#1537 最初のエリアボス〈ホワイトファング〉戦!
「グンナ~イ『ナイトメア・大睡吸』! 『MP大睡吸』! 『夢楽園』!」
「にゅ~。エリサお姉ちゃん強すぎるのです! ルルの出番がないのですよ?」
「私もです。タンクなのに挑発スキルすら使っていません」
こちらは2班のルル、シェリア、キキョウ、エリサ、フィナ、のパーティ。
ロリが4人に保護者1人というとんでもないパーティだ。
シェリアの顔がいつもより引き締まっているような気がしなくもない。あ、緩んだ。あ、でもまた引き締まった。
さっきからシェリアの顔はこんな感じだ。
戦闘においてはエンカウントした側からエリサが先制の〈良い夢をごちそう様〉戦法で屠ってしまうので、他のメンバーが全く活躍出来てないな。
とはいえ、この辺はまだまだ相手が弱いので、連携慣れしているパーティなら今更真面目に連携を合わせるまでもない。
このパーティはロリレンジャー。つまりはよく共にするメンバーたちなので、まあ不満と言えば遊べないというだけだろう。
「では次は私たちね」
続いて順番的に3班、シエラ、アリス、ゼルレカ、メルト、ミサトのパーティが前に出る。
「シエラ~、アリスちゃん~、ゼルレカちゃん~、頑張るのです~」
「ルルお姉ちゃん、アリス頑張るね」
「ゼルレカ、アリスのことは任せましたよ」
「任せろってキキョウ。アリスのことはあたいが絶対守ってやるから。――あとルル先輩、あたいにちゃん付けはほんと勘弁してくれ」
「いや、ゼルレカはアタッカーでしょ。守るのは私の役目よ」
「にゅ?」
2班のロリーズと3班のロリーズ&シエラのやり取りがどこか良き。
今回キキョウは2班、アリスとゼルレカが3班という構成だ。
キキョウは普段から自分の後ろで守られることの多かったアリスと別パーティになり、とても心配な様子。なお、ゼルレカのことは全然心配してない。
「たはは~。このパーティって背の低い子多いねメルト様?」
「ほう。何が言いたいんだミサト? 場合によってはそのウサミミと今生の別れになるかもしれないぞ」
「そ、それは勘弁なんだよ!?」
なにやらメルトの手が怪しく構えられたな。いつ発射してウサ耳を掴んでも不思議ではない。
そんな波動を感じたのか珍しくミサトが自分のウサ耳を掴んでぴょんと距離を取っていた。
「あれ? この気配って――『エリアボス探知』! あ、やっぱり――みんな、エリアボスが接近してきてるよ!」
「1層のエリアボスか!」
まだ軽く肩慣らしをしている最中にカイリからエリアボス接近の報告を受ける。
普段フィールドを自由に跋扈しているエリアボスが真っ直ぐ接近してくるなんて珍しい。
だが実はこれ偶然じゃないのだ。
全てのダンジョンではないが、いくつかのダンジョンではモンスターを狩っていたりすると、それを嗅ぎつけたエリアボスが乱入してくる現象が存在する。
〈徘徊型参戦現象〉や〈守護型参戦現象〉と同じ、〈エリアボス来襲現象〉と呼ばれている。
これはこの現象が起こるときは、エリアボスの気が立っているから参戦ではなく来襲現象と呼ばれているな。
「おいおい、エリアボスが来てるのかよ。やべぇじゃねぇか!」
「マシロン、シヅキ、トモヨの後ろへ」
「はいです!」
「トモヨちゃん~、何があっても私たちを守ってね!」
「ちょっとシヅキちゃん~、まあいいけどね!」
ゼルレカが大剣を構えて警戒し、エフィもマシロとシヅキをタンクであるトモヨの後ろに避難させて護衛に就く。なんか新人の方が強く警戒しているな!
上級中位のエリアボス接近の報は、彼女たちからすれば徘徊型が接近してきているのと変わらない現象なのかもしれない。
だが、警戒するゼルレカたちのそんな様子が新鮮に映るのはなんでだろうね?
「接触まで残り20秒くらい!」
「よし、ノーアの班で受けてくれ! ヤバそうなら1班も加わる!」
「承知いたしましたわー!」
「祝福するわね! 『プレイア・ゴッドブレス』!」
カイリの報告にこちらが担当するのは4班のノーア、クラリス、ナキキ、シュミネ、ミジュという1年生のみの班だ。
タンクが【破壊王】のナキキという、ちょっとアタッカー寄りの構成だが、そこはノーアがタンクに加わることでカバーするパーティだな。
「ナキキさん! まずはわたくしがカウンターで動きを止めますわ!」
「わかったっす! 挑発はその後取るっす!」
軽く打ち合わせ後、エリアボスがくる方向へ陣形を整える。
先頭がまさかのノーア、続いてナキキだ。
ミジュがその斜め後ろに付き、クラリスとシュミネが後衛に付く配置。
俺たちは邪魔しないように下がって見守る配置だ。
深い森のため接近するエリアボスを視認できないという悪条件。
さすがは上級中位ダンジョン。1層目からかなり飛ばしてくるな。
「来るよ!」
カイリの言葉から約3秒後、突如として茂みから狼登場!
全長8メートル超えの白狼――〈ホワイトファング〉だな。
この最初の激突で崩れるようなら増援を送るが、果たして。
「ワァァァァァオン!」
「『カウンターバスター』ですわ!!」
俺の心配は杞憂だった。
最初の交差、奇襲で飛び込んだ〈ホワイトファング〉だったが、完全に待ち構えていたノーアによって、逆にぶっ飛ばされてしまう結末に終わる。
あれは〈五ツリ〉のカウンターのバスター系だ。
カウンターの射程は5メートルと長いが、ゼロ距離に近いほどダメージが上がる。
ノーアはこれをほぼゼロ距離でぶち当て、8メートル超えの巨体をぶっ飛ばしたのだ。
「ワァァァァオン!?」
「ワンモア? オーケー。――『クマンネイル・チョッピングライト』!」
いやミジュ。今のはワンモアではなくてただの鳴き声だ。確かにワンモアに聞こえなくもなかったけどな。
ミジュの拳から出た巨大なクマの拳が、斜め振り下ろしの軌道でぶっ飛び中の〈ホワイトファング〉を直撃。そのまま地面に叩きおとしたのだ。ダウン。
「ミジュ早いっす!? 負けてられないっす! 『アーマーソウル・クラッシャー』!」
続いて追いついたナキキが巨大ハンマーを振り下ろす。『アーマーソウル・クラッシャー』は防御力・魔防力を低下させるデバフ攻撃だ。〈五ツリ〉なのでかなり強力なデバフだな。
「上からいきます! 『操剣山雨』!」
これはクラリスの攻撃。小さい範囲を狙った集中豪雨のような剣が大量に〈ホワイトファング〉へ降り注ぐ。
〈エデン〉にだいぶ慣れてきたクラリス。もうノーアが先頭に立とうが最近は何も言わなくなり、今では淡々とノーアが作った隙を突く感じになっている。
うむ。だいぶ染まってきているな。え、何にって? 〈エデン〉にだよ!
ダウン中に総攻撃が叩き込まれていく光景はさすが〈エデン〉って感じだろ?
しかしちょっと物足りない。後でノーアに「総攻撃ですわ!」と言うよう指導しなくては。「総攻撃」のノーアバージョンが、ちょっと見たいのである。
「ワァォォォォン!!」
「これは!」
ダウンから復帰した〈ホワイトファング〉は一声上げると幻影の頭部をいくつも発射してきた。分身頭だ。もちろん実体もあるのであの凶悪な牙で噛みつかれればダメージを負う。範囲攻撃だな。
「任せてください――『大樹の護衛』!」
ズドンと突然樹齢1000年級の大樹が召喚され、〈ホワイトファング〉の攻撃が全て大樹に吸い込まれるようにして激突。しかし、大樹は傷つきながらも耐えきった。
これはシュミネの防御魔法だ。
ラクリッテの『ミラージュ大狸様』に近い魔法だな。
「今回からはわたくしも攻めて参りますわ! ――『十全武器展開』ですわ!」
ノーアが強力なスキルを使ったぞ。
これは文字通り十個の武器を展開するスキル。
ノーアが持っていた〈空間収納鞄〉から自動で8つの武器が追加で現れ、ノーアの周囲に浮かび狙いを〈ホワイトファング〉に定めた。
「『ウェポンマスターストリーム』ですわ!」
そして飛び込むノーア。
これは両手の2本と浮かぶ8本を使った強力なラッシュ攻撃スキル。
縦横無尽の攻撃が〈ホワイトファング〉を襲ったのだ。
「よし、タゲ取ったっす!」
「そのタゲ、いただきますわ! 『わたくし、輝け』!」
「ワァァァァオン!」
「あれっす!?」
せっかくナキキがタゲを取って安定させようとした矢先、ノーアが使ったのは一時的に特大ヘイトを稼ぐ『わたくし、輝け』。
ただのヘイト稼ぎスキルではなく、一時的にというのがミソ。
分類的にはアピール系だが、アピールしている間だけヘイトを稼ぎ、スキルが終わるとヘイトも収まるという、変則的かつカウンターと相性の良い優秀なスキルだ。
【革命姫帝王】には普通の挑発系スキルは無いが、こういう一時的にヘイトを稼ぐスキルは存在するのである。
そしてもちろん、この後することは決まっている。
「このタイミングですわ! 『超カウンターブラスター』ですわー!」
〈ホワイトファング〉が強力な噛みつきで視界いっぱいに口が広がり、噛みついてきた瞬間、ノーアの周りを浮いていた強力な武器たちが一瞬でその威力を吸収し、カウンターで発射された。
「ワアンブリャグゥゥゥ!?!?」
おお! 全弾命中! こりゃ相当なダメージが入ったな!
これはブラスター系でもあるのでカウンターじゃなくても使えるのだが、カウンター時だと威力が相当大アップする強力なスキルだ。もちろんカウンターなのでノーアのダメージはゼロ。強すぎ!
そして発射された8つの武器はいつの間にかノーアの周りに戻っている。
ノーアが攻撃すれば8つの武器も自動で攻撃してくれるのでダメージが伸びる伸びる。さすがは公爵の〈上級姫職〉だ!
そのままノーアの活躍が続き、どんどんダメージが蓄積していく。
「なんか全然タンクしていない気がするっす!」
「気のせいですわ! 『カバーカウンターインパクト』!」
「ワウン!?」
ナキキの嘆きにオホホと流すノーアがまた強力なスキルを発動。
『カバーカウンターインパクト』はその名の通り、カバー系とカウンターがセットになったとんでもないスキルだ。
つまり、相手の攻撃にかばうを発動して回り込んだと思ったら、そこからカウンターをとってぶっ飛ばすという、ハチャメチャな〈五ツリ〉スキルである。
相手からしたら急に横から飛び込んで来てカウンターを決められるのだ。マジやばい。
「あ、ダウンしたわ」
「総攻撃ですわー!! 『ドロップ革命』!」
ノーアのカウンターが決め手となってダウン後、トドメの総攻撃。
ノーアバージョンの「総攻撃」が聞けて俺は満足だよ。
これにより〈ホワイトファング〉のHPはゼロとなり、そのままエフェクトの海に沈んで消えていってしまうのだった。
さて、宝箱の時間です!
すでにノーアは『ドロップ革命』を発動済み。
〈ホワイトファング〉はエリアボスなので、希少ボスのドロップが落ちることだろう。
そしてエフェクトが消えたところに残っていたのは、〈金箱〉だった!
ふはははははは!




