#166 ハンナの活路。でも生産も忘れずに。
「〈爆弾〉のレシピ? こんなにたくさんどうしたのゼフィルス君!?」
「昨日買ってきたんだ」
〈レアモンの笛(ボス用)〉の修理のためにマリー先輩に頼んでいたアイテム系ギルドとの仲介。その相手が主に〈爆弾〉系を専門に扱うギルドだった。
アイテムというのはその分野毎に専門のギルドが立つほど非常に奥深く、さらに膨大な種類がある。
例えば〈薬〉専門のギルドがあれば〈料理〉を専門にしているギルドもある。
各分野で出来る事が異なるので結構専門の知識が必要だったりする。そのためよく分からない場合は生産ギルドに仲介を依頼したりするわけだ。生産ギルドは横の繋がりが広いから。
そして俺が依頼した〈レアモンの笛(ボス用)〉の修理だが、実は〈爆弾〉系ギルドの専門扱いになる。
なんで笛の修理に爆弾? と思うかもしれないが、これには訳があり、〈ダン活〉では主に回数制限付きのアイテムが〈爆弾〉系に多い傾向にあるためその手の修理スキルを多く持っているのが【ボマー】や【爆技師】などの職業なのである。まあ、別に【魔道具師】などの職業でも回復は出来るのだが、今回レシピを購入する用事もあったのでここに頼んだ形だ。
ちなみに〈ダン活〉の〈爆弾〉系アイテムとは攻撃アイテム全般の事を指す。
使い捨てのダイナマイトみたいな物もあるが、実は打ち上げ花火風の「○○発射」系が主流だ。しかも見た目が砲ではなく杖に似ていることが多いため爆弾と言われてもピンと来ないことも多い。例えば「雷の杖」なんかも〈爆弾〉系に分類されていたりする。
笛と同じく、横に回数ゲージがある杖は装備ではなくアイテムだ。これマメな。
ま、そんな訳で昨日〈陰陽次太郎〉の次に〈竹割太郎〉を20周くらい狩って帰ってきた後、マリー先輩と〈私と一緒に爆師しよう〉ギルドにお邪魔し、笛を修理。
修理代は1回復50万ミールで、8回復。合計400万ミールだった。
中々にお高いがレアボス素材の価値を考えれば悪くない。初級中位だと割に合わないが、中級くらいからはそれなりに良い収入になるのだ。
そしてその時に〈爆弾〉系のレシピも購入した、というわけだな。
「ほへー」
俺の説明を聞いたハンナが口を半開きにしてほへる。
「ほへっている場合じゃないぞハンナ。〈爆弾〉系レシピは学園側が買い取りを行なっていない関係で〈大図書館〉には無い。自分で手に入れるしか無いわけだが、それもこうして手に入った。ならばやる事は1つだ」
【錬金術師】は様々な分野のアイテムを作り出す事の出来る優秀な職業だ。
〈薬〉〈爆弾〉〈モンスター〉〈武器〉等など。レシピに『錬金』で作るとあればなんだって作れるのが【錬金術師】の強み。
今回購入した物も『錬金』で作るタイプの〈爆弾〉系レシピだ。
ちなみに〈私と一緒に爆師しよう〉ギルドには【錬金術師】は在籍していないということでレシピを安価で売ってもらえたのがラッキーだったな。あ、名前にはツッコまない方向でよろしく。
「前回作った〈毒〉と合わせれば攻撃のバリエーションがグッと広がる。魔法に頼らなければRESが生きるし、防御力さえなんとか揃えれば中級だって戦えるはずだ。物理しか使ってこない敵なら〈マホリタンR〉を使っても良い。魔法しか使ってこない敵なら〈爆弾〉系と〈毒〉で対抗。RESは高いから受けきっても良し」
俺が今後のハンナの立ち回り方について説明していくと、ハンナはどこから取り出したのか手帳を開いて熱心にメモを取り始めた。シエラの影響かな?
「当面は防御面の強化と生産だな。とにかくハンナはアイテムを作りまくれ。防具に関してはダンジョン産で良いのが出れば回すし、ダンジョンの等級が上がればその都度ハンナの防具も強化していくぞ」
「う、うん。ミール足りるかなぁ?」
「ま、足りなければ俺が高く売れる生産品を教えてやる。それもハンナが頑張って稼ぐんだ。素材はダンジョン行って採取だな」
「うん! 私、頑張るね!」
ハンナが両手を握り拳にしてやる気に燃えている。
方向さえ示してやればハンナは頑張れる。何しろ生産職なのにずっと踏ん張って俺たちに付いてきているんだ。ガッツだけなら〈エデン〉でもトップだろう。
俺もそんな頑張るハンナだからこそ、なんとか活かせる方法を考えるのだ。
「じゃあ、早速作ってみるね」
「待てハンナ。今日の約束を忘れてないか?」
「ふえ?」
レシピを片手に帰ろうとしたハンナを呼び止めると、首を傾げられた。本当に忘れているらしい。
「昨日も言っておいただろう。今日はEランクギルド試験の日だ」
賛否両論あると思いますが、複線ですのでご容赦をお願いいたします。実物の攻撃アイテムが出てくるのは第4章からの予定です。