#172 ギルドランク昇格記念会!
「Eランク試験合格! そして〈エデン〉Eランク昇格を祝して、乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
Eランク試験〈ギルドバトル〉を行なった日の夕方。
俺たちはギルドランク昇格記念会を開いていた。
あの後、観客席にいたカルア、リカ、セレスタンとも合流し、〈ギルド申請受付所〉で昇格の手続きを行なったのち、Eランクのランク証を発行してもらった。
これで〈エデン〉は正式にEランクギルドとなった。
Fランクとの違いは多くあるが、一番はまず参加人数の上限が15人になったことだろう。
これで、面接から待たせていた残りの4人を迎え入れることが出来るな。
そしてギルド部屋も少しだけ変わった。
今までFランクギルド舎のA塔という場所にギルド部屋があったわけだが、
今度はEランクギルド舎という建物に引っ越した。
所謂Eランクギルド部屋だな。
Eランクギルド部屋は大部屋が1つ、そして小部屋が2つ付いている。
大部屋も小部屋も、前のFランクギルド部屋より広く立派だ。
通常なら小部屋は1つを倉庫に、1つを生産部屋として使用するところではあるが、しかしすでに小部屋1つがハンナの魔石でいっぱいになっているので少し困っている。
使い道はあるにはあるんだが、使い切れないんだよなぁ魔石。でも売るという選択は無い。ハンナが泣く。
とりあえずあれが9割溶けるまではハンナに生産を頑張らせよう。うん。
あとギルド設置型アイテムも4つまで配置可能とすばらしい優遇処置がある。
これで〈幸猫様〉と「エルフ」に必要な〈ユグドラシルの苗〉〈赤い実〉〈観葉植物セット〉を配置することが出来るな。
そういえばまだこの3つのプレゼントアイテムの意味を教えてもらっていない気がする。確か〈精霊園〉と言っていた気がするが、あとで詳しく教えてもらおう。
あ、ちなみに〈幸猫様〉は引っ越してから真っ先に神棚を取り付けて飾らせてもらったよ。
今はラナの膝の上にいるけどな。
ラナの魔の手が防げない件。
「それにしてもゼフィルスは博識と聞いていたが〈ギルドバトル〉にも精通していたとは。先ほどの〈ギルドバトル〉実に感服した」
「ん。ゼフィルス、かっこよかった」
「ありがとよ!」
観客席にいたリカとカルア。
今回は残念ながら職業LVが足らず、参加は見送りとなってしまったが、観戦は思いのほか熱く楽しめたようで先ほどから俺の両隣に座って感想を告げてくるのだ。
「特にあの、なんだ。最初から勝利が決まっていたかのような、終始有利なポイントがとても熱い。どうやったらあんな状況を作れるのだ? 城を取れば取るだけ有利。これは理解できる。しかし巨城を取ってもひっくり返せないあの状況は私にはよく分からないのだ」
「うん。分からない。全部」
「ま、今回は特殊な制限やルールがあったからこその展開だな。対人戦が無い、もしくは戦力が拮抗していて対人戦が上手く機能しない場合、あの戦法で大体勝てる。だが、それも相手のチームのことをよく理解していてこそだ」
リカの熱心な問いに俺も熱く答える。
今回は相手のことはよく知らなかったが、要は対人戦の有無がはっきり分かってしまえば良いのだ。後はそれを基に作戦を練れば良いだけ。今回対人戦は無し、そして人数差有り、それがはっきりしていたため相手のLVがいくら高かろうが作戦を練れば勝てるという寸法だった。
具体的なことは、説明してもリカもカルアもちんぷんかんぷんのようだったが。
「とにかくゼフィルス強い。すごく強い」
「ま、今回のは強いというより作戦勝ちだけどな」
「それも、強いという一部でしょう。私たちにはその一端すらよく分からないのが口惜しくある」
そこまでべた褒めされると照れるな。
しかし、〈ギルドバトル〉は対人戦こそ花。
次はもっと熱いものを見せられるだろう。楽しみにしていてほしい。
「ゼフィルス! 来たわね、今回とても良い物が手に入ったの。今の私は気分が良いから少しだけ分けてあげるわ! グラスを出しなさい!」
席を移動しラナの下まで来ると、とても上機嫌なラナが大きなビンを持って声を掛けてきた。
ビンの中身は、なんだ? 酒じゃないよな?(※未成年は飲めません)
とビンを警戒していると横からエステルが説明をしてくれた。
「こちら、レアモンスター〈ゴールデンアップルプル〉のレアドロップ〈芳醇な100%リンゴジュース〉です。ゼフィルス殿もいかがですか? めったに手に入りませんよ」
「〈ゴルプル〉のジュースか! そりゃあ興味あるわ。ラナ、いただけるか?」
「私がお酌してあげるのだから感謝してよね!」
「おう。ありがとな」
これには素直に礼を言ってグラスにゴルプルジュースを注いでもらう。
見た目はまんまリンゴジュースだが、香りがすごいな。
さすが、ゲームでは王家御用達みたいなテキストが書いてあっただけはある。とても美味しそうだ。
聞けばラナの大好物らしい。さすが。
早速頂くとする。
「んほう! 美味い!」
「でしょ!」
さすが王家御用達アップルジュース。
口当たりがすばらしくさわやかで後味が柔らかい。端的に言ってめちゃくちゃ美味かった。
こりゃ、俺も乱獲せざるを得ないな。
〈ゴルアプ〉が出るのは中級上位ダンジョン。
いずれ赴くことになる。
待ってろよ〈ゴルアプ〉! ふはは!
「こちらをどうぞシエラ様、ハンナ様」
「あら、セレスタンありがとう」
「ありがとうございます。でも私に様付けはちょっと…」
「セレスタンはなんで給仕なんてしてるんだ?」
次の席に向かうと何故かセレスタンがおしぼりや皿、飲み物などを用意していた。
そしてそれを何の疑いも無く受け取るシエラ。なんか手慣れていらっしゃる。
しかし、ハンナはアセアセといった様子だ。様付けにも抵抗を示している。
「いえ、僕は〈エデン〉でもっともLVが低いですからね。それに職業は【バトラー】ですから」
「分かるような、分からんような…。とりあえずな、セレスタンもちゃんと食べているのか?」
「はい。ハンナ様の手作りと聞いていますが、大変美味です」
「えへへ。褒められるほどでもあるよ〜」
おお、ハンナが珍しく自慢している。よほど今日のパーティ料理に自信があるらしい。
確かにどれも絶品だった。
「シエラも楽しんでいるか?」
「ええ。ハンナとのお話は楽しいもの。料理も美味しいし、私の家に欲しいくらいよ」
「ダメだからな?」
「分かっているわ。そんなことはしないから安心して」
とはいえ卒業後の進路まで縛るつもりは無いのでハンナしだいだけどな。
「ゼフィルス。改めてEランク昇格、おめでとう」
「どうしたんだ急に?」
「いいえ。ただあなたに付いてきてよかった、そう思っただけよ」
「そりゃあ気が早いな。何しろまだEランクだぜ?」
「ふふ、そうね。目標はSランクだものね」
「そうだぞ。Sランクになったらたっぷり聞いてやるからそれまで取っておいてくれ」
「分かったわ。楽しみにしているわね」
「おう。それとだ。1つ頼みがある」
「? 何かしら」
「サブマスターをシエラに頼みたい」
Eランクギルドからはギルドマスターの他にサブマスターというギルマスに次ぐ責任者を決めなければいけない。理由は様々だが、Eランクからは色々とやるべき事が増えるからだ。その時にギルドマスターに次ぐ役職の人物がいるととても助かるため、だな。
「良いわよ」
「…そんな即答しても良いのか?」
「良いでしょ。私もずっとあなたに付いていくと決めているのだし問題ないわよ」
「助かる!」
シエラにサブマスを引き受けてもらって助かった。シエラなら安心して〈エデン〉のサブを任せられる。
ふう。
何とか5月になる前にEランクに昇格することが出来た。
次に待っているのは中級ダンジョン。
職業LV40以上、三段階目ツリーが開放された真の職業たちが切磋琢磨する本当のダンジョン。
初級ダンジョンは、とにかく職業LVを上げておけばゴリ押しで通過できるのに対し、ここからはその職業の能力を余すところ無く発揮しなければ通過できない難関だ。
ここからが1021職の職業、それぞれの能力が輝く真のダンジョンである。
ああ、ようやくここまで来られた。仲間も増えた。
次はどんなゲームではない、リアル〈ダン活〉が待っているのか。
今後の展開が楽しみすぎる。
第二章 —完—
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今後も〈ダン活〉をよろしくお願い致します。