#1567 ついに上級上位ダンジョンの初入ダン!!
ついに世界で初めて解放される上級上位ダンジョン。
時は冬休みに入る終業式、その放課後。
前々から約束していたとおり、学園長は大々的に上級上位ダンジョンの解放を宣言し、固く閉ざされ封印されていたダンジョン門を、開いてくれた。
重厚な扉。
しかし長年、それこそ学園がここに出来た500年も前から閉ざされていたにもかかわらず、鍵を開けた途端ゆっくりと滞りなく開いていく門。
その圧倒されるような巨大な扉は、ただ開いただけで人々を熱狂させた。
そして、その中に入る団体が1つ。
そう―――俺たちだ。
というか〈エデン〉だ!
ふはははははは!!
一番乗り! 上級上位ダンジョン門に一番乗りを決めてやったぞ!
ふはははははは!!
しかも後ろからはそんな俺たち〈エデン〉の勇姿を注目する学園中の人々の姿が!
とても注目されています!
俺は極めて真剣に勇者のキメ顔を作った。キリリリリッ!!(キラーンッ!)
いつもより「リ」が多い!! ついでにキラーンも追加!!
ふふふ、自分でもこのテンション、抑えられないんだぜ。
上級上位ダンジョン、ランク4以降のダンジョンは〈61エリア〉が存在する。
つまり、LV60以上の育成が可能なのだ。
それは、職業が持つ最高峰、職業の力、その真髄である六段階目ツリーが開放されることを示している!
ついに来たか、六段階目ツリーよ!!
最強のスキル、魔法、ユニークスキルたちよ!
〈上級姫職〉たちのユニークスキルはその多くが六段階目ツリーだ。
つまり、それだけ凄まじい効果であることを意味する。
獲得が待ち遠しい! むしろこのままランク4に突入したい!
だが、それはもう少しの辛抱だ。
この世界では上級上位ダンジョンが解放されたのは初めて。
ちゃんとチュートリアルたるランク1から入ダンしていかないと、混乱させることになるだろう。
あの〈謎ダン〉のように。
「無人のダンジョン門、なんだか静かな迫力があるわね」
「建物の中は何もないって分かっているのに、なんだか身構えちゃうわ」
そんなことを言うのはシエラとラナ。
ギルド〈エデン〉が創立された時の初期メンバーだ。
思えば、遠くに来たものだなとしみじみとした心境になる。みんなの表情はかなり真剣だけど。
「さぁて、受付しようかね。ちょいと待っていなね」
「はい! ケルばあさんもあんまり急がなくていいですよ。ここも見ておきたいですし」
「そうかい。それじゃあ少し時間を頂戴ね。ここのシステムが生きているかどうかもチェックしなくちゃならんしね」
〈エデン〉の次に入られたのは、ダンジョン門の管理人、ケルばあさんだ。
すでに俺たちの死相についてはチェック済みで問題ないとは出ているが、それと受付は別の話。
俺たちはパーティ表を提出し、ケルばあさんに登録してもらわなければならないのだ。
受付のカウンターの裏へと向かい、何やら機械っぽい何かをいじるケルばあさん。
「本当に、〈上中ダン〉の時も驚いたが、ここも全然不備は無いんだね。まるで時間が経っていないかのように塵一つないよ」
「封印されていたからですかね」
「ああ。もしかしたら封印している間はこの中の時は止まっているのかもしれないね。最近はそんなお伽話みたいなことが、よく起こるしね」
はははは! なんだか身に覚えがあるような話ですね。
そんなケルばあさんととりとめのない話をしていると、ケルばあさんの顔が上がる。
「パーティ登録できたよ。気をつけていってきな」
「はい! いってきます!」
待ちわびた登録も完了!
俺は振り向き、ランク1の扉に目を向ける。そうしてチラッと上に輝く転移リングも。
「あの転移リングはちゃんと機能しているみたいさね。一応今回戻ってくるときは〈転移水晶〉を使っておくれよ。なんだったらその代金や素材は学園が持つからね」
「了解です」
転移リングがあるということは、帰還転移アイテム〈転移水晶〉が使えることを示している。
だが、本当に使えるかどうかは使ってみなければ分からない。
俺たちが先駆者だ。当然その辺を調べる役目も背負うぜ。
俺は改めてギルドメンバーたちに振り返る。
「みんな、改めてランク1のダンジョンに入ろうと思う。前人未踏のダンジョンだ。未知のダンジョンに入ることを怖いと思う者もいるだろう。だが、付いてこい!」
「そこは『怖いなら引き返してもいい』じゃないんだ!?」
ニーコが震え声でツッコミを入れてくる。
だって引き返してもいいなんて言ったらニーコ絶対引き返しそうな震え方してるじゃん。
「こほん。大丈夫だ、俺たちにならできる。何しろ俺が付いているんだからな!」
「「「「「!」」」」」
「たははは~、それ、これ以上ない安心感のある言葉だよね~」
「ああ。ゼフィルスが居る、これほど説得力のある言葉はそうはない」
「なんだか心の奥からふつふつとやる気が湧いてくるデース!」
「ええ。不思議と私ならやれますという気になってきます」
「なんでこんなに安心出来るんだろう!?」
「これがゼフィルス先輩に毒されているってことですの!」
「! つまり私も毒されてる!? 分校に帰ったらどうしたらいいの!?」
俺がこの勇者に任せろと宣言すれば、ミサト、メルト、パメラ、シズを始め、レギュラーメンバーたちが息を吐いて、肩の力が幾分か抜けていくのを感じた。
なお、カグヤ、サーシャ、クイナダはなぜかおののいている。
はて? 俺は毒してないよ? 本当だよ?
そしてクイナダはずっとここに居ていいよ?
「ゼフィルス、あなただけに任せる気はないわ。私も一緒よ」
「そうよゼフィルス! 私にも頼りなさい? ギルドメンバーの道を作ってあげるわ!」
「シエラ、ラナ……!」
「わたくしも全力でサポートいたしますわ。上級上位ダンジョンでも、わたくしが全て見破ってみせますわよ!」
「空からの偵察なら任せてください。私とゼニスならダンジョンの端から端まで全て見回ってきます」
「リーナ、アイギス!」
じーんと心が震える。
俺は良い仲間に恵まれたよ本当!
改めて見渡せば、もう怖がっていたりビビっていたりするメンバーは皆無だった。
最初からほとんど居なかった気がしたが、今の言葉でニーコやラクリッテでも震えが止まるほど、安心感を得た様子。
よーし、今のうちに潜るが吉!
「ありがとうみんな! 上級上位ダンジョンも踏破してやろうな! それじゃあ行くぞ! ギルド〈エデン〉! 上級上位ダンジョンに初入ダンだ!」
「「「「「おおー!!」」」」」
俺はクルリと振り返り、ランク1のダンジョンへと進む。
後ろからギルドメンバー全員が付いてきてくれていると信じて。
「最初に挑むのはこの上級上位ダンジョンのランク1――〈幻惑の迷路ダンジョン〉だ!」
俺たちはランク1ダンジョンの扉を潜った。




