#1601 第一の秘境到達! 1年ぶりの〈湖温の秘湯〉!
「ほらお嬢様、急ぎませんと、みな様もう集まってますよ!」
「ギリギリセーフですわ!」
「おう、ギリギリアウトだったな」
残念ノーア。待ち合わせ時間2分遅れである。
女子の人数は53人。ドライヤーとか色々足りなかったんだって。
後で〈スッキリン〉を贅沢に使用することを許可しておこう。あれは髪も乾いてさっぱりするから。
「すみませんでしたわ」
「気にするな。これくらい遅れのうちに入らないさ。たくさん〈スッキリン〉も持って来たし、次はそれを使ってくれ」
「ゼフィルス様!」
これは仕方ない。というか俺も〈スッキリン〉を出していなかったので、おまけでセーフということにしよう。
そう答えると、ノーアが目を輝かせる。あと近い。
「こほん。それではゼフィルス。いきましょうか」
「エステル! 〈イブキ〉を召喚するのよ!」
「いえラナ様、街中で〈イブキ〉を出すのはダメですよ。大きいんですから」
と、ここでシエラの咳払い。
ラナもなんだか忙しない指示を出していた。却下されていたけど。
どうやら待ちきれないみたいだな。
「よーし行こう! まずは去年も行った14層、〈湖温の秘湯〉からだ!」
「いいわね!」
「あそこはゆったり浸かれるのよね。広いし雪が綺麗だし、良いと思うわ」
俺が提案すると、賛成の声が多数上がる。
本当の目的地は20層以降の秘境だが、真っ直ぐ行くにしてもどこかで間を挟まないとな。目的地までずっと運転では、気が付けば『湯着』スキルも効果時間を過ぎてしまうかもしれないし。
今回は去年参加していない新メンバーと新レギュラーのメンバーが入ってるためショートカット転移陣は使えない、最初の1層からやり直しなのだ。
前回は14層くらいで『湯着』スキルの効果が切れそうになったんだよな。
俺たちは宿を出た後、そのまま温泉街の外に出て〈イブキ〉を取り出した。
「いきますよ――〈イブキ〉、召喚です!」
「「「〈イブキ〉召喚です!」」」
エステルが代表して言えば、アイギスもアルテもロゼッタも合わせてドン!
それ召喚じゃね~! とツッコミを入れたくなるが、4人一緒に揃えてくると「おお、これぞ〈イブキ〉召喚だ!」と思ってしまうのはなぜだろう?
「これが〈イブキ〉召喚!」
「召喚ですの!」
「あれ!? カグヤ、サーシャ!?」
カグヤとサーシャがまさかの向こう側!? ツッコミが不在なんだけど!?
「さぁ、みなさま、ご乗車ください」
「班ごとにですよー」
エステルとアルテの言葉にみんな〈イブキ〉に乗り込んだためツッコミ役スルーで終了! 〈イブキ〉は召喚だったんだ!
「ゼフィルス、早くしないと『湯着』スキルの効果時間が切れるわよ?」
「おっとそうだった! 全員乗り込んだな? では、出発だ!」
「「「おおー!」」」
すでに風呂から上がって着替えやらなんやらで30分くらい経過しているメンバーもいる。
早めに行かなければ。
全員乗り込んだら出発だ。
そこからショートカットで道を横断して階層門まで全速前進した。
「2層階層門、発見です!」
「突入だ!」
「はい! 2層階層門、突入します! ――――ゼフィルス殿、次は」
「進路を5時の方角に取って突き進めー!」
「はい!」
「本当にゼフィルスって、地図も見てないのによく階層門の場所を覚えているわね」
「本当にこっちの方角に階層門があるから不思議よね」
「勇者だからな!!」
「あ、3層の階層門発見しました!」
「よし! そのまま突入だ!」
「はい!」
〈イブキ〉が速い! 〈イブキ〉が速いぞ!
4台全てで足並みを揃えているはずなのに1階層につき1分から4分くらいで踏破している。
10層に着いた時点で出発してから30分程度しか経っていなかったんだ。明らかに以前よりも速度が増している! ってそりゃそうだ、去年よりもステータスは上がっているはずだしな!
「10層階層門発見! その前に〈雪角大軍ラビット〉も発見です!」
「よし、一旦止まるぞ! 休憩だ! その間に誰かボス戦やりたい人! はーい!」
「聞いておいて自分で手を上げてますの!」
「休憩がボス戦ってどういうこと!?」
おっと、サーシャとカグヤのツッコミが戻ったぞ!
ありがたやありがたや。
10層守護型ボスは中級上位級。
まあ、俺たちに敵うわけ無し。
ということで片手間に攻略してしまおうと提案してみた!
「ふふん! それなら私が蹴散らしてあげるわ!」
「お、ラナ、やるか?」
「一度守護型に遠距離攻撃が効くのか試してみたかったのよ! ――ノエル、エールとコール頂戴!」
「いいよ~! 『リ・エール』! 『リズム・メロディ・ハーモニィ』! 『ハイテンションエール』!」
「『大聖光の十宝剣』!」
「『アンコール』いくよ~♪ 『リ・エール』!」
「『大聖光の十宝剣』! 『大聖光の十宝剣』!」
「キュ~~~!?」
「あ、やば! 『プレイア・ゴッドブレス』!」
片手間って言ったのに、むっちゃ全力やん!
ノエルとラナが本気でやっちゃダメだって!
「ボ、ボスが光になっちゃいました!」
「休憩が30秒で終わったですの!」
「い、いくら何でも早すぎだよ!?」
「ハ、ハンナちゃん? 私の勘違いかな? ラナ殿下ってヒーラー、だよね?」
「えっと。〈エデン〉のヒーラーってみんなこんな感じですよ?」
「なんで!?」
ラナが3発目の『大聖光の十宝剣』を叩き込むと、〈雪角大軍ラビット〉が消えてしまう。
戦闘時間、僅か30秒!? はて、果たして今のは戦闘だったのだろうか?
ラクリッテの報告にサーシャとカグヤも盛大にツッコんでたよ。
あとミリアス先輩もグッド。新鮮な反応ありがとうございます!!
「宝箱は、もちろん〈金箱〉よね!」
「セーフ!」
ギリ祝福が間に合ったようで〈金箱〉ドロップ!
ラナがオープンして、中に入っていたのはとあるアイテムだった。
「これは〈アウトクリアゴーグル〉というアイテムのようですね」
「むむむ!」
エステルがすぐに『解析』したそれに思わずむむむした。
こ、これは視界不良の中を、よく見えるようにするアイテム!
例えばホワイトアウトにも有効。それだけでも有能というのが分かるが、これ、実は湯気にも対応していることが分かっている。アウト!
と、とんでもないアイテムをゲットしてしまった!
〈ダン活〉の混浴は水着着用じゃなくちゃ入れなかったので、対象年齢12歳以上という基準は保たれていたが、ここはリアル。
あれ? これ相当マズいアイテムなのでは?
「これは、吹雪や真っ白な霧の中でも見通しがよくなるアイテムじゃないの!」
「上級ダンジョンの環境にも使えますかね?」
「〈空島ダン〉の雲の中も見通せたら上級上位ダンジョンでも使えるということになるわね」
あ、みんな真面目な様子。
俺もそれに合わせて「よ、よし、今度実験してみよう!」と言っておいたよ。
慰安旅行中は仕舞っちゃおうね。
「よっしそれじゃあ転移陣に登録したらすぐいくぞ! 11層突入だ!」
「はい、〈イブキ〉準備完了です! いつでもいけます!」
「もう休憩終了!?」
ショートカット転移陣に登録していないメンバーを登録したら即出発。
こうして俺たちは、温泉街を出発して約50分ほどで目的地の〈湖温の秘湯〉へ到着したのだった。中々のタイムだ。
「「「「わぁ!!」」」」
「凄いですの!」
「これが秘湯、自然が作りあげた温泉!」
「その通りだ! 山脈と山脈の間に挟まれた谷がまるごと温泉になった湖型の温泉、まさに秘湯。――〈湖温の秘湯〉だ!」
「「「「おお~!」」」」
1年生ズの感嘆の声が素晴らしい。
さっきの10層の時に1年生ズの多いアイギス号に乗り換えておいて良かったぜ!
「よし、アイギス、去年と同じように――着水だ!」
「はい!」
山脈の上から湖を眺めたのち、ビュンと一気に温泉に向かって全速前進。
山から湖の真上に飛び出したアイギス号は落下、という程の速度も出ず、ゆっくりと高度を下げて、ふわりと温泉の上へと浮く。
実際着水はしていないが、良い演出だなぁ。
「「「おお~!」」」
1年生ズも今の演出を気に入ってくれたみたいだ。
次々エステル号、ロゼッタ号、アルテ号も降りてきて温泉の上にタラップを下げて準備完了だ。
「ほ、本当に〈イブキ〉から直接温泉に入るのですのね!」
「これは新しいですねお嬢様」
「こうしてはいられませんわ! 一番乗りですわー!」
「ちょ、お嬢様、はしたないですよ!?」
おっとここでいきなりノーアがバサッと脱いだ!?
まさに一瞬の出来事。しかし、中に水着を着ていたためにセーフ!?
すっごい揺れてたが!?
そういえばノーアは大の温泉好きだったな!
「す、凄かったね」
「アリスもいくー! 水着着てきたもん!」
「うえ!? ちょ、ここで脱いじゃダメだってアリス!?」
1年生のリーダー格でもあるノーアがそんなことをすれば真似する子も現れるわけで。
キキョウはノーアのぶるんぶるん震えていた一部に目を丸くし、アリスはスポポーンと脱いで水着になっていた。中に着ていたようでセーフ。
「ゼ、ゼフィルスさんは見てはいけません。船室へどうぞ!」
「クワァ!」
「え!? 普通は女子が着替えのために船室を使うもんじゃね?」
なぜか肩に小さいゼニスを乗せたアイギスに船室に案内されて着替えることに。
これ普通、男女逆じゃない!? なお、ここにはぶっ倒れたヴァンも運びこまれていた。
ヴァ、ヴァーーーーーーン!?
ちょお!? なに幸せそうな顔で倒れてんだヴァン! 本番はここからだぞ!




