#1666 〈金箱〉回! 来たる【大聖女】最後の装備!
「61層、制圧完了だーーー!!」
「『みなさん、帰投してくださいな!』」
無事61層制圧完了。全ての教会を〈エデン〉の陣地にしたことでモンスターのポップ現象は止まり、この階層全体が救済場所となる。
となれば、俺たちのやるべきことは決まっているな!
「やっと〈金箱〉ね! もう待ちくたびれちゃったわよ!」
「ん。待ってた」
「イエス、〈金箱〉バンザイ!」
「…………」
お待ちかね――〈金箱〉タイムだ!
今回レアイベントボスが〈金箱〉確定、さらにエリアボスと徘徊型ボス。
3体ものボスが襲来したのである! 全部倒した! 集まってくるモンスターも全て倒しきったのだ! 〈エデン〉の完全勝利である! 心なしかシエラのジト目が熱い気がするぜ! ひゃっほー!
エリアボス戦中のラナが他のボス戦中のメンバーに『プレイア・ゴッドブレス』を発動するのは厳しく、徘徊型は普通に撃破することになってはしまったが、やはり〈幸猫様〉たちは見ておられるのだろう。
全ての宝箱が〈金箱〉だったのだ! おっしゃーーーーー!!
「〈金箱〉は、計6個ですわ!」
「ビューティフォー!!!!」
詳細はレアイベントボスが2個、エリアボスが2個、徘徊型ボスが2個だ。
全てが〈幸猫様〉の恩恵で〈金箱〉の数が増えていたんだよ!
ビューティシックス? イエス〈金箱〉6個!
「私! 今回は私が開けるわ! そうね、これなんかいいかしら?」
「ちょっと待てラナ! それはレアイベントボスのだろう!?」
「ん!」
「カルアも速っ!? だからレアイベントボスのやつは2個しかないんだって!」
ラナが倒したのは〈キッド〉。つまりエリアボスだ。
ついでに9班のカルアは雑魚モンスターを猫たちで屠りまくっていたのでボス戦には参加していない。
いやぁ、でもカルアとリカの眷属軍団がモンスターたちを蹂躙無双していくのは面白かった。
しかし、そんな2人が確保しに走ったのは――レアイベントボスの〈金箱〉だった。
ちょっと待ってもらおうか!
「いいじゃないゼフィルス! 今回はみんなの戦果よ!」
「確かに!」
ラナに説得されて「うむ」と頷く。
今回はまさに総力戦だった。
レアイベントボスはそれだけの相手だったのだ。徘徊型もエリアボスも引き寄せるとかマジパナイ。守護型の居る階層じゃなくてよかったよ。その場合、守護型は自分の役目を放棄して襲ってくるのでボスが4種類集合するのだ。
確かに、今回ばかりは全員に開ける権利がある!
「ラナの言うことも尤もだ。なら、クジ引きだな!」
「しまったわ!」
ラナがはわっとした。そうなるとは予想外だったらしい。
こうなると分からなくなる。なにしろ49人だ。
〈金箱〉は6個。
これは苛烈なクジ引きになる可能性がある!
あれ? でも何かを忘れているような?
「ゼフィルス、大聖堂が残りっぱなしだわ」
「それだ!」
そうレアイベントボス〈アビスエル〉が登場したときに一緒に出てきた巨大建築物、大聖堂が残りっぱなしだったのだ。
大聖堂ともなれば壁画の類いがあるに違いない。もう間違いない!
いやぁ、ランク2の〈空島ダン〉ではボスの中に壁画があるというとんでも仕様だったが、ランク8だと建物ごと来ちゃったとか。さすがは上級上位。
だが、大聖堂まで距離があるのでまずは〈金箱〉を開けてからで良いだろう。
「よし、〈金箱〉を開けたら早速行ってみようぜ!」
「……あの大聖堂は消えないみたいね」
「ええ。消えるのでしたらゼフィルスさんがあんなにゆっくりしているはずありませんから」
何故だかシエラとリーナがこそこそ何かを話している予感。
でも『直感』さんが反応してないから安心だ!
というわけでクジを取り出す。
「じゅ、準備が良いじゃないのゼフィルス」
50近くのクジの束を見てラナがおののいた。ふふふ、この束の中、目的のものが果たして引けるかな?
赤い印と数字を付けたクジを6つだけ入れて混ぜ混ぜ。
「さあ、最初の挑戦者は誰だ!」
「私よ! 来なさい、〈幸猫様〉は私に微笑むのよ!」
そう言ってクジを掴むのはラナ。ははは! 良かろう! この試練に打ち勝ってみよ!
「これよ! ―――は! やったわ!」
「うっそだろ!?」
ラナが引いたクジには、しっかり赤い印が付いていたんだ。
しかもそのナンバリング、ラナがさっき選んでた宝箱じゃん!!
「やっぱりこれは私が開ける運命だったのよ!」
「なんてこった……!」
ラ、ラナの運がとどまるところを知らない。まさか、これも〈幸猫様〉のお導きだというのですか!?
〈幸猫様〉! どうか俺にも〈金箱〉をお授けください!
お祈り力ならラナにも負けない!!
結果――俺が引いたのは無印だった。
「がばらっちょ!」
「にゃ、にゃ~~~」
なお、カルアもダメだった。
赤の印を引いたのは。
「わ、わ、わ、ノエルちゃんノエルちゃん、あ、当たってしまいました!」
「やったじゃんラクリッテちゃん!」
「カ、カイリ君、ぼくのこれと交換しないかい? お礼ははずむよ?」
「ニーコ君、目が怖いよ? マジでガチじゃん」
「やったわー! ほら見てよフィナちゃん! これがお姉ちゃんの真の実力よ!」
「…………む」
「レグラム様、当たったのですが、一緒に開けませんこと?」
「それでは、一緒に開けよう、オリヒメ」
「はい!」
「ゲット!」
「おお! ミジュ凄いっす!」
「やりましたね、ミジュ」
意外なメンバーズ。
ラクリッテ、カイリ、エリサ、オリヒメさん、ミジュだった。
これだからクジはやめられない。
「ノエルちゃん、一緒に開けよう!」
「ありがとうラクリッテちゃん!」
そしてラクリッテはノエルと、オリヒメさんはレグラムと共同作業で開ける様子だ。
なお、カイリはニーコに近くでジッとは見られているものの、1人で開け、エリサもフィナに盛大に自慢しながら1人で開ける様子。フィナはいつもの半眼のような表情だ。口がへの字になりそうなほどモヤッときている様子。珍しい表情だ。
「も、もうしょうがないわね。それならゼフィルスは私と一緒に開けることを許可するわ」
「ラナは女神かよ」
「も、もうゼフィルスったら本当のことを。ふふん! ちゃんと感謝してよね!」
「にゃんと……」
そして俺は、なんとラナに誘われてしまったのだ。
衝撃でカルアが猫になってたよ。
ラナの横にしゃがみ込み、準備オーケー。
「それじゃあ開けるわよ?」
「オーケー」
「「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! 〈金箱〉ありがとうございます! どうか良いものをお願いいたします!」」
「い、息がぴったりです!」
「見事な息の合いようですの!?」
「…………」
ラナと一緒に開けるのは久しぶりだ。だが、阿吽の呼吸でタイミングすら計らずに同時にお祈りをして蓋を持ち上げ、宝箱をオープンした。
するとその中には――〈光の浄衣〉という体装備が入っていたのだ!!
「わ、何これ、綺麗ね~」
「お、おお、おおお!? エ、エステル、すぐに『解析』だ!」
「はい! 『解析』! これは〈光の浄衣〉という装備みたいで――え?」
「なに、どうしたの?」
「これは――【聖女】系の専用装備だと書かれています」
「【聖女】の専用装備!?」
そう、これは【聖女】系の専用装備。
ラナは現在ランク4ダンジョンでレシピを手に入れた〈晴天寿樹シリーズ〉という装備を身に着けているが、これも【聖女】系の専用装備の系列だ。
だが、〈光の浄衣〉は一味違う。
名前を聞いてピンと来た人もいるだろう、これは【聖女】が【大聖女】に〈上級転職〉する時に必要な発現条件、〈白の玉座〉〈聖の装束〉にならぶ3つ目の装備なのである!!
そしてその効果は――。
「〈光の浄衣〉のスキルは『【聖女】回復クールタイム軽減LV10』と書かれています!」
「回復クールタイム軽減!? それってゼフィルスが持っているのとほとんど同じじゃない!」
その通りだ。
つまり、【大聖女】を含む【聖女】系の職業が〈光の浄衣〉を装備している時、『回復クールタイム軽減LV10』が付くという意味である!
『クールタイム軽減』と言えば俺も持っている。〈スキルLV10〉の時、クールタイムが半分になるアレだ!
【聖女】はそれを外付けで付与し、〈回復〉カテゴリー限定だがクールタイムを半分にしてしまうのである!
そ、外付けでその効果はあまりにも強すぎる! さすがは専用装備……!
しかもである、【大聖女】は『大聖女の祈りは癒しの力』で自分の〈魔法〉全てに〈回復〉カテゴリーを付けることが可能なのだ。これがどういう意味かわかるだろうか?
つまり、『大聖女の祈りは癒しの力』発動中は、常に『クールタイム軽減LV10』が発動しっぱなしになるという意味なんだ!!!!
それ【勇者】とほぼ同じじゃん!
これが如何にぶっ壊れ装備であるか理解できるだろう。
まさに、俺が欲しかった――ラナに着けたい最後の装備だったのだ!
「これはラナが装備するに決定だな!」
「やった! 新しい装備ね!」
装備を先日交換したばかりだが、ラナの意思に否は無いっぽい。
やっべぇ。ただでさえおかしな強さをしていた【大聖女】がこれで完全体になっちまった!
しかも、【大聖女】には〈光の浄衣〉を装備していないと使用できない専用魔法もある。まだそっちはLVが低いので力を十全に発揮できないが……ごくり、お披露目がとても楽しみだ!!
初っぱなから大当たりだーーーー!
いや待て、まだだ、まだクルクルする時ではない!
続いて宝箱を開けるのは――レアイベントボスの報酬を引き当てた豪の者、エリサだった。
たっぷりフィナに自慢して宝箱をパカリと開ける。すると、中にあったのはまさかの〈上級転職チケット〉だったのだ。
「ほにゃ?」
「姉さま。やっぱり姉さまは姉さまだったのですね」
「そ、それはどういう意味にゃのかなフィナちゃん!?」
エリサ、撃沈。
まさかのハズレツモ!?
あんなに得意げだったエリサが一瞬でへにゃへにゃになってしまったぞ!
逆にフィナはいつもの表情に戻っていたんだよ。
次行ってみよう!
続いてエリアボス。
レグラムとオリヒメさんの共同作業は非常に仲睦まじく、慣れていない女子からはキャーキャー声が上がったほどだ。まあ、声を上げたのはシヅキとマシロだな。
「む、これは!」
「まあ!」
中から出てきたのは、なんと2つの指輪。
いつまでも清らかなと願いがこもった〈フォーエバールミナスリング〉だったのだ。
このリングを男女別々のキャラに持たせ、一緒のパーティに参加させると能力値が激増するという、かなりロマンチック装備である。
「これはレグラムとオリヒメさんにこそふさわしいな。是非使ってくれ」
「ありがとうゼフィルス」
「ありがとうございます! 大切にさせていただきますわ!」
男女をいつも一緒のパーティに参加させるのならこの2人以外に人選は居るまい。
アクセ装備をしっかり2人装備させたのだった。
「私の番だね。――ニーコ君、ちょっと開けづらいよ?」
「気にしないでくれたまえ」
エリアボスの2個目の〈金箱〉担当はカイリだった。
この〈金箱〉からは当たりでもないがハズレでもない武器のレシピ。
〈聖なるヒヒイロ鐘〉という棒の先が鐘になったメイスのレシピがドロップした。
これ、たしか叩くたんびにカラーンカラーンって鳴るんだよ。ヘイトを稼ぐのには便利。
能力値は結構高いのだが、シエラからは「いらないわ」と言われてしまった。
「次は私、フンス」
「がんばれっすミジュ! ミジュならやれるっす!」
「〈エデン〉の流儀に則ってお祈りを忘れないようにするんですよ」
「了解お母さん」
「誰がお母さんですか」
お次は徘徊型の〈金箱〉!
中身はレシピ。しかもである――『解読』してみると。
まさかの〈クマエンジェル・バワード〉という名の――最上級〈乗り物〉レシピだったのだ!
かの〈クマライダー・バワー〉の上位で、なんと天使の翼を持ち、空を駆けることの出来るようになった――クマの乗り物レシピだ!
「こ、こりは!」
「おお、ミジュが身を乗り出したっす!」
「帰ったら造ってもらいましょうね」
「う、うん。楽しみ!」
ミジュの言葉使いが崩れるほどの驚愕だったんだぜ。
後でタネテちゃんに作製を依頼しに行かないとな!
そしてラストの2個目徘徊型〈金箱〉担当はラクリッテとノエル。
「わ、わわわ! これ? 〈能天使の召喚盤〉?」
「わ! 召喚盤だ! すっごー! しかも描かれている絵がちょっと可愛い!」
「ちょ、それ私! 私に使わせて!」
「待ってほしいよ! 私にこそ使わせて!」
「あ、私も使いたいよ!」
そう、なんと最後に当てたのはまさかの召喚盤だった。
すぐにフラーミナとシヅキとシャロンが反応し、取り合いに発展。
最後は3人で仲良く使いましょうということで決着したのだった。
おっしゃーー!!
凄いドロップたちをゲットしたぞ!
〈パーフェクトビューティファイブ〉にバンザイ!!