#175 無事に職業を取得。後続を育てよう!
「ずいぶん待たせる事になったけど、ルル〈覚職〉おめでとう」
「ありがとうございます、ゼフィルスお兄様!」
無事【ロリータヒーロー】を取得し、測定室にある〈竜の像〉の前でルルが敬礼のポーズをしながら太陽のような満面の笑顔を浮かべた。
面接の時から一週間。あの時は無情にもシエラとハンナに止められてしまったが、今回はちゃんと就く事が出来た。その笑顔がとても眩しく見える。
「はう。可愛い」
「はい、とても可愛いです」
そしてその笑顔にやられた人が俺の他にもう2人。ハンナとシェリアだ。
「シェリアも可愛い物好きなのか? エステルも大好物みたいだったが」
「えと、はい。そうですね。昔はよくエステルと共に人形屋やファンシーショップ巡りをしたものです。2人でお金を出し合ったぬいぐるみをお互いで貸し合いっこしたこともあります」
ほう。なんだか意外だ。高身長のエステルと、スラリと背の高いシェリアがぬいぐるみを抱きしめて愛でている姿を想像してみる。
すばらしい。
「私たちの家系は主君に仕える事を生業としていますから、それは厳しく育てられます。その反動でしょうか、私たちは可愛いものに憧れを持つようになってしまったのです」
さすがエルフ、なんというか独特の自己分析でシェリアが語る。
というか、可愛い物好きばっかりが集まるな〈エデン〉は。
「さて、じゃあ次はシェリアの番だな。ルル、交代してくれ」
「あい! シエラー、ルル【ロリータヒーロー】になれたよー」
「はいはい。良かったわねルル」
とてとて走りでシエラの下にダイブするルル。
よほど嬉しかったのかシエラの腹におでこをぐりぐり押しつけていた。
見ていて大変和む光景だ。交代するはずだったシェリアも足を止めてその光景に見入っていた。ほっこり。
その後しっかりシェリアも【精霊術師】を取得した。これでギルドメンバーは全員職業に就けたわけだ。やっと次の段階に移れるな。
「シェリアも〈覚職〉おめでとう。これからはビシバシ鍛えていくからな」
「ありがとうございます。是非ご教授をお願いいたします」
シェリアの目標は【精霊術師】で最強になる事。俺の最強育成論が唸りを上げるぜ!
さらに今後だが、中級ダンジョンを突破するには今の固定メンバーでは厳しい。後続を育てる必要がある。
故に俺は後続の新メンバーやカルア、リカを重点的に育てる事に決めている。
シェリアも最強を目指しているため、やる気があってとても良い。
これなら連続ボス周回にも付いてこられそうだ。
今後の行く末が楽しみだな!
「ゼフィルスお兄様、次は何をしますか?」
シエラの所に行っていたはずのルルがいつの間にか近くに来て上目遣いで見上げていた。
くっ、その上目遣いとお兄様呼びは威力が高すぎる!
俺はなんとか顔が緩まないよう鋼の自制心でキリッとした勇者顔を作った。少し不安だったのでシエラの方を向くと溜め息を吐かれてしまった。どうやら勇者顔は失敗したらしい。
「こほん。まずは戻ってからもう一度スラリポマラソンだな。それでLV6まで上げたのち、〈初心者ダンジョン〉を周回してきて欲しい。今日の午後なら、なんとか周回も出来るだろうから。詳しくは一度ギルドに戻ってからにしよう」
「あいです!」
良い返事と共にルルが再敬礼した。その敬礼好き。
一行がギルドに戻るとセレスタンがすでに戻ってきていた。
「おかえりなさいませ」
「おう、ただいま。それで〈初心者ダンジョン〉の受け入れはどうだった?」
「はい。ゼフィルス様の言った通りでした。午後からは各アリーナで学生の受け入れ態勢が整うとの事で、〈初心者ダンジョン〉はこれまでの機能を取り戻すそうです。フィリス先生も空きがあるとの事で、午後1時からの〈初心者ダンジョン〉の授業を受け持ってくださいました」
「よし! じゃあ予定通り〈初心者ダンジョン〉周回に行けるな!」
さすが。フィリス先生の言っていた通りだったぜ。グレイトだ。
これでシェリア、ルル、セレスタンにLV10まで周回してきてもらえれば、明日から初級下位ダンジョンに挑めるな。
一番の懸案事項だった〈初心者ダンジョン〉も片が付いたので、俺は改めてスケジュールを組む。
「じゃあ、早速スラリポマラソンから始めよう。ハンナ、手伝ってくれ」
「うん、任せて!」
ハンナがまずシェリアからスラリポマラソンを開始する。
その間に俺はルルとセレスタンに職業の講義を行なった。
2人とも職業の事は知っていても、その効率的な運用方法には理解が及んでいない。その辺を俺が教えていった。
【ロリータヒーロー】と【バトラー】はこう使うのだってな。
その後、全員LV6なったのでステータスを振り、皆で昼食を食べた後、3人を連れて午後からの〈初心者ダンジョン〉に向う。
「3人とも、頑張ってな〜」
〈初心者ダンジョン〉では何を頑張ればいいのか俺にも分からないが、とにかく3人を激励し送ったのだった。