#1612 久しぶりの邂逅〈天プラ〉からの宣戦布告!?
「そ、その声は―――ん?? 誰だ?」
「サターンだ!!」
「いや、俺の知っているサターンと違うぞ?」
俺の進路を塞ぐようにして立っていた4人組。
そのうちのリーダー(?)が、俺の知るとある人物に似ていたのだが、かなり様変わりしていた。なんだあの三つ又の槍みたいな髪型は? 結構似合ってるじゃないか。
「ふふ、忘れられていましたか。まあ、サターンならそうでしょうね」
「ははは! 記憶に残ってないとは哀れなものだな!」
「俺様――」
「他の3人も、誰だっけ?」
「俺様を忘れてもらっては困るぞ!?」
「ははは、冗談だ。久しぶりだなジーロン、トマ、ヘルク」
そう、こいつらは俺の元クラスメイト。
ギルド〈天下一大星〉を結成し、〈天プラ〉のあだ名で呼ばれている4人組。
サターン、ジーロン、トマ、ヘルクだった。
クラスが変わって以来、たまに会う機会はあったものの、なんか100組台のクラスに流れてからは疎遠になっていたんだ。
「生きてたんだな」
「こ、こやつの中で俺たちがどんな扱いになっていたのか、とても気になるぞ!?」
おっと、うっかり声が漏れてしまった。
いや、今のは生存確認というか、元々のプライドが高すぎるこいつらを知っているだけに、100組台になんて送られたらやけっぱちになってしまうんじゃないか? みたいなことを思ってたんだ。だが、見た感じ1年1組の頃の覇気を取り戻しているように感じるのは気のせいだろうか?
「それで4人とも、こんなところでどうしたんだ? 一緒に校舎に行くか?」
「いや行かんぞ!? なに普通に誘ってきてるんだ!?」
「ごふんごふん。ふふ。僕から説明しましょう。僕たちは強くなりました。あの時よりも強く、ね。故に今こそリベンジの時です! 次のランク戦でAランクに勝ち上がった暁には、〈エデン〉へSランク戦を仕掛けます!」
「〈エデン〉にSランク戦を仕掛けるだとーーーーーー!?!?!?」
ジーロンの説明に俺は思いっきり声を上げた。もうとんでもなくびっくりしたんだ。
まさか、まさかのまさかだ。これは、サプライズか!
思いだすのは〈1年1組〉の時の情景。こいつらを強くするために特訓にも付き合ったよなぁ。なるほど、読めた。読めたんだぜ!
さては――恩返しだな!!
「ありがとうなジーロン!」
「ふふ? なんで僕はゼフィルスにお礼を言われて両手を掴まれているんです?」
「あ、あい変わらずすぎるぞこいつ!」
「俺様には分かる。きっとゼフィルスは自分に都合の良いように解釈しているんだ!」
なにを言ってるんだ?
ランク戦だぞ? ランク戦だぞ!?
今まで〈エデン〉にランク戦を仕掛けてくれたギルドなんて、ほんの1ギルドしかいなかった!
こっちはいつでもウェルカムなのに! というかウェルカムだよって言ってもみんな仕掛けてくれないんだよ?
だが、サターンたちは仕掛けてくれるらしい。これが元クラスメイトか……。
いいものだな!
「早速準備をしておこう! というか〈天下一パイレーツ〉だっけ? Aランクギルドのどこに仕掛けるつもりなんだ?」
「し、〈新緑の里〉だ」
「エイローゼルのところか~」
エルフオンリーで揃えられているギルド〈新緑の里〉。
確か留学生のエルフを受け入れたことで戦力が増し増しになり、Aランクギルドに返り咲いたんだ。
「勝てるのか? 大丈夫なんだよな!?」
「ふふ、なんで僕たちはゼフィルスに心配されているのでしょう?」
「勝てるさ! そのために、俺たちは強くなったんだ!」
「俺様を忘れてもらっては困るぞ! すでに対策は万全だ! ギルドマスターだって――いや、これはなんでもない」
「ん?」
ヘルクの発言に俺の視線はサターンに向く。
だが、ここでハンナの言葉を思い出した。
「そういえば〈天下一パイレーツ〉って、1年生がギルドマスターなんだっけ? サターンはどうしたんだ?」
「グッハッ!?!?!?」
「ふ!? サターン!?」
「大丈夫か!? 傷はどこにも見えないぞ!」
「俺様の前でアタッカーに膝を突かされては困るぞ!?」
俺の純粋な疑問にサターンはまるで膝に矢を食らったように片膝を突いた。
立てるか? 立てないか?
しかし、相変わらず騒がしい4人組。
なんだかあの頃のことを思い出すんだぜ。
と思っていると、キーンコーンカーンコーンという鐘の音が鳴り響く。
「あ、やっべ予鈴だ!」
「ふふ!? サターン、起きるのです!」
「膝突いている場合じゃないぞ!」
「ええい俺様が運ぶ!」
どうやらサターンの傷は思ったよりも深かった模様だ。いったい誰がこんなことを。
「それじゃあ俺は先に行くな! またな! Aランク戦見に行くから、必ず勝つんだぞ!」
「ふ!? ちょ!?」
「って速ぇ!?」
「俺様を置いて行かれても困るぞー!?」
俺は懐かしい面々に手を振ってダッシュで駆け教室まで滑り込んだ。
フィリス先生はまだいない。セーフ。
「セーフ!」
「遅かったわねゼフィルス。なにしていたのよ!」
「おはようラナ! いや聞いてくれよ、実はな?」
俺は普段、〈生産1号館〉に向かうハンナと一緒に登校するため、寮から〈戦闘4号館〉へ真っ直ぐ向かえる直線ルートとは、別ルートを歩いている。つまりは若干遠回りしているんだ。故に、普段は誰ともすれ違うこともないため、俺とサターンのやり取りを知っている人は、クラスに皆無だった模様。
そこで俺は語り出す。
サターンたちが〈天下一パイレーツ〉で、Aランク戦を仕掛けて、その後は〈エデン〉にもランク戦を仕掛けてくるつもりなのだと。
「なによそれ、面白いじゃないの!」
「だろう!」
ほら見ろ、これが普通の反応だ!(違います)
「話は聞かせてもらったわ。おはようゼフィルス」
「おはようございますゼフィルスさん!」
「シエラ! それにリーナも!」
幹部が集まってきたな。
俺の席の近くのラムダが目を点にして「〈エデン〉にランク戦を仕掛けようとする者がいる? 正気か?」とか呟いていた気がしたが、俺は気にしないでシエラたちに情報を共有した。
「あの人たちが、まさかBランクギルドに」
「ですが元Bランクギルド、〈カッターオブパイレーツ〉と合併したという話ですわ。Bランク相当の実力はあるということでしょうね」
「それはどうかしら? ハッキリ言って、サターンは弱いわ!」
ちょ、ラナ、そんなストレートに!
俺は咳払いで吹きそうになる感情を抑えつつ首を横に振る。
「ゲフン、ゲフン。いや、分からないぞ? あれから1年以上経ってるし、もしかしたらなにか奇跡が起きてパワーアップしている可能性も多少は……。うん、少なくとも髪型はパワーアップしてたぞ」
「そんなところがパワーアップしてどうするのよ」
ごもっとも!
「はーい、みなさんおはようございます。席に着いてくださいね~。冬休み明けですが、みなさんが揃っていて先生は嬉しいです」
とここでタイムアップ。フィリス先生のご到着である。
情報共有はここまでだ。
だが、ふっふっふ、面白くなってきたな。
始業式が終わったら早速〈天下一パイレーツ〉について調べないとな!




