#1478 ルルVSアラン!『ホネデス』の出番もあるの!?
一方その頃、戦いが激しさを増し増しの増ーしになっている一角があった。
「とう! 『フォースバーストブレイカー』なのです!!」
「ははははは!! さすがは〈エデン〉の幼き無双! 我が筋肉がこうも押されるとは!」
まるで鋼鉄を剣で叩いたかのようなガキンキンキンキンという4回の音が辺りに響く。
ルルの高速4連斬りだ。
それを受けたアランのHPが減り、しかし構うことなく反撃に移る。
重量級のパンチの連打だ。スキルを使っていない分回転が速く凄まじい速度で繰り出される。普通ならばアランの方が速く、相手にスキルを出す隙さえ与えない連続攻撃だ。
だが、ルルはそんな高速の通常攻撃にもスキルで対抗してくる。
「『インフィニティソード』!!」
「ぬうううううう!」
ルルのスキル発動は速い。普通の2倍速だ。普通の職業とは回転率が段違い。しかも『ヒーローだもの、へっちゃらなのです』で多少攻撃を食らったとしても止まらず、関係無いとばかりに攻撃を放ってくる。
さすがは【プリンセスヒーロー】。
上級部門・公式最強職業ランキングで第五位の実力は伊達ではない。
普通であればこのほぼ2回攻撃とも言える【プリンセスヒーロー】に対処するには2人以上で掛かるしかない。だってこっちがスキル1発打つ間に相手は2回打てるから。
2人で相手してやっと対等に戦えるのが【プリンセスヒーロー】なのだ。
1人では対処できない。
しかし、〈2組〉ではたった1人だけ、単体でルルに対抗出来る存在がいる。
スキルで戦うと差が付くのなら、そもそもスキルなんて使わなければ良いじゃない。
通常攻撃はスキルとは違い、スキルアクションやスキル後の硬直、クールタイムなどがなく、素早く手数を回転させられる。
故に、ルルの相手は自分しかいないとアランは最初から〈1組〉で戦う相手を決めていた。
しかし、蓋を開けてみればやっぱりルルは強かった。
「とう! 『チャームポイントソード』なのです!」
「ぬうううう! デバフか! ははははは!」
スキルと通常攻撃がぶつかればスキルが勝つのは自明の理である。
アランもユニークスキルのおかげでノックバックはしないが、スキルと通常攻撃の差で徐々に不利になりつつあった。
アランはそれでも笑顔を絶やさず、歯をキラリと輝かせて黒鉄の筋肉を唸らせる。
「なんの、ツイン筋肉スペッシャル!」
要はダブルパンチ。
アランが放つとまるで筋肉の拳が壁のように迫ってくる迫力を思わせる強力な攻撃に変貌する。だが、ルルには通用しない。
「『デュプレックスソード』!」
〈五ツリ〉の強力な二連斬が真正面からぶつかり、アランの拳を弾いた。
さらにルルは『魅惑のラブリーヒーローソード』を叩き付け、デバフを稼ぐ。
これには周りにいた学生も驚愕だった。
「あのアランが、押されているだと!?」
「マジかよ、筋肉は強ぇんだろ!?」
「頑張れアラン! あんたは俺たちの希望を背負ってるんだ!」
男子からは熱狂的な支持を受けているアラン。
もしここにレミとアディが居ればハリセンでぶっ叩かれていたことだろう。
だが、声援はアランに届き、アランの筋肉を盛り上げる。
「ははははは! さすがだな〈無双の幼聖〉よ!」
「筋肉さんもさすがなのです!」
なにがさすがなのかよく分からないが、なにか通じ合うものが2人の間に生まれた予感。これはよくないかもしれない。
「行くぞ!!!!」
「受けて立つのです! とう!」
戦いは、かなり長期化される予感。
アランのHPは未だ半分。ルルのHPは4分の3以上残っている。
アランの防御力が高すぎてデバフを与えてもなかなか減らないのだ。そしてこの乱戦、いつアランがHPを回復させるか分からない。
もし回復されたら、アランを倒すには一気にドデカい魔法攻撃を叩き込むしかないだろう。
しかし、物理特化のルルにそれはできない。
故に、まだ逆転の可能性はある。
アランは戦法を変えることにした。できれば筋肉で片をつけたかったが、難しいだろうと判断したためだ。
なんと腰のポーチ型〈空間収納鞄〉に手を突っ込み、アイテムを取り出したのだ。
まさか、回復アイテムか、とルルが即で突っ込み叩っ切ろうとする。
「おいたは、メッ! なのです! 『クレセントスラッシュ』!」
「ふはははは! すまぬな〈無双の幼聖〉よ!」
ぶった斬られながらもアランはそれをルルへと向ける。
それはポーションではなかった。なんと〈夜ダン〉レアイベントボス、〈ホネデス〉からドロップした、相手に〈即死〉を与えるアイテム〈ホネデスのデスホー〉だったのだ。
「にゅ!?」
「できれば筋肉で片をつけたかったが、致し方なし! 〈デスホー〉発射!」
『ホネデス!!』
本来であればザコモンスターを一掃するのに多大な効力のある回数制限付きの〈即死〉アイテムだ。ボス戦で眷属を相手には使えないが、実は対人には利用可能。
アランは自分ではルルには敵わないと考え、〈デスホー〉を発射すると、〈デスホー〉は『ホネデス』と叫びながらホネデスの顔面を発射。
そして、アランは見事にルルにこの〈デスホー〉を当てて見せたのである。
「にゅ~~~!」
「「「やったか!?」」」
なぜかフラグを立てる周囲。レミとアディが居れば以下略である。
そして――反撃はとんでもない形で返ってきた。
「なにしてるんですかーーーーー!! テネブレア様! イグニス様!」
―――シェリア、襲来。
本来後方にいるはずの彼女がなぜか単身でここまで爆走してきたのである。
ついでにどこか怯えた表情の大精霊たちを引き連れて。
「新手か!?」
「ルルになんてことをしてくれやがりましたか。万死に値します。1万回後悔しなさい! 『大地の怒り・エレメントテラ』! 『大気の哀しみ・エレメントヴェントゥス』! 『大海の荒れ・エレメントアクワ』! 『陽光の驚き・エレメントソル』!」
それは天変地異。
シェリアの思い(?)に呼応した(?)大精霊たちが、全力で魔法をぶっ放したのだ。
「ぬおおおおおおおお!?」
「「「ぎゃああああああ!?」」」
当然防御したが、アランも含めて見事にぶっ飛ばされてしまう。
これが怒りの力か。シェリア大暴れだった。そして――。
「これでトドメです! 『六精霊全召喚』! 『ハイエレメントバースト』!!!!」
一気に6体の精霊まで召喚し、大精霊2体も含めた合体攻撃、『ハイエレメントバースト』がぶっ放される。何気にこれはシェリア最強の一撃だ。
アランはHPが危険域に突入しているのにもかかわらず、応援してくれた学生たちを背にかばい、筋肉で応えた。
「うなれ俺の筋肉! これが鍛えた筋肉だ! 秘技究極筋肉!」
モリッ! っとアランは筋肉を膨らませた。そして。
「筋肉ストレーーートーーーー!!」
全身全霊のぶん殴り。
だが及ばず。6色の精霊魔法に飲み込まれてしまったアランはそのままHPが全損し、〈敗者のお部屋へ〉と転移してしまうのだった。
「にゅ? シェリアお姉ちゃん?」
「ルル! 無事でしたか?」
「あい! ルルはヒーローなのです!」
「はぁ、ルル可愛いです」
ルルは見事に無事だった。
1日1回『即死無効』を付与する『カメ代わり』があるため心配いらずである。
なお、〈ホネデスのデスホー〉は使用者のLV+10までの相手を即死させられる効果を持っていた。さすがはレアイベントボスの〈金箱〉産。凄まじい能力だ。しかし、ルルはアランよりも10以上高いのでそもそも効かなかったりしたのだが、それは言わぬが花だろう。
アランの攻撃は、怒らせてはいけないエルフに本気を出させるだけの結果になってしまったのだった。
「あ、アランが!? アランが負けただと!?」
まさに驚愕。だが、驚きはこれだけには収まらない。
「そこへ勇者がドン!!」
「へ?」
「こんにちは! 『フィニッシュ・セイバー』!」
そこへどこからともなく勇者ことゼフィルスが転移。
シェリアの暴走とアランの退場で驚愕している学生たちの前に急に現れたのだった。
もう許容量がパンクして受け入れられなかった学生たちがほぼ棒立ちになるのも必然。
そこに挨拶(?)と共に放たれた大技が炸裂し、ここら一帯にいた男子はのきなみ退場してしまうのだった。アランのおかげでなんとか生き延びた学生たちもすぐにアランの後を追う結果になってしまう。
「いやぁ、隙を突いてアランを退場させようとしたんだが、シェリアに一歩先を行かれたな。シェリア後衛なのに、なんでここまで来てるんだ?」
「あ、ゼフィルスお兄様なのです!」
「筋肉が妙なものをルルに浴びせたのです。これは成敗しなければならないと思いました」
「思いましたで敵陣の中心地に単身突っ込んで普通に生き残るとか、シェリアすげぇんだぜ」
完全に戦場のど真ん中なのに、この和気藹々とした会話よ。
解説すると、ここは同盟軍の回復所にして元司令所。
敵陣のど真ん中であり、一旦下がってクールタイムやHPMPなどを回復させたり、ラウが指示を出していた場所だ。
そこへルルが単身やって来てアランとやりあっていたのである。
ゼフィルスはここでアランを叩いてルルを解放すれば、同盟軍はガタガタになり、〈1組〉の勢いがさらに増すと判断。転移して不意打ちしてきたわけだ。
まあ、実際アランはタッチの差でなんかシェリアに討ち取られていたので、周りで回復中の学生をのきなみ屠って後方を壊滅させて今に到る形。
悲報、後方の回復所潰される。
サチたちが居なかったのは幸いだった。
「〈4組〉が消えた瞬間シェリアが急に走り出してビビったぜ。まあ無事でなによりだ『オーラヒール』!」
「回復ありがとなのです!」
「あ! それは私の!」
「言っている場合ですかシェリア、ここから〈2組〉を追い込みます。気を引き締めてください」
なぜかルルへの回復を取られたシェリアが悲鳴を上げていたが、そこへ追いついてきたエステルが窘める。
何しろ、もう最後の戦い間近なのである。
「エリサが〈3組〉と〈留学生4組〉の多くを蹴散らしてくれたからな。残りはほとんど〈2組〉だけだ」
「その〈2組〉も、リーナさん曰く半分も残っていないそうですが」
「とにかく行くぞ! この先にラウたちがいる! 最後の戦いだ!」
「「「「おおー!」」」」
足止めをしていた〈4組〉は拠点が落ちてのきなみ退場。
〈3組〉もリーダーたちを残し、その多くが退場。〈留学生4組〉はリーダーも含めて退場者多数で、〈1組〉を抑えられる人員はギリギリのところだったため、ついに崩壊。
よってゼフィルスたち攻勢メンバーが一気に突破し今に到る。
ゼフィルスたちは止まらない。
そしてついに〈1組〉が拠点前で合流。
ラウたち他、残っている同盟軍も集まってきて、最後の舞台が整ってしまう。
クライマックス、突入だ。
途中経過――〈残り時間:3時間40分00秒〉
〈2年1組〉『残り人数:29人』『ポイント:4674点』
〈2年2組〉『残り人数:12人』『ポイント:392点』
〈2年3組〉『残り人数:17人』『ポイント:0点』
〈2年4組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』5位
〈2年6組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』最下位
〈留学生1組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』6位
〈留学生3組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』7位
〈留学生4組〉『残り人数:10人』『ポイント:0点』




