#1658 〈教会ダン〉ルールとエリアボス戦を拳勝ち!
「天使側が消えたわ!」
「『ゼフィルスさんから報告来ましたわ! 悪魔側も制圧してみてくださいまし! 教会内の奥にある大きな水晶に触れるのですわ!』」
「タッチ式、小城みたいだね!」
最初に前例が出来てしまえば後は早かった。
悪魔側の担当班も教会内に突入し、程なくして教会内が「ボフンッ!!」というなにかが爆発したかのような音と共に静まりかえり、続いて制圧が完了して周囲で戦闘を繰り広げていた悪魔たちが消え去ったのだ。
「これは、ダンジョン内にモンスターがまったく居ないよ!?」
「消えて、どこを探しても見つかりませんわ。どういうダンジョンですの?」
一旦、俺たちが元居た教会に帰還し〈竜の箱庭〉を見せてもらうと、見事にモンスターは消えていたのだ。1層のフィールド全域から。
「モンスターを倒したらリポップしなくなって~っていうのは〈空島ダン〉なんかでもあったよね」
「ほ、他にもありましたよ。ランク1ダンジョンですとか」
ノエルとラクリッテの言葉に俺も頷き、見解を述べる。
「どうやら、本当にギルドバトルを模したダンジョンのようだな。ギルドバトル〈拠点落とし〉は相手の拠点を制圧すれば全員退場がルールだ」
「!! つまり、ここは本当にダンジョンというよりも、〈拠点落とし〉として考えた方がいいということですの?」
「そこまではいかないさ。むしろそう認識を固定すると危ないだろう。だが、〈拠点落とし〉に似通った、拠点制圧ルールがあると考えればしっくりくるんじゃないか?」
「確かに、そうですわね。つまり教会が拠点。わたくしたちが制圧したからモンスターは居なくなった。――? ということは、ここの教会が制圧されたらわたくしたちはどうなるんですの?」
さすがはリーナ、良いところに気が付く。
というかすぐに俺の言葉に順応して疑問が湧くってすごいな。さすがはリーナだ。
もちろん俺はその答えを知っているし、ここで答えても問題は無い。
「いや、おそらく制圧はされない」
「? どういうことですの?」
「さっき見ていたんだが、天使と悪魔はお互いの教会を攻めるばかりで、別に隠されていたわけでもないこの教会――あ~、俺たちの本拠地ということで〈本教会〉と呼称しようか。〈本教会〉には目もくれていなかった。これ、おそらく救済場所が働いているな」
「救済場所!」
つまり、こちらは基本攻める側。〈本教会〉を守る必要は無い。
〈本教会〉は救済場所で守られ、モンスターから制圧される心配がないからだ。
まあ一部、そうとも言えないこともあるが、例えば救済場所からモンスターを攻撃すると、モンスターが救済場所に入ってくるので、それが原因で制圧される、とかな。
ゲーム時代、「〈天使〉に〈本教会〉を制圧されてみた」という動画もあったので、絶対とは言い切れない。
ちなみに〈本教会〉が制圧された場合は、他に制圧している教会が無い場合、ルール通り全滅する。俺たちは全員仲良く〈敗者のお部屋〉という名の牢獄へと送られ、〈救難報告〉を上げることになる。
一応復活アイテムを使うと牢獄から出られるので、それでも脱出は可能だが……その場合、問題は〈本教会〉が制圧されているので、下手をすると出入り口が通れず帰還できないアクシデントが起こりうるんだよ。これリアルだとかなり厳しいことになるんじゃないかと思われるので、〈本教会〉の救済場所からは絶対に攻撃してはいけないと報告書に記載して広めておかなくてはいけない部分だな。
あと〈転移水晶〉を持っていないと入ダンできないなどの条件も作っておこう。
そんなギミックもあるので、パーティ全滅という特大のペナルティが待ち受けるダンジョンとしても、一部では恐れられていたっけ。
いずれにせよ、よほど故意的にミスらなければ〈本教会〉は制圧されないので安心してほしい。これはまだ言えないけど。
「ん、報告。黒猫が階層門を見つけた。悪魔の教会の奥にあったって」
「まあ! 階層門発見のご報告ありがとうございます! これで階層更新が出来ますわね!」
「早速行ってみようか!」
一辺300メートルしかないフィールドを全員で探索すれば、階層門も簡単に発見だ。
え? リーナの〈六ツリ〉スキル『階層門発見』を使わなくてもいいのかって?
これの効果は文字通り、地図に階層門が現れる、だ。
しかし、使用MPが無茶苦茶高いため、少し節約。
というか狭いフィールドなので探索のついでに階層門が見つかるだろうと今回は使用しなかったんだ。
もっと階層門を探すのに難儀しそうなフィールドに着いたときにでも使う予定だな。
「ゼフィルスさーん! ここは薬草類が凄いですね。ポーション素材とかいっぱいありますよ!」
「そいつは朗報だな!」
ここで〈採集無双〉のモナから報告。
そう、ここは〈教会ダン〉。
名前の通り、聖水や薬草、霊草、聖なる石の類いがゴロゴロ転がっているダンジョンだ。
最上級ダンジョンに向かう前にここでポーション素材を大量にゲットするのがセオリーだったな。
なにせ、この先のランク9は〈竜〉が登場する火山のダンジョン、ランク10はモンスターが押し寄せてくるウェーブダンジョンだ。薬草の採取ポイントなんてほとんど無い。
モナたちにはいっぱい集めてもらおう。そしてハンナに〈ポーション〉類を大量に量産してもらうのだ!
こういうところも俺が〈教会ダン〉の攻略を進める理由だな。
「ゼフィルス、探索が終わったわ。モンスター無しよ」
「宝箱は1個だったよ。しけてるよね」
シエラとニーコからの報告。
ニーコが楽しみなワクワク笑顔から転落、ちぇーみたいな顔をしていた。
マジ欲望に忠実。
まあ、教会に大量の宝箱がある方が不自然だからね。仕方ないね。
「あれ? エリアボスは?」
「それが、いないのよ」
「ぼくらもエリアボスの宝箱には期待していたんだが」
「ふむ」
ふむと言いつつ、俺は階層門があった悪魔の教会、とは反対の天使の教会にエリアボスが眠っていることを知っている。
「カイリ、『エリアボス探知』だ!」
「了解――『エリアボス探知』! うう~ん? 天使の教会で反応があるよ?」
「なんだって! そんなところに居たのかい!」
「こりゃすぐに向かわなくちゃいけないな!」
「勇者君、即で撃破してきてくれたまえ!」
「ニーコも行くんだよ!」
ボス戦をとても自然に俺へ任せようとするニーコを引っ張り、カイリも連れて例の場所へと向かう。
教会の内部構造はどこも同じで、悪魔の階層門があった部屋と同じ天使の部屋に、エリアボスを呼ぶ機能があるのだ。
本来天使側の切り札で、天使の数が一定を下回ると教会の天使がエリアボスを召喚する、という手順になるのだが、エリサが教会内の天使を一掃しちゃったからね。誰も呼び出せなかったんだよね。
「ここかな? これからエリアボスの波動を感じるよ!」
「よし、カイリ、ここで『希少ボス呼び』だ!」
「え? お、おっけー! 『希少ボス呼び』!」
カイリの〈六ツリ〉スキル『希少ボス呼び』は名前の通り、エリアボスの希少ボスを呼び出すスキル。
エリアボスは階層ボスと希少ボスに分かれていて、希少ボスはその名の通り、倒せば〈金箱〉確定だ。
徘徊型みたいに格上のドロップが落ちるということは無いが、倒せば〈金箱〉確定という響きは、ボスと戦うモチベーションを高めてくれる。
そしてカイリがまだその階層の階層ボスと出会っていないなら、これから出会うエリアボスを希少ボスにしやすくしてくれるのだ。
つまりはシュレディンガーの猫だな。
まだ確定していない未来を確定させてくれるスキルである。
「よし、これからエリアボスを召喚する! この部屋じゃ狭いから、きっと外に召喚されるだろう。迎撃準備を進めようぜ!」
「…………」
シエラがなんだかジト目で見つめてくるのにテンションを密かに上げつつ、俺の1班とシエラの2班がエリアボスを相手にすることになり、召喚。
呼び出す方法は簡単だ、天使の部屋にある祭壇のようなところに供物を捧げるだけ。供物は天使のドロップだ。
ここは悪魔と天使が争っているダンジョンなので、天使は天使のドロップを所持している。つまりは形見。これを捧げることで天使のボスが悪魔を一掃するのである。
俺たちが〈本教会〉に引っ込んでいると、時間経過でボスが悪魔を蹂躙しながら悪魔の教会を制圧する様子を見ることができるぞ。
つまり、1層では自然な流れでいくと天使側が勝つのだ。
そんな演出もまた良き。
「出るぞ!」
「…………」
俺の真剣な声にシエラがジト目で返してくる。実にやる気が上がるんだぜ!
いざ召喚!
「ワーーーーー」
祭壇から飛び出た天使はそのまま教会からすり抜けるようにして教会上空に顕現。
俺たちも即で教会から出て迎撃準備に入った。
「『看破』! これは――〈権天使・ヴァーミリオン〉と出ました! 〈希少ボス〉のようです!」
エステルの言葉に「よっしゃ、〈希少ボス〉キターーー!!」とはしゃぎ、戦闘を開始する。
とはいえ1層のボスだ。なぜか力を誇示するかのように拳で語ってきたが、2班のラウとセレスタンが拳勝ちしていた。
勝者、獣王と執事! ……なんでボスに拳勝ちしてるんだろうこの2人は?
こうして1層は完全に制圧し、2層へと向かったのだった。
なお、〈金箱〉は1個だったが、大変美味しゅうございましたとここに記載しておく!
最初の〈金箱〉を開けるのは、やっぱ俺だよな!
あとがき失礼いたします! 情報公開!
〈ダン活〉をいつもお読みくださりありがとうございます!
この度、〈ダン活〉小説13巻の発売が決定いたしました!
発売日は2025年7月19日です!
書き下ろしや特典SSなど、詳しい情報は活動報告に記載しております!
13巻のカバーイラストもありますので是非見ていってください!
今後も〈ダン活〉をどうぞよろしくお願いいたします!




