#1509 2日目大作戦〈勇者特定班〉を引っ捕らえろ!
なんとか〈格闘大会〉で騒ぎを起こさずに(?)問題を解決してからというもの、俺たちは色んな場所を転々とした。
時には問題を解決し、時には問題を解決したと思ったらさらなる大きな問題が発生したりして、果たして警邏としてこれでいいのかと思うこともあったりなかったり。
そんな1日目もなんとか終わった。
「ふぅ、リーナ、アイギス、お疲れ様」
「お疲れ様ですわゼフィルスさん」
「お疲れ様です。長い1日でしたが、なんとか終わりましたね」
あれだけ問題に直面したのだから2人もちょっと疲れが見える。
というか問題起きすぎじゃない学園祭?
最後のほうなんか〈勇者特定班〉なんていうよく分からない人たちまで現れて、俺が向かう場所を特定して人が集まってきたんだ。
人が集まれば問題も発生するもので、おかげで後半は問題ばっかり発生していた気がする。
「あの特定班、2日目も出てくるようでしたら少しお灸が必要ですわね」
「はい。彼ら彼女らが集まってくるせいで逆に問題が発生することもしばしばでした。要注意人物たちに認定しましょう」
「カンナ先輩にも報告して引っ捕らえていいのか伺っておきますわね」
リーナとアイギスもちょっとお冠の様子。
有名人を一目見ようとする熱狂的なファンの行動は、どこでも同じの様子だ。
なお、〈ダン活〉では問題を起こすのなら引っ捕らえてもいいっぽいのでファンの人も要注意。
◇ ◇ ◇
夜には俺の部屋にハンナが居て、今日あったことを色々情報交換した。
「ってことがあってな、大変だったんだよ」
「ふえ~。でも特定班? という人の情報、私のところにも結構連絡が来てたよ」
「〈生徒会〉にも出回る問題だったのか…………。ん、これ、美味い」
「ふふ、よかったぁ」
現在夕食中。
外に出店は並んでいるし、夜を外で食べる人は多いだろう。
そんな中、俺は自分の部屋でハンナと2人きりである。
約束したからな。
ちなみに今食べているのはハンナが日中に出店で買っておいてくれた品々だ。
〈生徒会〉の情報をフルに使い、どれが人気でどれが美味しいかをリサーチし、買い求めた厳選されたものの数々とのこと。
なお、人気店なので当然たくさんの人が並んでいるはずだが、ハンナはなぜか並ぼうとすると出店の人が出てきて商品をプレゼントされたらしい。それも何度も。
「ハンナ様を並ばせるわけにはいきませんから!」とのことだ。
さすがはハンナ様。
その時の「ふええ!?」というハンナの顔が目に浮かぶようだ。
「でもさっきの話だけど、ゼフィルス君気をつけてよ? ゼフィルス君って結構狙われているんだからね?」
「大丈夫大丈夫。〈秩序風紀委員会〉が対策するって言っていたから。それに、俺には秘策がある」
「うん?」
そう言った俺の視線が〈幸猫様〉のお面に向いていることを確認したハンナが、とても微妙そうな視線で俺を見てきた。
「ゼフィルス君?」
「明日は〈幸猫様〉のお面を付けて変装する! これで俺だとバレることはない!」
これぞ俺の秘策!
夏祭りでゲットした〈幸猫様〉のお面を今、活用するとき!!
〈幸猫様〉が守ってくれる。これで安心だ!
「一部の人にはバレバレだよ!? ゼフィルス君が〈幸猫様〉大好きって知っている人、そこそこいるんだよ!?」
そんなバカな!
〈幸猫様〉のお面でバレるだと!?
くっ、確かに、俺は〈幸猫様〉をとても慕っているし、布教もしてきた気がする。
ダメか? ダメなのか?
〈幸猫様〉、すみません。俺の力不足で!
「んもう。普通に『変装』だけでいいからね? 大丈夫だよ、仮装でも結構バレないから」
「なんか実感こもってるなぁハンナ」
「とにかく気をつけてねゼフィルス君?」
ハンナに心配を掛けてしまったな。
だが安心してほしい。
〈秩序風紀委員会〉が明日、何やら対策をすると言っているし、それで問題が片付くはずだ。
◇ ◇ ◇
そんなこんなで学園祭2日目。〈秩序風紀委員会〉ギルドハウス。
昨日も集まった場所で今、朝礼と作戦発表が行なわれていた。
「早速だが、昨日話があった特定班なる集団についてだ。今日も出没すればその規模は時間が経過するごとに膨れ上がると予想されている」
カンナ先輩から即でこんな話がされるくらいには〈勇者特定班〉なる存在は問題視されるようになってしまったようだ。
「すでにこのことはニュースなんかでも取り上げてもらい、人が集まりすぎることで大きな問題が発生していることを流してもらっている。同時にその原因となっている問題行動、つまり誰々がどこどこにいると〈学生手帳〉などの端末を使って拡散する行為の取り締まりを強化することを、いろんな情報発信ツールで通達済みさね」
おお、さすがは〈秩序風紀委員会〉。仕事がすこぶる早い。
「だが、そんなんでこの事態が収まるとはあたいらも思っちゃいない。祭とはそういうもんだからね。今日もその問題行動が起こると確信している! さらに言えばこういう問題行動は伝播する。時間が経つごとにこの手の問題行動を起こすやつは増えていくだろう!」
カンナ先輩が確信しているかのように全員に告げた。力強い言葉だ。
続いてその対策が発表された。
「そこで早期解決を図ることに決定した。端的に言えば、一網打尽だ! 規模が小さいうちに――や・る・よ!」
「「「「お、おお~」」」」
その「やる」はコロコロする感じの話じゃないですよね?
カンナ先輩の顔が迫力ありすぎて2年生の一部が顔を引きつらせているんですが。
「あの、それなら勇者を本部に待機させて置けば済む話じゃ?」
おっと3組の誰かが発言した。しかし、それにカンナ先輩が首を横に振る。
「いんや、確かに学園祭の期間ずっと警邏するならそれで手を打つことも考えるが、3日目にはゼフィルスは〈迷宮防衛大戦〉に参加するだろう。その時に規模の膨らんだ〈勇者特定班〉なる存在が問題を起こすと厄介さね。今のうちに問題は摘み取っておいたほうがいい」
―――〈迷宮防衛大戦〉。
学園祭3日目にあるレイドバトルだ。
もちろん俺も参加する予定。というかここにいる警邏の仕事を任されている学生も自由時間になる予定なので、ぶっちゃけ3日目の後半は人手不足なのだ。
ただでさえ警邏の人手が足りないところに問題を起こされたら、後はお察しである。
故に、問題を起こしそうな集団は、早めに摘み取っておこうという判断だった。
まあ、すでに何回か問題を起こしているので、注意&警告無視扱いで2日間の留置くらいはできるらしい。
そんな背景もあり、今日の俺たちの仕事は。
「それじゃあ、一網打尽作戦について説明する!」
警邏のお仕事どこいった?
学園祭2日目は、大規模一網打尽(?)大作戦が投入されることに決まったのだった。
◇ ◇ ◇
「なあシエラ、俺たちの仕事ってなんだっけ?」
「正確には、上級ダンジョンで急速にレベルが上がり、一般の兵では取り押さえることのできない一部学生が問題を起こした時に投入される、特別兵ね」
「特別兵だったんだ」
いや知ってたけど。改めてその言葉を実感している今日この頃。
「はぁ、2日目もわたくしたちで回る予定でしたのに」
「本当に。昨日は問題ばかりで、むしろゼフィルスさんをガードするだけで終わって仕舞いましたから」
「仕方ないじゃないリーナ、アイギス、これはみんなでこなさなくちゃいけない作戦だもの、団体行動必須だわ!」
「言葉とは裏腹にうきうきしてますねラナ殿下」
リーナが溜め息を吐き、ラナが慰める(?)。だが、アイギスがラナのことを少し疑った目で見ていた。
うん、ラナはこの作戦が楽しみみたいなんだよ。実は俺もちょっと楽しみだったりする。
「ゼフィルスが囮になり、集まって来た〈勇者特定班〉なる集団を一網打尽にする作戦ね」
「今本部から連絡がありましたわ。包囲網が完成したとのことです。ゼフィルスさんの『変装』を解いてもいいそうですわ」
「ついに作戦開始ね!」
そう、今俺たちは〈勇者特定班〉なる存在をおびき寄せるための作戦行動をしていた。
メンバーは俺、リーナ、アイギスという学園祭期間中の臨警1班にシエラ、ラナ、エステルが加わった6人メンバーだ。
ちなみにシエラは普通に盾役。囮である俺を守るのが役目だ。
ラナは王女という部分を盛大に使わせてもらい。相手が手出ししにくいという状況を作り出してもらっている。エステルはラナの護衛だな。
これにより。
「勇者発見、みんな集まれ」→「ぬ、近づけない。とりあえず周りから見守ろう」という図が出来、制圧部隊が〈勇者特定班〉の疑いがある人物に狙いを定めて突入する。
これが制圧作戦の内容だった。
「結構アバウトな作戦だけれど、上手くいくのかしら」
「ご心配には及びませんわ。〈秩序風紀委員会〉はその手の専門家、一般人と特定班を見分けることなんて造作もないでしょう」
「リーナさんが言うなら大丈夫でしょうね」
シエラは作戦が上手く嵌まるのか心配のようだ。
だが、〈秩序風紀委員会〉はその手の専門家。ノウハウもかなりのもので、どうやら〈学生手帳〉などの通信手段をチェックしたり、特定したりすることに長けているとのことだ。
それを聞いてアイギスやシエラは少し安心したようだな。
「それじゃあこれより作戦を開始する。シエラ、頼む」
「ええ。『四聖操盾』! 『聖四方盾』!」
本来人の往来のある街中で戦闘系のスキルや魔法を使うことは禁じられている。
特に攻撃系はかなりアウト判定が厳しい。だが、防御スキルならそれほどの問題は無い。
シエラが発動したのは四方に4つの巨大な盾を張る防御スキル。これをパーテーションとし、目隠し&目立つために使用する。あと作戦開始の合図でもあった。
「『変装』解除だ」
突然巨大な四つの盾が現れて「なんだなんだ」「新たなイベントか?」と周囲にいる人たちが注目しているところ、変装中だった俺たちは即席のパーテーションで『変装』スキルを解くと、シエラもスキルを解除する。
即席のパーテーションが消えて俺たちの姿が顕わになった。
「あ、あれって、勇者!?」
「王女殿下もいらっしゃるぞ!」
「〈エデン〉のレギュラーメンバー!?」
「報告! 突如勇者を含むレギュラーメンバーが現れた!」
いきなり釣れた!
ざわざわとざわめきが生まれたと思ったら、即で学園祭期間中は取り締まりが強化されているはずの拡散をする学生が現れた。〈秩序風紀委員会〉の腕章を着けている俺たちの前で!
なお、もちろんこの情報発信は〈秩序風紀委員会〉にしっかり把握されており、この情報を受け取った受信側の情報も把握されているはずだ。
また大衆向けの情報発信板なるものもあるらしいが、そっちは現在緊急メンテを入れて発信できないようにされている。つまり〈勇者特定班〉なる存在が使っているツールそのものを狙い撃ち。メッセージ機能も含む。
ここから〈勇者特定班〉がグループで使用している情報ツールで拡散した人を特定して取り締まったりする予定だ。
作戦開始。




