#1661 天使のみの階層もある!カイリユニーク発動!
21層の別ルートも面白い。
今度は天使の拠点とも言える、天使しか現れないエリアだったんだ。
なんと21層にあったのは大聖堂もかくやという巨大な教会。それが1つ。
そして、これまでは教会を中心に出没していた天使がフィールドのどこにでも現れるというスタイルの階層だった。
悪魔と戦うための基地と言ってもいいのかもしれない。
「これはまた、一風変わって攻略しがいがありそうですわ!」
「お、リーナにはシミュレーションユーザーの素質ありだぜ」
「シミュレーションユーザー?」
基地攻略。
それを見たリーナの感想がこれだった。
どこから攻略してやろうかしらという考えは、もう完全にゲームに嵌まったユーザーの思考です!
どうぞ心から楽しんでください!
多くの頭脳派メンバーが〈竜の箱庭〉に集まると、協議開始。とはいえ。
「『レーダー地図・弱所大看破』! 『安全ルート探知』!」
こっちにはカイリがいるのだ。
相手の基地がどれだけ凄かろうと、弱所を突かれれば脆いもの。
「うーん、弱点箇所はあそこと、こことここ、ここもギリ弱所みたい。このルートと、このルート、あとこのルートの順に攻略すれば比較的安全にいける、かな」
カイリの『レーダー地図・弱所大看破』は文字通り、弱点箇所を看破するスキル。
陣地の中でも特別やられたら困る場所というのが存在する。そういう場所を知らせてくれるスキルだ。そして、場所を目指すのならば『安全ルート探知』で比較的安全なルートを調べられる。
マジで超有能スキルである。
「それと、『モンスターリポップ探知』! うん、やっぱりここに水晶玉があるっぽいよ」
「水晶玉の位置までわかるんですわね」
「予想だけど、こことこことここにリポップポイントが集中しているから、水晶玉は3つあるんじゃないかな? これまでの教会のパターンからして水晶玉を中心にしてモンスターがポップするっていうのは間違いないみたいだし」
「ブラボー」
俺は拍手でカイリの言葉を褒め称えた。
大当たりである。
この21層の大聖堂には3つの天使のポップポイント、つまり水晶玉があり、全てをタッチすれば占領できるのだ。もちろん、階層門は別にあるので必ず占領しなくてはならないルールは無いが、勝利条件みたいなものだな。
無視して進むも良し、勝利するも良し。
プレイヤーはどちらでも選べて楽しい、である。
「ねぇゼフィルス君、まだ私のユニークスキルは使ってはいけないの?」
おっとここでカイリが少し不満そうに俺に視線を向けてきた。
「ああ。攻略の手順は報告書に記載したいからな。なるべく自分たちの手で階層を移動したいところだ。階層門の正確な位置も地図に落としたいしな」
「ということは、攻略済みのダンジョンのみ? それなら〈テレポ〉使えば良いし、私のユニークスキルの使いどころが無くなっちゃうよー」
「うーん、そうだなぁ」
カイリの【ダンジョンインストラクター】には、とんでもないユニークスキルが存在する。LV60になって開放された超強力なそれの名は――『階層牽引インストラクター』。
その効果は〈ダンジョン階層を無傷&問答無用で次の階層へ転移する〉である。
ん? ってなるだろ? 次の階層に転移? どういうこと? って。
そのまんまだ。21層に居るなら、どこからでも次の22層の入り口に転移できるユニークスキルなのだ。階層門を探すまでもない。
しかも文字通りの問答無用だ!
つまり守護型、ダンジョンギミック、ルートの分かれ道、環境などなど、これらを全て無視するという意味である。なにそれやばい。
ゲーム時代、【ダンジョンインストラクター】が大人気だった理由が、これだ。
俺もメンバーのうち10人くらいに【ダンジョンインストラクター】入れて、高速攻略とかやったなぁ。クールタイムが5分と、長くもないが短くもないくらいなので、数を用意して高速で最奥に行くやり方が主流だったんだ。
10人用意すれば5分で11層までいけるので、100層ある最上級ダンジョンも50分もあれば最奥に行けてしまうのである。マジパナイ。
とはいえ、それではちょっとつまらないし、攻略の仕方とか全否定になってしまうのでRTA以外では極力使わないようにはしていたけどな。
まあ、せっかくカイリがいるし、カイリも使いたくてうずうずしているみたいだからどこかで検証という体で使わせてあげよう。
「それじゃあ次の階層辺りで使ってみるか」
「本当! 約束だからね!」
「おう」
これでよしっと。さあ、開戦だ!
カイリが看破した3つのルートに素早くメンバーを10人2パーティずつ順に送り出して突破。
残りの4パーティは正面から挑んで囮を行ない、これ囮なのかな? というレベルでガンガン天使を落としていく。
その甲斐あって3つの水晶玉までのルートは突破されて、無事占領。
3つ全ての水晶玉が占領されたところで天使たちは全員消えてしまったのだった。
その辺、これまでと同じだな。
「うーん、占領するのは気持ちが良いのですが、モンスターがリポップしなくなるというのはドロップ的に辛いですわね」
「今は素材が欲しいからな。攻略法も大事だが、モンスターと戦うのも大事だな」
占領するとモンスターは消えてしまい、その日はもうリポップしなくなるということは2日目にはしっかり分かっていた。
消えたモンスターもドロップは残さず、リポップもしないものだからそりゃモンスタードロップが辛くなる。
効率的に攻略するのも気持ちが良いが、とりあえずドロップは欲しいのでモンスターはなるべく倒していこうということになった。
「でもハンナの〈アルティメットエリクサー〉は凄いわね! 回復量がとんでもなかったわ!」
「だが、基本は〈エリクサー〉を使ってくれよ。〈アルティメットエリクサー〉は回復量は凄いが素材の消費が激しいから上級上位ダンジョンの素材じゃああまり作りたくないんだ」
「最上級ダンジョンの素材で作るもの、って言ってたわね」
ラナはさっき飲んだ〈アルティメットエリクサー〉の回復量に絶讃の言葉を贈っているが、今言った通り〈アルティメットエリクサー〉の等級は最上級。上級上位級で作るには素材が2倍掛かる。
かなり勿体ないので、基本は〈エリクサー〉を飲んでもらっていた。〈アルティメットエリクサー〉を飲むのはMPがピンチ状態の戦闘中のみだ。
〈六ツリ〉ともなるとLV100で使用することが前提になっているものもある。つまりMP消費が半端ない。
630を回復してくれる〈エリクサー〉を飲んでも、数発〈六ツリ〉を撃てばすっからかんになってしまうこともしばしばだ。
故に、みんな先程から〈エリクサー〉を湯水のように使用していた。
こんなことができるのもハンナ様様だぜ。
「〈エリクサー〉でしたら在庫の心配をしなくていいですから。ゼニスの攻撃でも存分に撃ちまくれます」
「クワァ!」
「ハンナったら、本当に1年でどれだけ作ったのかしら?」
アイギスとシエラの言葉に一斉に頷く俺たち。
〈エリクサー〉の本当の在庫を知る者はいない。セレスタンでも把握出来ていないのだ。
それくらい、もう数えられないくらい在庫があり、さらには毎日のように湯水のようにガンガン使っているので毎分の如く数が変動している。故にもはや数えるのも難しいほどなのである。
うーん、この辺も注意点だな。
〈エデン〉だから問題ないが、他のギルドだとMP管理は非常に重要だ。
俺たちみたいに湯水のように、それこそ制限無く〈六ツリ〉を使いまくればあっという間に干上がってしまうだろう。
俺たちが最上級ダンジョンに到達して〈アルティメットエリクサー〉を大量生産できるようになれば〈エリクサー〉はもう用済みとばかりに安く放出できるようになるので、そうなれば〈エリクサー〉の在庫が無くなるまで当面の間は他のギルドもMP切れの心配は無くなるだろう。
あとは学園が早く〈エリクサー〉を大量生産できる体制を整えられるよう祈ろう。
22層は約束通りカイリのユニークスキルで階層スキップ。
もちろん最低限のデータは収集したので大丈夫だろう。
25層はいつもならお宝フィーバー。
当然ここでもお宝フィーバーが待っていたが、同時にモンスターハウスも待ち構えていたんだよ。
教会ってモンスターハウスの温床かな!?
「全部滅ぼせ! 制圧するんだ!」
「なんかセリフが悪役チックだよ!? でもそれがちょっといい」
「シヅキ、しっかり前見て。契約するんでしょ?」
「そうだった!」
また、シヅキは新たな悪魔と契約するために吟味中。
良さそうな悪魔が居れば契約する構えだった。
「いっぱいいすぎて、というかあまり強くなくて不満!」
「それはこっちが強すぎるんだと思う」
シヅキがウガーと両手を上げれば、エフィがクールにツッコんだ。
まあ、まだ浅層だからね。そんなものだ。
黙って筋肉を見せつけるクロちゃんに敵う悪魔無し。シヅキはとっても不満である。
〈亜竜〉の時のように、深層ではまた違うのかもしれないからそれまで取っておけば? とアドバイスをしてシヅキも納得していたよ。早く大魔王軍団が作りたいぜ。
「〈亜竜〉みたいな強力な悪魔、ゲットできるかな~」
「深層が楽しみだな!」
そう、シヅキとワクテカしながら25層も滅ぼし、悪魔の大教会から宝箱を大量に押収する。フィーバーひゃっほうー!
こんな調子で30層、40層、50層と滑らかに攻略していき、ダンジョン週間5日目の水曜日。ついに61層へ到達。
俺たちは深層に突入した。