#1533 ゼフィルス反省。レアイベントは屋上にあり!
「ゼフィルス。反省しなさい」
「えー」
「ゼフィルス?」
「はい。反省いたします」
現在、俺、反省中。
シエラの4つの小盾に四方を囲まれて硬い地面……、いや割と柔らかいふわふわなバルコニーで正座中だ。
さすがは猫のためのキャットタワー。地面が固いわけがなかった。
「この地面だとやりにくいわね。やっぱり一度降りてから」
「まあまあシエラさん、ゼフィルスさんのいつものアレですし、ここは1つ穏便にいきましょうですわ」
「言葉が若干乱れているわよリーナ? 顔がツヤツヤになってるじゃないの」
「えへへ~。ちょっと堪能してしまいましたわ~」
「ほらシエラ、相手が嫌がっていないのだからここはセーフで――」
「ゼフィルスは正座よ」
「あい……」
「ゼフィルスお兄様、がんば、なのです」
「ありがとうなルル。でも大丈夫だ。このバルコニーの床柔らかいしな」
「やっぱり地面に降りましょう。ここではゼフィルスは反省できないわ」
「まあまあ」
紆余曲折あったようななかったような気がしたが。
ようやく俺は解放された。
リーナがシエラを説得してくれたおかげ……いや、なんかリーナが説得する度に逆効果になっていた気がする。気のせいかな?
最終的にシエラは1年生たちの視線に耐えかねてやめた気がするのも、きっと気のせいだ。
「うふふ、うふふふふふ。ゼフィルスさんとクルクル回っちゃった」
「カタリナ超ご機嫌じゃない。分かるけど」
「ええ。一緒にクルクルさせていただいたのは久しぶりでした」
カタリナ、フラーミナ、ロゼッタもああ言っていて満足度が高そう。
シエラよ、一緒にクルクルダンスしようぜ! すれば分かる!
「…………」
おっふ。またもシエラのジト目が! これではテンションがまた限界を振りきってしまうかも!
「という訳なのです。ゼフィルスお兄様はとっても嬉しいことがあるとクルクル回るのです。ルルも一緒に回ったことがあるのです」
「とんでもやべぇじゃん……」
「そしてシエラ先輩に見つかった日にはああなってしまいますの!」
「でもなんかみんな満足そうなんだよ! ゼフィルス先輩も含めて! どういうことなんだろうね!?」
あ、なんかルルが1年生たちを集めてなんか講義してる!
ゼルレカやサーシャ、カグヤがおののいているぞ。
大丈夫だ。そのうちクルクル回る機会はある。そしたら分かるさ!(洗脳)
その後、リーナに『ギルドコネクト』で4班を呼んでもらい、合流したらキャットタワーの最上階を目指すことにした。
「そうだ、シエラたちのところはどうだったんだ?」
「普通は最初にそれを聞くはずなのだけど」
「いや、シエラがそっちをフォローしてくれたんだから心配はしていないさ」
「……そう。んん、信頼されているのね」
「もちろんだ! 俺がシエラを信頼しないはずがない! 今聞いた『どう?』っていうのは〈金箱〉のことな。そっちもドロップしたんじゃないか?」
「…………したわね、〈金箱〉が」
俺の言葉に一瞬可愛いすまし顔になったシエラだったが、なんか一瞬でいつものクール顔に戻った。あれ?
「はぁ。そうね。宝箱以前にこっちの戦闘のことだけど。私たちは白猫がいるバルコニーへまず向かったの、でもすでにボスは移動した後だったのよ。でもキキョウたちがボスを連れて飛び込んで来た、そこで迎撃したわ。見ての通り、被害はあまり大きくなかったわね」
「シエラ先輩の盾は安定感が凄くて尊敬します! 今回、ファイター型のボスとの戦い方を実地で教えてもらえたんです!」
そこにキキョウが参戦。どうやらレアイベントボスという超強敵を相手に最初はかなり苦戦したとのことだ。
キキョウはシエラと合流後、シエラがメイン盾を務めたらしく、キキョウはその実力の差を改めて痛感して驚かされたらしい。
今までも色々教えてもらっていたキキョウだったが、今回は一番の強敵だったとかで、濃厚な経験になったようだ。シエラを見るキキョウの目がキラキラしているぞ。
「アリスも頑張ったんだよ~。こうビリビリさせたの!」
「おう凄いぞアリス~。――アルテも、頑張ったな」
「えへへ。一時はどうなっちゃうかと思いましたけど。シエラ先輩たちと上手く合流できて本当に良かったですよ~」
アリスとアルテも褒めまくった。
「それでね。これが当たったの。お兄ちゃんに『解読』お願いしたいな」
「任せておけ!」
そしてお楽しみの〈金箱〉だが、これはアリスがオープン。
レシピを当てたようで、俺にペラリと渡してきた。
す、すっげぇ普通に渡してくるな! もちろん俺は〈幼若竜〉を使って即『解読』を使う。
「こいつは―――〈天使天猫装備シリーズ〉! 全集レシピだ!」
「天使? 猫?」
「天使なのか? 猫なのか?」
「どっちです?」
アリスとゼルレカとマシロが首を傾げる。
天使装備なのか猫装備なのか、すっごく気になるところだろう。
実はネコミミ天使装備なんだ。
「これは、天使専用装備だな。マシロとエフィ用だ!」
「あ、天使の、なのか」
「私の装備ですか! やったです! すっごく嬉しいです」
俺の答えに、ゼルレカが撃沈し、マシロが頬を紅潮させて喜んだ。
いや、マシロだけの装備というわけでもなかったが、マシロの装備にもなるので俺は「うむ」と頷いておいた。
そう、これは天使専用装備。
このキャットタワーの主は白猫と黒猫。
だからかは知らないが、なぜか天使と悪魔の専用装備シリーズ全集のレシピもドロップする。
もちろん猫人用の装備シリーズ全集もドロップするぞ。
そしてこれは、軽鎧系に分類される天使装備だな。その名も猫鎧。
天使と猫のコラボレーション。可愛さ100%突破間違いなし!
軽とはついているが鎧なのに猫猫しいとはこれ如何に!? 相変わらず〈ダン活〉はぶっ飛んでるんだぜ。
早くマシロにネコミミを着けてあげたい!
マシロの装備とか換装の必要全然無いほど強いけど、これは交換もやむなしだ!
ちなみにフィナとトモヨは鎧装備なので、軽鎧となると装備できるのはマシロとエフィになるだろう。
そうマシロたちに説明していると、4班が合流を果たす。
「エフィ先輩、エフィ先輩!」
「マシロンどうしたの?」
「私たちの専用装備レシピがドロップしたんです!」
4班所属、たった今合流したばかりのエフィにマシロが飛びついて説明する。
「それ、凄い!」
「ですよー! お揃いです!」
「うん。楽しみ!」
エフィや? それ猫装備だからね? いや、知らせない方がいいだろうか?
完成してからサプライズでお披露目してみようと決める。
エフィに受け入れられなかった場合は仕方ない。その時はオークションにでも出せばいいのだ。
「ゼフィルス、遅くなった。無事撃破出来たようだな。おめでとう」
「おう。分断させたからさほど苦労なく倒せたよ」
ツインズボスはその連携が厄介な点だ。今回のように5人パーティを2人と3人にバラしてくる時もある。俺たちだから対処できたが、普通のパーティならやっべぇピンチだ。
本当なら途中で合流したり、不意打ちで上階や向かいのタワーから襲ってくることもあるのだが、今回は完全にそれも防ぎきった形。なので相当楽に勝てた。
さて、レアイベントボスに勝てば、その次はもちろんレアイベントだ。
この上には「猫人」の上級職のヒントが描かれてあるのである。
みんなでキャットタワーを上ると、最上階には両方のタワーから架け橋になっている大きな屋上が存在した。ボス戦の舞台にはならない最上階だな。
「あ、壁画発見!」
「屋上に壁画、いやむしろこれは」
「たは! これは壁画というより看板みたいなんだよ!」
シャロンが最初に指差した先には、メルトやミサトの言うとおり、壁画というよりもデカい看板のように屋上にポツンと鎮座した、ヒントがあった。
「こいつは、猫人が描かれているのか?」
「のようだな。今までの経験則から言うと、これは「猫人」上級職の発現条件ヒントだろうぜ」
「マジかよ……」
ヒントの前に集まると、ゼルレカが呆けた様子で呟いたので、補足してあげた。
まさに呆気にとられたと言わんばかりにポカンと口を開けるゼルレカ。
「それじゃ、早速解いてしまおう。――シェリア」
「はい。スクショはお任せください」
「任せられるか! シェリアは〈幼若竜〉の『絵解き』を頼む。スクショは俺が撮る!」
上級職のヒントはスクショ案件。
だからだろうか、シェリアに協力を頼むと自然な動作でスクショを所望してきやがった。
シェリアはスクショ警戒対象なので預けられません。
〈幼若竜〉を渡してあげると、ルルが〈幼若竜〉をいいこいいこしに来た。さっすがルル! ナイスフォローだ。シェリアが〈幼若竜〉を抱いて満足そうな顔をしてる!
いや、『絵解き』忘れないで?
「ではいきましょう。『絵解き』!」
ルルやアリスたちが注目する中、シェリアがもったいぶったように『絵解き』を発動。なぜか目線が俺で固定されているのは「今ですゼフィルス様、ルルたちに注目されている様子をスクショに収めるのです」とでも言っているかのようだ。
もちろん俺はスクショを光らせたよ。パシャパシャ。
「【ハイクルニャイダー】、【スターエージェント】、【ブラックキャット】、【幸福の光猫】、【猫の大魔導師様】……計5種類のヒントが描かれていたみたいだな」
「おいおい、うちは色々伝承とかも読んでるけど【猫の大魔導師様】は初耳だぞ!?」
ヒントに一番驚いていたのはゼルレカだった。
そういえばこの世界、ほとんどの猫人の上級職と会って来たが【猫の大魔導師様】は未だ会ってなかったっけ。
そうか、これ未発見だったのか。
「やべぇ、これ報告するだけで兄貴が飛んでくるんじゃないか?」
「ほほう。ガルゼ先輩とまた会えるかもか~。よし、この件は任せろ。俺が責任を持って研究所に報告するからな!」
「…………兄貴がゼフィルス先輩をすげえ男だって言っていたわけが、ようやく身に染みて分かってきたかもしれない」
そんなことを呟くゼルレカは、なぜか乾いた笑顔を浮かべていた。




