#1593 徘徊型じゃない移動型のレアイベントボス!?
「きっと神様はぼくのことを見てないと思うんだよ」
「なんてことを言うんだ!? 〈幸猫様〉はニーコのことが大好きさ! 間違いない!」
「いや、ぼくが言ったのは〈幸猫様〉じゃないんだが、勇者君の中では〈幸猫様〉が神なんだね」
無論さ。
〈幸猫様ファミリーズ〉は神様だ!(断言)
きっとニーコが宝箱にひゃっはーしていたものだから、もっと宝箱をゲットしやすいよう二丁拳銃をプレゼントしてくれたに違いない。
しかしニーコは突然悟ったような顔をしてどうしたのだろうか? 俺が正気に戻してあげなければ。
「ねぇ勇者君、つかぬことを聞くんだが」
「お、どうした?」
「うん。徘徊型ボスから〈金箱〉が2個以上ドロップしてさ、そこからさらに同じものがドロップする確率って、どのくらいあるんだろうね?」
「少なくとも、俺の記憶ではほぼ無かったな!」
「だよね。うん。ぼくも記憶にないよ。――じゃあこの〈真銃・デザートグリフォン〉が二丁もキタ理由って、なんだと思う?」
「そんなこと決まってる! 〈幸猫様〉もニーコにもっとボス戦をって言ってるんだよ!」
「…………おかしいな、ぼくも同じ結論にたどり着いているんだよね……」
そう言って再び遠い目になるニーコ。
きっと、まさに自分におあつらえ向きの激レアツモが命中して感動しているんだろう。
しばらく浸らせて上げた方がいいかもしれないな。
「ゼフィルス、ニーコはしばらくそっとしておきましょう?」
「そっと?」
シエラから助言のようなものを頂戴したのだが、なぜかシエラがそっとしておくという表現をしているのが少し気になった。浸らせる、じゃないの?(違います)
ということで73層も無事突破。ニーコを〈イブキ〉に乗せて運び、74層に到着。
しばらく兵隊ゴーレムロボモンスターを蹴散らしながら進むと、建物の転移陣や橋の数が判明する。
「空島の数はここを抜いて10個、転移陣は3つ、橋は4つ。つまり、残り3つの空島には宝箱が大量に眠っているってことじゃねぇかよ!」
「何をもたもたしているんだい勇者君! すぐに向かおうじゃないか!」
ニーコ、即復活。
早いな!?
さすがはニーコ、特殊移動でしかいけないエリアが3つもあると聞いて意識が帰ってきたようだ。おかえり!
結局このエリアでは、〈金箱〉14個を含む、40個以上の宝箱をゲットして帰還したのだった。
いやぁ、どんどんお土産が出来ちゃうな~。
持ち寄ったお宝を前にラナやシエラたちも集まって来て盛り上がる。
「はーっはっはっは! 大量大量! いやぁ、この装備と装備レシピの数。素晴らしいものがあるんだぜ!」
「おかげでアルルやマリー先輩、タネテは結構キツそうだけどね」
「うーむ、アルルの助手的な人をそろそろ増やす必要があるか?」
「逆にマリー先輩はそろそろ次のギルドマスターを指名してもらいたいのだけど」
「……!! それは困る! マリー先輩にはずっと学園に居てほしいぞ!」
「…………ゼフィルスがこんなことを言うなんて、タバサ先生の時も無かったのに。やっぱりマリー先輩が……」
!? なぜか『直感』さんが囁く!
え? それ以上はいけない? どういうことだ?
だが、マリー先輩とお別れは耐えがたい。
何か手を打つべきなのかもしれないな。
翌日。
今日は1月8日、上級上位ダンジョン攻略の最終日だ!
「明日からは〈秘境ダン〉に行くと周知してあるので、今日中にこの〈空島ダン〉を攻略しなければならない!」
「別に今日中じゃなくても大丈夫なんじゃないかな??」
「でももう77層だもの、80層に到着したら、また1発突破しそうなのよね」
うむ。昨日はシエラの言う通り、77層のお宝を軒並みゲットしてから帰ったのだ。
残り3層だな! 80層に到着すればこっちのもんだ!
そして今日も77層の宝箱たちの間へと転移する。復活していた宝箱を回収だ!
だが、復活していた数は1割にも満たない。
「しかし、道中の宝箱は1日経ってもあまり復活しないというのは寂しいものだね」
「全部の宝箱が復活していたら毎日でも通うのにな~」
そんなことをニーコと話してうんうん頷き合う。
完全復活するには1ヶ月程度は必要なのだ。
「息ぴったりね、あなたたち」
そんな俺たちのことをシエラはジト目で見つめてくれるのだ。ひゃっほー!
そうして俺たちは78層、79層でもお宝をゲットしつつ順調に進み、このまま最奥ボスまで行くかというところで――それは起きた。
「? この反応は?」
「どうしたカイリ?」
カイリの『危険感知』に反応あり。
それを聞いたリーナが即で〈竜の箱庭〉をチェックし始める。すると。
「これは! 何かおかしな反応が外にあります。これは徘徊型じゃありませんわ!」
「! 俺の『直感』にもビビッと来た! 臨戦態勢を呼びかけてくれ! この感覚は――レアイベントボスだ!」
「「レアイベントボス!?」」
なんと、80層を目前とした79層で、突如レアイベントボスの気配が現れたのである。
実はこの〈空島ダン〉のレアイベントボスは、ランダム発生型。
今までのように、特定の場所ではなく、突如としてプレイヤーたちの前に現れる、どの階層に現れるか分からない徘徊型に近い性質を持っているボスなのである。
俺は急ぎリーナに言って、全員に集まるように指示。『直感』さんは無反応だったけどビビッと来たことにして臨戦態勢を促す。
徘徊型戦同様に全員建物内に避難すると共に集合を掛け、ボス戦をする代表チームを定める必要がある。
「ゼフィルス。レアイベントボスはどこ?」
「シエラ! これから状況を説明しようと思っていたところだ。――みんな集まったな。徘徊型とも違う新たなボスの影をリーナたちが掴んだ! 場所はこの場所と3班の担当空島の間の空間だ!」
「空島の外ってこと!?」
「空中に出現したんですの!?」
全員でリーナが出した〈竜の箱庭〉を見ると、何もない中空に何やら亀裂のようなものが走っているのが確認出来た。
「なにこれ!?」
「次元を破って出てこようとでもいうの?」
「エフィの表現は結構的を射ているかもな」
亀裂はどんどん広がっていき、ついにその中心からなにかがぬんっとゆっくりした速度で出てきたのである。
「これ、船? というか〈イブキ〉!?」
「いや、〈イブキ〉に近いが、どちらかというと戦艦だな」
「戦艦!?」
そう、なんと亀裂から出てきたのは宇宙に出撃しそうな巨大戦艦だったのだ。
これはまさにワープ。
こいつがレアイベントボス。
その名も――〈空島侵略戦艦・デストロイシップ〉である。
この建物も、空島の妙な不具合システムもみな、こいつからの侵略を防ぐために設けられたとかいう設定だったな。
そりゃ空島にこんなにお宝があれば侵略もしますよ!
だが残念だったな。お宝は全部俺たちがいただいた後だ!
「ねぇ、なんだかこの船、私たちを目指してきてない?」
「完全にこの空島へ真っ直ぐ来てますね。私たちに狙いを定めているようです」
シエラとエステルの言うとおり、〈竜の箱庭〉に映る戦艦は真っ直ぐ俺たちがいる島を目指してきていた。
……まあ、お宝をお先に奪った俺たちに向かってくるよね。うんうん。
よし、迎撃しよう! こいつが積んでいるお宝も俺たちのものだ!




