#1528 〈キャットタワーツインズカイザー〉黒猫戦。
メリークリスマス!!
〈金箱〉が出ない。これは非常事態だ。
猫がゴロニャンする光景に和みながらも階層を更新して行くと、20層でとあるエリアを発見する。
いや、発見と言うにはいささか以上に目立つ、一種の塔みたいなものが鎮座していたのだ。
ここに俺が求めるあいつがいる。
〈金箱〉確定、レアイベントボスが!
ついに〈金箱〉が手に入るんだ! ヒャッハー!
「ゼフィルスさん、あの塔はなんなんですの?」
「あれは――っていやいやリーナよ、俺が知るはずないだろう? だが、俺の『直感』によれば、なんだかレアイベントな気がする、かもしれないぜ!」
「…………」
なんかリーナが普通に聞いてきたので危うく答えかけてしまったがセーフ。
シエラが無言のジト目で俺を見つめてくるご褒美に震えつつ、みんなをあの塔へ誘導する。
20層に入り、もう丘に登らなくてもハッキリ見えるほど高く伸びた2つの巨塔を発見。これは行くしかないだろうと自然に誘えたのが良かったんだぜ。
「2つということから、階層門に関係あるのでは? ここは20層ですし」
「その可能性もあるな。だが」
「ゼフィルスさんの『直感』さんは優秀ですものね」
「勇者だからな!」
「…………」
あの2つの巨塔はレアイベントです。俺は知ってるんだ。
リーナも俺の『直感』さんへの信頼が厚いようで、特に疑問もなくみんなで巨塔を目指すことになった。
ふう。うまく誘導出来たぜ。
シエラも20層では一段と良いジト目をくれるんだ。これは気合いが入るというもの!
そうして俺たち一行は、とうとう〈レアイベント〉のある2つの巨塔へ到達した。
その塔は奇妙な形をしていて、縦長の塔からいくつもの巨大バルコニーが飛び出し、塔は巨大な穴がいくつも空いていて、まるでなにかが通り抜けられるような形となっていた。
その見た目は一言で言えば、キャットタワー。
そして俺たちがそのキャットタワーの下まで来たところで、上からぬっと顔だけ出した主の姿が明らかになる。
数は2頭。
それぞれのキャットタワーの上から覗き見る猫たち。その大きさはなんと尻尾を抜いて8メートル。見た目は家猫そのもので、1体は白猫、もう1体は黒猫だ。
レアイベントを司るボス。その名も〈キャットタワーツインズカイザー〉。
名前半端なくかっこいいな!?
俺は素早く〈幼若竜〉を使ったと見せてみんなに情報を共有する。
「やはりレアイベントボスだ。守護型じゃない。非常に強力なボスだ」
「この塔が戦場、というわけね」
「こんな塔に登って戦うなんて、いったいどうすればいいんですの!?」
まあ、そうなるよね、超巨大キャットタワーに挑むとなると、普通は飛ぶかジャンプするとか、そういうのしか思い浮かぶまい。
だが、ちゃんと普通に戦う手段もある。
「見ろ、塔のあそこに穴が見えるだろ? あそこから塔を登れるようだ。階段が見える。タワー同士は近く、よく見ればバルコニーからは小さい橋が架かっているから塔から塔へ移動することは可能だな。つまり集団戦になるぞ」
「キャットタワーを自在に跳び回る猫たちを追いかけて倒す、ということですの!?」
「うわ。それ大変そう! というか怖そう! え、これ落ちたらすごく怖いんじゃない!?」
「なるべく多くのパーティで行きたいから、今回は3パーティで挑む。4班を待機、仲間を乗せて空を飛べるアルテとフラーミナを軸にして行動するぞ!」
「「「了解!」」」
「4班も了解だ。ならば、俺たちは周囲の猫が邪魔をしないよう、露払いなどを担当する」
「頼むメルト。――それじゃあ行くぞ! 初の立体型戦闘だ!」
「おー! それじゃあ『三体導入』! 来て――リーちゃん、ぺーちゃん、ヴァイア!」
「――!」「ブルヒヒーン!!」「リヴァアアアア!」
早速フラーミナが召喚したのは、〈上級守護天使・リネエル〉のリーちゃん、〈聖獣ペガサス〉のぺーちゃん、〈リヴァイアサン〉のヴァイアである。全員が飛行もできるモンスターだ。
「それじゃあ私も! 『三体召喚』! ワダラン、ペギニー、ヒナ!」
「ギャアアアアス!」「ヒヒーン!」「クワ!!」
同じくアルテも召喚、〈ワイバーン〉のワダランと〈聖獣ペガサス〉のペギニー、そして〈戦車鳥ピュイチ〉のヒナ。
この3体も飛ぶことが可能だ。ヒナだけは飛ぶというより跳ぶかもしれないが。
「それじゃあみんな乗せるよー『乗り換え』!」
さらにアルテの『乗り換え』スキルのおかげで1班は俺とゼルレカが〈ワイバーン〉へ騎乗、アリスとキキョウが〈聖獣ペガサス〉へ騎乗した。
「よし、塔は2つあるから部隊を分けよう。1班の狙いは黒猫。2班は白猫の塔から登ってくれ。3班は黒猫の塔を登りつつ遠距離からの攻撃を視野に入れて場所を確保してみてくれ」
「わかりましたわ。こちらも戦闘スタイルを試しながら向かいます!」
「シエラは」
「私たちは地道にタワーを登っていくわ。サーシャがいるから足場は色々作れると思うけれど、何も試さないで真っ直ぐこの塔を登るのは危険だから」
「了解」
さすが、リーナもシエラも初めてのキャットタワー、つまりは立体型戦闘だというのに自分にできる最善をしっかり把握している。
〈迷宮防衛大戦〉の時のようにヴァイアに乗せていくという案もあるが、あれは本当に乗っているだけ、騎乗していないので攻撃を受けると色々危険だ。
今回は護衛となるトモヨやフィナがいないので、『騎乗』の効果範囲である2人乗りまでに限定し、シエラは自らの足でキャットタワーを登ることを選んだ様子。
こりゃ、白猫の塔の方は任せても大丈夫そうだ。
「俺たちはボス猫たちを誘導できるのか、戦いやすい場所で戦えるのか、相手の攻撃の種類などを探ろう。じゃあそれぞれ行くぞ!」
「「「おおー!」」」
そう告げて俺たちは行動に移した。
俺たちはまず一気に飛行能力を使って猫たちの下へ飛んでいく。
おお、〈ワイバーン〉って初めて乗ったけど、これは中々いいじゃないか!
将来竜をゲットしたときも、こんな感じなのかなぁ。
そう思っていると、腰に掴まった手がガクガク震える。ゼルレカだ。
「ちょ、ゼフィルス先輩、キキョウがまだ来てないって、タンク無しで突っ込む気かよ!」
「大丈夫だ、タンクなら俺も多少は出来る。キキョウが来るまで俺が最初は引きつけるから。ゼルレカはどんどんデバフを繰り出してくれ」
「げっ!? もう、分かったよ! なんて変則的な戦闘なんだ!」
「それじゃあ行くぞ。ワダラン、黒猫のいるバルコニーへ向かってくれ!」
「ギャアアアアス!」
アルテの騎獣のはずだが、〈ワイバーン〉は素直に俺の言葉に従ってくれて、キャットタワーの1つを旋回するようにして上昇して黒猫のいるバルコニーに飛び出た―――その瞬間、黒猫が「待ってたニャ」とでも言いそうな顔で出迎え、右手の肉球を振り下ろした。
「ゼルレカ飛び降りろ!」
「にゃああああ!?」
「ギャアアアアアス!?」
なんということだ。黒猫のやつ、俺たちが来た瞬間叩き落としに来やがった。
恐ろしい攻撃をしやがる。
そして見事に〈ワイバーン〉に直撃。
まるで「鳥なんて獲物に過ぎないのニャ!」と言わんばかりの強烈な一撃。
〈ワイバーン〉は鳥じゃなく亜竜のくせに、一撃で墜落していってしまった。
「ワダラン!?」
だが、そんなので終わる俺たちではない。
俺はゼルレカの腰を掴んで素早くバルコニーに飛び移り、転落回避。
ワダランすまん、君の勇姿は忘れない!
君の犠牲はこいつを倒すことで報いらせてもらおう!
「やったな! 『カリスマ』!」
「フニャアアア!!」
早速挑発スキルを使えば俺目掛けて黒猫が迫ってきて、再び肉球攻撃が俺を襲う。
だが、
「『ディフェンス』!」
「ニャ!?」
それは完璧に防御スキルでパリィした。防御勝ちにより、今までの猛攻を仕掛けてきていた黒猫の身体がようやくノックバックで止まる。そこへ。
「ゼルレカ、素早さ、攻撃、防御の順だ!」
「うおおおりゃああ! 『惰性は駄制』! 『怠慢と堕落の剣』!」
ゼルレカのデバフが突き刺さる。
まずは『惰性』で素早さデバフ。この黒猫、凄まじく速い。
続いて『怠慢』と『堕落』で攻撃力と防御力にデバフを掛け、一気に弱体化。
こっちは『カリスマ』で攻撃力上がっているから、ゼルレカの攻撃もそこそこなダメージにはなったはずだ。
「ニャアアア!!」
「こっちだ黒猫!」
「フシャアア!!」
だが、あんまり『カリスマ』をかけ過ぎるとキキョウやロゼッタがタゲを取り返せなくなってしまうので抑え気味にして、他のメンバーが合流するまで俺がタンクを引き受ける。
再び肉球攻撃、かと思いきや、途中で鉤爪を展開。
恐ろしい。プニプニの肉球と思わせてとんでもないものを出してきやがった。
もちろん『聖剣』で相殺したさ。
そろそろキキョウたちが追いついてきてもいいころ。
だが、キキョウたちは現れない。
なぜなら、俺たちが戦っているバルコニーの下で、白猫によって妨げられていたからだ。
後書き失礼いたします!
合計14話更新です!
楽しんでいただけましたでしょうか?
クリスマスプレゼントに投稿数増量するので★くださいキャンペーン第4弾でした!
作者の大好きなお★様、たくさんお待ちしております!
 




