#1559 〈火山ダン〉ボスに挑むメンバーは、これだ!
「それでは、最奥ボスの挑戦者を発表する!」
―――わーわーわー。
料理アイテムでお腹を満たし、料理バフによってパワーアップしたあと、俺は全員に向かって高らかに宣言した。
ここを攻略すれば、上級上位ダンジョンの入ダン条件がクリアできるとあってみんなもドキドキワクワクしているな。
俺もドキドキだ。
全員を攻略させるつもりではあるが、まず先鋒大事。
情報を持って帰り、次鋒以降が楽をしてもらうため、未知の領域に突入してもらうメンバーを選出する!
最初の攻略者はかなり名誉なことらしく、選ばれたメンバーは毎回結構嬉しがってくれるんだよなぁ。いつも一発攻略だからね。
現在戦闘ができるメンバーはカイリを入れて49人。
大所帯になったものだ。
誰を選ぶか、非常に迷う、だってゲームの頃とギルドメンバーが全然違うんだもんさ!
「ふふん! やっぱり〈竜〉と言えば聖女よね! 私が1番目を務めてあげるわ!」
「ラナは前回の〈バトルウルフ(第五形態)〉の1番目を務めたからダメ」
「なあ!?」
「まあ、ここはまだ〈亜竜〉っぽいし、今度本物の〈竜〉の出るダンジョンに挑む時はラナに1番目を務めてもらうから」
「むぅ、そういうことなら仕方ないわね。今回のヒーラーは譲るわ」
前回〈バトルウルフ(第五形態)〉の時に1番目を務めたのは、シエラ、ラナ、エステル、ルルだった。
なので今回この4人は除くことにする。
おおう、そう考えると前回はっちゃけたなぁ。〈バトルウルフ〉の尻尾が最後全開まで落ち込んでいたのが分かる布陣だ。
今回のボスは、言わずもがな、〈亜竜〉だ!
〈亜竜〉を相手に受け止められる度胸のあるタンクを選ばなければならない。
ということで。
「まずタンクだが――トモヨだ!」
「わ、私!?」
「おう! 上級下位のランク9、〈火口ダン〉の最奥ボス〈溶岩遊恐竜・オビサルス〉戦では苦汁をなめる結果になっただろう? リベンジしようぜ?」
「お、覚えていてくれたんだ!」
俺の言葉にトモヨの表情がパァっと輝く。
〈オビサルス〉戦。これはトモヨが【天使】になる決意をした切っ掛けだった。
当時【アルティメットイージス】だったトモヨは〈オビサルス〉の攻撃に翻弄され、危うく戦闘不能というところまで追い詰められてしまい、俺にもっと強くなるための相談をしてきたんだ。
もちろんあの時のことはよく覚えている。
ここのボスは〈オビサルス〉ではないが、チェーンダンジョンの最奥ボスだ。つまり無関係ではない。よりパワーアップしているボスと考える。
あれからトモヨは〈オビサルス〉へのリベンジや再戦も出来ていないし、ここの最奥ボスに強く生まれ変わったトモヨを見せつけてあげよう。
「続いてヒーラーだが、これはアルテに任せる」
「わ、私ですか!?」
「おう。〈亜竜〉の最奥ボスがどういう存在でどう立ち回るのが良いのか、アルテなら分かるだろう。期待しているぞ」
「わ、わかりました! 期待に添えるよう、頑張りますよ!」
アルテは〈ワイバーン〉や〈ベヒモス〉、〈戦車鳥ピュイチ〉などのテイムモンスターに騎乗するため、息を合わせなくてはいけない関係上、その行動の理解力が非常に高い。
相手は〈亜竜〉だ。〈亜竜〉に慣れたヒーラーを入れておきたい考え。
そして、アルテを選んだのにはもう1つ理由もある。
「続いてアタッカーだ。これはアイギス、頼むぞ」
「! 承知いたしました。ゼフィルスさんのため、みなさんのため、一生懸命頑張ります!」
「クワァ!」
アタッカーには〈竜〉使いアイギスを選んだ。
これも〈亜竜〉へ対抗する布石だ。アイギスも〈亜竜〉の理解力が高い。
さらにゼニスも〈亜竜〉に対して対抗心みたいなものがあり、普通のモンスターと〈亜竜〉とでは、その気合いの入れ方が違うように見える。
きっと活躍してくれるだろう。
またアイギスとアルテの姉妹。
〈火山ダン〉ではパーティを組ませてみたが、連携力はさすがの姉妹だ。
お互いをカバーしあい、被害を最小限に抑え、相手に最大のダメージを与えつつ翻弄していると感じ、是非最奥ボスを任せたいと考えた。
「俺も当然入るから残るメンバー枠は1人だが、ここはノーアに入ってもらおうと思う!」
「! やりましたわ! 是非是非、私も喜んで参加させていただきますわ!」
「ちょっと待ってください。お嬢様を入れるのでしたら、私も」
「クラリス、安心してくださいな。ゼフィルス様が一緒なんですよ?」
「いえ、それが一番の不安材料なのですが?」
「そんなことありませんわ。それに前人未踏とも言われている最奥ボス撃破の名誉を賜れるんですのよ? これは行くしかありませんわ! 大丈夫です。何かあってもトモヨさんやゼフィルスさんが守ってくださいますわ」
「いえ、そっちの心配はむしろしていません」
俺の抜擢にノーアはキラキラした瞳だ。
しかし、クラリスが反対。戦力では問題ないはずなのに、なにが心配だと言うんだね?
「シエラ様」
「……仕方ないわ。それに行くのは最奥ボスよ。撃破できるかできないかの2択しかないはず。大事にはならないでしょう。……おそらく」
「いえ、最後にそれを付け足したら不安が解消されないのですが」
結局最後はクラリスが折れてノーアも参加することになった。
え? ノーアを選んだ理由?
そんなの『ドロップ革命』が8割――ゲフンゲフン。2割くらいだよ。
残りの8割はノーアの戦力に期待している!
「楽しみですわねトモヨさん!」
「うん! 未到の最奥ボス、撃破しちゃうよー!」
「おーですわー!」
「いやぁ、未到のボスに1番に挑む事になったというのに、雰囲気明るいですねアイギス姉さま。いつもこんな感じなんですか?」
「そうですね。雰囲気はいつもと変わりませんよ。それにこのメンバー、ゼフィルスさんは新レギュラーメンバーを最奥ボスの初攻略に多く立ち会わせたい考えなのでしょう」
「あ、なるほど! 確かに、古参のレギュラーメンバーがアイギス姉さまとゼフィルス先輩しかいませんもんね。トモヨ先輩はギリギリ新レギュラーかな?」
「トモヨさんも、例の〈オビサルス〉では苦汁をなめましたから、気合いが入っておりますね」
うむ。俺も選んだメンバーに問題は無かったと確信できた。
今回、新メンバーから昇格し、新レギュラーとなったメンバーを多く入れている。
みんな仲も良いし、きっとボス戦でも大きな成果を上げてくれるに違いない。
「それじゃあ行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」
「祝福を授けてあげるわ――『プレイア・ゴッドブレス』!」
ラナから祝福をもらい、ボス部屋の門へ突き進む。
俺、アイギス、トモヨ、ノーア、アルテのメンバーで、多くのメンバーに見送られながら俺たちは最奥ボスの扉を潜ったのだった。
するとそこは火山の山頂。ぽっかり空いた穴、ではなく溶岩の上にバトルフィールドでも設えたかのような、巨大な大地が聳えていた。
至る所で噴煙が上がっていてボコボコ鳴っているな。
〈ヒエヒエドリンク〉のおかげで熱さは感じないが、これはHPバリアとか無かったら人が乗れない大地なんじゃないの?
まるで炎の上に置かれた鉄板だとでも言うような光景だ。
そして、奥で眠っていた1体の〈亜竜〉が目を覚ます。
出たな上級中位の〈亜竜〉のボスよ!
全体的に黒を基調とした鱗に覆われ、巨大な翼を持つ四脚の亜竜。
尻尾を抜いて全長8メートルほど。
尻尾が身体と同じくらい長く、加えれば15メートル近くにもなる亜竜種だ。
翼も広げれば15メートル以上あり、非常に大きな、〈竜〉寄りの〈亜竜〉である。
名前は〈黒現迅亜竜・マラガストル〉通称〈マラガ〉。
〈オビサルス〉のように溶岩を利用するというボスではなく、完全に武力でこのダンジョンのトップに君臨する、強力なボスだ。
俺は〈幼若竜〉で『看破』し、すぐに名前を共有した。




