#1566 上級上位ダンジョン門―解放!あと攻略宣言!
「マリー姉! こっちの品は全部配り終えてるで!」
「おっと、ギリギリやったか! なら早速お披露目や! ラウはん、ミジュはん、セレスタンはん、クイナダはんは来てぇな!」
さすがはマリー先輩。到着して一息吐くこともなくテキパキと事を運ぶ。
まずは闘士系の3人か。となると、あのシリーズ装備だな。
「え? もう着替えたん? 執事早っ! 執事ごっつ早やん! ほんなら着替え終わった人からどんどんいくで!」
うむ。ステージ裏の部屋からそんな声が聞こえてきた。
セレスタンが本気で早着替えしたらしい。
あのセレスタンが早着替えなんかしたら、もう変身と区別つかなくなるんじゃない?
「みんな待たせたなぁ! まずはセレスタンはんからお披露目や! 装備は――〈獣装ガルムシリーズ〉と〈気格狼王シリーズ〉や!」
あれだな!
〈獣装ガルムシリーズ〉は徘徊型の〈ガルム〉からドロップしたものだ!
そして〈気格狼王シリーズ〉は〈バトルウルフ〉のレアボスからドロップしたやつだ!
上級上位級のランク7でその性能はかなりのもの。
レアボス素材まで使われていて、その性能は限界まで高められている。
おお~。出てきたセレスタンは、少しワイルド系になっていた。こちらは〈獣装ガルムシリーズ〉だろう。
ワイルド系燕尾服、と表現すれば良いのだろうか。
ほとんど黒で仕上げられたその服は、しっかり引き締めつつも、強者オーラがバンバン出ている、それを着たセレスタンはまさに只者じゃない系執事に変貌していた。あの微笑みがちょっと怖い、そう思わせる燕尾服だ。
「これを燕尾服に寄せるのは中々手間どったんやけど、うん、さすがはうちや! セレスタンはん、決まっとるやないか!」
「ありがとうございます」
俺もセレスタンの服は似合いすぎているほど似合っていると感じる。
さすがはマリー先輩だな。
続いてラウ。
「これは良い装備だな。引き締まっているのに動きやすい」
「お気に召して幸いやわ」
ラウは、〈気格狼王シリーズ〉か。
かなり王格が増している感じ、かっこよさは10割増しだ。
なんかラスボス感のある獣王になっていた。『超進化』を使っても似合いそうだ。
「最後は私。どう、似合う?」
「おお~、似合うてるで~。可愛いのにかっこいい。まさに武闘派っちゅう感じや!」
マリー先輩の言うとおり、ミジュは〈気格狼王シリーズ〉と〈獣装ガルムシリーズ〉を3:3で着ていて、青系と黒系の戦闘民族衣装っぽい装備になっており、少し道着にも似ているかもしれない。7つのボールを集めたら願いが叶いそうな道着だ。
なかなか強そうだった。
セレスタンやラウと同じ装備のはずなのに、かなり見た目が違うんだぜ。
「うわぁ、こんなに良い装備いいのかな? これも「狼人」専用着いているんだけど!」
「もちろんや! ラウはんと同じ〈気格狼王シリーズ〉やけど、こっちは女武将風に仕上げてみたわ。よう似合ってるで!」
「あ、ありがとう。マリー先輩」
最後のクイナダはラウと同じく全身〈気格狼王シリーズ〉。
これ「狼人」だとSTRとAGIが上がるステキ仕様の装備なので、〈エデン〉で「狼人」のラウとクイナダには是非身に着けてもらわないとな。
同じ装備なのに、男女で結構見た目が異なる。しかし、雰囲気はそっくりだ。さすがはマリー先輩。雰囲気を損ねずにその人にあったコーディネートを仕上げてくれる! 素晴らしいぜ!
「さあ、どんどんいくで! 今度は〈天使天猫装備シリーズ〉や!」
「キターーーーー!!」
天使と猫が合体したら? 何それ最強じゃね?
そんなことを考えたのか知らないが、ネコミミが頭装備になっている狂った天使装備シリーズが存在した。それがこれだ。
〈猫猫ダン〉のレアイベントボス。
そのツインズの白猫からドロップした最高のレシピ。
上級上位級であり、総合評価では〈黒竜〉装備にも劣らない。見た目だけではなく能力的にもかなり強力な防具。
この装備に選ばれたのは。
「ではでは~マシロはん、エフィはん、いってみましょか~」
「はーい!」
「いえーい」
そう、マシロとエフィだった。
白のネコミミに猫尻尾がついちゃっているミラクル天使専用装備。
なんで〈猫ダン〉で天使専用装備がドロップするのかはさておき、天使を猫化させようという試みは評価しても良いと思うんだ!
しかもダブル! しかもダブルである!
ゲーム時代は上限の関係で1人しか装備できなかったあれが2人に装備できる。
素晴らしい、素晴らしいよ! パシャパシャ!
マシロは純白の天使。でも猫。
せっかく上級上位級の装備をつけていたのに速攻チェンジ!? 即でチェンジである。異論は認めない! これはやむなしなのだ!
見た目は以前の装備に寄せていて、背中には小さな天使の翼が生えている装備だが、ネコミミと猫尻尾が加わってしまえばもうダメだ。何度見ても最強で、スクショを撮る手が止まらない!
エフィも同じく。こっちは〈救護委員会〉時代から使っていた上級中位ダンジョンでも潜れる装備を使っていたが、そろそろ替え時かな? という時期だった。
まさにベスト。まさにちょうど良い。
ネコミミに猫尻尾の天使装備に身を包んだエフィは、照れることなくいつものクール顔でマシロに合わせてピースしていた。パナイ。
白猫な天使が2人くっつけばスクショは止まらず、気が付けば撮った枚数は100を超えていた。凄まじい!
その後は魔法使いの装備更新、前衛アタッカーの装備更新など、どんどん装備がお披露目されていったんだ。
うーむ、こうしてみると、結構レシピ集めてたなぁ。
もっと集めなければ。
「ゼフィルス様、そろそろお時間です」
「おお! そうか!」
いつの間にか側に居たセレスタンから告げられて時間を見れば、なるほど、上級上位ダンジョンの解放時間が迫っていた。
そろそろ向かわなければならない!
ちょうど装備の換装が終わったところだ!
「マリー先輩、アルル! 装備ありがとう! これで俺たちはさらにステップアップし、上級上位ダンジョンでも戦うことができる!」
「初めてのところなんやから過信は禁物やで!」
「うちらの装備で無双してきや!」
なんだか真逆のことを言われた気がするが、きっと気のせいだな!
「ハンナ、アルストリアさん、シレイアさんも、真素材の作製助かったよ」
「えへへ~。でもマリー先輩の言うとおりだよゼフィルス君。危ないと思ったら、ちゃんと引き返してくるんだよ?」
「もちろんだ!」
ハンナにそう約束すると、ハンナを除いた〈エデン〉組とニーコを連れ、上級上位ダンジョンへ挑む49人が仕度を完了する。
「出発だ!」
◇ ◇ ◇
目指すは上級上位ダンジョン門。
正式名称〈ダンジョン門・上級上伝〉。通称:〈上上ダン〉。
通称名強すぎじゃない?
近くまで来ると、やっぱり左右に割れる学生たち。
「お、おい。〈エデン〉だ。〈エデン〉が通るぞ!」
「ぜ、全員がフル装備に固めてやがる!」
「いや待て、あんな装備だったか?」
「! 新装備だ! 間違いない! メンバーの半数以上が新装備を身に着けてるぞ!」
「な、なに~~~!? 〈エデン〉って上級中位ダンジョンを主に活動場所にしてるよな!? つまり装備は1つ揃えるだけでもとんでもない額になる。それを、半数以上だと!?」
「〈デザインペイント変更〉を利用した線は!?」
「今日は上級上位ダンジョンの解放の式典だ。だがそれに合わせてきたにしては、ちょっとどころじゃなく強そうじゃないか?」
「た、確かに! 超確かに!」
「え、え? それってつまり、上級上位ダンジョンに入るために装備を新調したってことっすか?」
「…………」
「…………」
「おい剣士こんにゃろがーーー!」
「混沌!」
「ま、マージかよーーーー!?」
「震える」
「え? え? 当たっちゃったっすか!?」
ざわざわ、ざわざわ。
なんだか凄まじくざわめきが広がっている気がする。
そんなことを気にしていると、前から誘導員がやって来た。
「〈エデン〉の方々ですね。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます!」
素直に案内される俺たち。
うーん、VIPという感じがする!
俺たちが到着したとき、封印されているダンジョン門の前には、前回上級中位ダンジョン解放の時も使われたステージや、セレモニーに使われるリボンや何やらが揃えられていた。
見れば他にもSランクギルドの方々も見える。
あっちにいるのは学園公式ギルドの面々だ。
テスト期間中、彼ら彼女らは俺たち学生に構うことなくダンジョン攻略に勤しむことが出来たはずだが、上級上位ダンジョンの入ダン条件は満たせたのだろうか?
あ、ケルばあさん発見!
ちなみにケルばあさんはしばらく〈上中ダン〉と〈上上ダン〉を掛け持ちしてくれるらしい。
上級上位ダンジョンは、しばらく予約制というか、入るのに前もって申請が必要で、その時受付だけケルばあさんを呼び出してチェックしてもらうことになっている。
「ケルばあさん! 俺たち、これから解放と同時に入ダンします!」
「あいよ。話は聞いていたけど……ほんとあんたらは綺麗なもんさね。一点の曇りもないよ。安心していってきな」
「ありがとうございます!」
よし、チェック完了!
ここでダメが入ったらその人は入れず、他の人だけで入ダンすることになっていたが、49人、全て異常無しだった。素晴らしい。
「こほん、ではこれより上級上位ダンジョンの解放式を行ないます――学園長、お願いいたします!」
――――――わあああああああ!!
始まった! 進行役風の教員が学園長を呼ぶと、それだけでボルテージがマックスになる学生たち。
何しろ、これまで伝説とすら呼ばれていて、未だ誰も入ったことのない上級上位ダンジョンの門、それが解放されるのだ。
間違いなく歴史に残る瞬間。
俺と同様、スクショやカメラを持っている人たちが学園長の姿をしっかり撮影しまくっていた。
ユミキさんもしっかり〈メビウスの輪〉を飛ばしているな。
「では―――式を始―――――まず―――――である! いつ―――――」
あ、歓声が大きすぎて学園長の声がまた聞こえなくなってる。
まあ、いつものことだな!
「――――――――――――――!!」
「え、えーっと、学園長、挨拶のお言葉、ありがとうございました?」
ほらみろ、終わったのか分からなかった進行役風の教員も疑問風になってるぞ。
学園長が去り次第に歓声も収まると、色々な人が挨拶する。
まあここは省略してしまおう。
「それではダンジョン門、解放に移ります! 鍵を前へ!」
進行役風の教員が進めると学園長を中心に、その左右に〈救護委員会〉のヴィアラン会長、〈秩序風紀委員会〉のカンナ先輩、〈ハンター委員会〉のアーロン先輩に、〈攻略先生委員会〉のタバサ先生が参加。全部で5つの鍵を同時に回し、頑丈に封印されている門を解放する。
「ダンジョン門、開錠!!」
ガチャン!
―――――うおおおおおおおおおおお!!
門の鍵が開き、扉が開くと、凄まじい熱狂的な声が辺りに響いていく。
みんなのテンションが上がっているのをヒシヒシと感じたぜ。
空には打ち上げ花火が上がり、続いてセレモニーのリボンカットが始まる。
これには実は俺も、Sランクギルドのギルドマスターとしての参加できたりする。
当然参加だ!
「ではオープンと言ったらカットしてくださいね」
出たな、勘違いして今のでテープカットしちゃうセリフ。
これ絶対罠だよ。せめて構える前に打ち合わせしろし!?
まあ、これでフライングでテープをカットしてしまう人は居なかったのだが。
総勢10人ほどがテープカットに並ぶ。
先程の鍵開けメンバー5人とSランクギルドのギルドマスター5人だ。
俺の左隣に立つタバサ先生が心なしか近い気がするのは気のせいかな?
「最近ゼフィルスさんに会う機会が減っていて、私、少し寂しかったのよ?」
「俺も寂しかったです!」
「うふふ、今日は一緒できて、とても嬉しく思うわ」
「俺も嬉しいです!」
タバサ先生の少し悲しそうな表情に、なんか引き寄せられる予感!
はっ!? ジト目の視線を感じる!?
これはシエラのジト目だ! 間違いない!
くっ、シエラを探せない、いったいどこから!?
そんなことを考えていたらいつの間にか進行。
「―――ではこれより、ダンジョン門を解放いたします。〈ダンジョン門・上級上伝〉――オープン!」
おっと忘れずにテープカット。
瞬間、万雷の拍手が辺りに響いた。
スクショもカメラも視線もたくさん向けられているのが分かる。
俺は胸を張ったぜ!
テープカットが終わり、万雷の拍手が贈られると――俺たち〈エデン〉の番だ。
「聞いてくれー!」
拍手が落ち着いて来た頃を見計らい、俺は挙手する。
「〈エデン〉は先日、上級中位ダンジョンを5箇所攻略を終え、無事上級上位ダンジョンへ入ダンする条件を満たした! これよりギルド〈エデン〉は、上級上位ダンジョンの攻略を開始することを、ここに宣言する!」
……。
…………。
……………………。
――――――――うおおおおおおおおおおお!?
俺の宣言にほんの少しの静寂。
そして瞬間、凄まじい熱量の声援が木霊した。
集まってくる〈エデン〉メンバーズ。その数――49人。
そして俺は振り返り、ギルドマスターとして〈上上ダン〉へと乗り出す。
最初に上級上位ダンジョンに乗り込むのは――俺たち〈エデン〉だ!
第三十四章 ―完―




