
でも【炎氷熊】を見て首を捻っている。
うむ、〈幻迷ダン〉で似たようなの見たからね。〈ヒグマ・時々・ヒエグマ〉とか。
とりあえずパシャパシャ。
学園長に良いお土産が出来たな!
大聖堂の中に宝箱は無し。残念!
まあ、「熊人」の職業全公開だったんだ。致し方なし。
こうして61層を全制覇した俺たちは、続いて62層で新たな力の検証を行なった。
「はーっはっはっは! 控えなさい! 〈熊天使〉様のお通りだよー!」
「グマアアアアア!」
早速ジャンケンに勝ったシヅキが高らかに笑い〈能天使の召喚盤〉を起動、シャロンとフラーミナもそのかっこよさと強さに目をキラッキラにする。
「いいな~! 羨ましい~!」
「つっよ! クマ天使つっよい!!」
〈能天使の召喚盤〉から現れた〈能天使・アストベアス〉が天使たちを蹂躙する。
突然の〈能天使〉の反乱に天使たちも剣を取って戦うのだ。
悪魔はそれを見て仲間だと判断したのか一緒に戦おうとする。しかし。
「グマアアアア!」
「ア、クマ!」
悪魔もその豪腕で撃沈。
まさにアクマな所業。なお、裏で操っているのはシヅキだ。正しく【悪魔】である。
「凄い! 召喚盤って凄い! ねぇねぇゼフィルス君! 次は私にやらして!」
「ちょっと待ってもらおうか! 次は私が使う予定だったんだよ!?」
そう言ってシャロンとフラーミナが俺に詰め寄ってくる。
〈能天使〉の人気が留まることを知らないな。
〈拠点落とし〉以外では、五段階目ツリーまでだとシヅキしか今まで召喚盤起動の使い手がいなかったが、六段階目ツリーとなり、シャロンとフラーミナも召喚盤を起動するスキルを獲得していた。
うん、あんなクマさん、使ってみたいよね。分かるよ。
「はーっはっはっは! いっけー〈熊天使〉よ! 天使も悪魔も蹂躙するのだー!」
うん。シヅキが楽しそうだ! さっきから〈能天使〉が〈熊天使〉と間違えて呼ばれているけど。
でも、そこがいい。
結局〈能天使〉は3人で順番に使ってもらうことで納得してもらったよ。
「『大聖女の祈りは癒しの力』! 『大聖光の無限宝剣』!」
「す、凄いですラナ殿下! どんどんモンスターたちを殲滅しています!」
「凄いパワーだわ! 私の力が、またも増大してしまったようね!」
最近懐かれているマシロに褒め称えられてラナは鼻高々。
クールタイムが半分になる『回復クールタイム軽減』を得て、ラナは宝剣をガンガン連射できるようになった。
いや、元から連射はできていたが、『回復クールタイム軽減』のおかげでその回転率が倍加した。そう、倍である。だってクールタイムが半分なんだもん。
こうなるとラナは10分間にいったい何発の宝剣を放ってるんだ、という話になり、非常に機嫌が良いラナが出来上がった。
見た目もとても良い。〈光の浄衣〉を羽織ったラナは、まさに玉座に座った大聖女様だ。おお、神々しいお姿よ。
「私もラナ殿下みたいな殲滅力が獲得できるでしょうか?」
待ってマシロ! そんなのマシロはいらないから! それ不要な能力だから!
え? 本当は欲しいんだろうって?
…………マシロがラナ並みに強くなったら、それはそれで嬉しいよね。
この調子で62層を突破し、そのままどんどん先に進め、俺たちはついに最奥へとたどり着いたのだった。




