#1544 初めての最奥のボス戦だが、知ってるぞ、これ
ボス部屋に入れるのは5人まで。
久しぶりの超レギュラーメンバーで挑むんだぜ!
ゲーム時代。〈上級部門・公式最強職業ランキング〉で七位以内常連の職業だった、第二位【救世之勇者】、第三位【大聖女】、第五位【プリンセスヒーロー】、第六位【戦車姫】、第七位【操聖の盾姫】の、5人で挑んでやるぜ!(過剰戦力)
ふはははははは!
「『看破』!」
ボス部屋に入ると、待ち構えていたのは――首が3本に増えたウルフ系〈バトルウルフ(第五形態)〉だった。エステルが即で『看破』を使う。『看破』は戦闘スキルじゃないのでヘイトを稼がないのが良き。
「やはり、〈バトルウルフ(第五形態)〉ですか!」
「第四形態の時に頭が2つになってたけど、今度は3つなのね! 面影があるわ!」
「形態が進むごとに首が増えていくのかもしれないな!」
「なでなでする頭が増えているのです! これではどれを撫でたら良いのかわからないのです!」
そう、〈バトルウルフ〉って第四形態の頃から形態が進むごとに頭が増えていくんだよ。
最後の最終形態とか頭が5つあるからな。なお、これはまだ秘密。
ルルだけなんか可愛い懸案事項に悩まされていた。「ルルの手は2つしかないのです」と本気で悩んでいる様子!
いやルル、これからバトルするんだ。なでなでは後にしなさい。
ちなみにここは上級なので、HPバーが少なくなると2回形態変化する。この〈第五形態〉からも2回形態が変わる。でも第六形態や第七形態ではなく、〈バトルウルフ(第五形態)〉の第二形態とか言う名称になる。
ややこしいが、そういうものだと思ってほしい。
さて、目の前のバトルウルフに戻ろう。
全長8メートル。姿はもうかなり黒色化が進み、目は赤く、かなり獰猛そうな3つの頭が唸っている。
その口からは闇、氷、最後に火の属性のオーラが見え隠れしていた。
絶対ブレス吐くじゃん、と思わせるようなオーラだ。そして案の定、俺たちが部屋に入って感想を言った直後、ブレスを放ってきた。
「「「ウォォォォォン!!」」」
「見え見えよ――『アジャスト・フル・フォートレス』!」
先制攻撃!
むしろ奇襲に近いか。
〈バトルウルフ(第五形態)〉の初手はブレスだ。初見殺しでもある。
初っぱなから3属性が合わさったとんでもない威力のブレスが放たれるのである。
相手はどんなボスかな~とか観察したり、「よ、バトルウルフお久~」とかのんきに挨拶しているとこのブレスで壊滅的被害を受けるぞ。気をつけろ。
俺もゲーム時代、一度挨拶してやられかけたことがあった。
だが今回はタンクがシエラである。これほどの安心感はない。
初手のブレスにもしっかり合わせて、城のような盾で見事防ぎきっていた。
「バフを掛けるわ! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『病魔払いの大加護』!」
「『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『四聖操盾』!」
続いてバフ、一瞬ラナがシエラのヘイトを上回るが、シエラがしっかりヘイトを稼ぐスキルを使ったので安心。
「「「ウォン!」」」
「速いっ!」
「『鉄壁』!」
瞬間、一気に加速した〈バトルウルフ〉が突っ込んで来た。
思わずエステルが驚愕する中、シエラはしっかりと盾を合わせて受け止める。
ズドンッと、凄まじい音が聞こえてくるが、この体格差でシエラは微動だにしていない。さすがだ。完全に受け止めることに成功しているな。
「とう! 『魅惑のラブリーヒーローソード』!」
「うぉぉりゃああ! 『勇者の剣』!」
「『戦槍乱舞』!」
もちろん止まった所を俺たちアタッカーが逃すはずもなく、まずはデバフを付与する。
これでかなりダメージが出るようになったな。最後に回り込んだエステルの連打が入って良いダメージを稼いだぞ!
「「「ウォン!」」」
「あ、退避! 『極翼盾』!」
「にゅ!? 『小回り回避』なのです!」
「『アクセルドライブ』!」
俺たちが周囲で攻撃を仕掛けたためか、見たことのあるモーションをする〈バトルウルフ〉。これは第二形態の時のユニークスキル『バトルウルフ流・爆炎尻尾薙ぎ』、その3属性版だ!
急ぎ指示を出すと、ルルはでんでんでんぐり返しでバイバイバイと離脱し、エステルはドライブ系で離脱。俺は防御スキルで攻撃に備えた。
瞬間、あの巨体で凄まじいアクロバティックな動きが炸裂。あの時よりも巨大になった尻尾が横薙ぎと縦落としの十字攻撃を繰り出し、シエラと周囲を薙ぎ払ったのだ。
もちろん俺にも横薙ぎは命中。ターゲットをメインに攻撃しつつ周囲にも範囲攻撃できる優秀なスキルだ。だが、その攻撃はすでに見切っている!(初めてです)
「はっ! 『フィニッシュ・セイバー』!」
盾で防いで即反撃。
盾の装備スキル『極翼盾』は防御のあとすぐに攻撃スキルを発動出来る優秀なスキル。
あの時を思い出すな! フィニッシュだ!
「「「ウォン!?」」」
ズッッッドンッと衝撃!
そのスキル、第二形態の時のユニークスキルを参考にしているせいなのか、発動後の硬直がやや長い。そこを逃さず『フィニッシュ・セイバー』で思いっきりぶった斬り、そのまま地面に叩き倒した。
「うおっしゃーダウン取ったーー!! 総攻撃だ!!」
「とう! おかえりの『デュプレックスソード』! 『フォースバーストブレイカー』! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』なのです!」
「イブキ召喚! 換装! 『トライ・スラストカノン』! 『インパルススラストキャノン』! 『ホーリースラストバースト』!」
「『雷属聖剣化』! 『スターオブソード』! 『ライトニングバニッシュ』だ!!」
「くらいなさい! 『大聖光の四宝剣』! 『大聖光の十宝剣』! 『聖光の耀剣』!」
「『シールドスマイト』! 『グロリアススマイト』! 『ショックハンマー』!」
ダウンしたら総攻撃!
これが綺麗に決まったな。
やっぱ〈バトルウルフ〉はいい。パターン分かってるもん!
ちょっと属性と体積増えただけで、行動あまり変わってないからな!
大ダメージが入った〈バトルウルフ〉が起き上がるが、タゲはシエラのままだ。
さっきも挑発付きのスマイト系でヘイト稼ぎまくっていたからな。
「「「ウォーン!!」」」
「ルル、どんどんデバフ掛けてしまえ!」
「了解なのです! とう! 『チャームポイントソード』!」
俺のゴーサインにルルが飛び掛かる。
ラナのバフと相まってかなり有利になったんだぜ!
「なるほどね。なんだか思い出してきたわ――『攻陣形四聖盾』! 『インパクトバッシュ』!」
「バルフ、よく見ると身体が大きくなっただけで動きはあまり変わってないものね!」
「はい。強力な攻撃は多いですが、どう動けば良いか、なんとなくわかります」
出たな。〈バトルウルフ〉戦特有の現象。〈あれ? これ知ってるぞ〉現象だ。
初めて戦うボスだというのに、すでに全員が〈バトルウルフ〉の動きに慣れてきている不思議。
まだ第二形態にもいってないのに!?
シエラなんか余裕が出てきたからか攻撃までし始めちゃってるし!
だけどそれも仕方がない。だって〈バトルウルフ〉だもん。
俺の「勇者だからな!」と同じく「〈バトルウルフ〉だからな!」で説明が付くんだ。
「「「ウォン!!」」」
「あ、あれは第四形態のユニークスキル、『バトルウルフ流・闇氷柱豪雨』の3属性版だ!」
「なにその名前!」
「みんな集まって――『ディバインシールド』!」
見たことのある属性の豪雨。
前は2属性だったけど、今度のは3属性だ。3つの頭が上に向かって各属性を吐き出すと、続いて凄まじい闇と氷と火の雨が降り注ぐ。
だが、前にユニークスキルを見たことのある俺たちにとって対処は容易い。
すぐにシエラの下に集合し、盾の傘で属性の豪雨をやり過ごす。
レアボスのユニークスキルだったもののパワーアップ版を、まさか通常ボスが普通に使って来るだなんて! 強い! 強いぞ! 〈バトルウルフ〉!
正確には強かった!
「反撃いくぞ! お返しの――『聖剣』!」
「「「ウォン!?」」」
「そこなのです! 『ロリータタックル』!」
「「「ウッ!?!?!?」」」
雨が上がった瞬間を見計らって飛び出し、『聖剣』を食らわせ動きを止めた瞬間、ルルの凄まじいジャンピングおでこ攻撃が真下からボディを貫き、なんと〈バトルウルフ〉は2回目のダウンを決めてしまう。
「総攻撃だー!!」
もちろん総攻撃を食らわせる。
すると1本目のHPバーが消え、第二形態へと移行。早っ!
今回身体の変化は無し。3属性のオーラが強くなり、3つの頭部だけでは無く身体全体からもオーラを発するようになった。
「第二形態。第六形態ですか?」
「いや、第二形態で良いと思うぞ。こんがらがるようならHPバー2本目の形態で良いんじゃないか?」
「……了解です」
案の定エステルがやや困惑していたが、俺の言葉に気を引き締め直して槍を構えた。
するとバトルウルフは3つの頭を上に向け、遠吠えを開始した。
「「「ウォーーーーーーン!」」」
「あ、こりゃ眷属を呼んでるな」
「なるほどね。〈バトルウルフ〉と言えば眷属だものね。では私はボスを担当しておくわ」
「了解、眷属はこっちで引き寄せる!」
第二形態は眷属召喚。
遠吠えを聞いたからか、部屋に眷属ウルフが出現。3メートル級から4メートル級まで様々な種類の〈ウルフ〉系が召喚された。数は6。
本来なら眷属と本体による連携が非常にやりにくいことこの上なし、となるんだが。
「『アピール』!」
「ボスはこっちよ――『完全魅了盾』!」
「ルルもやるのです! 『プリンセスデビュー』なのです!」
対処法を知っているのでなんの問題も無い。
俺とルルでヘイトを稼ぎ、眷属を呼ぶと、シエラがユニークスキル『完全魅了盾』でボスのタゲを強制的に引きつけてそのまま連れて行ってしまった。
はい。分断成功です!




