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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第三十六章 〈エデン〉VS〈天下一パイレーツ〉ランク戦!? 六段階目ツリーの大お披露目!

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#1637 観戦席の混乱状態。混沌過呼吸でぶっ倒れる。




 会場は大いに盛り上がっていた。

 なにしろ〈九角形〉フィールド。

 過去に〈キングアブソリュート〉と〈千剣フラカル〉が戦ったフィールドであり、〈城取り〉の中でも非常に難易度が高いことで有名な場所だからだ。


 Sランク戦ですら、普通戦うのは〈30人戦〉。

 だが、〈九角形〉フィールドはそれだと明らかに人手不足なのである。

 故に、攻略する順番などが重要になってくるわけだが、そこは〈50人戦〉フルメンバー!

 しかも片方が注目の〈エデン〉である。


 盛り上がらないわけがなかった。

 そして〈エデン〉はこの〈九角形〉フィールドに〈50人戦〉というとんでもない未知の試合を、完璧な作戦でほぼ全ての巨城を捥ぎ取っていったのだ。


〈50人戦〉〈九角形〉フィールドなんて誰も見たことがない。

 全戦全勝負け知らず、そして毎度極めた作戦を練ってくる〈エデン〉が、この試合でどんな作戦を練ってくるのか、ギルドバトルに詳しい者たちはみな注目していた。


 それがどうだ。

 なんだこれ?

〈東3巨城〉以外全てを取る?

 全ての巨城がほぼ10分ほどで陥落し、それをほぼ同時進行で行なう?


 しかもマスの踏み方、ツーマンセルの配置、時折見せる〈スタダロード戦法〉と〈ロードローラー戦法〉の組み合わせなど、今まで〈エデン〉が考案、教え広めてきた作戦が採用されている。見事という言葉でも足りない芸術的な戦略方法だった。


「なんだ、これは」


「くそう! メモを取る手が止まらないぞ!」


「みんな、手を止めるな! たとえ明日腕が上がらなくなろうともメモを取るんだ!」


 出張研究所職員たち、奮戦中。

 もはや摩擦熱で紙が燃えるのでは? というレベルの高速でペンを走らせていた。


 その横に当然のように座る冒険者風の――冒険者(オルク)は戦慄を隠せない。

 筋肉ギルドに加入し、当然の如く研究員の隣に座らされているオルク。もちろん反対側には筋肉たちだ。

 なんだか今まで偶然この位置だったのに、今回からは正式にこの位置に座ることが決定したかもしれない。


「うう、筋肉が唸る! 唸るぞ!」


「いや唸らないでくれよアラン!? あんたが唸ると、他のギルドメンバー全員にも伝播するんだから!」


「もう我慢できん!! ナイスマッスルだーーーーーーー!!」


「「「「「ナイスマッスルだーーーーーーー!!」」」」」


「ああ!?」


 なお、研究所職員の反対側ではついに筋肉たちが服をパージしていた。

 冒険者(オルク)の歯止めなんて紙のごとしである。


「勇者君さいこーー!! 勇者君素敵ーーーーーーーー!!」


「もっと、もっとよ! もっと応援旗を掲げて! そこ、少しズレてるわよ!」


「きゃああああああ! かっこいいいいいいいい!!」


 一方別の観客席では勇者ファンたちが大量の横断幕を掲げていた。

 それは、なんと大量の横断幕で1つの巨大絵が描かれていた。


「第二横断幕、展開!」


 どなたかの指示で1つ目の横断幕が仕舞われると、なんと第二幕。

 別の横断幕が大量に掲げられてこれまた1つの絵が描かれて勇者ゼフィルスを応援する。

 ちなみにこれは24バージョンある。

 全部披露する前に試合が終わらないか心配だ。


「ゼフィルス氏ーーーーー!! あなたは最高だーーーーー!!」


「「「「ひゃっほーーーーーー!!」」」」


「みんな、意識をしっかり保って目に焼き付けろ、この〈エデン〉の戦法を!」


「やっべえええええええ! 俺たちが夜も寝ずに考えた戦法が片っ端から上回られてらあああああ!!」


「「「Foooooo!!」」」


〈ギルバドヨッシャー〉の席はもう大変だ。テンション上がりまくって色々危険。

 モニカに頼まれてから、以前の〈九角形〉フィールドの作戦を見直し、〈エデン〉相手を想定して夜も寝ずに考えた作戦が、実際には木の葉の如く破られていくのだ。

 こんなの〈ギルバドヨッシャー〉にテンション上げるなという方が無理である。


「こ、こん、こんと、ケヒュウ、ケヒュウ」


「おい混沌野郎!? しっかりしやがれ! 過呼吸で倒れている暇はないぞ!?」


 こっちでは混沌ことオスカーが過呼吸でぶっ倒れていた。幸せそうな、ちょっと逝っちゃってる顔をしている。混沌と叫ぶこともできない状態だ。かなり重症なご様子。

 そんなオスカーを割と慣れた様子で索神ことシンジがアイテムで回復させていた。

〈ギルバドヨッシャー〉の周辺は、カオスだった。



 あっちこっちで観客席の変化が見られ、というかむしろ応援が進化していた。

〈エデン〉VS〈天下一パイレーツ〉戦は、もう一種の学園行事、もはや大イベント並と化していたのである。


「ひぃひぃ!」


「学園長、まだ始まったばかりです。息を上げている場合ではありませんよ」


「老骨をこんなに働かせちゃ、ダメなんじゃないかのう!? ち、〈秩序風紀委員会〉の77班を北22の31番に向かわせるのじゃ。衛兵も出動するのじゃ! なんとしても学生を落ち着かせよ!」


「はっ!!」


 なお、その背景に奮戦する80歳おじいちゃんの姿があったとかなんとか。



 まだ初動が終わったばかり。

 モニカギルドマスター他、サターンたちなど主立ったメンバーが退場しているが、〈敗者復活〉ルールですぐに復帰してくるだろう。

 試合は、まだ始まったばかりだ。


 ◇ ◇ ◇


「『ゼフィルスさん、こちらリーナですわ! ただいま戻りました!』」


「リーナ! 作戦はほぼ成功したな! どこの巨城が取れなかったんだ?」


「『〈東3巨城〉ですわ。担当のパメラさんとミジュさんがあともう少しというところで間に合わなかったようですの』」


「やっぱり〈東3〉か、そりゃ仕方ない。そもそも東側の巨城はゲットできればラッキーだったからな。それを3城も手に入れたんだからほぼ最高の結果だろう!」


〈西2巨城〉攻略を終えたリーナが本拠地に戻ってきたようで通信開始。状況を把握していく。

〈西2巨城〉は白チームの〈救済巨城〉だが、もちろん初手でリーナやラナ、シズ、フラーミナ、ハンナを派遣し、陥落させてある。

 本拠地から一番近い巨城ということもあり、本拠地防衛に必要な人材を派遣して陥落させ、すぐに本拠地に戻る作戦だ。


 なんか途中で迷子のツーマンセルを見かけたとのことで、遠距離攻撃で行きがけの駄賃とばかりに討ち取ったらしいが、まあそういうこともあるだろう。南無。

 なんだか〈北巨城〉でブロックした〈天下一パイレーツ〉最速の2人を幻視したが、もしかしたら西側に攻め込んで来ていたのかも知れないな。

 なるほど、得心が行ったぜ。ナイスファイトだ!


 初動は〈白8城:赤1城〉という結果で白の超有利。

 いやぁ〈天下一パイレーツ〉、俺たちの動きも結構研究していたみたいで、動きも悪く無かった。


 赤本拠地を見れば、攻められたときに〈保護期間(バリア)戦法〉を使うためだろう、なるべくマスを踏まない配慮が見られた。あれだけでもなかなかに研究していることがわかる。


 それに〈東2巨城〉以外の東側巨城にはちゃんと部隊を初動で派遣し、おそらく〈北巨城〉や〈西4巨城〉を狙っていたツーマンセルは〈天下一パイレーツ〉の中で相当最速なメンバーを登用したはずだ。

 じゃなければ俺とカルアのツーマンセルがあれだけしか引き離せなかった理由にならない。


 かなりギルドバトルを研究しているな。

 もしくはどこかの入れ知恵か。

 まあ、〈エデン〉が最速すぎて〈東3巨城〉以外全てブロックしてしまったんだけどな。


 いやぁ、それもこれも上級上位ダンジョンで手に入れた〈マイセット早着替え〉のおかげだ。これで戦闘に入ったら一瞬で全装備を着替えることができるので、これまで不採用だったAGI装備を全身装備で着ることができた。


 なぜただの着替えアイテムが上級上位ダンジョンという、超高難易度ダンジョンで手に入るのか?

 それは、これがギルドバトルでは鬼強いアイテムだからである。


 用途によって装備を変更出来るということはだよ?

 例えばアイギスの〈火属性ダメージ120%カット〉やシエラの〈氷属性ダメージ80%カット〉をも思いのままということ。

 もう〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が登場して火魔法と氷魔法を撃たれても、攻撃によって防具を変更してしまえば防御スキルを使うまでもなく防げてしまうのだ。


 これ、1属性しか使えない魔法使いにとってはまさに天敵といっていいアイテムなのである。故に上級上位(ジョウジョウ)級として名を馳せているというわけだな。〈銀箱〉産だけど。


「さて、初動が終われば小城マス取りの時間だな。赤の様子はどうかな?」


「ん? ゼフィルスどっちいくの?」


「とりあえず、まだどこの小城でもない空き小城を踏み踏みしつつ、赤本拠地にプレッシャーを掛けたいところだが、俺たちはこのまま南側からグルッと回って本拠地に戻る!」


「おけ」


 サターンたち9人を屠った俺とカルアは、悠々と赤本拠地の東側の空き小城をゲットしまくってポイントを拡大しつつ、〈東3巨城〉の方まで南へ寄って、白本拠地へと向かうことにした。


「あ、ゼフィルスさんデース!」


「ゼフィ先輩、カルア先輩」


「パメラ、ミジュ!」


「やほ」


 途中で〈東3巨城〉周りの赤マスを踏み踏みしているパメラたちとも出会って情報交換。

 なんでも、ギルドマスターが立ち塞がったのだとか。


「唯一取られた〈東3巨城〉はそのギルドマスターの手腕だったというわけか」


「すっごく強かったデース! ノエルさんのバフが封じられて、私の分身も乗っ取られて、最後は上級のユニークスキルを使ってやっと勝てたデース!」


「さすがは【強欲】! これで優秀なアタッカーが加わっていたらパメラたちですら危うかったかもな」


【強欲】はあくまでタンク。

 バフを強奪したり、分身を強奪したりするのも広義の意味では「防ぐ」の一種だ。

 故に、普通はパメラと対峙するためのアタッカーなどが不可欠になるわけだが、そのアタッカーはミジュとセレスタンと、攻撃や回復に転じたノエルの相手で手一杯で、結局ジリ貧になり、向こうのギルドマスターはパメラに討ち取られてしまったとのことだ。


 だが、アタッカーやヒーラーが揃っていれば分からなかっただろう。

【強欲】は〈新緑の里〉の攻撃をヒーラーの【偽聖女】と2人で防ぎきったほどの強職業(ジョブ)だ。聞く限り、初動の巨城取りには【偽聖女】を連れてきていなかったのが敗因っぽい。

 次復活してきたときは、今回みたいに上手くいかないと見て良いな。


「中盤戦はおそらくそこそこで終わるだろう。2人とも中央を意識しておいてくれ。おそらくギルドマスターが復活し次第、仕掛けてくるぞ」


「なんと! 了解デース!」


「ラジャ」


 俺はそれを言い残してマスを取りながら白本拠地へと向かう。

 赤チームが必死の形相で小城マスを確保している脇を抜け、急ぎリーナのところに戻った。


 赤チームは巨城を1つ、つまり2000ポイントしか取れていない。

 小城は1つで10P。つまり、白チームが赤チームよりも小城を200個多く取れば、逆転はほぼ不可能となる。


 その前に赤チームは手を打ってくるはずだ。

 具体的には、サターンや向こうのギルドマスターが復活したタイミングでこちらの人員を削るため、本拠地を攻めてくることだろうと予想する。


 ◇


 なお、一方〈敗者のお部屋〉では。


「サターンたち! 東側の巨城が〈東3巨城〉以外1つも取れないなんて口ほどにもないでやがりますよ! なんという体たらくです!?」


「ぐぬぬ! おのれゼフィルスめ!」


「ふふ、僕たちが復活した暁には目に物を見せて上げます」


「あれはまだ俺たちの全力じゃねぇ! 巨城を落とすためにほとんどのスキルがクールタイムに入ってたんだ!」


「このまま活躍しなければ、また俺様が忘れられてしまう!? 今度こそ俺様の力を示すぞ!」


「派手にやられたみてぇですのにやる気だけは人1倍、いや、人の100倍くらいありやがるですね!」


「モニカよ! 我らはまだ折れてはいない。復活したときに反撃に出るぞ!」


「それしかねぇでやがりますね。いいでやがりますか? 〈新緑の里〉戦の戦法を使うですよ! 反撃のお時間でやがります!」


「「「おおー!」」」


「え? それ俺様が活躍できないやつじゃ――俺様を忘れないで!?」


 モニカたちは〈敗者のお部屋〉で作戦会議中。

 白本拠地に打って出るまでもう少し。




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
自信過剰で負けず嫌いな愚か者が、まともに作戦行動できるのかな? ゼフィルスですら性格を矯正治療できなかった馬鹿たちなのに。 強欲のモニカには頑張って欲しいなー。(エデンの勝利は確定だけど、エデン組の2…
城を落とすためにスキルがクールタイムに入ってたのはゼフィルスとカルアも同じなんでは? いや天プラにそんなこと言っても無駄だろうけど。 リアルでも自分が納得できる理屈をこじつけたら、いくら他人に反論され…
掲示板勢が実名で出てくるのもレアで新鮮な回でした
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