#1578 上級上位レアイベントボスの〈金箱〉回だー!
レアイベントボスを倒せば――〈金箱〉確定だ!
エフェクトが晴れたそこには、なんと2つの〈金箱〉が鎮座していたのだった。
「〈金箱〉がふたっつ!!!! ありがとうございます〈幸猫様〉!!」
「ばんざーいなのです」
「おめでとうございます教官」
「わーい、ってフィナちゃん、ちょっとご主人様に近いよ!?」
「フィナ?」
「おっと、いけません。教官。ハイタッチです」
「もちろんだフィナ! ハイターーッチ!!」
「おおう。さすがのフィナちゃんでもシエラちゃんには敵わないか……ってフィナちゃんズルい! 私もハイタッチよご主人様!」
「ルルもタッチなのです!」
「はーっはっはっは!!」
「ゼフィルス殿?」
〈金箱〉ドロップで幼女たちに囲まれる俺。
これが〈金箱〉ドロップの魔力!?
シェリアのうらやまけしからん、みたいな視線が突き刺さっている気がしたが、シエラのジト目の方が強力なのでそっちに気を取られてしまうのだ。
ひゃっほー!
「上級上位ダンジョンのレアイベントボス……倒しちまったぜ」
「うわー、ゼフィルス君の周り何あれ!? 何あれ!? 羨ましい! 私も参加していいのかな!?」
「うーん、強かった。大満足すぎる」
「ゼフィルス先輩~おめでとうございま~す!」
「マシロンいった!? 怖い物知らずなマシロンに私は戦慄を隠せないよ! 私もいく!」
おっとマシロとシヅキも来た!
ゼルレカも来い、エフィも来い来い。
みんなとハイタッチを交わしていく。
すると、扉の向こうからギルドメンバーが続々と入ってきた。
「ゼフィルス、見てたわよ! 凄いじゃないの! ちょっとボスが意味不明すぎてドキドキしたけど、私はゼフィルスが勝つって思っていたわ!」
「ラナ様、そこは『信じていた』の方が心象が良いかと(こっそり)」
「信じていたわ!!」
「わはははははは!」
ラナたちからも賞賛の言葉が次々と贈られてきて俺はとても気分がよくなった。
エリアボスとは違い、レアイベントボスは強かった。それはそれは強かったからな!
あんなにヒーラーを初めとした後衛を攻めてくるとか、本当に一歩間違えばヒーラーがやられて全滅してもおかしくはなかった。
まあ、その場合は俺が復活させてなんとかしただろうけどな。
最後の〈融合騎士〉形態もそれはそれは強いんだ。タンクとか普通に正面からやられることすらあるレベルで。
ただ変身中が攻撃し放題だからなぁ。
〈ダン活〉ではHPバーが3本ある最奥ボスの固有スキル『形態変化』と、人もモンスターも使える『変身』は別扱いで、『変身』スキル中は無敵にならないんだ。
『変身』中無敵だったら、俺はルルや天使メンバーにもっと『変身』を使わせてる。
『変身』スキルは、変身後が並のバフじゃ歯が立たないくらい超パワーアップするからこそ、バランスを取って変身中は無防備という仕様なんだ。チャージと言えば想像しやすいだろうか?
最奥ボスは攻略者の証が手に入るか否かの大一番だからだろう。他のボスには無い超強力なスキルとして形態変化中は無敵状態という仕様になっている。
『変身』は「強化」カテゴリーだが、『形態変化』は「強化」じゃなかったはずだしな。
「さあ~、盛り上がってきたところで〈金箱〉を開けるぞ!」
「待ってたわ!」
「いえ、盛り上がっているときに開けない方が良いんじゃないかしら。特にあなたは」
ハイテンションのゲージがマックスのまま、俺は〈金箱〉開ける宣言をする!
このまま〈金箱〉を開ければきっとハイテンションゲージを突破してしまうだろうが、些細なことだろう。
〈金箱〉はテンションの赴くままに開けるに限る!
ちなみに話し合った結果、俺とマシロで開けることに決まった。
ルルやエリサが先輩風吹かせた影響が強いだろう。1年生に開けさせてあげるということになったのだ。
え? 俺? いや、俺はギルドマスターだからな!
「ということで、俺はこれだ!」
「私はこれですね!」
「くぅ。マシロン、羨ましいわよ!」
シヅキが前のめりでマシロを羨ましがる。
そんなに〈金箱〉を開けてみたかったのか。今度はシヅキと開けてみるか!
「それでは、まずはギルドマスターの俺からオープンしたいと思います!」
「いいぞー、とちょっとノリよく乗ってみたり」
そう宣言するとエフィがクール顔のまま乗ってくれた、ちょっと嬉しい。
お祈り開始!
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉いつもありがとうございます! 〈金箱〉2つもありがとうございます! 後でいっぱいお供え物しますね! なので良いものをお願いいたします!」
「毎回思うんだが、こんなお祈り? でいいのか?」
「いいんだよ~」
「ゼフィルス先輩はこれでいいのを当ててきたから、いいんじゃないかな?」
俺のお祈りにゼルレカがやや困惑した声で隣のアリスとキキョウに聞くが、結果はこの通りだ。
俺のお祈りに死角無し! 届けこのお祈り! そして宝箱に恩恵を!
いざ!!
パカリと宝箱を開ける。
レアイベントボスのドロップは非常に高い性能を持っている。
特殊なボスなので一概に格や等級がどうとかは言えないが、まずハズレは無い。
〈上級転職チケット〉を除けば大当たりしかないと言えるだろう。
そして俺が開けた宝箱にも、大当たりが入っていた!
「こいつは、レシピだな! ――エステル!」
「はい。『解読』!」
エステルの名を呼べばそれだけで阿吽の呼吸だ。
即で〈幼若竜〉を使ってくれて、レシピが読めるようになる。
「おお、おおお! こいつは凄いぞ! 〈特装騎士の盾〉レシピだ!」
「盾レシピ! シエラがパワーアップするの!?」
即食いついたのがラナ。
すぐ近くに居たしな!
そして名前の挙がったシエラが少しそわそわしながらレシピを眺めてくる。
なんて珍しい光景!
〈竜武器〉シリーズには、盾の項目がなかったからな。
ちゃんと小盾、大盾、両手盾全て作製できるぞ!
もちろん俺は詳細を言葉にして告げるのだ。
「今回のボスは騎士型だったからな。そうじゃないかとは思ったが、やっぱり【騎士】にぴったりな盾がドロップしたみたいだ。もちろん【騎士】系だけが装備するものではなく幅広く装備できるぞ」
「ゼフィルス君素敵!」
「じゃあサチっちもパワーアップするんだ!」
「防具、武器と来て、盾まで。あとはアクセが揃えば完璧だよ!」
サチ、エミ、ユウカが目を輝かせて俺の言葉に感想を寄せてくる。
先程の〈分身騎士〉はマジ強固な盾を持っていたからな。
その盾となるとパナイ。まずレシピに乗っている数字だけで半端ないものがある。
盾持ちのみんなが、目を輝かせているじゃないか!
これは毎日狩って素材を集めるしかない!
こいつは大当たりだぞ!!!!
だが待て、まだ早い、まだマシロの〈金箱〉が残っているのだ。まだ大はしゃぎするときじゃない。
「よ、よーし、マシロ。次は君の番だ」
「はい! 頑張ってお祈りします! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉、よろしくお願いいたします」
「お祈りを頑張る。不思議な光景」
「マシロンは〈エデン〉に染まるのが早すぎる気がするんだよ」
マシロがまるで聖女のように神々しくも可憐な祈りで両手を組む。
装備も相まって、本当に聖女、いや、聖女猫天使みたいだ。見ろ、あまりの可愛さにシェリアがやられかけてる。
これは〈幸猫様〉方もオマケをしてあげざるを得まい。
祈りが終わればパカッと開くマシロ。
結構思い切りがいいのがマシロのいいところだ。
そして中から出てきたのは――腕輪。
盾と剣と槍の意匠が込められた、白銀に輝く腕輪だった。これは!?
即エステルに『解析』してもらう。
「『解析』! 〈分眷列強の腕輪〉と出ました!」
「列強なんて、ずいぶん贅沢な名前ね!? そんなに強いの!?」
「は、はい。これは凄いですね。スキルは1つ。『分身・眷属大強化LV10』で、効果は文字通り分身や眷属の類いを強化し、そう簡単には消えず、攻撃力などのステータスを相当上昇すると書かれています」
「分身と眷属!?」
少しざわめくメンバーたち。
つまりこれは、あの〈分身騎士〉の強力な分身を操る行為を装備化したものだ。
まさに〈分身騎士〉らしいとも言える。
そして分身と言えば真っ先に思い浮かべるのはパメラだろう。ユニークスキルあるし。
「分身や眷属、そんないないわよね?」
「召喚体が眷属扱いなら、私の『吸魔召喚』も該当するかな?」
「私の大精霊は、使役はしていますが眷属化は、どうなのでしょう? お願いしているような立場のはずなのですが」
「ん。猫は眷属。これは間違いなし」
「テイマーとしてはそれの効果が気になるね」
「悪魔は眷属で良いと思う! つまり、クロちゃんパワーアップアイテムじゃない!?」
「ちょっと待つデース! 分身と言えばこの私。忍者を強化するというのが一番デース!」
お、おお。なるほど。
みんな、眷属というものにピンと来ないみたいだ。
まあそうだろうな。
ちなみにこの眷属というのは、〈ダン活〉では固有で所持する召喚系という位置づけになる。
カルアのエージェント猫もそうだし、シェリアの精霊も固有なので該当する。
逆に該当しないのがテイムされたモンスターや、契約で召喚されている使役モンスターだ。故にフラーミナやアイギス、アルテ、シヅキの使役している類いは全て該当しないとなる。召喚盤召喚も同様だ。
最初からなんか召喚スキルを持っており、職業に付随するモンスターを召喚できるスキルが〈ダン活〉では眷属に分類されている。
カルアの『エージェント猫召喚』や、シェリアの『精霊召喚』。
ラクリッテの『幻獣霊・盾狸様』も眷属に分類されるし、タバサ先生の『口寄せ』『式神』関連もそうだな。エリサの『吸魔召喚』ももちろん該当するぞ。
後はカグヤの『お稲荷召喚・カンザシとモミジ』やシュミネが召喚する大樹系もそうだ。クイナダも『狼眷属召喚』が該当するな。
またシヅキの場合、契約しているクロちゃんは該当外だが、『簡易召喚・悪魔の腕』や『簡易召喚・悪魔の上半身』は眷属に該当する。これは契約したモンスターを召喚しているのではなく、職業に付随する眷属を召喚しているという括りだからだ。
「どれくらいパワーアップするのかは分からないから、後で実験ね!」
「そ、そうだな。あとで実験だ。……あとでかぁ」
なんということだ。思いっきりはしゃごうとしたのに、みんなハテナマークになっていて撃沈。
ここではしゃいだらまたシエラから「なんで知っているのかしら」と言われてしまう!
この〈分眷列強の腕輪〉、かなり強いのに!
リカの上級職のユニークスキルとか、ユーリ先輩が使ってもめっちゃすんごいことになる!
なのに大はしゃぎできないなんて~~~~。無念。




