#1536 俺は〈上級の狼ダン〉で天魔パーティを組む!
ギルドでの話し合いの結果、このダンジョン週間ではまず〈大狼の深森ダンジョン〉に潜ることに決定した!
早速そのまま勢いで〈大狼の深森ダンジョン〉に突入する!
「ここが〈大狼の深森ダンジョン〉!」
「なんだかすっごく深い森って感じね」
「ブリーフィングで決まって30分で今上級中位ダンジョンのランク7にいるですの!」
「なのに上級生の皆さんのこの落ち着きっぷりだよ!」
サーシャとカグヤのツッコミが冴え渡る!
入ダンしてみると、そこはまさに薄暗い森という感じのダンジョンだった。
樹齢何百年? いやもしかして千年いってる?
という樹木が何本も立っていて、もちろんすんごく大きい。
何十メートルもの巨大すぎる樹木が樹形を形成し、道は開けているのに真上は日光を求めて広がった枝葉で覆われていた。
「私、なんだか怖くなってきたんだけど」
「や、やめてくださいですのクイナダさん。ここはそういうダンジョンではありませんですの」
「そうだよ。……そうだよねゼフィルス先輩?」
「…………いや、まだ分からないな」
「「「ひぇ!?」」」
「ゼフィルス?」
「いや、ちょっと待とうかシエラ。俺も〈大狼の深森ダンジョン〉に入るのは初めてだからさ」
「…………」
あまりの本格的な森にクイナダ、サーシャ、カグヤがちょっと怯えながら聞いてきたので配慮して答えたら、シエラから無言の圧力が返ってきた。
シエラがジト目じゃない!? そんな!
だが、実際はここに狼の霊なども登場するので、お化けはいないよ、なんて口にできないのがちょっとつらたん。
そんな中、もっと別のことに関心を向ける人もいて。
「ねぇゼフィルス。そういえばさっきからゼフィルスってここのことを〈大狼の深森ダンジョン〉ってフルネームで言っているわよね? いつもみたいに略称はしないの?」
お、気が付いちゃったかラナ。
そう、いつもなら略称で呼ぶところ、俺はここのことを今の所フルネームで〈大狼の深森ダンジョン〉と呼んでいる。なにしろこのダンジョンの通称名は、今言うのがおかしいからだ。
その名も――通称〈56ダン〉。
人によっては〈ゴロウダン〉なんて呼び方をする。
由来は最奥のボス部屋に鎮座する通常ボスとレアボスだ。
なんとここにおわすのは、みんなもお馴染み――〈バトルウルフ〉なのである!
通常ボスが〈第五形態〉、レアボスが〈第六形態〉だ。
故に通称名が〈56ダン〉になったのである。
まあ、〈大狼の深森ダンジョン〉って略すの難しいからね。〈大狼ダン〉だとなんか略せてる気がしないし。
普通の〈狼ダン〉だと似たようなのが初級と中級にあるため。なら数字で良いんじゃない? となったのである。
そのため言葉を濁したら、それを見てニヤっとしたラナが胸を張りながら手を当てるポーズでこう言った。
「それなら私が考えてあげるわ! 〈狼ダン〉でいいと思うのよ!」
「ええ。分かりやすいですね。私は賛成です」
なんとラナが命名。エステルが即で賛成しやがった!
この従者、早いぞ!?
だが、俺は先程のことをあげて物申す。
「だが狼系のダンジョンなら初級中位の〈小狼の浅森ダンジョン〉や、中級中位の〈猛獣の集会ダンジョン〉があるぜ?」
そしてここは上級中位。
お分かりいただけたかもしれないが、この〈ダン活〉ではウルフ系はどの等級でも中位に位置し、上位へ上がるための壁となってプレイヤーの前に立ちはだかるのだ。
まあ、プレイヤーからするとやり過ぎてもはやパターンに慣れた状態なので、むしろボーナスステージになってしまったのだが、それはともかくである。
また、まだ登場していないが、最上級ダンジョンにもウルフ系ダンジョンが登場する。〈狼ダン〉だけではどのダンジョンのことか分からないのだ。だが、ラナは普通にそれを突き破ってきた。
「それなら〈上級の狼ダン〉でいいじゃない」
「!」
さすがはラナ。すぐにそこへたどり着くとは。
実はその〈上級の狼ダン〉、〈中級の狼ダン〉、〈初級の狼ダン〉というのは過去使われていた略称だ。
まあ、今では〈56ダン〉とか、〈34ダン〉とか、〈12ダン〉なんて呼ばれてしまっているけどな。
なるほど、リアルでも通る道というわけか。ならば流れに身を任せるのはアリだな。
「なるほどな。それじゃあここは〈上級の狼ダン〉に決定だ!」
「「「わーわー」」」
俺が了承するとラナの従者組が胸を張るラナを囲んで賞賛した。なにそのイベント!? 俺も参加していいかな?
「こほん。ゼフィルス?」
「おっと、そうだった。ここで長話もなんだ、早速攻略に挑むぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
シエラに促されて出発だ。
総勢49人。
凄まじい人数だ。
カイリとリーナには索敵役を頼み、バランスよくパーティを組んだ。
ここまで来るとレイドボスまでもう少しという気がしてくるぜ。
「モンスター発見! 数5、まだ見つかってないよ!」
「サンキューカイリ。それじゃあまずは俺のパーティから順番に行ってみようか!」
最初のモンスターは〈メガウルフ〉と〈ギガウルフ〉の群。
大きさ的に2メートル半と3メートル半という、1体1体がボス級の大きさのモンスターだ。
ハンディを避けるため、まずは俺たちのパーティだけ前に出て接触する。
今回、俺のパーティは俺、トモヨ、シヅキ、エフィ、マシロという、天魔メンバーだ。フィナとエリサを除いた天使と悪魔が大集合してらぁ。
「うわー、ゼフィルス君とパーティ組むの久しぶりだよ~。すっごいやる気出ちゃう。もちろんシヅキちゃんと一緒も嬉しいよ」
「私とトモヨちゃんが天魔で一緒にパーティ組むなんて、1年生の頃は考えられなかったよね」
「マシロンはトモヨの後方に居て、なんかあったら駆けつける」
「エフィ先輩は心配性です! 私空だって飛べちゃうんですから。楽勝ですよ!」
しかもみんな結構知っている仲っぽくて和気藹々。俺だけ勇者なのでちょっと羨ましい!
「お、相手が気付いたみたいだ。トモヨ、前に出てくれ!」
「まっかせて!」
そうこうしているうちにモンスターがこっちに気が付いて、凄まじい迫力のあるダッシュで駆けてきた。
だが、エステルの〈馬車〉すらその前に立ちはだかって止めたことのあるトモヨである。
その度胸は並ではなく、襲い来るウルフたちをガンガン盾で受け止めた。
「でっかい!!」
「ここのウルフさんたち、すごく大きいのです!?」
「……可愛くないですね」
「「「ウォン!?」」」
ちなみに襲ってきたウルフたちを見たエリサ、ルル、フィナの感想がこちら。
なんか戦うために前に出た俺たちのところにも鮮明に聞こえてきたぞ。
ウルフたちなんて「うっそ!?」みたいな表情をしてルルたちの方へ振り向いた気がしたのは、きっと気のせいではないはずだ。
「行くぞ、エフィ、シヅキ、出遅れるなよ!」
「出遅れるわけがない――『エルスター・フラッシュ』!」
「いっけー『悪魔召喚』! クロちゃん!」
「あれが悪魔召喚!」
「悪魔デス!」
エフィが太い光線をぶっ放し、シヅキは悪魔召喚。
なぜかシズとパメラがラナを庇うような仕草をしていたのはクロちゃんが〈マッスルデビル〉だからか?
筋肉凄いからね。
だがこの筋肉は凄いぞ。クロちゃん突撃でマッスルパンチ連打。反撃を受けても全く問題無し。『召喚契約』でダメージは任意でシヅキが引き受けることができるため、クロちゃんが消えることはそうそうない。マシロもシヅキとトモヨのことをしっかり見て回復を飛ばしているしな。かなり安定していると言っていい。
「これでトドメだ――『スターオブソード』!」
「「「「ワン!?」」」」
範囲攻撃で一掃して〈上級の狼ダン〉での初戦闘は終わった。
まだレベル的にシヅキ、エフィ、マシロは低いので俺のパーティに入れたが、問題は無さそうだな。
よし、どんどん進んでこう!




