#1460 リーダー不在の〈6組〉へ、元気な〈1組〉襲来
試合開始。
〈1組〉は直後に様々なバフを掛けられて北と南へ飛び出した。
俺は北担当だ。
「〈モンスターカモン〉――来てくださいゼニス!」
「クワァ!」
「『ハイジャンプ』!」
空を飛び、北へ先行するのはアイギスとゼニス。
その力強い羽ばたきに心強さを感じるぜ!
俺たちはエステル号へと乗車。
「行きます! 『オーバードライブ』!」
そのまま北にある拠点へ向かって初っぱなから真っ直ぐ全速前進した。
30名中、リーナとシャロンの2名だけを防衛に残した14人ずつでの出撃だ。
このまま落とせればよし。落とせなくてもそれなりの痛打を入れ、連携できないようにしてしまえば目的達成。
「1対7を真正面から戦えばさすがに〈1組〉もただではすまないからな。俺たちは相手を連携させずに打ち破るのが最善だ!」
1対7とは、7クラスを同時に相手にすることに非ず。全員が手を組み、なだれ込んでくるのを未然に防ぎ、打ち破ってこそそこに面白さと楽しみがあるのだ。
もちろんそれを向こうが上回り、しっかりと7クラス集めきって攻めてくるのも楽しみ過ぎる展開!
どちらが勝利条件を満たせるか勝負だな。もちろん、負けるつもりはない!
俺たちはいつも通り初動大事。上手く行けば即で2拠点落とせる可能性すらある作戦を決行!
結果が楽しみ過ぎるぜ。
そう思って、出発した直後。
隣のミューが見つけてしまう。
「なにか、来る。空、単騎」
「なにー!? ってもうか!」
「単騎だと? あれは、〈ワイバーン〉ではないか?」
思わず驚いてミューと同じく正面の空を見れば、そこにはリカの言うとおり、〈ワイバーン〉がこっちに向かって接近していた。
他に敵影無し。
「ゼフィルス殿、これは?」
「あー、おそらくあれは挨拶、もしくは斥候だな。向こうは他のクラスと手を組んでいるからその合流と、可能なら〈1組〉の拠点の位置を確認しようという魂胆とみた!」
「やらかしてる……」
ミューがなんとも言えない哀れむような表情でそう言った。
このままだと1人で〈1組〉14人の精鋭に突っ込むだろう。
あかん。
相手はようやく俺たちが〈1組〉だと分かったのか、急に逃げに入った。
しかし、その時にはすでにアイギスとゼニスが接触していた。
2体とも〈亜竜〉と〈竜〉だから速い速い。もう接触かよ。
第六十ブロックの最初のドンパチは、まさかの空中戦だった。
「大迫力なのです!」
「ええ。これは良いものが見れましたねルル。あ、落ちますね」
完全に観戦モードのルルとお姉さん気取りのシェリアの言うとおり、アイギスとゼニスは見事に〈ワイバーン〉を打ち落とした。いや、急降下して速度を上げ、そのまま逃げる心算か。
しかし、残念としか言い様がない。そこへエステル号がちょうど追いついてしまったのだから。真正面に。
「あ」
なんだか、とても絶望に満ちた声が向こうから聞こえた気がした。
不憫極まりない! 俺は少し気を使ってエステルに振る。
「【ワイバーンライダー】か! かっこいいじゃないか! な、エステル!」
「はい。あれを撃ち落とせばいいんですね。『スラストゲイルサイクロン』!」
「あれ!? 俺そんなこと言ったっけ!?」
しかし、残念かな。
エステルは容赦がなかった。ラナが南へ行っちゃっているからかな?
ドンっと発射されたスラスト砲は寸分違わず〈ワイバーン〉に直撃し吹き飛ばして墜落させてしまう。ダウンだ。
「トドメと行きましょう」
「よ、よし! 総攻撃だ! 【ワイバーンライダー】君、さらば!」
斥候潰しは戦術の基本中の基本。
俺の総攻撃の声に飛び降りて接近したリカ、ルル、セレスタン、ラムダ、レグラムによって、ほとんど一瞬のうちに〈ワイバーン〉は〈ファーム〉へお帰りに、そしてライダーの人は退場してしまうのだった。
「しかし【ワイバーンライダー】が斥候役とは、学園のレベルも凄まじく上がったな!」
「ゼフィルスさん、嬉しそうですね」
「まあな! 【ワイバーンライダー】と言えば〈ワイバーン〉をテイムしていないと就けない職業だからな!」
事が終わって〈イブキ〉に即帰還すると、珍しくオリヒメさんに振られたのでそう答える。
オリヒメさんは旦那――じゃなくてレグラムの活躍が見られてとてもご機嫌だ。
そして俺もご機嫌。
【ワイバーンライダー】クラスの上級職を斥候役にするほど学園のレベルが上がっていると分かって、とても嬉しかったのだ。
のちにアイギスから「あれは〈6組〉のリーダーでした」と聞かされるまでは。
そういえば以前に〈集え・テイマーサモナー〉が他のギルドを相手に、協力してもらった対価として〈ワイバーン〉や〈ベヒモス〉を渡したという話を聞いたな。
おそらくその類いで彼は【ワイバーンライダー】になれたのだろう。
「『ゼフィルスさん、判明いたしましたわ! 北にあるのは〈6組〉ですわ!』」
「サンキューリーナ! ――みんな! あそこにあるのは〈6組〉の拠点だ! このまま〈6組〉拠点に乗り込むぞー!」
「「「「おおー!!」」」」
リーナから『ギルドコネクト』が届いて相手のクラス判明。
全員が乗車し直して再び出発した。
さあ、【ワイバーンライダー】が所属していた〈6組〉だ。他にはどんな職業が居るのかな?
◇ ◇ ◇
リーダーエサントが墜落して撃破されるシーンは、〈6組〉の拠点からとてもよく見えた。
「「「リ、リーダー~~~~~!?!?!?」」」
「え? え?」
「エサントが逝ったーーーー!?!?」
「嘘だろ? なあ嘘だろ!? なあああ!?」
しかし、彼らはその目で確かに見ちゃった。
全然嘘じゃなかった。そして、そのリーダーを屠った相手の接近も見えている。
「ちょ、来てる来てる来てる!!」
「〈エデン〉の〈イブキ〉だああああああ!?」
「なんで南にある、唯一近い拠点が〈1組〉なんだああああああ!?」
「これが、最後に選んだクラスの業、か」
阿鼻叫喚。
つい今さっきまでとても気合いを入れて、士気も高く、楽しそうに準備をしていた〈6組〉も、リーダーを失って〈1組〉接近となれば急降下。というか大暴落だった。
「ど、同盟! こういう時、同盟は何をすればいいんだっけ!?」
「はい! えっと、『……〈1組〉と拠点が近かったら……諦めろ』と書いてあります!」
「諦めろってどういうことーーー!?!?」
「とにかく防衛だ! ありったけの高コストモンスターを出せ! 相手は少人数だ! 頑張れば行ける! 頑張れば行ける!」
「ま、負けるかーーーーーぎゃあああああ!?」
「砲撃だーーーーー!?」
ついに〈1組〉到着。
しかし、その時には何もかもが準備不足、もしくは色々崩れていた。士気とか。
人数差で見れば倍以上居たのにもかかわらず、〈6組〉は初手のスラスト砲で大混乱。
防衛モンスターの召喚もタイミングが最悪で連携を組むこともできず、むしろ嬉々として各個撃破されてしまった。
「サブリーダー! サブリーダー指示を!」
「みーっけなのです! あなたが指揮官なのです! とう!」
「幼女飛んだ!?」
「ちょ、大精霊が殴り込みに来てるぞ!」
「防げ! 防、あぎゃああああ――――!?」
「ルル、こちらは気にしないでいいのでしっかり打ち倒してきてください」
「あい! ルル、いっきまーす! 『ヒーロー・バスター』!」
「ルクス様はルルの援護を、テネブレア様は私の援護をお願いいたします」
「「―――!」」
もう〈1組〉の各個人が強すぎて、混乱中の〈6組〉では歯が立たなすぎた。
斬り込んだルルがバッタバッタと無双し、シェリアがそれを見て微笑む。
「〈1組〉〈雷閃のレグラム〉だな! いざ尋常に勝負!」
「いいだろう。掛かってくるがいい」
「うっ。今のは100点を超えて120点でしたレグラム様」
どこかではドラマもあった模様だ。
「はーっはっはっは! 俺こそが〈1組〉のリーダー、ゼフィルスだ! 〈6組〉のリーダーはどこだ! そこか!? 『フィニッシュ・セイバー』!」
「ち、違ああああああ!?」
中には勘違いでフィニッシュされた人も。
「セレスタン、モンスターの掃討は完了した」
「では、そろそろ拠点を落とさせてもらいましょう」
「それじゃあ、エールしちゃうよー! 『リ・エール』!」
「『突貫』です。――――もう一度行きますね。トドメの――『突貫』です」
リカの報告にセレスタンがノエルのエールを受けて二撃。
これにより〈6組〉のHPはゼロとなり、最初の退場クラスになってしまう。
「僅か3分ほどで1クラス退場、か……」
「準決勝でも思った。ゼフィルスたち、城落とすの慣れすぎ」
そんな平然と1クラス落とした〈エデン〉メンバーズを見て、ラムダとミューがどこか遠い目をしながらなにか呟いていたのだが、誰にも聞き取られることはなかったのだった。
あとがき失礼いたします!
僅か2話で早くも1クラス退場……!
ちなみに出撃メンバーは準決勝の時と変更してます。
北攻勢メンバー
ゼフィルス、エステル、リカ、セレスタン、シェリア、ルル、アイギス、ノエル、ラクリッテ、ルキア、ラムダ、レグラム、オリヒメ、ミュー
南攻勢メンバー
シエラ、ラナ、シズ、パメラ、メルト、ミサト、カタリナ、フラーミナ、ロゼッタ、エリサ、フィナ、ハク、トモヨ、アイシャ
拠点防衛メンバー
リーナ、シャロン




