#1594 レアイベントボス〈戦艦〉に隠し扉発見?
「――――――!」
「こいつは特殊も特殊、超特殊ボスと見たぜ。おそらくはエステルのような砲撃が主体だ。範囲攻撃の可能性もあるな」
「砲撃が放たれる。それが範囲攻撃ということは、タンクの側にいると危険ですね」
「だからといってタンクとアタッカーが別行動をしていると、アタッカーに向けて砲を撃ってくる可能性もある。その時は逆にタンクの側の方が安心という場合もあるだろう。となると、範囲攻撃を防げるタンクを採用する必要があるな」
「撃ってくるなら接近戦で対抗ですわね。問題は空に居るという点ですが、落とすことは可能でしょうか?」
「飛行部隊の多い3班は確定で入れるとして、9班はどうするか、昨日徘徊型で活躍したばっかりだが……」
どの班を採用するかを話し合う。
3班は――ラナ、エステル、トモヨ、フィナ、エフィ、というメンバーだ。
天使3人に加え、遠距離攻撃がパナイ方がおられる。
確実にレアイベントを見越した班であることが分かるだろう。
これは俺が決めた!
結局3班に加え、4班のメルト、ミサト、シズ、パメラ、シャロンという遠距離&変則的な攻撃が可能なメンバー。
そこに俺たち1班の、俺、カグヤ、サーシャ、ヴァン、ニーコを加えた15人が出撃することが決定する。
3パーティ構成だ!
「やっぱり勇者君と同じ班だとさ、とんでもないボスと戦うのが宿命だよね!?!?」
「安心していいぞニーコ! あれはレアイベントボス、きっと素晴らしいお宝を出してくれるさ! 何しろ、〈金箱〉確定だぞ! ニーコにも期待している」
「いや、それは分かるけどね!? ぼくをこんなガチな戦闘に加えちゃダメでしょ!?」
「新武器が火を噴くな! ニーコにも期待している!(2回目)」
「うがぁ! あのタイミングで新武器が当たったときこうなると思ってたんだ!!」
うむうむ。ニーコも覚悟完了しているようだ。
「1班、3班、4班のみんなは聞いてくれ! これから俺たちも打って出るぞ! まずはシャロンとヴァンで陣地を構築! その間トモヨが攻撃を引きつけておいてくれ!」
「「「おおー!!」」」
タンクと遠距離アタッカーの位置を分けるという案もあった、タンクで引き寄せている間に、側面から魔法攻撃を撃ちまくるという案だ。
しかし、アタッカーに反撃の砲撃が撃たれた場合、防御に難があるということで、なら最初から陣地を作って撃ちまくろう、という結論に至ったのだ。
そう誘導したのは俺だけどな!
「アタッカーは遠距離からどんどん撃ちまくれ! 接近戦をするメンバーは気をつけろよ! メインヒーラーはカグヤが担当、ミサトとラナは回復が追いつかなさそうな時は支えてあげてくれ」
「分かったよ~」
「任せなさい!」
「よし、行くぞ!」
「「「「「おお!!」」」」」
配置に付いて、よーいどん。
一気に建物を出る。
まずはトモヨが『天空飛翔』で空を飛び接近すると、〈空島侵略戦艦・デストロイシップ〉、通称〈戦艦〉が砲撃を撃ってきた。
正面に3門! それがトモヨに狙いを定める。しかし、
「『速飛回り込み』!」
『攻撃予測』で見切り、避けタンクも可能なトモヨは当然そんな砲撃は回避。さらにソニック系にも似た素早い起動で即側面に回り込んでしまう。
「ヘイト稼ぐよ! 『敵対予告』! 『終わりの予告』! 『始まりの予告』!」
「――――!」
「よし作戦開始!」
「はっ! 『第二拠点建造』!」
「『防壁召喚』! 『城門召喚』! 『防壁強化』!」
トモヨにまずは囮になって全攻撃を引きつけてもらい、挑発が入ったところで陣地構築開始。
「いってきます教官! 『天空飛翔』!」
「こんな敵と戦うなんて、ワクワクが止まらない――『天空飛翔』!」
「くれぐれも撃墜されるなよ! 下に地面はないからな!」
そう言ってフィナとエフィが飛び立つのを送りだす。
戦艦はまだこっちの空島へゆっくり進んできてるところ。まずは空島の区域に入ってきていない状態から――攻撃開始である。
「ラナ」
「任せてよね! 『大聖女の祈りは癒しの力』! 『光の刃』! 『大聖光の十宝剣』! 『大聖光の四宝剣』! 『聖光の耀剣』! 『光の刃』!」
ラナは〈白の玉座〉に座ってスタンバイ。
すでに『大加護』系のバフを使っていてじゃんじゃん攻撃を開始した。これが、アタッカーとタンクを別にしなかった最大の理由だな。〈白の玉座〉は移動不可なんだ。
ラナの攻撃は、未だ空島上空に侵入してすら居なかった〈戦艦〉に直撃。
ダメージをどんどん稼いでいく。
「―――――!」
〈戦艦〉は砲撃主体だ。
曲線を描いて落ちてくる、まんま大砲みたいな弾もあれば、滑腔砲のようにどこまでも直線に突き抜けていくような弾もある。
さらに弾幕を張る迎撃用ガトリングも搭載していて、近づいてくるフィナとエフィを迎撃してきていた。ただし、バリア的なものは張られていないので、エフィは嬉々として杖を向けて魔法を打ち込んでいるな。
「『星降りの光線』! なにこれ、楽しい! こんな大きなボス初めて――『エクストリーム・エルフォース』!」
「落とせるか? ――『十倍キログラビティ』!」
「『天落』! ――むう。これは叩き落とすのは無理ですね」
ちなみにメルトの『十倍キログラビティ』やフィナの『天落』はほとんど効いていない。
多少ガクンと落下するが、すぐに高度を回復してくるのだ。さすがは〈戦艦〉。
「〈戦艦〉、トモヨに砲撃を続けてはいますが、同時にフィナやエフィにも迎撃を敢行しています。また未だ進路変更無し。こちらに突き進んでいる模様です!」
近くの建物からシヅキの報告。
なんかこういう報告を聞きながらの戦闘って新鮮!
「もうすぐ攻撃範囲に入ります!」
「撃ち落としてやりましょう」
「おお、シズがむっちゃやる気デース!?」
「パメラも準備しておけよ。俺たちはやるべきことがあるんだからな」
「ド緊張デース!」
銃を構えるシズとちょっと戦慄するパメラ。
ちなみに俺とパメラはまた色々役目がある。これがちょっと楽しみだったりするのだ。
「〈戦艦〉! 空島上空に侵入しました!」
「撃ち落とします――『攪乱』! 『フラッシュ・バン』! 『鋼鉄拘束バインド弾』!」
「状態異常攻撃だな――『ダウンレジスト』! 『スタン』! 『スロウ』! 『ジェイル』! 『コールドスリープ』!」
「私はデバフいっくよー『色欲の鏡』! 『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」
「『氷帝姫の眼差し』ですの!」
まずは実験として状態異常攻撃にデバフの連打。
ボスの傾向として、体内状態異常を無効にしてくるボスは多いが、体外状態異常は効くボスというのはそこそこいる。〈戦艦〉に状態異常が効くのならやりやすくなるという感じだったが、結果は全部不発だ。
まあ、〈戦艦〉に状態異常は効かないよね。
しかし、ミサトとサーシャのデバフはきっちり効いて、〈戦艦〉のHPバーにアイコンが付いたのでオーケー。
「ダメですね。攻撃に移ります――『魔弾』! 『ジャッジメントショット』! 『マルチバースト』! 『デスショット』! 『フェニックスショット』! 『バードデスストライク』!」
「ならばこれはどうだ――『アポカリプス』!」
「〈イブキ〉だってあれくらいの射角であれば狙えるのですよ――『トライ・スラストカノン』! 『インパルススラストキャノン』! 『ホーリースラストバースト』! 『スラストゲイルサイクロン』!」
「デバフが効くというのは朗報ですの! 〈氷属性〉の耐性も下げますの――『あなたは寒さに弱くなる』! 『氷絶極刺砲撃』! 『フリーズドバスター』!」
「『ライトニングバースト』! 『サンダーボルト』! 『フルライトニング・スプライト』!」
「ええい、撃ってやろうじゃないか! 『3連バースト』! 『ミストプレゼンショット』! 『激射』! 『クイックショット』! 『ファーストドロー』!」
「『セット・シールダー・プロミス・モミジ』! 『セット・ヒーラー・プロミス・カンザシ』! 『神使の継快儀式』!」
ダウンもしていないのに一斉攻撃!
メルトの『十倍キログラビティ』に加えフィナの『天落』をぶつけても、高度が少し下がるだけで墜落しないので、途中からメルトも攻撃に参戦。
それで正解だ。〈戦艦〉は『落下防止』のパッシブスキルを持っている。メルトがクラス対抗戦でも使った、あの類いだ。おかげで『十倍キログラビティ』や『天落』を受けても耐えてしまうのである。
カグヤも眷属のカンザシとモミジに指示を出し、カンザシにはトモヨたちの回復をお願いしている。
正直カグヤからだとトモヨたちのHPが遠くて非常に見づらいため、眷属が回復を担っている形だ。
「『破滅の予告』! 『絶対ガブリエル頑強盾』! くぅ、攻撃おっも!」
トモヨもしっかりヘイトを稼ぎ、防御もしているが、何しろレアイベントボスの3ハンディだ。そりゃ攻撃は重いだろう。加えて、さすがに〈戦艦〉も地上に砲撃を撃ってきた。侵略行為を開始したようだ。
「来るよ! ヴァン君!」
「はっ! 防ぎきるであります! 『防御に勝りし壱ノ城』! 『気合いで打ち勝つ弐ノ城』! 『最後の砦の参ノ城』!」
ズシーン、ズシーン、ズシーンと超巨大な城が三つも新たに建つ。
ラクリッテの『夢幻四塔盾』にも似た、〈五ツリ〉の強力な盾城である。
砲撃がガンガン直撃しようが、陣地であるヴァンの第二拠点の城まで届かない。
「反撃だよー! 『反撃大砲一斉射』!」
反対にシャロンが反撃の攻撃スキルを発動し、城に召喚されていた大砲やバリスタを一斉射撃。これは攻撃されている時に使うと威力が大上昇する反撃スキルだ。
もはや〈戦艦〉の攻撃は360度、前後上下左右どこへでも砲撃やガトリングをカマしている状況で、さらにどんどん陣地に近づいてくる。タゲはトモヨなのに、プラスで迎撃と侵略まで同時に行なってくるのがこのボスなのだ。手数が凄まじい。
だが、タゲ以外には割と狙いは適当。島中に砲撃を放ちまくっている。
おかげで陣地から一歩でも出ると、遮蔽物が無い場所では危険な状態だ。
だが、〈戦艦〉の方もこれだけ攻撃を受けているのだからただですむはずもなく、そのHPは半分を切っていた。
よし、そろそろだな。
「行くぞパメラ!」
「この状況で行くのデース!?」
「むしろこの状況だからこそだろ! 転移の準備は十分か!?」
「い、いってやるデース!」
「パメラ、武運を祈ります」
「ちゃんと帰ってきなさいよね!」
「が、頑張るデース!」
「よし、いくぜパメラ――『英勇転移』!」
「いってくるデース!」
それは転移スキル。
十分に距離が近づくまで、転移の距離の関係でここまで待っていたのだが、十分に引きつけられたのでレッツゴー。
そうして俺とパメラは、無事に〈戦艦〉の甲板にいた。
そして〈戦艦〉には――なぜか内部へ通じる扉があったのだった。