#1464 同盟軍合流!2クラス落ちた?1つ足りない?
〈3組〉は〈留学生3組〉の〈キャプテンハーミット〉から情報を得た後、迅速に行動した。
「〈1組〉の拠点は真西側の中央! 真西側の中央だよ! 伝令は東に向かって! その防壁アイテムは西のこの通路へ持っていってね!」
「はい!」
すぐに伝令を放ちまくり他のクラスに周知する。
さらに西側に警戒網を張り、持って来ていた拠点防衛用の防壁アイテムを西側の通路へ向けて配置、〈1組〉へ「私たちはあなたたちの存在に気が付いていてとても警戒しているぞ」とアピールした。
これで少しでも時間稼ぎになれば、欲を言えば〈3組〉には来ないことを切に願った。
〈1組〉の拠点がどこにあるのか、最初から知っていたのは〈2組〉のみ。
故に〈2組〉が最初周知する手筈になっていたが、〈キャプテンハーミット〉の方からの知らせが早かったため、〈3組〉も動くことができていた。
どこが〈1組〉の拠点か分からず下手に動けない状況を早々に脱却出来たのは非常に幸運だったと言える。
ここで〈留学生3組〉方向へのプレッシャーも掛けて、〈1組〉が警戒し〈留学生3組〉から手を引けばかなり良しだったが、〈1組〉は〈3組〉のプレッシャーなんか華麗にスルーして〈留学生3組〉を攻めまくっていた。さすがにこれ以上近づけば逆に自分たちがやられかねないため〈留学生3組〉の救出は断念。他のクラスとの集合を優先することにした。
「『シヅキ、フィールドの中央東にあるのは〈2組〉で確定よ。伝令と接触できたわ』」
「『〈2組〉の情報では北東は〈4組〉』」
「東にある拠点は〈留学生4組〉だから、ベニテ」
「オッケー! これで全ての拠点の位置が判明したね!」
シヅキのスキルで通信網を形成。
マースィ、エフィの報告を受けてリーダーベニテがシヅキを通してクラス内で共有する。
〈3組〉が分かっているのは東西南北に〈1組〉〈2組〉〈留学生1組〉の拠点があり、斜めの四隅に〈4組〉〈6組〉〈留学生3組〉〈留学生4組〉の拠点があるということだけだった。
だが、〈1組〉と〈2組〉の拠点が分かってしまえば逆算して〈留学生1組〉の場所はわかるし、知らせてくれた〈留学生3組〉、その反対にある〈留学生4組〉と、〈2組〉が知らせてくれた〈4組〉の情報があれば、残りは〈6組〉であると分かる。
「〈2組〉から伝令、集合は中央の〈ビッグマス〉!」
「よし! 防衛に12人を残して出発するよ~! ――シヅキ、拠点は任せた!」
「アイアイマム~」
〈2組〉は伝令と一緒に集合場所も飛ばしていたようですぐに準備が進められる。
〈3組〉も出撃準備なんてとっくに終わっていたため、ベニテは【伏兵通信士】のシヅキに拠点を任せ、マースィとエフィと共に〈ビッグマス〉へと向かったのだった。
この時12人も防衛に残したのは〈留学生3組〉がやられれば、次は自分たちの番だからである。〈1組〉のある西側へのプレッシャーは継続しなければならない。
戦闘は激化する可能性が高く、かなりの時間を要するだろう。その間にカウンターで落とされてはたまらない。故に〈1組〉から近いクラスはある程度防衛を残しても良いという話になっていた。
逆に〈2組〉を始め、〈4組〉と〈留学生4組〉はほぼ全戦力を出さなくてはならない。
「うはー、拠点を離れるの、凄く怖いよー」
「しっかりなさいベニテ。スピード勝負なんだからね」
「分かってるってマースィさん。襲われないうちに一気に倒す。だよね!」
「ドキドキするね」
「エフィは本当に戦闘好きなんだから。逆に〈1組〉と戦ってみたいなんて思っているのはエフィだけよ?」
「だって楽しみ。この心の高揚、分かってもらえると思う」
「私は別の意味でドキドキしてるよ!」
ダッシュしながら、固くなりすぎないようにちょっとした雑談で身をほぐす。
だが、色んな意味でドキドキな様子である。
拠点を離れるイコール戦力を分けるである。
〈1組〉に狙われていると考えると、〈3組〉でも怖いものは怖い。
拠点を襲われてもピンチだし、今出撃中の部隊に奇襲を仕掛けられると本当に笑えない。
ベニテはタンクなのでクラスメイトをなんとしても守り切る心算ではあるが、多分そうなると自分は生き残れないんだろうなぁと思っていたりする。
掲示板住民、〈名無しの紅盾〉ことベニテは〈1組〉のことを他の一般人よりよく分かっていた。
逆にエフィは感情にあまり変化が無いように見えて実は戦闘大好き。
〈1組〉との戦闘も恐れず、逆にワクワクしていたりする。
「私も援護するから気をしっかり持ちなさいよベニテ」
同じく掲示板住民、元〈名無しの魔射〉だったマースィがベニテを励ます。
今は読み専に戻ったものの、彼女もまた〈1組〉の脅威度を正しく認識していた。
掲示板の情報は侮れないが、一緒に混沌と絶望も持ってくるのだから困る。
ベニテの職業は【盾乙女】。マースィの職業は【鉄砲乙女】である。
下級職は【魔装】系で、サチ、エミ、ユウカと同じく『魔装武装』で戦うコンボ系だ。故に、ベニテが残るならその時はマースィも残る。一蓮托生だ。
ちなみに、エフィだけは【乙女】系職業ではないので別行動が可能。
「女兵ちゃんは大丈夫かな? もし拠点が襲われたら逃げ場ないよ」
「こら、女兵ちゃんじゃなくてシヅキでしょ。ここで呼び間違っちゃダメよ」
「あ、失礼失礼」
「それに襲われた時点でもうどうしようもないと思う。考えない方がいい」
「エフィはドライすぎ!」
また、拠点に残った【伏兵通信士】のシヅキは、〈名無しの女兵〉。
〈秩序風紀委員会〉のスカウト&転職によって情報を司る職業になってから掲示板には書き込まなくなってしまったが、読み専は続けていて、ベニテたちとはいつも情報交換をしている関係で4人は仲良しだ。
本当はシヅキも連れてきたかったが、拠点の情報を伝えてくれるメンバーがいるといないとでは大違い。故にシヅキには拠点を任せた経緯があった。
「ほら、そろそろ到着するわよ」
「はいよー」
懸念を振り払い、目の前に集中する。
〈ビッグマス〉にはすでに〈2組〉が到着していた。
「〈3組〉! よく来てくれた!」
「ラウリーダー! 無事合流できて良かったよー」
「ああ。さすがに1クラスでは奇襲があったとき太刀打ちできんからな。心強い」
「こちらこそ。それで、これはいったい?」
代表してリーダー同士が素早く挨拶する。
〈2組〉のメンバーは20人強。伝令を飛ばしまくっているのでそれが終わればもう少し増える。
そこに〈3組〉18人が合流したことで、なんとか〈1組〉からの攻撃に耐えられる戦力が出来た。
〈2組〉だけの時に〈1組〉に襲われてはおそらく作戦自体が瓦解する。
〈3組〉がいち早く合流出来たためにこれで作戦が進められると、ラウたちは一息吐いたのだ。
だが、もちろん〈2組〉も〈1組〉に襲われた時用の対策をしている。
〈2組〉はいち早くここにたどり着き、とあることをしていたのだ。
ベニテたち〈3組〉の視線が〈ビッグマス〉中央の池エリアに集中する。
そこには、建設中の氷の城が建っていた。池の上に、である。
「もしかして、Aランクギルド〈氷の城塞〉のギルドマスター、レイテルさんの能力?」
「察しが良いな。その通りだ。この〈ビッグマス〉は他の〈デカマス〉とは違い、中央に3×3マスの池がある。だが〈1組〉に池なんて効かん。俺らにだけあるデメリットだ。これを消し去るには凍らせてしまえば良い。幸い、レイテルには池を凍らせ、その上で戦った実績もある。また、〈1組〉に襲われた際はここで籠城が可能だ。これは大きな意味を持つだろう」
「だからってここに城建てちゃうんだ!?」
「第二拠点だ。以前〈エデン〉の練習ギルドバトルで着想を得た」
ラウが言っているのは、ヴァンがしていた〈第二拠点戦法〉のことだ。
あれはヴァンのユニークスキルのおかげもあったが、レイテルの職業【永久凍土の氷城主】にも似たようなことが可能だ。
とはいえこちらは完全な拠点ではなく、あくまで城みたいな見た目の建造物にすぎない。しかし、要は目的が果たせれば良いのでこれで問題無かった。
そんな戦法を見てごくりと〈3組〉のメンツが息を飲む。
ラウは〈エデン〉メンバーの1人、しかも「獣人」系の憧れの的、【獣王】だ。
獣人の中にはラウへと羨望と尊敬の眼差しを向ける者もいる。
だが、ラウの表情は険しい。
「先程〈留学生3組〉が落ちた」
「!!」
ラウの言葉に〈3組〉のメンツが慌ててフィールドの南西を見れば、確かに〈留学生3組〉の拠点が陥落している様子が目に入った。
どうやら〈3組〉が移動中に落とされてしまったようだ。
しかもまだ知るよしもないが、〈1組〉は2クラス同時攻略で1人の退場者も出ていないというアンビリーバボーである。
「こうなると〈1組〉はどう行動を起こすか分からん。できれば、留守を狙いたかったが、難しいだろうな。あちらにはリーナさんがいる。こちらの動きは筒抜けだろう」
「向こうも集合して待ち構えている、ということですか?」
「その可能性もある。それに、〈留学生1組〉がまだ合流しないのが気になる。あっちにはカルアさんを放っている。クイナダさんがリーダーなら〈3組〉と同じくらいの時間で合流してもいいはずなんだが。……まさか」
ラウが北の方を見る。北にある拠点は遠いがここからでも目視で見ることは可能だ。
だが、〈留学生1組〉がこっちに向かっている様子は無かったのだ。
「ラウ、〈4組〉が合流した!」
「〈留学生4組〉は現在向かっているのを確認したわ! 後は〈留学生1組〉だけよ!」
「あんのアホバカマヌケめー。早くしないと計画がおじゃんだぞ!」
そこへ報告。〈2組〉メンバーであり、日焼けに角刈りのボクサーみたいな男子セーダン、従者2人を引き連れた女子〈生還のアケミ〉がそれぞれ報告。
これで来ていないのは本当に〈留学生1組〉だけだ。ハンマー使いの熊人アディが憤りを吐露する。
「計画にハプニングは付きものだ。カルアはまだ戻ってきていないか?」
「ああ、行ったっきりだ。あのカルアさんに何かあったとは思えんが……」
セーダンの言葉にラウは頭を巡らせる。
これは〈留学生1組〉に何かあったか、それとも〈留学生1組〉に一杯食わされたのか。
しかし、すぐに結論は出た。
「〈1組〉が何かしたのが濃厚か……! 〈留学生4組〉が合流次第すぐに〈1組〉の拠点へ進攻する!」
ラウ決断。こうして出撃が決まる。
いずれにせよ〈1組〉は落とさなくてはならない。
時間稼ぎ、これが〈1組〉の罠だった場合取り返しが付かないことになる。
故に、4クラスでの出撃を決める。とにかく早く行動しなければ、拠点はどんどん落とされていくし、シャロンの能力で拠点はより強固になってしまう。それに、
「〈留学生1組〉に〈1組〉がなにかをしていれば、その分〈1組〉の防衛陣は減っているはずだ! 今がチャンスだ! 食い破るぞ!」
「「「「おおーー!!」」」」
こうしてついに同盟軍が出撃する。




