#1607 〈秘境ダン〉2日目と3日目、温泉迷路の30層台
〈秘境ダン〉2日目は恒例のスキー!
雪合戦もあるよ、を楽しんだ。
やっぱり雪と言ったらこれだよ。
ダンジョン攻略もいいが、たまにはこうして遊ぶのもオッケー。
かまくらという名の雪の城まで作られてしまって、中でのんびり餅を焼いて食べたりもしたんだ。氷で骨組みを作ったサーシャが誇らしそうだったよ。
60人規模が入るかまくらが城になってしまったのは仕方ないことだよね!
「ゼフィルスお兄様、覚悟なのです! ――とう!」
「どう!」
「にゅ!? ルルと同じ!?」
「ふははははは! まだまだルルには負けないぞー!」
「ルルだって負けないのです! とう!」
「はーっはっはっはー! ――どう!」
ルルお得意の回転。
それはスキーにも活かされる。
ジャンプしたルルが六回転捻りで見事な着地を決め、俺もそれに続き六回転捻りを華麗に決める。
ステータス様様だよ!
「ふわ~、ルルお姉ちゃんがすんごいよ~。いつもより多く回っててアリスも目が回りそうなんだよ~」
「アリス、しっかり! というか、前見て!」
「アリスアリス、ボーゲンが崩れてるぞ。ちゃんと足開いて!」
「おーーっほっほっほ! このスキーというの、気に入りましたわー!」
「お嬢様スピード出しすぎです! 直滑降しないでください!? お嬢様!」
「氷の上なんて私に掛かれば造作もありませんですの! でも私は魔法職なのであまり派手な動きは好むところではありませんのよ?」
「サーシャは誰に言い訳してるの?」
「えっと、サーシャさん大丈夫でありますか?」
初めて来た1年生もとても楽しんでいる模様だな。
サーシャがなぜか雪玉になっているのが少し気になったんだぜ。それ普通ヴァンとかがなるやつじゃない?
ルルと一緒に下に滑り降りると、かまくらのお城の中が目に入る。
「ん。これも美味しい。これも、もっと食べて」
「カルア、気持ちは嬉しいが、もうお腹いっぱいだ」
「ん? じゃあシュミネ?」
「そうですね。――ナキキ、ミジュ? どうですか?」
「お、お腹の形が変わってしまうっす~」
「昨日も思ったけど、カルア先輩のお腹、どうなってるの?」
「普通?」
「いや、普通はそこまで食べないんだぞカルア」
中ではカルアにリカ。それにシュミネたちがこたつでくつろいでいた。
アリだよね~それ。
続いてちょっとした広場に出ると、雪の剛速球が俺の真横を通り過ぎた。
ひえ!? なにごとだ!? 『直感』さん!?
「やるなセレスタン。だが、これは避けられるか!?」
「ふ、単騎で僕を落とせるとは思わないでいただきましょう」
見ればラウとセレスタンが雪合戦の1対1をしていた。
周りでは応援する人も多く、どうやら最後まで生き残ったのがこの2人らしい。
「そこです」
「ぬぁに!?」
「ピピー! そこまで! セレスタンさん、白チームの勝利ー!」
おっと決着。
セレスタンがラウの攻撃を全て躱して、もしくは叩き落としてカウンターを入れて終了だ。
審判はカイリだな。
ちょっと盛り上がり、再戦の予感。
「あ、ご主人様じゃない!」
「教官も入りますか? 一緒に姉さまに日頃の不満をぶつけましょう?」
「そのケンカ買ったよフィナちゃん! 私を爆撃に使いまくっているこの不満、今こそぶつけてやるわー!」
エリサとフィナは敵同士のようだ。
なお、魔法職、しかもヒーラーのエリサがガチガチの前衛オールラウンダーであるフィナに敵うはずもなく、エリサは速攻でやられていた。
「これが、妹力です」
「妹ちゃんがお姉ちゃんよりも強いんだけど!?」
まるで妹の方が強いを体現するフィナ。
だがもう一方の姉妹、アイギスとアルテ戦ではアイギスが勝利していた。
まあ、アルテもヒーラーだからね。
今回は全員一斉参加ではなく、個人が別々に行動する自由行動中。
スキーを1日やるも良し、雪合戦をやるも良し、かまくらや雪だるまを作って遊ぶも良し、温泉街で温泉巡りをするも良しだ。お土産屋さんを回るというのもあり。
たまにはこういう自由行動もいいだろう。
1層の温泉街はダンジョンに観光地を開いた特殊な場所。
自由に行動して欲しい!
俺もみんなの居る場所を回り、遊んだりして楽しんだ。
でも一通り回ったところでちょっと事件。タバサ先生が2人きりでお土産屋さんを回ろうって誘ってきたんだよ。2人でスッと抜けて、そっちに行ってみたんだ。
そこからは、うん。ラナやリーナが捜索隊を組んでね、まあとんでもなく色々在った。とても一言では表せない。
そんな感じで2日目も過ぎていった。
〈秘境ダン〉3日目!
というか最終日!
一昨日は30層まで行って秘湯を楽しんだ。
昨日は温泉街で観光やらなんやらを楽しんだ。
じゃあ最終日は?
もちろんダンジョン攻略です!
朝から高級宿の温泉に入って『湯着』を身に着けたら即出発!
もちろん宿はチェックアウト済みだ。
30層に転移して、そのまま〈秘境ダン〉の最奥たる、40層を目指す!
「はわわ。これはすごいかも~」
「温泉の道ですわ!」
「お、泳ぎながら行くのもアリでしょうか!?」
途中35層は凄かった。
なにが凄いかって、なんと周りは雪なのだが、温泉の川というか道がそこかしこにあったのである。
シレイアさんの言う通り、温泉の川を上りながら階層門を探すという手も使えるぞ。
そこからはそういう階層がどんどん増える。
秘湯が秘湯じゃ無くて、ダンジョンに侵食しまくったのだ。
36層では温泉の川が大河になっており、それを渡った向こう側に階層門があるというとんでも階層となり、37層では温泉の迷路が行く手を遮った。
温泉の川が複雑に入り組んで迷路を組んでいたのである。まあ、〈イブキ〉で通過しちゃったけど。
38層はなんじゃこりゃと言うような立体温泉。
重力のお仕事どうした!? と言わんばかりに温泉が宙に浮いているのである。
まあ、今まで〈岩ダン〉などでも空中に巨石が浮かんでいたなんてダンジョンや、〈空島ダン〉のように島自体が宙に浮いているダンジョンもあったのだ。温泉が浮くという非常事態にも「まあ、そういうこともあるかもね」で通過した。
問題は最後の39層だな。
ここも、迷路のエリアだった。
普通と違うのは、ここが立体的な迷路という点だ。
なんと空中に温泉が流れて川を形成しており、それが複雑に絡みあって立体的な迷路を形成していたのである。
しかも、温泉だけ浮いていて地面は浮いていないので、空中の温泉に入ると足が付かず貫通して下に落ちるため要注意だった。
まあ泳げば問題なかったが。
「空中の温泉を泳ぐとか、ここ39層でしか味わえませんわね~」
「さ、38層は空中に温泉水がぷかぷか浮いているだけで泳ごうという気はしませんでした」
「うん。でも潜ると落ちちゃうのが大変だね」
「だからって浮き輪使ってのんびり川の流れに身を任せるとか、ハンナちゃんたちはどうなってるの? ダンジョンに慣れすぎじゃない??」
ここはフィールド全てが秘湯。
秘湯にモンスターは登場しないので、浮き輪を出してバカンス中である。
去年の15層では流れるプールならぬ流れる温泉、〈流輪の秘湯〉があったからね。浮き輪で流されるのはガチだよ。
みんな慣れたもので、ここ39層は非常に人気の秘湯スポットになりみんなで楽しんだのだった。
スクショもいっぱい撮れたし、そろそろ行こうか。
今までと同じく、流れを上った先に階層門を発見!
俺たちは、ついに40層にたどり着いたのだった。
あとがき失礼いたします。カウントダウン!
〈ダン活〉小説12巻の発売まで、あと1日!
よろしくお願いします!




