#173 新メンバーを迎えよう。最初はルルから。
レビューいただきました! 放蕩Jr様ありがとうございます!
「今日からこちらのギルド〈エデン〉でお世話になるルルです。よろしくです〈幸猫様〉」
「よーしルル。〈幸猫様〉への挨拶は済んだな? じゃあ今度は〈エデン〉のメンバーに挨拶しようか?」
Eランクギルド昇格を果たした翌日、俺は早速内定が決まっていたメンバー候補を呼び出していた。
真っ先にやってきたのは「人種」カテゴリー「子爵」、〈幼子化〉という実に素晴らしい〈シンボル〉をその身に宿す少女、ルルだ。
見た目は6歳~7歳ほどにしか見えないので、少女というより幼女と言った方が合っているのかもしれない。
ルルはこの部屋に入ってまず俺とシエラに挨拶、をしようしたところ、そのままスィーと何かに引かれるようにして神棚まで移動し、〈幸猫様〉へ挨拶していた。
さすが、ぬいぐるみ愛好家を自称するだけはある。
俺に呼ばれたルルが両手を後方に伸ばすようにしたとてとて走りでやってきた。
何その走り方。アニメでしか見た事が無い走り方がまさか実在するのか! すげぇ。
「ごめんです。〈幸猫様〉に呼ばれたような気がしたのです」
「多分それは気のせいだぞ?」
真っ先に〈幸猫様〉に向かった事をそんな風に言い訳するルル。
しかし、〈幸猫様〉にしっかり挨拶をするところは好感が持てるな。あれ? そういえば俺、今日〈幸猫様〉に挨拶したっけ? やばい、なぜだか今すぐ俺も〈幸猫様〉に挨拶したい衝動に駆られた。こ、コレが〈幸猫様〉に呼ばれるという事なのか!?
「ゼフィルスどこへ行こうとしているのよ、戻ってきなさい。ルルも、挨拶くらいちゃんとなさい」
「「はーい」」
シエラに窘められてフラッと〈幸猫様〉の方へ向かおうとする身体を元に戻す。
ルルとは仲良くなれそうな気がした。
サブマスターを任せたシエラはいつもよりもキリッとしている。なんか格好よくなってないか?
シエラ監督の下、ルルが真剣な様子を見せ、俺に向き直った。
「改めて、ゼフィルスお兄様。ギルド〈エデン〉の加入を認めてくれて感謝します!」
「おう。これからビシバシ鍛えるから、頑張ってくれよ」
「あい!」
ルルが手をビシッとおでこにくっつける敬礼のポーズで元気よく返した。
「はう、可愛いです…」
若干一名、ルルの挙動にときめいたようだ。
後ろに居るため見えないが、目をハートマークにしているに違いない。
「でも、名高き〈エデン〉に所属できるとは夢のようです。シエラから声を掛けてもらった時は冗談かと思ったくらいでした」
ルルがキラキラした視線で俺たちを見る。まるで有名人でも見るかのような尊敬の視線だ。そんなに純粋な目で見られたら悪い心を持った者なら浄化されるに違いない。俺は心が綺麗なので問題ないな!(ほ、本当か?)
しかし、どうも風の噂では、俺たちのギルド〈エデン〉は雲の上の存在みたいな風潮があるらしい。
所属するには、とんでもなく厳密な審査にかけられ、その狭き難関から選ばれた選りすぐりだけが、ギルド〈エデン〉に所属出来るとかなんとか、そんな事を言われているらしいのだ。
厳密な審査も狭き難関も、あまり身に覚えが無いんだが? あの面接がそうだとでも言うのだろうか? でも俺はまだ一度も不採用にした事なんて無いんだけど…。厳密な審査とはいったい?
まあ、敢えて訂正する事でも無い。
売り込みなんかをかけられてもほとんど断るだろうからな。
むしろ、そういう人たちを抑えられるのでこの噂はそのままの方が良いまである。
そっとしておこう。
「さて、では早速職業の取得を始めようか。【ロリータヒーロー】で良かったよな?」
「あい! 私でも成れますか!」
「もちろんだ。俺が今日中に、いや2時間以内に就かせてやる!」
何しろあの【ロリータヒーロー】だ。早く戦力に加えたい、なる早で行くぜ!
【ロリータヒーロー】。
デバフアタッカーがメインではあるが、タンク的なことも出来るオールマイティな職業だ。パーティの中心となる多くのスキル群を持ち、また単独での戦闘力が非常に高い。
また『小回り』系と呼ばれる〈スキル〉群を使用し素早い攻撃も可能とする。『小回り』は普通なら2回攻撃出来るタイミングで3回の攻撃を可能とする優秀なスキルで、クールタイムも比較的短く、連続攻撃に特化した特性を持っている。
しかし、それだけでは最強職業ランキング第4位には輝けない。
【ロリータヒーロー】が4位に耀いた理由は愛くるしくも燃えるその見た目、というのもあるが、最も大きいのは〈ユニークスキル〉のMPの回復能力である。
【ロリータヒーロー】は、何かというとMPが回復する。
攻撃を躱せば回復。ダメージを受ければ回復。状態異常になれば回復。HPが半分以下になれば大回復。HPが危険域に突入すれば戦闘中一度だけMP0、クールタイム0で〈スキル〉が使える等など、とにかくMPが全然減らない職業なのだ。
そして例の連続攻撃である。
もうなんというか、ずっと遊んでいるためだけにあるような職業だな。
ザコモンスターの群れの中に突入してガンガン無双するような構成だ。まあ回復は覚えないので別で用意する必要はあるが。
そりゃあランキング上位に食い込んでくる。何より使っていて凄く楽しい職業だ。
俺も周回する度に【ロリータヒーロー】を使っていたが、全然飽きなかったくらい戦闘が楽しい。
だからこそルルには期待している。
〈ダン活〉でこれほど楽しい職業は他に無い。(異論は認める)
リアル〈ダン活〉でもきっと楽しい戦闘を繰り広げてくれる。
俺はそれを、間近で見たいんだ。
ということで有言実行。予定よりだいぶ早く42分でルルは【ロリータヒーロー】の条件を満たした。しかし、そのせいでルルは目を回してしまったのだった。
少し熱を入れすぎたかな?