#155 公開、これが覚醒したジョブの真の力だ!
「まずは私から行くわよ! やらせて!」
「どうぞどうぞ」
「これが【聖女】最強魔法よ! くらいなさい『聖光の耀剣』!」
「マンマー!?」
周回2周目。
いくつかの〈スキル〉〈魔法〉を使用可能してテンション上がりまくりのラナの一撃が〈ママ〉に大ダメージを与えた。
ラナから放たれたのは『聖光の耀剣』。
『光の刃』の上位ツリーで巨大な光の剣が飛んでいく、上級中位の単体攻撃魔法だ。
下級職が覚えられる〈魔法〉群の中では上級中位が最強クラス。まさにトップレベルの〈魔法〉だ。
「何これ、何これ! すごく気持ちいいわ! それに見て、すっごいダメージ! どう!?」
「ラナ様、凜々しゅうございます」
ラナの喜色満面なドヤ顔にうっとりするエステル。
おいエステル、君ラナの事好きすぎだろ。
まあ、今のラナはすごく耀いているけどさ。
「次も私が撃つわ! ずっと私のターンよ! 『聖光の宝樹』!」
「マンマー!?」
今度放ったのは『光の柱』の上位ツリー『聖光の宝樹』だ。エリア範囲魔法で〈ママ〉の下に設置し大ダメージを稼いでいる。地面から巨大な光の樹が生え、その樹に触れているとダメージが入っていく強力な魔法だ。
『光の柱』よりかなり広範囲を殲滅してくれるため、次の眷属召喚の時にもう一度やらせよう。あの数を一掃出来るぞ。
「マンマ、マンマ、マンマー!」
おっと、ラナがヘイトを稼ぎすぎてしまったようだ。
〈ママ〉がむちゃくちゃ怒ってラナの居る方へ向かおうとするが、そこに割って入った人物が一人。そう、俺。ではなくシエラだ。
「私も試したいのよ。少し相手をしてくれるかしら。〈ユニークスキル〉『完全魅了盾』!」
「マ!?」
ラナとボスとの間に陣取ったシエラが【盾姫】の〈ユニークスキル〉『完全魅了盾』を見事に決めた。これは攻撃スキルなので効果範囲が非常に狭い。しかし、事前に俺から詳しいスキルの使い方を聞いていたシエラはそれを難なくこなした。
『完全魅了盾』の効果はLV1の時、「20秒間ヘイトを無視してタゲを取る」だ。素晴らしい、破格のスキルだな。ラナが大量にヘイトを稼いだはずの〈ママ〉が強制的にシエラの方にタゲを向けさせられる。
「マママ、マンッマーー!!」
〈ママ〉の腕から豪腕(?)が振るわれシエラを叩く。しかし、
「『鉄壁』!」
シエラの防御スキルが発動した。
地味にシエラはこの3段階目ツリー開放まで防御スキルは『カバーシールド』しか持っていなかった。アレは仲間をかばう系のスキルなので、自分の身を守る系では実質初の防御スキルとなる。
盾が青いエフェクトに包まれ、何やら壁のような幻影が見える。アレが発動中はシエラは動けない代わりに非常に硬くなる。
ママのパンチが何度も盾を叩くがシエラはビクともしない。
そして、
「『カウンターバースト』!」
「マ!?」
タイミングを見計らっていたシエラがカウンタースキルを放った。
パンチ攻撃が盾を叩いた瞬間、ドカンと非常に大きな衝撃が跳ね返る。〈ママ〉が大きくダメージを受け、ノックバックした。手が万歳状態でビクビク痙攣している。
「私の番ですね。ここです。『閃光一閃突き』!」
「マンマー!?」
ノックバック状態で大きなダメージを受けるとダウンする。
エステルの新〈スキル〉、光属性の『プレシャススラスト』の上位ツリー、『閃光一閃突き』がノックバック中の〈マザーマッシュ〉に大ダメージを与え、ノックバックダウンを奪い取った。
「チャンスです。〈ユニークスキル〉発動。『姫騎士覚醒』!」
ここでお披露目。エステルが【姫騎士】の〈ユニークスキル〉、『姫騎士覚醒』を発動した。ナイス判断だ。
効果はLV10の時、「16秒間スキルのMP消費が4分の1になり、クールタイムを8分の1にする」だ。
つまりスキルが使い放題になる強化系〈ユニーク〉スキルである。
これだけは使用可能に留めずLV10まで上げさせた。コレの真価はLV10でなければ味わえない。
これがどういうことかというと。
「『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』! 『ロングスラスト』! 『レギオンスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』! 『ロングスラスト』! 『レギオンスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』! 『ロングスラスト』! 『レギオンスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『ロングスラスト』!」
もうボッコボコである。
クールタイムが限りなく減少しているのでスキルを発動し終えた瞬間から即スキル発動で息を吐かせぬ連続攻撃。一番クールタイムの長い『閃光一閃突き』でも5秒でクールタイムが終わるのでほとんど撃ち放題だ。
おおう。〈ママ〉のHPがみるみる減ってあっと言う間にレッドゾーンへ…。あ、0になった。
「ああ!?」
膨大なエフェクトの海に消えていくボスにラナが悲痛な声を上げた。
多分、最も悲痛な叫びを上げたかったのは〈ママ〉に違いない。
「いやぁ。やっぱ【姫騎士】やべえな」
俺はその光景に腕を組んでうんうんと頷いた。
途中、ダウンから復帰した〈ママ〉が毒の胞子を振りまいたり、HPがレッドゾーンに突入して怒りモードに入っていたけれど、そのアクションすら隙だらけと言わんばかりに最後の一撃まで叩き込んだエステル。見事に〈ママ〉を倒し切っちゃったよ。
あ、それと途中に挟んでいた『トリプルシュート』というのは『ロングスラスト』の上位ツリーで三連突きの『ロングスラスト』を放つスキルなのだが…。いやあ、うん。蛇足だったな。
【姫騎士】のアタッカーマジ強ぇ。瞬間火力なら最強と言われるだけはある。これで〈乗り物〉まで増えるって言うんだからマジ有用だよなぁ。
「私たち何もしなかったね。すごく早かったよ」
「むしろボス戦が始まって1分経ってないんじゃないか? これだから3段階目のツリーは強いんだよ。結局眷属すら召喚させずに終わったぞ」
近くに来たハンナが珍しく苦笑していた。
3段階目のツリーは初級ダンジョンにはオーバースペックである。
中級へ踏み込む準備が整いつつあるな。
うーむ。中級ダンジョンかぁ。楽しみだなぁ。
それと、
「ちょっとエステル! やり過ぎよ! 私たちの分まで持っていくなんてどういう事よ!」
「す、すみませんラナ様。加減が分からずやり過ぎてしまったようです」
と、ラナが叱りエステルが叱られるという、いつもと逆の現象が起こっていて面白かったと追記しておく。