#1628 ついにお披露目!最強六段階目ツリーと新装備
「な、なんだとおおおおおおおおお!?!?!?」
「ふふ!?!?!?」
こちら北側の〈天下一パイレーツ〉の幹部たち(?)、つまりサターンたちは、目の前で行なわれたインターセプトが信じられなかった。
注目すべきは〈北巨城〉。
モニカが〈ギルバドヨッシャー〉に頼み込み、「ふははは、それなら1戦、いや20戦ほど俺たち〈ギルバドヨッシャー〉とギルドバトルしてくれるなら快く教えようじゃないか!」「混沌!」という、見方によればとんでもない契約を結んで得てきた情報である。1戦からなぜ20戦にまで膨れ上がったのかは不明だ。
しかし、〈ギルバドヨッシャー〉の実力は学園の誰もが知るところ。
その情報に偽りなし。
一番重要なところは〈北巨城〉であることには間違いなかった。
故に、〈天下一パイレーツ〉はギルドでもっとも速いツーマンセルを〈北巨城〉に突っ走らせ、遅れてきた〈エデン〉の進路を塞ごうと考えていたのだ。
まあ、見れば分かる通り『移動速度上昇』とAGIをガッチガチに高めたゼフィルスとカルアによって先行されてしまい、見事に進路を塞がれてしまったのだ。
これには後続として付いて行っていたサターンたちも目を剥いて驚く。
「〈北巨城〉が非常に重要? つまりはゼフィルスが来ると言うことじゃないか!」「ふふふ、目の前で進路を塞がれ、悔しがるゼフィルスの横を堂々と通ってやると?」「なんだそりゃ、最高じゃないか!」「そんなことされたら俺様のことは一生忘れないだろうな!」とさっきまでニヤニヤ笑っていたのに、今では顔を青ざめているまである。
しかも、ゼフィルスの進路を塞ぐ戦法は、これで終わらなかったのだ。
「!? ちょっと待て! ゼフィルスが北に向かわないぞ!?」
「ふふ!? 東へ向かう!? まさか!」
「や、やべぇ! 塞げ塞げ! 間に合うか!? というか速っ!? 速いぞ!?」
「俺様のガードを忘れてもらっては困るぞーーーー!!」
呆気にとられ、顔を青ざめたのも束の間、なんとゼフィルスたちは〈北巨城〉へ向かわず、〈天下一パイレーツ〉の進路を塞いだその足で東へ――つまり〈東1巨城〉へ向かいだしたのである。
実は〈エデン〉にとって〈北巨城〉なんて通り道、如何に〈東◯巨城〉を奪えるかが焦点になっていたりする。
故に、〈北巨城〉は後続に任せて、自分たちは東に食い込んできたのだ。
ここで重要なのが初動での行動。
実は〈東1巨城〉〈西1巨城〉は、お互い狙われやすい位置に存在しているのである。
というか狙える位置にあると言った方が適切か。
故に、狙われないよう、〈北巨城〉と〈◯1巨城〉の間にある観客席まで、本拠地からマスの線を敷き、相手の移動をストップさせることが重要となる。(例図Q―13)
もちろん〈天下一パイレーツ〉はここまで細かなことを出来ちゃいなかった。
初動で向かわなくちゃ行けない場所がたくさんありすぎて、素早い人材が足りなかったのだ。
そのため万が一先陣が抜かれて相手が〈東1巨城〉を取りに来た場合は、〈北巨城〉の後続として向かっていたサターンたちが進路を変更して線を敷き、行く手を阻むという計画だった。
だが、ゼフィルスとカルアの速度が、想定よりもだいぶ速かったのである。
線を敷くのが間に合わないレベルで。
つまりはどういうことかというと、慌ててサターンたちが進路を〈東1巨城〉に向け追いかけ、さらに観客席との間に今から線を敷き、ゼフィルスたちの進路をインターセプトしようとしたのだが。
「ま、待てゼフィルスーーーー!?」
「はーっはっはっは! 待たん、むしろまたなーーー!」
「ふふ!? そんな、僕たちが笑いながら抜かれるだなんて!?」
そんな訳でサターンたちの努力実らず、間に合わずに〈東1巨城〉へ抜かれてしまったのだった。
さっきまで妄想していた悔しがるゼフィルスを横から堂々と追い抜かしてやろうと思っていたのと、真逆になってしまったのだ。
ゼフィルスたちはそのまま〈東1巨城〉へ突っ走り、サターンたちもそれを追いかけるが、完全に追いつけていなかった。
「だが、まだ、まだだ!」
「そうです! 僕たちだってあの頃の僕らではありません!」
「ゼフィルスたちが到着する前に〈東1巨城〉を落とせば済むことよ!」
「俺様が活躍したかったが、今回は譲ってやろう!」
〈ギルバドヨッシャー〉からのアドバイスが、ここで生きる。
なんと〈天下一パイレーツ〉は〈東1巨城〉にも最初から進軍していたのだ。
これは〈ギルバドヨッシャー〉から「〈エデン〉ならやる! 〈北巨城〉だけじゃなく、絶対〈東1巨城〉も狙ってくる! 下手をすれば〈東2巨城〉も危うい。だから絶対初動で部隊を向かわせろ。後回しにせずさっさと落とすが吉だ」と言われていたからだ。
人材の関係で〈東2巨城〉へは後回しにせざるを得なかったが、〈東1巨城〉にはかなり速い部隊を送っていた。
ゼフィルスたちが目指す先には、先行した〈天下一パイレーツ〉の部隊が〈東1巨城〉へ向かっているところだったのだ。
ゼフィルスたちは観客席を抜け、ようやく〈東1巨城〉をその目に捉える。
「いけるな!」
「ん!」
そしてゼフィルスたちの判断は、いけるだった。
いけるんだ!? まさにその言葉をサターンたちが聞いていたらさらに愕然としたことだろう。
それほどまでにゼフィルスたちの今回の速さは別格だったのだ。
もちろんゼフィルスにとっては全てが想定内である。
「カルア、このまま〈東1巨城〉の西隣接マスに向けて斜めにダッシュ、取得する。タイミングを見てあれを許可する」
「ラジャ!」
あれとは?
なんだかゼフィルスが言うととんでもない予感が蔓延る。
それは、このギルドバトルのためにゼフィルスが用意してきた膨大なもののうちの1つだ。
そして目的地である〈東1巨城〉に接近、最初に隣接を確保したのはもちろん〈天下一パイレーツ〉だったが、後ろに〈エデン〉が高速で迫っているのを見てとても驚いた。
「なんでこんなところに〈エデン〉が!?」
「ブロック――いや間に合わねぇ! 早く落とすぞ! あっちはたったの2人だ! 後続もすぐ来るし俺たちの方が多い!」
「おう! 『プロミネンスバースト』!」
「『ザ・四天王オブはかいこうせん』!」
慌ただしくも〈東1巨城〉の攻略が始まる。
だが担当した人数は2人と少なく、100人が会場入りするギルドバトルでは巨城は硬すぎて思うように進まなかった。
「か、硬い!?」
「お、思った以上に頑丈だぞこれ!?」
「あ、焦るな! 〈エデン〉は先行しすぎて後続が着いてきていない! 南からはサターンたちも来てる! 慌てる心配は無い!」
「応!」
そう、冷静に見れば分かるのだが、ゼフィルスたちは今回、速さを特化させるあまり、後続との距離がとても離れまくっていた。
〈東1巨城〉に追いつくにはまだまだ掛かるというようなほど後続が後ろにいる。
自分たちの後続はすぐそこまで来ていた。
それを見て〈天下一パイレーツ〉に少しの余裕が生まれた。
また、ゼフィルスもこの時〈天下一パイレーツ〉を見て驚いていたりする。
「あの指揮官男子君、『ザ・四天王オブはかいこうせん』を使うのか。完全に高位職の【四天王】じゃねぇか。もしくはその中位職で【四天王の中で最弱】の方かも分からないが、そっちでないことを祈る」そんなことを心の中で思うゼフィルス。
だが、それもすぐに切り替えて、巨城を落とす準備をする。
「到着だ! 俺は着替える!」
「ん」
なんとここでゼフィルスが着替え宣言。
え? この大観衆の中で着替え!? もちろん装備換装のことだが、ここまで全力ダッシュしてきてやることが着替えなのかと、【四天王】の〈天下一パイレーツ〉は驚愕すると共に肩の力がちょっと抜ける。
だが、次の瞬間には愕然とした。
「〈マイセット早着替え〉! 着替え完了!」
「「早っ!?!?!?!?」」
「なんだそりゃ!? まるで変身じゃねぇか!?」
ゼフィルスはアイテムを使い一瞬で着替えていた。〈天下一パイレーツ〉が驚愕に目を見開く。
その名も〈マイセット早着替え〉。
普通の〈マイセット〉などのアイテムは初級ダンジョンでもゲットできるが、この〈マイセット早着替え〉はなんと上級上位ダンジョン産。
ただの早着替えではない。着替えが一瞬で終わるアイテムなのだ。
一瞬? そう、一瞬。相手が襲ってくるとか、戦闘中とか、そんな中で一瞬で装備を変更できるのである。自分に優位なように。
それは〈天下一パイレーツ〉の指揮官男子君が言うように、まるで変身だった。
ゼフィルスが装備を入れてきた肩掛け鞄をパージして身軽になり、その装備が顕わになる。
「いけるぜ! カルア!」
「ん!」
到着した瞬間、ゼフィルスが着替えたのは今までの〈勇銀装備〉では無かった。
実は本日お披露目装備。その名も〈勇者竜装備シリーズ〉。
『ドロップ革命』により、上級中位ダンジョンのランク9の最奥ボス〈黒現迅亜竜・マラガストル〉通称〈マラガ〉からドロップした、シリーズ装備である。
今までは作製出来なかった。なぜか? 生産職のLV問題である。
これは、作製に六段階目ツリーが必要な装備だったのだ。
しかしそれも先日突破し、ついにハンナ、マリー、アルルが作製し、完成し、今日お披露目したのがこれ。
見た目こそ前の装備に寄せてはいるものの、アーマーの部分がかっこいい竜鱗となっており、金属の光沢も合わせ持つ青と白をベースにした非常にかっこいい見た目の装備となっていた。
それがゼフィルスの装備――〈勇者竜装備〉である。
勇者とついているが別に【勇者】系しか装備できないというわけではない。だが、【救世之勇者】や【竜騎姫】など一部の職業が使用すると、とんでもない効果を発揮する装備シリーズではある。
条件を達成して漲る力に拳を握りつつ、ゼフィルスが指示を出す。
「カルア、このままじゃ落ちる前に保護期間が明ける。攻撃を許可する。削るぞ」
「ん」
その言葉を聞いたカルアがゆらりと〈ドラゴンダガー〉を2本抜いた。
「『256ジ・エンド』!」
振り抜かれたのは二閃。
だがその後、とんでもない数の斬撃が巨城を襲い、見る見るダメージが伸びていく。
そしてゼフィルスも、その背中にある剣を抜く。
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
あとがき失礼いたします。
別のサイトで恐縮ですが、カクヨムの有料限定近況ノートで、【ステータスその36】を先行公開しております。
よろしければ見に来てください。




