#1457 フィールド選定! 拠点を最初に選ぶのは!?
9月26日金曜日。クラス対抗戦最終日。
今日はなんと言ってもクラス対抗戦の決勝戦がある日だ!
そのバトルフィールドも試合の直前に決定されるため、俺はとてもワクワクしていた!
「いやぁ、今年はどこのフィールドが選ばれるのかなぁ」
「楽しそうだねゼフィルス君」
「もちろんさ!」
昼、ギルドハウスで買い込みまくった本日の戦果をハンナと一緒に食べていると、試合の時間が着々と近づいてきた。俺のワクワクも高まっている。
ハンナは結局クラス対抗戦の期間中、俺の部屋に訪ねて来なかった。シエラたちと何を話し合ったのかは不明だが、明日からはいつも通り朝食を作りに来てくれると言っていたのでとてもホッとしている。
やはり朝はハンナの朝食が食べたいのだ。
2人でギルドハウスを出て、第二アリーナへと向かうと、出場者と観戦席のところで別れた。
「それじゃあハンナ、後はよろしく。行ってくるぜ!」
「いってらっしゃいゼフィルス君。がんばってねー」
ハンナの応援がとても心地良い。
ハンナは丁重にVIPの観客席へ連れて行かれたので安心。
なぜか出場者の俺よりもハンナの方が丁重に扱われているのは気のせいかな? いやきっと気のせいではあるまい。さすがは〈錬金術課〉のクラス対抗戦で2連覇を達成した者は違う。
俺もすぐ2連覇してやるからな!
すぐに〈1組〉の控え室に入って待っていると、続々とクラスメイトたちがやってくる。
「いよいよねゼフィルス! とても楽しみだわ!」
「俺も楽しみさラナ! 今日は祭を楽しむぞ!」
「おおー!」
「絶対そういうお祭りじゃないと思うんだけど。いやゼフィルス君たちにとってはお祭りなのかな?」
「アイシャ。考えない方が楽」
ラナと早速ハイタッチしてワクワクを盛り上げていると、近くでアイシャとミューが変な顔をしていた。
そして「それ、分かるよ。うんうん」と頷くミサトとシャロンの姿も。はて?
そうこうしているうちに定刻となる。
「はーいみなさん。集まってますか? そろそろフィールドの発表を行ないますので準備してくださいね」
「キタ!」
我らが〈1組〉の担任、フィリス先生の登場だ。
今フィリス先生が言ったとおり、これより決勝戦でやるフィールドの発表が行なわれるのだ。
去年もそうだったが、これは前もって他のクラス同士で拠点の場所を打ち合わせするなどの行為を防止するため、試合の直前に決められる。
フィリス先生に連れられて第二アリーナの会場へクラスで向かう。
もちろん俺は先頭だ。控え室から出ると、凄まじい大きさの会場にズラーッと並ぶ観客席。そして熱狂する観客の人々が目に入った。
おおーテンション上がるぜ!
みんなで手を振れば、さらに歓声が聞こえてきた。ちょっと気持ちいい。
少し歩けば、去年と同じく、タブレットを持つムカイ先生と、ラダベナ先生が壇上に立つ形で待っていた。
そしてその周りで待つ7クラスも。俺たちが最後のようだな。
「さあ、集まったね! これより、〈戦闘課2年生〉の決勝戦フィールドを選定するよ!」
「「「「わーーー!!」」」」
再び熱狂。
ラダベナ先生の宣言のあとにムカイ先生がタブレットをいじり、大型モニターにいくつものフィールドが表示されては別のフィールドが映るを繰り返す。
これ去年もやった。テレビなんかで見るランダムセレクトだな。ドルルルルルルってなるやつだ。
それが始まると観客席の熱狂も収まり、みながそれに注目する。
ドキドキするなぁ。
去年は第五アリーナ、〈五つ山隔て山〉フィールドだった。
そして今年は、まさかの第二アリーナだ。
ランダムではない既存のフィールドということで、候補は絞られる。
第二アリーナの〈拠点落とし〉と言えば、〈ピラミッド〉フィールドが最初に思い浮かぶ。あそこを再びやるのも良い。楽しかったからなぁ。
だがクラス対抗戦には、普通のランク戦には無い特殊ルールが設けられている。
拠点の位置を好きに配置できる、という点だ。
ランク戦の場合は拠点の位置は決まっており、平等かつ公平となるようクジで決められる。
しかしクラス対抗戦の場合、フィールドのどこに拠点を置いても良いのだから面白い。
たとえ同じ〈ピラミッド〉フィールドでもまた違った楽しみがあるだろう。
とても楽しみである。
そして、ついにその時は来る。
「じゃあ選定するよ! 今年の〈戦闘課2年生〉の決勝戦フィールドは、ここだよ!」
ラダベナ先生の宣言と共に影の薄いムカイ先生がこっそりタブレットをタップ。
ランダムセレクト画面がピタッと止まり、1つのフィールドが映った。
「おおっ!!」
「え? ここっ!?」
「こりゃ、またすんげぇフィールドが選ばれたもんだぜ!!」
俺もラナも、それを見てびっくりした。
この俺をびっくりさせるとは大したもんだよ。なんちゃって。
そのフィールドは特殊も特殊。
今までは山が多く、障害物で視界を狭められるようなフィールドが多かったが、ここは全くの逆。
視界はこれ以上ないほど良好で、拠点の位置はバレバレ。
障害物なんてほとんど無く、しかし恐ろしいほど危険なフィールド。
「まさか決勝戦で〈水の都市〉フィールドが選ばれるなんてな!」
決勝戦が行なわれるのは池と水路だらけの、超特殊地形。
―――〈水の都市〉フィールドだった。
◇ ◇ ◇
それを見たラウは、引きつった顔をした。
「遮蔽物のほとんど無い、水ばかりのフィールド、だと?」
〈水の都市〉フィールドはほぼ池と水路がオンリーのフィールド。
当然遮蔽物なんてほとんど無く、拠点の位置はバレバレになってしまう。加えて水深は異様に深く、落ちてしまえば装備の重量によって即沈み、浮かび上がることも難しい。こうなると〈敗者のお部屋〉に一直線なので、即死エリアと呼ばれることもある。
少し前のランク戦で〈サクセスブレーン〉の策略によって〈世界の熊〉の主力が池に放られ、そのまま多くの者が戦わずして〈敗者のお部屋〉に送られたのは記憶に新しい。
落ちたらダメだ。本当にダメだ。
なのに〈エデン〉は池の上に氷を敷いて戦うような集団である。
〈イブキ〉なんか池の上を素通りするし、ゼニスやフィナ、トモヨといった空を飛ぶこともできるメンバーも多い。
幸いにも〈2組〉は同じ氷使い、〈氷の城塞〉のギルドマスターレイテルがいるためなんとかなりそうだが、他のクラスはこのフィールドになすすべ無く混乱させられるだけで終わるのではなかろうか?
そんな考えがラウの中に過ぎる。
何しろ通路に追い詰めたと思っても、〈エデン〉は悠々と池や水路を渡れるのに対し、他のクラスは追いかけられないというミステリー。
水の上は道じゃないはずなんだが……。
さらに大問題なのが、遮蔽物が無いイコール、とある王女様の宝剣を遮る手段が無いということだ。
あれ? これ本当にどうしたらいいんだ? どうやって攻めるべきだ?
ラウの頭は混乱した。
どうやら世界は、〈1組〉に微笑んでいるらしい。
◇ ◇ ◇
「決まりさね。今年の〈戦闘課2年生〉の会場は――〈水の都市〉フィールドに決定さ! ではこれより拠点の場所を決めるよ! 最初の選定者は、〈1組〉だ!」
再び大歓声。
そして、俺が代表して壇上に上がる。
拠点を決める順番は準決勝の獲得点数順だ。
〈1組〉は大会レコードである7054点を記録して堂々のトップ。
最初に拠点を決める名誉は〈1組〉に与えられたのだ。
「さぁてどこにしようか。むしろ攻めちゃうのもありだよなぁ」
俺はとあるテントの中でフィールド図を俯瞰しながらどこに拠点を置こうか考える。
何しろ、遮蔽物がほとんど無いフィールドなのだ。
中央には巨大な7×7マス――〈ビッグマス〉と呼ばれる巨大なマスがあり、そこを中心にして斜め4箇所にはこのフィールドで唯一となる3×3マスの〈山〉が置かれている。
本来であればこの〈山〉を背にして拠点を構築するのが大変よろしい。
遮蔽物というのは大きな味方だ。これを味方に付けられるか否かは勝敗に大きく関わる。
しかし、こっちにはシャロンがいるんだよなぁ。
故に、そこまで遮蔽物に拘らなくてもいい。
何しろ、山は4箇所にしかないんだから、他のクラスだって利用したいよね。
では〈1組〉の拠点をどこに建てるのか?
こっちには、ラナがいる。
ラナの攻撃範囲に拠点を建てたが最後、あの〈ピラミッド〉フィールドの悲劇再び。ギルド〈弓聖手〉のような悲しい結末になってしまいかねない。
ということで、逆に拠点を遮蔽物の欠片も無いような場所に置き、他のクラスに圧力を掛けるという展開も良い。面白い。
さてさて、本当にどこに建てよう?
俺は悩んで悩んで悩みきり、そしてとある場所に決めたのだった。




