#1575 〈赤・黄・青・緑・黒・金・銀〉レアイベント
10層までのチュートリアルも終わり、11層からの〈幻迷ダン〉本来の姿になったギミックにも慣れて、俺たちはついに20層の守護型ボスを撃破した。
「ここは、階層門が2つあるのは変わらないのね」
「ただ、コンソールになってますわ。しかもこのランプの多さは……」
「赤だけで10個はあるわね」
「赤が11、黄が5、青が8。この数を点灯させろ、ということですわね。おそらくこっちの階層門を潜って」
リーナたちが見るのは片側の階層門。
こっちだけは通常通り〈赤・黄・青〉で開いたのだが、逆にもう片方の階層門のコンソールはなかなかすごいことになってた。
このランプの多さ、半端ない。
そう、ついに1つではなく、複数のランプが出始めたのだ。
その内〈赤〉〈黄〉〈青〉のランプが1つずつ点灯してはいるものの、こちらの階層門は開いていない。
これの意味することを考えてみれば、大体の可能性が見えてくる。
「最低数が黄の5ということは、この先5階層分のボタンが存在する、ということだろうな」
「! なるほど、さすがはゼフィルスさんですわ。上級中位ダンジョンでは20層から階層門が分かれましたが、それが25層まで続いていました。つまり、今開いている片方の階層門、この先も行き止まりは25層、というわけですわね」
「これほどのランプを点灯させるということは、複数の階層が必要、ということね。ボタンを押すことで扉が開くなら、上級中位にあった鍵は無くなったとみるべきかしら」
さすがはリーナとシエラだ。
俺の言わんとしていることをあれだけの説明で理解してくれた。
「ん?」
もちろんカルアは首を傾げていたので、みんなに分かりやすいように説明する。
「〈黄〉のみで考えても、この20層のボタンだけでは足りない。つまり、このコンソールはこれから行く5階層の合計値で扉が開く可能性が高い、ということだ。〈赤・黄・青〉1つずつランプを点灯させれば次の階層に進める。黄のランプで消えているのは4つだ。24層の階層門を開ければ5つのランプが全て点灯するだろ?」
「「ああ!」」
俺の説明に得心がいったという声を上げる人が多数。
「もちろん、そうじゃない可能性もある。この階層門の先が行き止まりで、大量のボタンがあったり、大量の区画に分かれていたり、とかな」
「区画は問題ないわね! モンスターパニックとエリアボスだけなら楽勝よ!」
うむ。11層からはフィールドが区画に分かれ、もしミスるとモンスターパニックが起こるようになったが、一言で言おう。楽勝であったと。
この説明でみんな理解を示してくれたので一安心。
「ん?」
…………、一安心なのだ!
そして通れる片方の階層門へ向かってみた結果、この予想は大当たり。
21層のボタンを押しても20層のランプが点灯することが分かり、このコンソールだけは別階層のボタンとも連動していると判明。
25層でようやく赤の11個目を発見に至り、全てを満たした結果20層のもう片方の階層門をオープンさせることに成功したのである。
全て予想(?)通りだ!
「ゼフィルスの予想通りだったわね」
「はっはっは! そう褒めるなってシエラ。照れるじゃないか!」
「…………」
おかげでシエラからジト目をプレゼントされるなどこちらも好調!
俺は大変気分が良くなった。
ちなみに20層のコンソールを起動させていたため、〈赤〉のボタンを同じ階層で何個も押してもエリアボスは出てこなかった。
〈緑〉や〈黒〉を2回押すと大不正解になってエリアボスはちゃんと出てきたけどな。
「行き止まりの25層はここでもお宝フィーバーで、とても楽しかったですわね!」
「〈銀〉なんてボタンが新たに出てきた時は驚いたけど、まさか隠し部屋のコンソールだなんてね! 次も見つけてやりましょう!」
今回新しく〈銀〉のボタンも発見。なんと〈金・銀〉のコンソールなるものも出てきて、これを満たすと隠し部屋の扉が開いたのだ。
中には大量のお宝があったものだから大フィーバー!
ヒャッホーだ!
…………隠し部屋なのにコンソールなんて置いてあるとか、それ隠し部屋? と思うかもしれないが、隠し部屋で良いと思うのだ! もしくはお宝部屋かな!
まあ今回のも最初だったのでチュートリアルみたいなものだ。何しろ35層で出てきた〈金・銀〉のコンソールは〈金〉が2つ、〈銀〉が4つのコンソールだったのだから。
35層内に全てのボタンがあったためなんとか探し出して押し、大量の宝箱をゲットしたのだが、ボタンを探す難易度が中々高くなってくるな。お宝もその分アップするんだが。
「お宝ヒャッホーよー!」
「お宝バンザイ!」
「お宝は全部ぼくたちのものだー!」
あまりのお宝の数にラナの口調が若干乱れ、ニーコがシャウトするくらいには盛り上がったので探す意味はあったな!
そして俺たちは、ついにそれを発見する。
「これは、〈赤・黄・青・緑・黒・金・銀〉? なにこのコンソール?」
「〈赤・黄・黒〉のコンソールは無いのでこの階層はモンスターパニックは起こらないようですわね」
「その代わりにこんな全部の色を詰めたようなコンソールが出てきたってわけね。いったいこの先になにがあるっていうのよ」
現在40層。
門は、なんと3つあった。だがそのコンソールが異常だ。
2つには〈赤・黄・青〉しかなかったのに、1つだけ〈赤・黄・青・緑・黒・銀・金〉というコンソールがあったのだ。2つの門は階層門と見て良いだろう。しかし残り1つはなんだこれ、となる。
リーナもこれには悩む。しかし、ラナは言葉とは裏腹にキラキラした目だ。
とても気になる様子。
「とりあえず、見てみないと始まりませんわね。カルアさん、『直感』の反応は?」
「ん、なんか、ドデカいの居る予感する」
「ドデカいの。ボス、ということでしょうか?」
カルアは『ピーピング』や『直感』で斥候を任されていた。
こうして扉を開いた向こう側のことも、なんとなく予感で分かるというのだからカルアの『直感』は優秀。
おかしいな。俺の『直感』さん、そっちには無反応なんだけど?
むしろ普段の生活の方が発生率が高い気がする。いったいなぜ?
それから40層を巡り、全ての色のボタンがあるのを確認してから1つずつ押していく。
そして最後のボタンを押すと、ギィィィィィィっと音を鳴らして開いていった。
するとそこに居たのは1体のボス。
もちろん俺はこいつを知っている。
ここは――レアイベントボスのいる階層だ。
「ここからでも調べられそうです――『看破』! 出ました。あのボスは〈ツインズ・時々・シングル騎士〉だそうです!」
「名前からはよく分からないわねここのボスたちは!?」
「ツインズなの? シングルなの?」
「待ち構える姿はシングルに見えますが」
「凄まじくかっこいい。強そう……私、これ参加希望」
「エフィ!? それだと同じパーティの私も参戦なんだけど!?」
「一緒にがんばろ? ね?」
エステルの言葉にラナが良いツッコミを入れてやがる。良いものが見れた!
カルアの迷いもよく分かる。アイギスの言う通り、1体に見えるからな。ツインズには見えない、まあ今は、だけどな。
そしてエフィの言う通り、凄まじくかっこいい見た目をしていた。
金色に見間違えるキラキラの黄色の全身鎧に覆われ、身長は4メートルほど。身体の中心に青い巨大水晶があって中では青炎が揺らめいている。
右手には巨大な盾、下半分が大きく膨らんでいて、球体にも見える、叩かれたらハンマーのような破壊力がありそう。
左手には巨大なハルバード。
背中には黄緑色のエフェクトが噴射しているような見た目のマントが輝いている。
うん。何度見てもかっこいい。
名前があれなので、みんなからは通称〈分身騎士〉と呼ばれていたっけ。
分身する騎士とか、ロマンだよね。
「エフィが参加希望ということは、シエラ」
「ええ。任せて」
「あ、やっぱり先陣で戦うんだ」
これで2班の参戦が決定。
シヅキが、私たち新メンバーのはずなのに、先陣を切るの? と震えている。
大丈夫だ。シエラも居るしな! それにマシロの『シークレットアウト』には期待しているぜ。
「そして、1班だな」
「いつでも行けるのです!」
「はい。あれくらいの騎士、倒して見せましょう」
「シエラさんがいるのでしたら、私はアタッカーをしますね」
「私はヒーラー! でもマシロちゃん1人で十分な気がするんだけど!?」
ルル、シェリア、フィナ、エリサもやる気満々。
ラナがちょっと不満げなので、明日も来ることを約束して、俺たちはレアイベントボスに挑むことにした。
「フィナ、エリサ。油断するな。『看破』ではこいつはツインズと出ていた。シエラやマシロに頼りっぱなしだと、思わぬ反撃を食らうかもしれないぜ」
「わかりました教官。タンクとしても務めます!」
「私は役目が奪われなさそうで、ちょっとホッとしたわ」
こいつはツインズであり、シングルでもある。
ツインズと戦う覚悟で臨むことが大事だ。
さあ、行くか!




