#1474 〈1組〉VS〈2組〉。退場者続出とキールの悲報
「ジャジャヤァアアア!!」
「こんのーーー、ぶっち抜けーーーー!! 『ライジングインパクト』!」
「いいよアディ! そのまま〈カマクラ〉を引き離して! 『ビームシュート』!」
防衛モンスター戦ではアディとレミが他何人もの学生となんとか〈カマクラ〉と〈ナダレグランキ〉を引き離そうと奮闘していた。
なにしろ、こいつらを一緒にしたら被害が拡大する一方だ。
その奮闘の甲斐あり、なんとか2体のボスモンスターを引き離すことに成功する。
だが、ただでは終わらないのが〈1組〉である。
「ここで隙有りデース! 『くノ一流・空梅雨』!」
「な!」
パメラがいつの間にかアディ他、同盟軍たちの背後に出現して抜刀したのだ。しかも、そのパメラは計5人、分身を発動していた。
これは『必殺忍法・分身の術』、『くノ一流・空梅雨』、『忍法分身・連動雨体術』の3つの合わせ技。
『忍法分身・連動雨体術』はパメラが『雨』系スキルを使うと分身体も同じ技を繰り出すというスキル。そして『くノ一流・空梅雨』は簡単に言えば後ろに回り込んで斬るスキルである。
ボスに気を取られていた同盟軍のメンバーはこれによって崩された。
だが、アディだけは『ノックバック耐性』も持っていたため、即で反撃に移る。
「『インパクトガオー』!」
発動したのは対回避スキル。回避しても地面を叩いた衝撃波でぶっ飛ばす範囲攻撃スキルだ。ついでに分身も消し去る狙い。
だが、パメラはこれにカウンターを合わせてきた。
「『くノ一流・一雨一度』デース!」
これは一瞬ですり抜けながら斬るスルースキル。カウンターや反撃もスルーするというとんでもないスキルを使い、敢えてアディの懐に飛び込み、斬ってその場から離脱したのだ。
対回避スキルが回避されてしまったことで、アディは大きな隙をさらしてしまうことになる。
「しま!?」
「今デース! 『忍法・影分身雷竜落とし』!」
「『クマシャアーひゃああああああ!?」
そして流れるような〈五ツリ〉、竜の形をした五連続の雷がアディたちに完璧に決まってしまい、そのまま退場してしまうのだった。
◇ ◇ ◇
所変わってレミはというと、パメラよりも厄介な相手と対戦していた。
「ここが使いどころですね――『優雅に的確に速やかに制圧』!」
シズである。二丁のアサルトライフルを所持したシズがレミと遠距離戦を繰り広げていた。
「『ハートスナイプ』! 『魔弾』! 『ジャッジメントショット』! 『マルチバースト』!」
「『速射連矢』! 『剛速弓』! 『4線レーザーアロー』! きゃあ!?」
銃対弓。
だが手数は圧倒的に銃の方に分があり、ついにレミは打ち負けてしまう。
「レミ殿! ここはお任せを!」
「コブロウ!?」
「!!」
そこにタイミング良く現れたのは上級職、高の中、【影忍】のコブロウ。
かつて〈15組〉に所属し、1年生のクラス対抗戦でシズの罠に掛かり、かっこよくシエラに挑んで10秒もせずにやられた元【忍者】である。ちなみに現在は〈2組〉所属だ。
影に潜み、必殺の瞬間を見極め、シズの隙を突いてきたのである。――しかし。
ここにいるのはシズだけではなかった。
「ジャジャヤァアアア!!」
「あ」
それはすっかり置いてきぼりになった〈カマクラ〉こと、レアボス〈強打義装機兵・カママクラス〉。その名の通り強打が得意の〈カマクラ〉さんが手に持つ盾で思いっきりコブロウをぶん殴ったのだ。
「あべーーーーしっ!?!?」
「コブロウーーーー!?」
「『デスショット』!」
「あ」
吹っ飛ぶコブロウ。そこに容赦なくぶっ放された〈即死〉の弾丸。もちろんユニークスキル発動中なので弾丸は2つである。
そして、どうやらどちらかの弾のレジストに失敗判定が出た模様。大当たり!
そしてHPが一瞬でゼロになり、コブロウに転移陣が現れ、そのまま退場してしまうのだった。
「おバカーーーーーー!!」
レミは叫んだ。
もし目の前にコブロウがいたらハリセンでひっぱたいているところだ。アディがこの場に居ればアホバカマヌケーも炸裂していたことだろう。
何しに出てきたんだ。
「邪魔者は消えました。続きをしましょう」
「あ、これは、ヤバいかも」
気が付けばパメラがアディ他、この辺の学生たちを吹っ飛ばし、レミだけ孤立状態になっていた。そして目の前には4つの盾を構える〈カマクラ〉と、それに守られるようにして銃口を向けるメイド。
レミは弓を絞りつつも、引きつった頬が戻らなかった。
その後、1分も持たずレミもアディのあとを追ってしまうのだった。
◇ ◇ ◇
「あれよ! あれが防衛モンスターを操っている〈最後のフラーミナ〉だわ!」
アケミが指さすのは空にいるフラーミナ。
〈聖獣ペガサス〉の背中に座り、その左手には〈レビテーションブロウ〉を装備していた。そのため常に風の防御と追い風を得ている状態だ。
さらに同じく空を飛んでいる天使2人がフラーミナへ寄せ付けない。
アケミたちが攻撃を繰り出しても全く届かなかった。
だが、もちろん同盟軍はこれにも対処法は用意していた。
「ハイウドとナリリスが行ったぞ!」
「今よ! 2人が天使を足止めしている最中に〈最後のフラーミナ〉を討ち取って名を上げるのよーーー!」
「「「「おおー!」」」」
何気に人を扇動するのは上手いアケミである。
もしこれが成功すれば〈1組〉に多大なダメージとなるだろう。
アケミの狙いは間違ってはいない。
だが、もちろんそんなことは許さない。
「あきまへんなぁ。おいたは許しませんでぇ――『七尾解放・妖炎津波』!」
「防御は任せてね――『アジャスト・シャドウ・シャットアウト』!」
「! あなたたちは、ハクにアイシャね!」
「私がいるのも忘れないでください」
「〈列車姫のロゼッタ〉!」
炎の津波と影の津波が押し寄せ、アケミたちの攻撃は全て防がれてしまう。
もちろんハクとアイシャの仕事だ。そしてそこにはロゼッタの姿もある。
列車には乗っていない、素の状態だ。だが、油断できる相手ではない。
「キール! セーダン! やるわよ!」
「あー、今度はこっちかぁ」
「いずれにせよ俺たちでは高いところには届かん。行くぞ!」
それは【死神代行】のキールと【グランドファイター】のセーダンだった。
「キール君。今日は負けないからね!」
「お手柔らかに頼むよ」
過去のギルドバトルではキールがアイシャを倒したこともあり、アイシャの瞳がキラリと光る。見かけによらずリベンジに燃えている様子のアイシャ。
「セーダンはんか。あんさんでうちに勝てるんか?」
「やってみなくては分からんさ」
昨年、1年生の時〈3組〉所属のハクと〈2組〉所属セーダン、どちらが強いのかという話題は結構されていた。しかし昨年のクラス対抗戦では〈2組〉が早々に退場してしまったため、これが初の機会となる。
今は〈1組〉におり、Sランクギルド〈百鬼夜行〉の所属でもあるハクの方が強いだろうという見方が主流だが、はたして。
なかなかに因縁の対決。
ちなみにアケミはロゼッタが牽制中だ。
「行くぞ! 『グランロールステップ』!」
先に仕掛けたのはセーダン。凄まじい速度で左右にブレながらステップし、そのままハクに迫ったのだ。これは狙いを定めさせないようにしながら相手に近づく回避運動スキル。しかし、そもそも細かな狙いを付けることをしないハクには無意味。
「『六尾解放・紅蓮焔』!」
ハクの尻尾が幻影で6つに見えると、杖から火炎の範囲攻撃が発生。
セーダンの回避運動の範囲をまるごと飲み込んでしまう。
「『クワトロ・サージストライク』!!」
「んお? それ使うたままスキル使えるんか」
だが一瞬で焔を拳の連打で粉砕。ステップ継続でさらに接近してきた。
「『四尾解放・幻猛炎顎』!」
続いては炎の巨大な口がセーダンを襲う。
これも回避不可能。何しろ縦ではなく、横向きで噛みつこうとしているからだ。
「! 『ジャンピングフライド』!」
セーダンはステップを諦めてジャンプ。しかし、その軌道はかなりの変化球。
ハクの下へ急な曲射軌道を経て接近したのだ。
「相手に接近するためのスキルが豊富やな」
「でも、私がいるのよ!」
ハクは素直に褒めるが、セーダンが拳を握りハクにスキルを発動する瞬間。
アイシャが割り込んで来た。
「『シャダウン』!」
影の質量を上から落とし、飛んでいる相手などを叩き落とす魔法。
「『グランド・ノック・ストレート』!」
上から来る影にセーダンはすぐに構えを修正。振り向きざまに強力なストレートをぶっ放す。
「『シャドウ・モア』!」
しかし、これにアイシャは素早く魔法を発動。その速度、まだ魔法が終了していないのに放っているといえばどれだけ早いか分かるだろう。『シャドウ・モア』は「もっと影を」。つまり発動中の魔法を増幅させる魔法なのだ。非常に強力なスキルである。
「ぐ、ぐああああ!?」
これによりセーダンは容赦なく地面に叩き付けられてダウンしてしまう。
だが、もちろんそれも織り込み済みな人物がいた。
「取った!!」
もちろんキールである。
狙いはアイシャ――ではない。なんとその相手はハクだった。
「まずはあなたから退場させるのが吉だよね! 『ソウルチョッパー』!!」
それは〈即死〉のユニークスキル。すでに『レベルアッパー』は発動済み。
ハクは強い。Sランクギルドのサブマスターというのは伊達ではないのだ。
キールはアイシャと因縁の対決みたいな雰囲気を出しておいて、狙いはもとからハク一択だった。
アイシャは倒した経験があるのだ、後回しで良い。それよりもまずハクを倒さなければ被害がどんどん出てしまう。
故にまずはセーダンを突っ込ませ、それに隠れる形でキールが接近。
『即死貫通』付きである、ユニークスキルの格と威力が乗った即死攻撃がハクに直撃した。
しかし、ハクに〈即死〉は効かなかった。
「あ?」
キールの職業は【死神代行】。つまりは〈即死〉特化型職業だ。
故に〈即死〉を確実に決めるためのスキルをいくつも所持しており、いくら『即死耐性LV10』と『状態異常耐性LV10』を重ね合わせても、キールの『ソウルチョッパー』は貫通し、相手を〈即死〉させる。これはエリサの〈睡眠〉にも似た超がつくほどの特効であり、特化型だ。故に、ハクが〈即死〉しなかったのが信じられないと言わんばかりの目でハクを見てしまう。あまりにも大きすぎる隙だった。
「残念やったなぁキールはん」
「『シャドウ・クロス・バインド』!」
「な!?」
即、アイシャの影に絡め取られ〈拘束〉状態になってしまうキール。
訳が分からないという目でハクを見る。
「何をしたのかな!?」
「何をした言うてもなぁ。ただ、〈エデン〉から借りた〈即死〉を無効化するアクセサリー〈身代わりのペンダント〉をつけているだけですぇ。言うてもこのクラス対抗戦の間だけどすけどなぁ」
「そ、『即死無効』!? 〈身代わりのペンダント〉だって!?」
「あら、知らん? キールはんが知らんかったとは意外やったなぁ。あれ? もしかしてこの装備、内緒やった?」
「あまり知られたくないとは言っていたわよ? 求める声が大きくなるだろうからって」
悲報。
キール、ついに〈身代わりのペンダント〉の存在を知ってしまう。
「あら。すみまへんキールはん。今の内緒にしといてください。――ほな、さいなら」
「…………え?」
「『五尾解放・灼熱の大爪』!」
ここでハクがセーダンのダウンが終わりかけだと気付いて大技を発動する。
キールは未だ信じられないような表情だったが、容赦なく炎に飲まれ、ハクの炎の連続攻撃に見舞われてそのままセーダン共々退場してしまうのだった。




