#1640 夢のロマン〈乗り物〉対決!? 戦艦VS幽霊船!
【強欲】のユニークスキルはインダクション系。
全ての攻撃はモニカの下へ向かう。
攻撃だけじゃなく、もしバフでも掛かっていればそれもモニカが得ることができる訳だ。
だが、残念ながら〈エデン〉ではすでにバフが奪われるということはリーナによって周知されていた。モニカのステータスは上がらなかったものの、攻撃は全て引きつけることに成功。
そして衝撃。
「こなくそでやがりますーーーーーー!!」
「姉御ーーーーーーーー!?」
「うおおおおお! 回復だーー! 『エクスヒール』! 『ハイパーセカンドヒール』! 『オールヒール』! 『ノヴァサードヒール』!」
「HPを戻してください! 『フィクションアウト』!」
全弾命中。
六段階目ツリーの攻撃が5つ、うち2つはコンボ攻撃。
それを全てモニカが盾で受け止めたのだ。
減退効果で威力が半減していたのと、ヒーラーによる回復連打の集中治療。そしてドレインシールド系のおかげで回復を繰り返した結果、なんとかモニカは生存した。
「「「「うおおおおおお!!!!」」」」
「さっすが姉御ーーーーー!!!」
こうなると〈天下一パイレーツ〉からも歓声が上がった。
そりゃ〈エデン〉のあの凶悪な攻撃を全て受けきったのだから歓声も上がるというものだ。
さすがは【大罪】職。
「や、やかましいでやがります。はぁ。それよりも、迎撃を……!」
さすがのモニカも今の攻撃には疲労は隠せないようでプルプルしていたが、あれだけの攻撃が放たれたんだから〈エデン〉は仕掛けてくるはず。
そう思って声を張ろうとするが、上手くいかなかった。
タンクが指揮役の弊害である。
「!! 〈エデン〉が来たぞ!」
「あれは〈乗り物〉系!」
「迎撃だーーーー!!」
なん拍か遅れて〈天下一パイレーツ〉がそれに気が付く。
あ、〈エデン〉の戦車が迫ってきているぞ、と。
「『ビックエナジーフレアウェーブ』!」
「『大の錨』!」
もちろん、これに迎撃する〈天下一パイレーツ〉だったが。
「たはは~。そうはさせないからね! 『全反射』!」
「ポン! 来たれ幻影の巨人四体――『ミラージュ大狸様×四体』!」
「この列車もパワーアップしているのです――『シールドレギオン・パラディオン』!」
当然狙われる〈乗り物〉だが、ミサトやラクリッテ、ロゼッタが迎撃を阻止する。
ミサトが『全反射』の障壁を張ると、なんとそこにぶつかった攻撃はそのまま反射してしまう。『リフレクション・ヘル』の上位ツリーだ。
【色欲】が司るのは反射。故に多くの攻撃が反射され、〈天下一パイレーツ〉を襲ったのだ。
「おおおおおお!?」
「跳ね返ってきたーーー!?」
さらにラクリッテは新たな『ミラージュ大狸様』を四体召喚。
当然『ミラージュ大狸様』の上位ツリーである。巨大な10メートル級の大狸様が4体整列する姿はなかなか壮観だ。
だがそれも一瞬。次の瞬間には吸い込まれた攻撃によって貫かれて幻術は消え、〈天下一パイレーツ〉の攻撃は上空に逸らされて明後日の方へ飛んで行ってしまった。
続いて突撃するロゼッタのスキルは列車に複数のシールドが展開して列車自体を守る防御スキルだ。だが、これには別の使い方もある。
「よし、ロゼッタ、例の作戦いくぞ! 後方から中央に突っ込んで分断してきてくれ!」
「はい! 突っ込みます――『列車槍・ファランクスドライブ』!」
列車出発!
これは槍衾を展開しながら突っ込む、攻防一体のドライブスキルだ。
シールドも展開されているため攻撃はなかなか通らず、槍衾を展開しながら高速で突っ込んで来る列車である。もう見た目からしてとんでもないものだ。
「うおおおお!?」
「よ、よけろおおおおお!?!?」
「姉御、あれは!?」
「突撃は引き寄せられないでやがります! 気張って避けやがれです!」
「「ああああああ!?」」
「2人轢かれたーーー!」
「おおい、大丈夫かーーー!?」
「マスで減退してなかったら危なかったぜ」
どうやら逃げ遅れた2名が轢かれた模様だ。
だが物理系の突撃スキルはマスの減退を受けるため火力が落ちる。それが無ければ光にできたっぽい。かなりの威力だ。ロゼッタはタンクのはずなんだけど。
「ええい! 反撃でやがります! あたしたちの〈乗り物〉を見せてやるですよ!」
「おお!」
「おっしゃー! 『お宝大金庫』! ――出すぞ! いでよ〈幽霊船長の海賊船〉だ!」
「「「おおおおおおおお!!」」」
ここでびっくりすることが起こった。
多分【盗賊王】の収納スキル『お宝大金庫』を使ったんだろう。
なんと〈イブキ〉の3倍くらいはビッグサイズの幽霊船が登場したのである。
「おお! そういえば〈幽霊船長の海賊船〉のレシピオークションに出してたな! シエラが! あれ〈天下一パイレーツ〉が落札してたのかよ!」
思い出すのは夏休みの〈海ダン〉で行なった肝試し――もとい夜のトレジャーハント。
あれで〈幽霊船長の海賊船〉のレシピを手に入れたのだが、夏休み末のシングルオークションの時にシエラが「これいらないでしょ? オークションに出すわ」と有無を言わさない迫力でオークションにかけてしまったのだ。
まあ、〈エデン〉には〈イブキ〉があったので確かにいらないのだが、実際の現物を見るとちょっと乗ってみたくなる不思議!
「そこに乗り込むはこの俺! 上級職、高の中! 【大地海空賊船長】だぞーーー!」
出たな〈天下一パイレーツ〉の職業自慢! 名の名乗りを上げる代わりに職業を名乗るのが〈天下一パイレーツ〉流!?
【大地海空賊船長】、もう大地なんだか海なんか空なんだか分からない、賊の船長だ。要は全部乗れるの意味。
高の中ということもあり、結構幅広い〈乗り物〉に騎乗することができるうえに〈乗り物〉専用スキルまで発動できる優良職である。
もちろん〈幽霊船長の海賊船〉に乗り込む賊船長さん。他にもわらわら乗り込んでいく〈天下一パイレーツ〉のメンバーたち。
〈幽霊船長の海賊船〉で白本拠地へ乗り込む気か!
「これは面白くなってきたーー! カイリ! エステル! かましてやれ! 奥の手の方だ!」
「了解だよ! 『無限収納』! 出すよ! 周囲は気をつけて!」
「いつでも大丈夫です!」
あのロゼッタの〈ブオール〉、客車3両連結すら仕舞っていたのは、何を隠そうカイリの六段階目ツリー、その名も『無限収納』。
名前からしても分かるように、シズの『戦場物資』すら超える量を持ち運ぶことができる収納スキルだ。とはいえ本当に無限ではないぞ?
そして仕舞っているのは〈ブオール〉だけじゃない。
さらに巨大なものを収納している。
本当は使い慣れている〈イブキ〉を出そうかと思っていたんだが、相手が大きい船出しちゃったからな。これは対抗しなければいけないだろう。故に!!
「〈戦艦〉――召喚!」
ああ、ついにカイリまで真似を!
カイリがそう唱えた瞬間、ドンっとドデカい〈戦艦〉がそこに登場した。
「な、なんだありゃあああああああ!?」
「で、でか! でっか!!!!」
「お、俺の幽霊船よりデカいぞ!?」
ゆうに幽霊船の3倍は大きい姿。
例の〈空島ダン〉で手に入れた〈戦艦〉のレシピから、タネテちゃんが〈六ツリ〉開放したあと一心不乱に作りあげたという超大作。
イージス艦の見た目に近い艦をベースに、青い着色がなされ、船首には巨大な主砲がキラリと輝く。
空中移動も可能になった超巨大艦―――〈戦艦〉だ!
タラップを駆け上がったエステルが装備し、操縦。
まだほとんど練習も出来なかったため実戦投入はしたことが無かったが、エステルは見事に動かし、その砲身を幽霊船へと向けた。
「え?」
なぜか幽霊船の賊船長からそんな声が漏れたのが聞こえた気がした。
「いきます――『ファウ・ウール・マーゼ・スラスト』!」
ここでエステルの六段階目ツリー発動。これは超強力な集束砲。
〈戦艦〉の船首から伸びる主砲にエネルギーが込められたと思うと――発射。
マスを横断し、接近中の幽霊船と同じマスにいたのが不運。超特大の槍の形をしたビームがマスの減退無しで幽霊船目掛けて突き進む!
「ちょ、ま、ああああああああああ!?!?」
「やっべみんな飛び降りろーーーーーー!」
「「「「わああああああああああ!?!?!?」」」」
迫り来る砲撃が――幽霊船にズドンと直撃した!
反撃することもできずに沈みゆく幽霊船。そしておそらく一撃で【大地海空賊船長】のHPをゼロにしてしまったのだろう。
幽霊船はちょっと浮いていた船体を落下させ、そのまま沈黙してしまったのだった。




