#1595 レアイベントには壁画は付きもの!艦内侵入!
「ほんとに扉があったデース!?」
「さっき〈竜の箱庭〉で確認した通りだったな!」
実はこの〈戦艦〉、なぜか内部に侵入可能なのだ。モンスターの中に入れるとか誰が予想したよ! いや戦艦は中に入るものだけどさ!
そして中には、お宝やレアイベントには欠かせない壁画などが存在しているのである。
ランダムエンカウントだし、壁画とか無いだろうと思ったのにそういうこと!? と当時はプレイヤーを驚かせたものだ。
まさかの壁画を持ち運ぶレアイベントボスの登場である。
「『天罰』! 教官!」
「フィナ、行けるか?」
「はい。すぐにいきましょう、あそこ、私たちを狙っています!」
「よし、突入だ!」
ここで上空からフィナが合流。
あまりの速度で落ちてきたために弾幕を張るガトリングがフィナに追いつけていなかったが、すぐにこちらに狙いを定めんと銃口を向けてくる。
撃たれる前にダッシュ!
「そういえばこの扉って開くのデース!? 罠は!?」
「押し通る!」
「それなら任せてください――『天盾飛翔突撃』!」
今更扉が開くのかというのと、罠の有無を気にするパメラ。そういえばそこ気にするところだったね。
普通に罠無しで開くので問題ないよ!
まあ、そんなこと言えないのでタンクも出来るフィナがシールドバッシュ系の上位ツリーで突撃。
扉にガツンとぶち当たる。
なお、〈戦艦〉のHPが減るだけで扉は別に吹き飛ぶことも開くことも無かった模様。
「? おかしいですね?」
「フィナが珍しくボケを!?」
首を捻るフィナ。
あれ? でもいつもボケているような気もする。
「良いから開けるデース! 銃どころか砲がこっちに向いているデース!」
「あ、開きました」
「パメラ、中へ!」
「撃ってきたデース!? 『忍法・空蝉』!」
フィナはこんな時でも冷静です!
普通に開けられたので中に入る。
艦内は、普通のホテルの廊下みたいな感じだった。
「しまったデース! お宝レーダー、もといニーコを忘れたデース!?」
「なーに安心しろ! 俺の『直感』が向こうに宝箱がありそうと教えてくれている!」
「さすがは教官の便利な『直感』さんです」
パメラがニーコのことをお宝レーダーと認識していたのがちょっと可笑しい。
だが、安心してほしい。俺なら宝のありかとかも全部分かるからな! もちろん『直感』さんの力というのは方便です!
「こっちだ!」
「ほわ!? 前方からモンスターデース! ここ、モンスターの内部デスよね!?」
「ここは半分レアイベント部屋と考えた方がいいな! パメラ、分身だ!」
「『必殺忍法・分身の術』! 『くノ一流・一雨一度』!」
「パメラ、優秀! 俺もやるぜ『フルライトニング・スプライト』!」
「それ花火デース!? ここ室内デース!」
ドカーン、俺の〈五ツリ〉が後方から俺たちを追い詰めようとしてきた眷属モンスターを吹っ飛ばす。
しかし、壁など、船室がぶっ壊れた形跡は無い。全てはHPが肩代わりしてくれるからな! 〈戦艦〉が破損することは無い! つまり、どんなスキルでも周りの破損などを気にせず撃ち放題ということだ。
「案ずるなパメラ! 見ろ、全てHPが肩代わりしてくれて船には欠片も破壊痕が無いぞ!」
「ここは〈イブキ〉みたいなものですね」
「ええー!? 衝撃的過ぎるデース!?」
俺の説明にフィナは納得したようだが、もちろんパメラは素っ頓狂な声を上げる。
衝撃なだけに? 誰が上手いこと言えと!
直後、ドカーンドカーンと派手な音が聞こえてくる。
「外ではラナたちも派手に攻撃しまくっているようだな! 〈戦艦〉が消える前に早いところ目的を果たさないと! こっちだ!」
「了解です!」
「このコンビ、全くもって冷静デース!?」
「『サンダーボルト』!」
道中登場する眷属モンスターは、ちょっと海賊風のゴーレム。ってゴーレムじゃん!
侵略される空島もゴーレムロボなのに、侵略する側もゴーレムってどういうこと!?
まあ〈雷属性〉に弱いのでオッケー。
〈四ツリ〉で一撃で粉砕し、ぶった切って道を空けさせて目的の扉を開ける。
「またモンスターを粉砕して……、こういう潜入って『忍法・隠遁進行の術』とか使ってこっそりやるものだと思っていたデース!」
パメラの忍びとしての常識が揺らいでしまったような気がしたが、きっと気のせいだろう。
そして俺たちは船の最奥にある大きな扉へとたどり着く。
「なんか雰囲気があるところですね――艦長室? と書いてあります」
「そこは操舵室じゃないんだ!」
表札にはバッチリと艦長室と書かれていた。
レアイベントボスの内部に艦長室とはこれ如何に?
まったく、謎深まりすぎるボスなんだぜ。いったい中に誰が居ると言うんだ!
俺たちは即で扉を開けて内部に潜入する。
そこで待ち受けていたものは――海賊風の格好をしたスケルトンで。
「こ、こいつは〈幽霊船長〉の進化系! 〈幽霊艦長〉だ!」
「〈幽霊艦長〉ですか!」
「ゼフィルスさん、知ってるのデース!?」
あ、しまった。いや、看破系のアイテムで一瞬で看破したことにしよう。
勢いで誤魔化すんだ!
「フッフッフ、誰カネ、チミタチハ――」
「撃破だーーーー!! 『テンペストセイバー』! 『ライトニングバニッシュ』! 『フィニッシュ・セイバー』!」
「オオオオオオ――――!?」
「続きます! 『ソニックエルソード』! 『ミカエルラッシュ』! 『グローリーバニッシュ』!」
「ええ!? 今このスケルトン喋ってたのに、ええい続くデース! 『くノ一流・空梅雨』! 『くノ一流・氷雨』! からの――『忍法・炎・爆裂丸』デース!」
「グブハーーーー!?!?!?」
よし、艦長撃破!!!!
元々ソロでも倒せる〈幽霊船長〉の進化系、中ボスみたいなものだったので楽勝だったぜ!
3人でボッコボコにして強制的に光に還すと、ここでとんでも現象が起こった。
まるで試練をクリアしたRPGのように、エフェクトの海からお宝が湧いてきたのである。
しかもその数―――なんと6個。
「ろ、ろ、ろ!? 6個キターーーーー!!」
「お宝、ありました!」
「お宝が凄い数出てきたのデース!?」
実はここのレアイベントボス内の宝箱はランダム。
〈戦艦〉の内部の眷属である〈幽霊艦長〉を倒すと、宝箱がドロップする仕掛けなんだ。
最大で6個まで手に入るここのお宝で最大の数ゲット!?
しかも全部〈金箱〉だと!?
す、素晴らしい!! これは間違いなく〈幸猫様〉たちの恩恵に違いない!!
「〈幸猫様〉たちへ略式のお祈りを許可する! 軽く祈って開けるんだ!」
「あ、こんな時でもちょっとはお祈りするんデス!?」
「サー! 〈幸猫様ファミリーズ〉に感謝」
もちろんだパメラ。略式は許可。でも完全省略は不許可である。
俺はどんなときでも〈金箱〉の前では〈幸猫様〉への感謝を忘れない!
「中身は後で纏めて確認するので、とりあえず〈空間収納鞄〉に入れておきます」
「許可する! パメラはこっちの〈金箱〉を」
「さ、〈幸猫様ファミリーズ〉に感謝デース!」
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉ありがとうございます!」
簡易的なお祈りで〈金箱〉を開けていき、中身の確認を後回しにして回収していく。
「ゼフィルスさん、壁画を発見したデース!」
「ナイスパメラ! 『絵解き』! パシャパシャ!」
ついでに壁画もパシャる。
今回の壁画は、ノーカテゴリー系だな。しかも1箇所どころじゃ無く、艦内には計7箇所も壁画があるので、全部パシャる。職業数は、多分50を軽く超える程ヒントがあったよ。【賊職】系の上級職とかも全種類ある。
よし、研究所にも良いお土産が出来たんだぜ。
「! 教官、〈戦艦〉のHPが危険域に」
「ちょ、そこら中の扉が開いたかと思ったら、なんか外が見えるデス!?」
「こいつは、眷属を放ったっぽいな!」
いわゆる怒りモード。でもこのボスは〈戦艦〉なので代わりに眷属を空に放つんだ。
俺たちが倒してきた海賊風ゴーレムは、本来ならこの時に中空にばらまかれるゴーレムで、実は俺たちが破壊しまくっていたのは、出撃を待つ海賊風ゴーレムだったのである。それが、HP危険域と同時に外に放たれたわけだな。
「もう艦内にめぼしいものはなさそうだ。俺たちも脱出するぞ! フィナ、パメラを頼む!」
「任せてください。姉さまで爆撃して上げた運び手の腕前、見せてあげます」
「それ私も投下されるやつじゃないデス!?」
うーむ、エリサがいないとフィナがボケ側に転向しちゃうっぽい! あれ? いつもそうだったっけ?
パメラもツッコミ、ありがとな!
そして、ゴーレムが出撃したと思われる外へ通じる穴から脱出。
見れば、HPが相当危険域に到達してから減っていなかった。
おう。どうやら俺たちが脱出するまで攻撃を控えてくれたらしい。
いや、眷属ゴーレムの迎撃に集中していたのか? おそらく両方だろう。
「『ゼフィルスさん! 状況は!?』」
「リーナ、今脱出した! それじゃあいくぜ! 『フルライトニング・スプライト』!」
最後に打ち上げ花火で締め!
俺たちが脱出したという合図と共にドカンと一発撃ってやった。
パメラは本人がフィナに抱えられて脱出。分身は艦内に残ったようで、『忍法・影分身爆裂丸』を放って艦内がボカンボカン爆発していた。
これが合図となり、いつの間にか『大天使フォーム』になっていたエフィ、『姫騎士覚醒』をして〈イブキ〉に乗っているエステル、そしてウッキウキのラナ、そしてヤケクソ気味のニーコがドカンドカン一斉攻撃を放って――ついに〈戦艦〉のHPがゼロになる。
「! 全員退避! 地上班は建物の中へ急げー!」
「落っこちてきたデース!?」
さっきまで頑なに、それこそフィナの『天落』でもメルトの『十倍キログラビティ』でも落ちなかったのに、ついに墜落。
地面に落っこちてみるとその大きさが分かるな。40メートルはあったかもしれない。
レイドボス並にデカいボスだったんだぜ。
そして墜落した〈戦艦〉が大きなエフェクトをまき散らしながら沈んで消え。
その後には2つの〈金箱〉がドロップしていたのだった。
〈戦艦〉の中から持ってきた〈金箱〉を合わせれば――――8個だ!