#1450 クラス対抗戦2日目は――リーナとデート!?
「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」
「うわ、アリーナの方は凄いわね」
「大歓声だな」
アリーナから度々大歓声が聞こえてくる。
今日は朝から大盛り上がりだからな。
まずはブロックのクジ引きから始まるクラス対抗戦。
クジ引きからすでにクラス対抗戦は始まっていると言っていい。
引いた番号のブロックに自分のクラスが割り当てられる。それによってどこまで自分のクラスが勝ち残れるのかが決まると言っていい。
故にクジ引きから大盛り上がりだった模様だ。
俺たち〈1組〉は――準決勝からのシード権を有している。
準決勝は四ブロックで構成されており、俺たちが参加するブロックは――第五十六ブロックだ。
故に、勝ち進めば五十六ブロックに向かってしまうクラスの嘆きは凄かったらしいとあとで聞いたよ。
逆にそれ以外はよっしゃーっと超盛り上がり、その落差がとんでもなかったとか。
このように、クジ引きで一喜一憂が決まってしまうのだ。恐ろしいな!(←原因)
クラス対抗戦1日目は、いわゆる篩だ。
ルールは去年と同じだが、2年生以上はなるべく戦力を対等にするために、強いクラスはシードとなっている。
そのため、1日目はシード権を持っていない、組の数字の大きいクラスがメインとなっているんだ。
正直、あまり注目度は高くないと思われていたが、観客席はかなりの人混みだ。
理由は留学生目的。
遠いところから、我が子を応援する親を始め、分校の学生が友を応援するために駆けつけたり、果ては分校自体が課外学習の一環とか言ってわざわざ本校まで遠足(宿泊付き)に来た学園もあったというのだから驚きだ。
留学生のクラスはシード権を敢えて保有せず、むしろ活躍の場を欲している。
そして1日目は留学生の独壇場だったらしい。
まあ、分校の代表みたいな位置で選ばれた学生たちだ。
いくら本校生とはいえ、中位職以下で対抗するのは難しかった模様だ。
一番輝いていたのは、やはり〈留学生1組〉だろう。
あそこはクイナダがいる。クイナダの試合はもちろん応援に行ったよ。
目を見張るような強者がゴロゴロしている〈留学生1組〉は、もうかなり目立ってた。他のクラスを圧倒していたんだよ。俺も戦ってみたい。
一番目立っていたクイナダなんか薙刀を振り回してほとんど1人で1つ拠点を落としていたからな。
うんうん。強化合宿の成果が出ているな!
だが他の留学生も強かった。
割合的には1日目の本校生は留学生に比べて3倍近くも居たはずなのに、本校生はほとんど勝ち残れなかったようだ。まさに篩だったんだぜ。
今年の〈戦闘課2年生〉は〈本校生280組〉、〈留学生80組〉の計〈360組〉。
内〈42組〉までがシード権を有しているので、第一試合は実に318クラスが戦うことになった。
今年も8クラスが1ブロックで戦い、勝ち抜き枠は2クラス。
そのため第一試合は40ブロック。勝ち抜くのは80クラスとなる。
内、勝ち抜いた60クラスが留学生クラスだと言えば留学生が相当頑張ったのが分かるだろう。
続いて1年生の部の話。こちらもこっそり応援に行ってみた。
ここは去年と同様、シード権は無し。
まだどんでん返しは起こせるレベル差だと思われているのだろうか?
うちのギルドの子たち、もう〈五ツリ〉にいってんだけど……。
うむ。一昨年までは100組台のクラスが一桁台のクラスを下すなんていう大どんでん返し展開があったようなのだが、もう無理じゃないかな? 少なくとも〈エデン〉所属が多く在籍している〈1組〉は、100組台では手も足も出ないと思われる。
証拠にうちの子たち、まだまだ全然本気出してないもん。
五段階目ツリーは温存しているっぽい。まあ、まだ1回戦だもんな。
お披露目は決勝戦とかじゃないと、場が盛り上がらないだろう。
シーンってなりそう。
あ、アリスが拠点を1つほぼ単独で打ち抜いちゃった。
一緒にいるタンクのキキョウがほとんど活躍してないぞ。
〈1組〉と当たってしまった1年生諸君に幸あれ。
こんな感じでラナとエステルと観戦しながら1日目の午後は過ぎていった。
クラス対抗戦2日目。
「今日はわたくしですわ」
「もしかして、順番制なのか!?」
俺は朝から驚かされたよ。
部屋へ迎えに来たのがリーナだったのだ。
昨日はラナ。今日はリーナだ。
こうなってくると、〈1組〉の試合が無いクラス対抗戦3日目までが順番にお出かけな予感。
「あの、ゼフィルスさん。もしかして用事がありましたか?」
そう不安そうに見つめてくるリーナに、俺は心の迷いを吹っ飛ばしてグーをする。
「そんなことないさ! リーナのお誘い、すっごく嬉しいぜ。一緒に行こう!」
「わぁ! はい! 一緒に参りましょう!」
まるで花が咲いたような笑顔に俺は今日1日、この笑顔を守ると決めた。
部屋を出る準備はしていたので、軽く身だしなみを整えてからリーナと出発。
どうやらリーナと2人だけの様子だ。
「その、今日は回ってみたいところがありますの」
「いくらでも付き合おう」
俺はキリッと決めながらそう言った。
直後にグッと手を握られる。
「あ、えっと、こほん。これはその、はぐれないようにするためですわ」
なぜかリーナが繋いだ手を見てあたふた。
どうやら無意識に繋いでしまった模様だ。顔を赤くしてなんとか持って来た言い訳を口にするリーナが凄く可愛いです。
「そうだな。はぐれないようにするのは大事だな!」
うむ。なので手を繋ぐのは普通のことなのだ。
リーナもコクコク頷いている。
2日目のクラス対抗戦は、昨日よりも混んでいた。
出店もいっぱい並んでいて、リーナと一緒に軽めの飲食を楽しむ。
「ゼフィルスさん、これはなんでしょう? 縦長のドーナツでしょうか?」
「これはチュロスだな。まさにリーナの言うとおり。これはシナモンとかが掛かっていて風味を出しているようだ」
「食べてみましょう」
「賛成だ!」
実はリーナはこういうデザート系に目が無い。
しかし果物にはそれほど惹かれないようで、主にケーキやパフェ、クレープやドーナッツなどの人の手で作られた菓子系がお気に入りらしい。
なんだかお嬢様的ですごく納得してしまう。
「少し喉が渇いてきましたわ」
「ならジュースの露店があるぞ」
「わ、これはフロート? アイスをジュースの上に乗せるだなんて、これは是非食べてみなくてはなりませんわ!」
「飲むんじゃなかったのか?」
でもフロートって食べるのか飲むのか、よく分からないよな。ちょっと分かるんだぜ。
「ん~。ジュースに加えてさらにアイスまで選べるなんて、挑戦が過ぎますわね!」
「リーナのオレンジジュースにバニラアイスフロートは美味そうだな」
「最初はスタンダードを所望しましたの。オリジナリティを出すのはその次ですわ」
「さすが、よく分かってる!」
「ゼフィルスさんのはサイダーにレモンアイスですの?」
「今日はちょっと暑いからな~」
暑いとサイダーが飲みたくなるのはなぜだろう?
あと柑橘系もセットで。
「美味しそうですわね。ゼフィルスさん、一口いただいてもよろしいですか?」
「もちろんだ。なら、リーナのももらおうかな」
「どうぞですわ」
リーナとこうして食べさせあいをするのは初めてではない。というか割と何度かやっているが、未だにドキドキする不思議!
俺がレモンアイスを掬ってリーナにあーんをしてあげると、リーナはとても素敵な笑みでパクリ。
「ん~。レモンの酸っぱさとアイスの冷たさがこの暑さにぴったりですわ」
「じゃあリーナのも貰うな」
「どうぞですわ。はい、あーんですの」
「あーん。――うん。やっぱバニラがスタンダードで至高だ。今度は俺もバニラにしようかな」
「まだですわゼフィルスさん。少しサイダーも味わわせてくださいまし。じゃないとフロートを、ではなくアイスを食べたことになってしまいますわ」
「なんと!」
リーナが自分のフロートに差してあったストローを取り、俺のジュースに差してもいいか聞いてくる。
もちろん俺は秒でオーケーを出した。
「では、失礼いたしますわ」
ちょっと事務的なような言葉と裏腹に顔を赤くしたリーナがそっと俺のジュースに自分のストローを入れ、一口飲む。
なぜかそれがとてもなまめかしく感じるのだから不思議だ。
ストローからサイダーを吸うリーナの顔がどんどん赤くなっている気がするのは気のせい、のはずだ。
「堪能、しましたわ。色んな意味で」
口に手を当てて満足そうに身を退くリーナ。
どうやら美味しかった模様だ。最後だけよく聞き取れなかったが、なんだか聞き返すなと『直感』さんが言っている気がするのでスルーする。
「では、どうぞゼフィルスさん」
そう言って自分のオレンジフロートを差し出してくるリーナ。もちろん飲みかけである。
これ本当に吸っちゃって良いの? そんな疑問が出てきてしまうのはどうしてか。
リーナも飲んだんだから大丈夫。俺も自分のストローをリーナのフロートに差して一口だけいただき、口の中で味わう。
さすがはスタンダードと言われている組み合わせだ。
オレンジの風味にバニラの香りと甘味が合わさり、暑さを忘れる美味さを感じさせてくれる。
いや、暑さを忘れたのは別の要因かもしれない?
まあとりあえず美味しかったよ。
「どうですかゼフィルスさん?」
「暑さが吹っ飛ぶ美味さだった」
「まあ。これが上手い感想というものですのね。うふふ」
お、どうやらウケたらしい。リーナが凄く楽しそうだった。
「ゼフィルスさん、まだ試合が始まるまでに時間がありますわ。次は向こうの通りへ行ってみましょう!」
「今日はどこまでも付き合うぜリーナ」
今日はクイナダの試合も1年生の試合も無いからな。
こうしてリーナと過ごしているうちに、2日目もあっという間に過ぎていったのだった。




