#1471 同世代オールスター!〈1組〉防壁をぶっ壊せ!
試合開始7分頃、臨時の拠点であるフィールドの中央〈ビッグマス〉から〈2組〉〈3組〉〈4組〉〈留学生4組〉が出発しようとしていた。
「ラウ、依然として〈留学生1組〉に動きがないぞ」
「ああ、何かがおかしい」
セーダンに言われるまでもなく、ラウは〈留学生1組〉が動かないことに強い違和感を持っていた。〈留学生1組〉に向かわせた伝令すら戻らないのはさすがに異常だ。
普通なら同盟を裏切って漁夫の利を狙うつもりか、とも思える行動だが。〈留学生1組〉はクイナダがリーダーを務めるクラス。
まずそんなことはしないだろうと考えられる。
故に考えられるのは、何かしらのトラブルだ。
〈留学生1組〉が出撃できなくなるなんてどんなトラブルか?
答えは1つだ。ここにいないクラスが何かしらのトラブルを巻き起こしたに決まっている。
そして〈3組〉からは〈留学生3組〉が〈1組〉から突撃されていると連絡があり、つい今し方陥落した。
故に考えられるのは、〈6組〉に突撃した〈1組〉が、ついでとばかりに〈留学生1組〉を狙いに行った可能性。
ラウの脳裏にはゼフィルスがまたはっちゃけて〈留学生1組〉にちょっかいを出している光景が浮かんでいた。見た目が平穏な〈留学生1組〉の拠点だが、見た目を誤魔化すスキルなんて〈1組〉で持っている人は何人か心当たりがある。
そこについに連絡が訪れた。
「ニャ」
「! カルアさんの黒猫か!」
「あ」
影の中から現れたのは見間違えようもない、カルアの黒猫眷属だった。
しかし、現れたその瞬間、なんとエフェクトの光が弾けて消えてしまったのだ。
「ラウ、今のは」
「……カルアさんが、やられたらしい」
ゴクリと誰かの喉が鳴る。カルアの黒猫は1度召喚すれば最低でも7分は顕在する。
今は試合を開始して7分。だが連絡に必要な時に召喚することになっているため、試合開始当初には召喚はしていなかった。ということは、黒猫が強制的に消滅したということ。
つまりはカルアの退場を示していた。同時に何らかの方法で〈留学生1組〉が襲われているとも。
「! すぐに〈1組〉拠点へ出発する!」
ラウは、〈1組〉に襲われた〈留学生1組〉を当初の予定通り諦めるとし、4クラスで〈1組〉の拠点へ向かうことを決断する。
「〈留学生1組〉はひとまず放置! 俺たちは当初の予定通り〈1組〉の拠点へ向かう! 行くぞ!」
確信に近い思いがあるラウは、〈1組〉の現在の人数が半数くらいであると予想。
シャロンの能力で時間を掛ければ掛けるほど城壁が大変なことになるので、一刻も早く拠点へ仕掛けることが勝利の道だとラウは判断した。
そしてこの決断は大正解。
〈1組〉としても、さすがに7クラス全員に攻め込まれるとどうなるか分からない。隙を突かれて拠点を攻撃され陥落する可能性は十分にある。
だからこそ初動で3クラスを撃破したのだから。数は力なのだ。
「南のルートから攻める! 遠距離攻撃に十分注意警戒しろ!」
「「「「「おおー!」」」」」
〈1組〉の拠点へ陸地から攻めるのであればルートは2つ、北ルートと南ルートだ。
だが、以前Sランク戦で〈獣王ガルタイガ〉〈カオスアビス〉〈サクセスブレーン〉が3方同時攻撃を展開したとき、〈エデン〉は見事に防ぎきった実績を持つ。
戦力を分けるのは悪手だ。
故に、全員一丸となり、約100人というメンバーで南側から突き進む。
南を選んだ理由は〈留学生1組〉が北方向にあるから。
〈留学生1組〉の方向に背を向けるのは危険だと南からの侵攻を選んだ形。
侵攻開始。
すぐにラナの攻撃範囲内に入る。するといきなり四宝剣がぶっ放された。
「来るぞ! 慌てずに防御しろ!」
「はははははっ!! ここは俺の筋肉に任せてもらおうか!」
「いやアランは下がってろ、まだ出番じゃない。――アケミ、カジマル、レミ、ハイウド! それぞれ1つ対処だ!」
「ふふん、私に任せるなんて偉いじゃないの! ぶっ壊してやるわ! 『アークテンペストフレア』!」
「わかりました! 『六角三重障壁』!」
「一本なら、抜いてやるわ! 『4線レーザーアロー』! 『ビームシュート』!」
「了解! 『マキシマムブラスト』ーーーー!」
〈2組〉のメンバーズ、〈生還のアケミ〉は【アークメイジ】から上級職、高の下、【ハザードテンペスター】へ〈上級転職〉している暴風女子だ。
風と炎の竜巻が見事に宝剣の1つをぶっ壊す。
同じく〈2組〉のアケミの部下、付き人枠である【結界師】のカジマルも、上級職、高の下、【多重展開結界師】に成長している。
三重の結界が展開し、宝剣の1つを防ぎきった。
同じく〈2組〉、去年はゼフィルスからハリセン少女と呼ばれていた【剛速弓士】のレミも、上級職、高の下、【ビームレーザー・アクセラレータ】に〈上級転職〉。
4つのレーザーとビーム、どう見ても矢ではないそれを弓からぶっ放して宝剣の1つを打ち砕いた。
同じく〈2組〉の〈サイボーグハイウド〉は上級職、高の下、【サイボーグ完全体】。
全身メタリカルな装備の腕部分から、なぜか砲撃をぶっ放して宝剣を粉砕する。
「ナイス!」
「「「「おおおおおお!!」」」」
「足を止めるな!」
迫り来る宝剣を全て迎撃し、テンションが高まる同盟軍。
ラウの声に速度が上がり、それからも来る強撃を次々弾きとばすことになる。
「これだけ上級職がいるんだ。まず問題無く組み付ける。サチさん、エミさん、ユウカさん、準備はいいか!」
「こっちは問題無しだよ!」
「隣に同じく~」
「クールタイムも明けているし、最大で一気に2回。いけるよ」
「準備万端ということだな。ナツキとダノムは先行して罠の破壊を頼む!」
「任せてよ! 全部炎の刀の錆にしちゃうから!」
「了解ですラウさん。真摯に全ての罠を解除ないし破壊し、部隊の侵攻の妨げになるものを排除しましょう!」
ラウが次々指示を出す。さすがは元中堅ギルドのギルドマスターをしていただけはあり、その指揮力は中々のものだ。
道中、リーナの砲撃や十宝剣などが降り注いだが、なんとか全てを退場者無しで防ぎきる。
続いて元〈1年51組〉、現〈2年2組〉所属、【炎武侯】から上級職、高の中【炎刀大名】に就いた女子ナツキと、同じく【正義漢】から上級職、高の中【スーパータイフーン・ジェントルマン】に就いた男子ダノムが先行し、全ての罠を解除ないし破壊しまくる。
「全てを破壊し道を作れ! ――『炎政刀道』!」
「道にはゴミ1つ残しません――『ジェントルタイフーン』!」
ナツキの刀が振られれば、炎の道が作られてそこに落ちている物を浄化。
ダノムが自らを中心に回転したタイフーンで罠を掃除する。
だが途中。
「ふ、道が綺麗だと気分が良「ボカアアアアアン」ふぁがああああ―――!?」
「ダ、ダノムーーーーー!?!?」
なんとリモート爆弾が爆発。
罠を回収していたダノムが貴い犠牲になってしまう一面もあった。
さすがはハンナ特製罠。対策はあったようだ。
「くっ、だがダノムは罠を全て排除してくれた! ダノムの勇姿は忘れん。行くぞーー!」
「「「おおー!!」」」
そしてついに同盟は〈1組〉の拠点、その防壁のあるマスへと侵入する。
ここまで犠牲は1名。
「接触するぞ、タンクは盾を構えろ!」
「やらせないよ! 『迷宮通路』!」
「おーいえー『鏡映しの迷路道』!」
「これはどうでしょう『交わらない漆黒結界』!」
だがさすがに〈1組〉もそう簡単に組み付かさせてくれはしない。
シャロンとミサトとカタリナの3魔法の組み合わせ、結界迷宮路を形成。
ラウたちの進行方向に出現して、次々と同盟軍約100人を分断していく。
「慌てるな! これは破壊可能な結界だ! ぶち抜け! 『エンペラーバスター』!」
「スゥゥゥ、はああああ――――『グランド・ノック・ストレート』!」
「『パーフェクトロケットパーンチ』!!」
「はーっはっはっは! こんな壁なぞ、我が筋肉と鋼鉄の拳でぶっ壊してやろう! 『パージ』!!」
だが、もちろん弱点を知っているラウがすぐに対処。
自分の拳に自信を持っているメンバーが結界の壁をぶん殴る。
なぜか若干1名、装備スキル『パージ』を使い服がボンッと弾け飛びパワーアップした者もいたが、おかげで結界はすぐに3つとも破壊されることになる。
「「「きゃあああああ!!」」」
なお余談として、弾け飛ぶ服装備を着用していたアランは裸族にジョブチェンジし、味方の女子が悲鳴を上げる一幕もあったが、これは些細なことだろう。
「抜けてくるのは想定内だよ! いっけー『ファランクス』! 『キャッスルキャノン』! 『クロスファイア』!」
「今よ! 『祈望の天柱』!」
「『殲滅兵砲・エクスプロージョンノヴァ』ですわ!」
「あ」
「うぎゃあああ!?」
そう簡単には組み付かせないとここでガンガン攻撃が降り注ぎ、ここでさらに2名が退場してしまう。
「くっ! 盾隊ふんばれー!! 仲間を守るのだ!」
「こんのー! 盾行くよみんな! 『聖・乙女盾』ー!」
ラウも指揮をどんどん飛ばし攻撃を防いでいく、その中でも最も硬く、優秀な盾はやはり〈3組〉リーダーのベニテだ。一番前に出てガツンガツン攻撃を防いでいく。
だが次の瞬間には一瞬の隙を突くようにして指揮官ラウにリーナの一撃が迫った。
「ラウ危ない! 『滅迅一太刀』!」
「エレメース! 助かった!」
だがそこで庇うのは〈2組〉所属。【剣姫】から上級職、高の上【撃滅の剣姫】に就いていたエレメースだ。
ラウの護衛の1人である。ちなみに元〈1年51組〉所属だ。三つ編みカチューシャがまぶしい。
礼を言いつつもラウはすぐにリャアナやワルドドルガの近くへと寄る。
「行けるか、リャアナ!」
「やってみる! いくよ、『グランド・アイス・チャージ』!」
「ワルドドルガは建設開始だ!」
「ほいきた!」
ここで【大駆動氷凜槍士】のリャアナが地面を凍り付かせながら突撃する『グランド・アイス・チャージ』を発動。
リャアナの職業は氷の足場を空中に設置し、その上をスケートでもするかのように駆け抜けるというロマンスキル。
そしてこれは、城壁越えにも使えるのではと研究されていたのだ。
要はリャアナが空中までに道を敷いて、そこを皆で登ろうぜ。という作戦。
また、第二案としてドワーフにしてアケミの部下、付き人である【破創金剛ハイドワーフ】のワルドドルガが、この場で建設を開始。
攻城兵器を今ここで作りだそうとしてきたのだ。
「そうは問屋が卸しませんぇ。『六尾解放・紅蓮焔』!」
「きゃあああ!?」
「リャアナ失敗!」
「くっ、ターニア、回収を!」
「ラジャ。『仲間即回収』!」
リャアナの作戦はさすがに直線的すぎたため城壁の上にいたハクが迎撃。
無事に猫人、【ハイニャイダー】から上級職、高の上【ハイクルニャイダー】に就いていたターニアに回収されてリャアナは無事戻ってきた。
この子もゼフィルスが過去世話を焼いた元〈1年51組〉の子だ。今は〈2組〉所属である。
「上はやっぱりダメだね」
「ならば、城壁を破壊するまでだ。ワルドドルガ!」
「出来たぞい! これくらいの組み立て、20秒も掛からんわ!」
「よし、装着だ! 突き破るぞ!!」
出来たのは6メートルほどもある攻城槌。その等級は上級下位のランク7に相当する。
単純な作戦だが、〈1組〉の攻撃を防ぐ要員が大量にいるためこの攻城槌を守るように配置すれば効果が期待できるとラウが採用していた。
タイミングもバッチリで、目の前。6人で持ち上げて一気に城壁へ突撃する。
「ナギ、目隠しを!」
「アイサー! 『インビジブルカーテン』!」
【レジェンドレイヴン】のナギは隠密系のスペシャリスト。
今まで温存し、ここで使うことで気取らせず、攻城兵器を城壁へ持っていくことに成功する。
「今だ!」
「『突貫』!!」
結果、ズドーンという音と共に防壁に轟音。
HPが8割も削れるという大成果を果たす。
セレスタン1人居れば5割削れるところ、6人がかりで8割である。
シャロンの防壁が硬すぎる件。
「いつの間に! 『防壁大回復』! 『修復』!」
「『拠点を覆う大結界』! 『拠点を守る二重巨大結界』です!」
「攻撃、強めて! ここだよ――『サンライト』!」
シャロンとカタリナがすぐに城壁のHPを回復、バリアを張る。
ミサトの『サンライト』で照らされ、隠密が解けて姿が顕わになった攻城兵器隊に攻撃が降り注ぐが。
「ぐおお、こんな序盤に、だとーーー!?」
「『ハイエルフの大聖域』! ぐっ、これまで、ですか。あとを任せます……」
「ナイヴス、ローゼル、退場!」
「くっ! ああ、任せろ!」
攻城兵器はAランクギルド〈世界の熊〉所属、【装甲破壊熊】のナイヴスと、Aランクギルド〈新緑の里〉ギルドマスター、【エンシェントサンクチャリエ】のエイローゼルが身を犠牲にしてなんとか守り切りきった。そして。
「クールタイム回復!」
「いっけーーーー!!」
「「「『突貫』!!」」」
攻城兵器のクールタイムが回復し、2度目の『突貫』が発動する。
ズッドーンという音と共に、〈1組〉の城壁が破壊された。




