#1558 〈竜共のハープ〉使用。仲間になる亜竜たち!
「ゼフィルス君! これは〈竜共のハープ〉を使う流れなんじゃないかな!?」
「〈竜〉種ゲット!? ねぇゲット!? 私も竜騎士ですか!? 〈竜〉どこにいますか!?」
「もちろんその予定だぜ。まあ落ち着けフラーミナ。それとアルテ、アルテには〈ワイバーン〉という〈亜竜〉がすでにいるだろ」
「〈竜〉がゲットできるのでしたら、そっちの方が欲しいです!」
アルテが珍しくやる気と意欲が満々だった。
その意欲、嫌いじゃない。
〈ワイバーン〉は早く〈竜〉にならないと、ちょっと危ないかもだが。降板的な意味で。
「いいだろう! ここ〈火山ダン〉でテイムできる最高の〈亜竜〉、もしくは〈竜〉をゲットしに行こうか!」
「「おおー!」」
まあ、〈竜〉はここには居ないのだが、水を差すこともあるまい!
「ゼフィルス君! 〈悪魔〉系の入った〈竜〉はいますか!? さっきの徘徊型みたいな!」
「暗黒りゅ――ゲフンゲフン! 確かにあの徘徊型は悪魔っぽかったよな。俺もシヅキの『召喚契約』で契約出来そうな気がしたんだよ」
普通にシヅキに聞かれて危うく〈竜〉種の〈暗黒竜〉のことを喋りそうになってしまい慌てて咳払いして誤魔化した。あぶないあぶない。
シヅキの『召喚契約』は、契約したモンスターを『悪魔召喚』を使って召喚させることができるというもの。だが、これは〈悪魔〉系のみという制限があるため、ただの〈ワイバーン〉などでは契約不可能だ。
しかし、闇方向へ進化した〈暗黒竜〉ならば〈悪魔〉も内包しているので契約は可能だ。ただ、〈暗黒竜〉は〈火山ダン〉ではなく、上級上位ダンジョンにいかないと会えないんだけどな。ここ、〈亜竜〉しか出ないし。
「〈悪魔〉を内包する〈亜竜〉か〈竜〉が居れば、すぐにシヅキに教えよう」
「ありがとうございます!」
とはいえ〈亜竜〉で〈悪魔〉を内包しているモンスターは皆無なので、シヅキには上級上位ダンジョンまで少し待ってもらうことになるだろう。
だがそれでは可哀想なので、妥協案として〈捕獲召喚盤〉を使ってもらい、〈亜竜〉を召喚できるようにしてあげようと思う。以前捕獲登録した〈チャームゴーレム〉もソフィ先輩にデリートしてもらったので、1種までならまた捕獲できるしな。
それから俺たちは、この〈竜共のハープ〉を使うのに適したモンスターを探して各所を探し回った。
テイムした後、やっぱりあっちが良かった、とならないよう。よく見極めながら候補としてカウントしていき、とうとう69層まで到達することになる。
「私が思うに、一番の候補は〈ヒュドラ〉だと思うんだよ!」
そうキリッとして言うのはフラーミナ。
ついこの間、66層から出現し始めた伝説の〈亜竜〉、〈ヒュドラ〉をフラーミナはいたく気に入ったのだ。
絶対〈怪獣のリンリン〉先輩、もとい〈集え・テイマーサモナー〉のカリン先輩とエイリン先輩の合体技、〈ヒュドラもどき〉に影響されたと思われる。
もしかしたら〈リンリン先輩〉に自慢したいのかもしれない。
本物の〈ヒュドラ〉を連れて行くとか、カリン先輩たちの反応が楽しみ過ぎるやつじゃん! その時は是非俺も呼んでもらうとしよう。
ちなみに〈ダン活〉の〈ヒュドラ〉は3つ首から5つ首の〈亜竜〉だ。最初が〈3つ首〉で進化していくごとに首が増え、最終形態は〈オロチ〉系統の〈竜〉種、〈ヤマタノオロチ〉に進化する。強いぞ。
「私は〈地竜〉ですね! 〈ドレイク〉を全く意に介さずなぎ倒していたのに惚れました! とにかく強いです!」
アルテが興味を持ったのは意外なことに〈地竜〉だった。
翼が無く、空を飛べない代わりに非常に高い攻撃力と防御力を兼ね備えた、4足歩行型のモンスター。
こいつも66層から出てきたモンスターで、51層から出現した〈ドレイク〉と争っている場に遭遇したところ、力の差を見せつけぶっ飛ばして撃退していたのだ。
それを見たアルテがキラキラした目で「おお~」となっていた。君ヒーラーだよ?
ちなみに進化すれば〈陸竜〉系統という〈竜〉種へ至り、それはそれはとんでもない大きさになってプレイヤーを驚かせたのだが、まあこれはまた今度語ろう。
〈陸竜〉を壁にした戦法はゲーム〈ダン活〉時代にも結構あったし、ヒーラーの拠点としても使える。悪い選択肢ではないだろう。
「むむむ~〈悪魔〉の〈亜竜〉、いなかった……」
「ドンマイだシヅキ。この先別のダンジョンならもしかしたら居るかもしれないし、そう落ち込むことでもないと思うぞ?」
そうシヅキも励ましておく。
〈悪魔〉系の宝庫、上級中位ダンジョンのランク5、〈地下の魔界ダンジョン〉にでも今度連れて行ってみようか。
「なら、妥協して〈捕獲召喚盤〉で〈スカイサーペント〉を捕獲したい! 〈毒〉と防御力デバフが気に入ったんだよ!」
「オーケー、それならゲットできるな!」
シヅキが気に入ったのは〈ワイアーム〉の進化系、〈サーペント〉系列の〈スカイ〉系、〈スカイサーペント〉だった。進化すれば〈龍〉系統に進化する、中々のモンスターだ。まあ、〈捕獲召喚盤〉のモンスターは進化どころか経験値も貰えないんだけどな。
ちなみに〈ダン活〉では〈龍〉も〈竜〉種である。〈龍〉は名前、〈竜〉は種名だ。
また、〈ダン活〉には〈サーペント〉系列の〈シー〉系、〈シーサーペント〉は出現しない。〈ダン活〉って水中戦はないからだ。
3人の強い要望もあり、早速テイム&捕獲しにいくことにした。
「いた! 〈ヒュドラ〉発見! しかも〈5つ首ヒュドラ〉だよ!」
「進化個体か、そいつは景気が良いな! 早速ボコるぜ!」
〈火山ダン〉に登場する〈ヒュドラ〉は最高で〈5つ首〉まで出る。〈3つ首〉や〈4つ首〉よりも進化している種なので、ゲットするのなら〈5つ首〉一択だな。
またモンスターは屈服させた方がテイムしやすい。つまりHPを削れば削るほどテイムを成功させやすくなるのだ。
「「「「「ヒュラアアアアアアア!?」」」」」
早速フラーミナのいる6班が突撃。
カタリナが結界で動きを封じ、ロゼッタが防御して味方を守り、ダメージを与えていくとHPが危険域にまで割り込んだ。そこでフラーミナが叫ぶ。
「撃ち方やめー!」
「なぜ戦風?」
さてはフラーミナめ、結構はしゃいでいるな?
テンションが上がると言葉が乱れる、その現象、とてもよく知っているぞ。
フラーミナの装備は〈群長将軍シリーズ〉なので、セリフと行動がよく似合っていた。こういうロールは嫌いじゃない。
俺が〈竜共のハープ〉を手渡してあげると、とてもキラキラした表情で受け取っていたよ。
「いっくよー!」
「早くしてくださいフラウ、動きを止めるの、大変なんですよ」
「よし、今だよフラウ! 使っちゃってください!」
カタリナとロゼッタで身動きを封じ、フラーミナが〈竜共のハープ〉を奏で始める。
初めてハープを奏でたというのにとても澄んだ音色が周囲に響き、まるで自然がお祝いしてくれているのではないかという錯覚を覚えさせてくれた。
音色が始まった瞬間から〈ヒュドラ〉はおとなしくなり、なんとなくうっとりとした表情でフラーミナを見つめる。そこへ。
「『我が軍門に降れ』!」
「ヒエエ!?」
またも「あれ!? 仲良くする感じじゃないの!? 」と言わんばかりにヒュドラがびっくりして目を見開く。だが。
「あ、テイムアイコン出たよ!」
「テイム成功ね!」
「おめでとうフラウ!」
「ありがとう~!」
〈5つ首ヒュドラ〉にテイムアイコンが出てハイタッチ。
カタリナとロゼッタも魔法の発動をやめて3人でキャッキャと祝っていた。うむ、尊い。
「今日から君はヒーちゃんだからね!」
「ヒュ????」
なお、名付けでは〈5つ首ヒュドラ〉が呆然としたような顔をしていた気がしたのは、きっと気のせいだろう。
続いてアルテの番だ。
「〈地竜〉発見です!」
「いいでしょう。ゼニスとどちらが上か、分からせてあげます。そうすれば抵抗する気も失うでしょう」
「クワァ!」
「な、仲間になる子かもしれないですから、お手柔らかにおねがいしますねアイギス姉さま!?」
これにはアルテの居る5班が担当し、アイギスがゼニスに乗って襲撃。
「ドアアアアアアアア!?」
そして、どっちが上か分からされてしまったのだった。
制空権をゼニスとアイギス、それにエフィとフィナに取られてしまった〈地竜〉は、ちょっと悲しそうだった気がしたのは、きっと気のせいだろう。
最後はゼニスが〈地竜〉の上に乗って押さえ、アルテが〈竜共のハープ〉を鳴らして『騎獣モンスターテイム』を使用し、無事〈地竜〉はアルテのテイムモンスターになったのだった。
「やりました! 名前は、えっとリュラトーと呼ぶことにしますね! よろしくお願いしますリュラトー!」
「ドラッラッラッラッラ」
なお、こっちの名付けでは〈地竜〉の方が笑うほど円満に終わった模様だ。
「そういえばアイギスはいいのか?」
「私にはゼニスがいますから。他の〈亜竜〉に乗る予定はありません」
「ク、クワァ!」
ちなみにアイギスの方では、主と竜が友情を確かめ合っていた。
いい話だ。
最後にシヅキだが、こちらも〈スカイサーペント〉が寄ってきたところをメルトに叩き落としてもらい、〈捕獲召喚盤〉に吸い込んで無事登録完了。
これで3体の〈亜竜〉が手に入ったな。
後で〈竜共のハープ〉の回数も回復しておかないと。
「結局〈竜〉は居なかったね」
「だな、ここに居ないということは上級上位ダンジョンで出るに違いない。〈竜〉をテイムできるアイテムが存在するということは、ダンジョンのどこかに〈竜〉が登場するはずだからな!」
「! 逆転の発想!」
「その可能性は高そうです!」
フラーミナが落胆していたが、俺が可能性の話をしてあげれば、アルテと共に燃えていたよ。
上級上位ダンジョンの楽しみが、また1つ増えたんだぜ。
テイム&捕獲を果たした俺たちは、70層へ進んだ。
ついに最下層に到着だな。
レアイベントボスこそスルーして最速で進んできたが、今日は土曜日だ。
今日と明日合わせて2日間、時間はあるな。
ほとんど予定通りに進めて来れて良かったよ。
ちなみに徘徊型は3度ほど攻めてきたので、全て素材と宝箱に変えたとだけここで言っておく。〈夜ワイン〉に乾杯!
さ、料理アイテムを食べて、〈最奥ボス〉を打倒するか!
これで俺たちも上級中位ダンジョンの攻略者の証、5つ目だ!(気が早い)




