#1472 同盟軍の猛攻!〈炎帝鳳凰〉撃破!そこへ?
リーナから報告が入る。
「『ゼフィルスさん、同盟軍が〈1組〉の城壁を破壊しましたわ! タイミングを計ります!』」
「了解! 目にもの見せてやれ! 俺たちはこのまま回り込んで突撃する! タイミングは任せる!」
「『了解ですわ! 通信、一旦終わります!』」
こちらゼフィルスたち、フィールド北攻勢メンバーは〈留学生1組〉を陥落させた後、急いで体勢を整え、エステル号に10人が乗車して〈1組〉へと戻っていた。
「〈留学生1組〉は強かったですね」
「ううっ、まさかノエルちゃんがやられちゃうなんて~。私が守りに入ってれば」
「ラクリッテは『蜃気楼』や『ジャミング』の仕事があったんだ、あれがなければ同盟軍が〈留学生1組〉の援軍に来た可能性もある。そうなれば被害はもっと大きかっただろう。ラクリッテは重要な使命を果たしてくれた」
話題は〈1組〉初の退場者ノエルについてだ。
エステルの槍砲を耐えきったり、〈1組〉がすぐに押し切れなかったり、奥の手を出してきたりと手強く、クイナダとカルアが決死の攻撃でノエルを討ち取ってきた。
ノエルが退場した影響は大きく、ラクリッテはとても悲しんでいた。
だがゼフィルスの言うとおり、ラクリッテの『蜃気楼』や『ジャミング』がなければ同盟軍に気付かれていたため、ラウならば何かしら手を打ってきていただろう。
ここはクイナダの活躍を褒める場面だ。
「エステルはそのまま南西へと向かう進路をとれ。そして北上して回り込むぞ。南側から同盟軍の後ろを取る! 挟撃するぞ!」
「了解です!」
ゼフィルスはそう指示を出しエステルも慌てることもなくその指示に従う。
つまり回り込んで相手の後ろを取るルートだ。
ラウたちがわざわざ〈留学生1組〉に背を向けないように南側から攻めたのに、さらに南側から回り込まれたら色々アウト。
池を自由に進めるエステルと〈イブキ〉、さらに妨害して位置をカモフラージュできるルキアとラクリッテが居てこその戦法だ。
自分たちのクラスの拠点が襲われているのにこの冷静さ、ラムダは即真っ直ぐに帰還したい気持ちを押し込める。
「さすがは〈エデン〉、ということか。こんなときまで冷静とは」
「うん。この冷静さが勝利の秘訣かも」
「補給は終わったかミュー殿?」
「ばっちり。クールタイムも8割終わってる」
「自分もだ。だがこうもポンポン次の戦場へ向かうというのは、落ち着かないな」
「私は慣れた」
「……そうか」
ラムダは羨ましそうな視線でミューを見る。
この戦場から戦場へ即突入はギルド〈エデン〉のノリだ。
普通はもう少し慎重になるため、こうも慌ただしいことはない。
即断即決。
凄まじいまでの実力で即攻撃を仕掛ける〈エデン〉。
しかしただ無謀な突撃をするのではなく、基本奇襲で突っ込むので相手が浮き足立つのだ。
さらに自分たちの知名度も最大限に使っているため、大体のクラスはこれに対応できず、人数差があるのにもかかわらずやられてしまう。
〈留学生1組〉はまだ立ち直るのが早かったため、それが陥落に時間が掛かった原因だった。
とはいえ、ラムダは上空スクリーンを見る。
試合開始後、ついに10分を経過し、途中経過が表示されていた。
途中経過――〈残り時間:3時間50分00秒〉
〈2年1組〉『残り人数:29人』『ポイント:2415点』
〈2年2組〉『残り人数:27人』『ポイント:0点』
〈2年3組〉『残り人数:29人』『ポイント:0点』
〈2年4組〉『残り人数:27人』『ポイント:0点』
〈2年6組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』最下位
〈留学生1組〉『残り人数:12人』『ポイント:0点』
〈留学生3組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』7位
〈留学生4組〉『残り人数:28人』『ポイント:0点』
凄まじい点数の差だ。
ちなみに〈留学生1組〉はまだ拠点と〈グリムリーパー〉が落ちていなかったギリギリの時が表示されているので、今の〈1組〉の点数は3510点なのだが、それはともかく。
注目すべきは他の同盟軍クラス。
同時に4クラスが同盟を組んで〈1組〉へ仕掛けてきていると容易に分かる。
やはり実力がかなり高いため、奇襲でもなければしっかり対処でき、他のクラスもたったの1人から3人程度の退場で済んでいる。
それで〈1組〉の城壁を破壊しているのだから、向こうもかなりの指揮力だと分かるだろう。
そして、その時は刻一刻と近づいてくる。
「ルキア、『索敵フリーズ』の効果時間は?」
「まだ全然大丈夫だよ!」
「ラクリッテは?」
「『蜃気楼』は、まだ展開中です!」
「よし、このまま突っ込むぞ!」
本来〈乗り物〉に乗ったままスキルや魔法は使えない。
使えても回復系の一部くらいだ。
ただ、これには穴があり、バフが掛かっている者が〈乗り物〉に乗り込んでもバフが消えるなんてことはない。これを上手く使えば、『索敵フリーズ』や『蜃気楼』を発動したまま乗り込むことで、〈イブキ〉を隠すことが可能になるのだ。
そうして〈1組〉拠点の南にあるデッカマスをターンしつつタイミングを計っていると、リーナから通信が入る。
「『〈炎帝鳳凰〉を落としますわ! ゼフィルスさん、今です!」
「いいね、リーナから通信が入った! ――エステルぶちかませ!」
「はい! 『オーバードライブ』! 『姫騎士覚醒』! 『インパルススラストキャノン』!」
ついに〈1組〉と同盟軍の本格的な衝突が始まる。
◇ ◇ ◇
一方、同盟軍は〈1組〉の城塞を破壊したあと、すぐに乗り込もうとしたが、ここで足止めを食らっていた。
「ギャアアアアア!」
「ジャジャヤァアアア!!」
「ブオオオオオオオ!」
〈炎帝鳳凰〉、〈カマクラ〉、〈ナダレグランキ〉が立ちはだかっていたからだ。
「な、なんじゃありゃああああああ!?」
「なんか見たこともない巨人が増えてんぞ!?」
「また〈1組〉やりやがったな! 今度はなにを持って来やがった!!」
そんなセリフが至る所から叫ばれる。さらに。
「これ以上は進めまへんよ――『四尾解放・幻猛炎顎』! 『五尾解放・灼熱の大爪』!」
「退場願います『マルチバースト』! 『デスショット』! 『フェニックスショット』!」
「立ち入り禁止デース! 『忍法・炎・爆裂丸』デース!」
「……『グラビティ・ボール・エクス』! 『ブリザードテンペスト』!」
「たはは~。ここから先は危険地帯だから気をつけてね~『色欲の鏡』! 『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」
〈1組〉のメンバーズが次々と攻撃してきたことで、同盟軍の大渋滞が発生してしまう。
だが、これは想定内。〈ミーティア〉が〈エデン〉の城壁を破壊したときもあったことだ。
ラウは周囲を落ち着かせるため、今まで温存していた大攻撃を決断する。
「みんな落ち着け! サチさんたち、出番だ!」
「いくよ!」
「焦っちゃダメだよサチっち、ユウっち!」
「いつも通りやれば、大丈夫」
「「「『神気開砲撃』!」」」
連合の奥の手の1つ――発動。
ラウのゴーサインでサチたちが特大の攻撃をぶっ放す。
他のメンバーから出来る限りバフを掛けてもらい、自分たちも自己バフで強化し、さらに〈神装〉装備のシリーズを装着しているためステータスも上昇してる。おかげでとんでもない威力を発揮。
元々〈エデン〉でもトップクラスの威力を誇った攻撃だ。
城壁が破壊されたという最高のタイミング。
この勢いと流れを止めないため、強烈な威力の攻撃で同盟軍に流れを持っていく狙い。
いくら〈1組〉のメンバーでもこれにはかなり厳しく、攻撃のほとんどが吹っ飛んでしまう。
「な! なんなんあの攻撃!」
ハクが思わずびっくりするほどの特大の一撃だ。
だが、同じギルドのメンバーはもちろんこれが来るだろうと分かっていたので一気に対処する。
「『三十六・重穴展開』!」
「『リフレクション・ヘル』!」
「『七重奏大結界』!」
「『グロリアスシールド』!」
メルト、ミサト、カタリナ、ロゼッタの防御スキルだ。
元々メルトたちの攻撃を飲み込んでいたため威力が低くなっていた『神気開砲撃』はこれらにぶつかっていく、しかし勢いを削られつつも突破!
最後は4つの腕盾を構える〈カマクラ〉に激突。なんとそのHPを4割も削り取ってダウンを取ってしまったのだ。
だが、そこで『神気開砲撃』は止まってしまう。
「〈カマクラ〉大ダメージ!! ダウン!」
「んな! どんだけ威力高いのよ!」
「分かってはいたが、凄まじい威力だ」
「防がれちゃった!」
「まだだよ!」
「うん。次行くよ!」
「「「『神装武装』!」」」
「今度はこっち! 『魔剣群』!」
「うん! 『魔本群』!」
「これだけでは終わらないよ――『魔矢群』!」
だが、サチ、エミ、ユウカの攻撃はまだ終わらない。
続いては大量の剣、本、矢が中空に展開する大技を発動。
超強力な威力の攻撃が四方八方と上空から、容赦無く発射しまくるという攻撃だ。
逃げ場は無し。
しかし、ここには他にも様々なタンクがいた。
「トモヨ、フィナ、合わせて頂戴――『守陣形四聖盾』! 『クイーンオブカバー』!」
シエラだ。しかもその後ろには、すでにユニークスキル『大天使フォーム』で変身したトモヨとフィナがいたのだ。
彼女たちは城塞が破壊された時点で変身スキルを発動、ちょうど変身が終わってすぐのことだった。
「うっわ相変わらずすっごいなぁ。でも、今の私はもっと凄いんだよ! 『エル・フォトンシールド』! 『エル・フォトンシールド』! 『エル・フォトンシールド』! 『エル・フォトンシールド』! 『ガブリエル大加護結界』!」
少し前、ノーカテゴリーとしてサチ、エミ、ユウカの成長がまぶしかったトモヨだが、今はそんなことはない。何しろ背中には天使の翼をはためかせ、頭には天使の輪が輝く、天使の上級職、高の上、【ガブリエル】に〈転職〉を果たしているからだ。
そして〈五ツリ〉であるエルの名が付く光の巨大シールドを展開。いくつも生み出されては空中に配置されまくり、さらにトモヨは自分を中心に強力な球体状の結界を発動。自分に攻撃を引きつけたのだ。
「トモヨさんだけでは辛いでしょう。援護します――『ミカエル加護大結界』! 『ミカエル加護大結界』! 『ミカエル加護大結界』! 『ミカエル加護大結界』!」
フィナもエルの名の付く結界をガンガン空中に展開しまくり、拠点がとんでもない数の結界群によって塞がれてしまう。
「ちょ!」
「そんなのあり!?」
「数と威力で、負ける!?」
これにはさすがのサチ、エミ、ユウカの大量の魔装武器も届かず、もしくは展開自体が不可能となり、届いたとしても全て防がれてしまう。
サチたちの『魔装群』系とは、大量の魔装武器を展開、『神装』を全消費して発動するために非常に強力なのだが、相手にああも大量に結界を用意され数でも対抗されてしまうとどうしようもなかった。
「私たちじゃ突破できない!」
「下がってるね!」
「ラウ、クールタイムが明けるまで任せた!」
『神装』を全て使い果たしてしまったため、サチたちは一旦下がり、クールタイムが明けるまで待機となる。
「防がれちゃった!?」
「あの攻撃を、防ぐだと!?」
「みんな落ち着け、こっちには100人近くいるんだ! 全員で一斉攻撃を仕掛ければ倒せない相手ではない!」
「そうか!」
サチたちの攻撃が防がれてしまい、さらに冷静さを欠くかに思われた同盟軍だったが、ラウが見事な手腕で立て直して見せる。
サチたちの攻撃を防がれたことで、もっと大きな攻撃を放とうと味方の心を1つにしたのだ。共通の敵を作ると足並みを揃えやすくなる心理を突いた、見事な指揮である。
「やらせないで! 相手をこっちに入れてはダメよ!」
もちろんその辺は〈1組〉も分かっているのでシエラが足止めを叫び、破壊された城壁の隙間から侵入されるのを最大限防ぐ。
だが、さすがに数が違ったためそこそこの人数が城壁の内部へ入ってきてしまう。
そして。
「いくぞ! せーの!」
「ってわああああ!?」
「なんだありゃあああああ!?」
ラウの声に大量の上級スキルが発動。さすがに防壁の中に全員が入っていなかったこともあって30人くらいの全力攻撃だった。
それに対し、飛び込んで来た者が居た。その名も〈炎帝鳳凰〉。
強力な攻撃を繰り出し、30人の攻撃を受けきり、なんと破壊された城壁部分に突っ込み同盟軍のまっただ中に墜落してきたのである。
「きゃああああ!!」
「〈炎帝鳳凰〉だーーーー!!」
「狼狽えるなー! こいつはもう袋の鼠だー!」
この捨て身とも言える攻撃により数人が退場してしまったが、直後に〈炎帝鳳凰〉が一斉攻撃を受けて撃沈してしまう。
「へ? 勝った?」
「勝った! 私たち、〈炎帝鳳凰〉を倒したのよ!」
「お、おっしゃあああああ!! 〈1組〉の防衛モンスターを倒したぞーーー!!」
「あと2体だああああ!!」
〈1組〉の防衛モンスターの撃破に同盟軍からは喝采が上がった。
だが、ここでシヅキから連絡を受けたベニテの叫ぶ声が聞こえてくる。
「みんな! 〈留学生1組〉の拠点が陥落してるよ!」
「え?」
実は先程から連絡が来ていたのだが、〈城壁〉を破壊したばかりというタイミングもあって報告が中々届かず、ついに先頭にいたベニテがラウのところまで走ってきていた。
「ラウリーダー、報告、〈留学生1組〉の拠点が陥落してるんだって―――」
そんな報告がラウまで届いた瞬間のことだ。ラウの『直感』にけたたましい警報がなることになる。
もちろん、ゼフィルスたち到着のお知らせだったのは言うまでもない。
お知らせが警報って、どういうことだろうね?




