#1408 レアイベントボス戦!バフ打ち消しを無効だ!
攻撃が当たれば飛んでいる分、ふんばりが利かず動きが鈍る。
絶えず攻撃を当て続けることで疑似的に動きを止めることが可能だ。
相手は天使なので耐性でダメージは多くはないが、目的はノックバックなのでオーケーだ。
「いいね、攻撃を途切れないようにしろ! 『サンダーボルト』!」
「ガッテン。『デルタストリーム』!」
「―――――!!」
「ん? んにゃあ!?」
「カルアー!?」
追撃にカルアが攻撃を仕掛けるが、これに〈やーちゃん〉が反撃。
ブンっと槍をぶん回してカルアをぶっ飛ばしてしまう。
「大丈夫! 回復するよ! 『エクスヒール』!」
「油断するな! 相手はレアイベントボスだぞ! 『メガダークネス』! 細かい攻撃で相手を鈍らせ、動きを止めたところへ大技を決めるんだ!」
ミサトがカルアをリカバリーすると、メルトの注意が飛んだ。
さすがはメルト、〈エデン〉の頭脳の一角と呼ばれるだけあり、すぐに俺の指示の意図を見抜いてくる。〈二ツリ〉の『メガダークネス』などで動きを鈍らせ、隙ができれば大技を決めようという魂胆だろう。
弱いスキルや魔法の方が展開が速い傾向があるし、クールタイムも短い。
特に〈闇属性〉攻撃はダメージが少しだけ高い。
メルトの言うことは半分正解だ。
だが、こういう方法もあるぜ。
「メルト、合わせろ――『シャインライトニング』!」
「! そういうことか――『十倍キログラビティ』!」
追尾攻撃の他には範囲攻撃などが有効。
とにかく当てれば隙が出来るんだからまずは当てることを優先。
〈二ツリ〉だろうが僅かに怯ませることができるのだから、後はその僅かな隙を広げてあげればいいわけだ。
俺が範囲攻撃『シャインライトニング』を扇状に放てば、メルトはすぐに理解して飛んでいる相手を地面に落とす『十倍キログラビティ』を使用する。
普通に使っても当てることが難しい重力も、俺の範囲攻撃と組み合わせれば――この通りだ!
「―――!!」
「今だ!」
だが、さすがはレアイベントボス。
メルトの『十倍キログラビティ』でも叩き落とされず、動きこそ鈍るが空中で耐えきった。
『十倍キログラビティ』でも叩き落とされなかった敵は〈やーちゃん〉が初めてだぜ。
しかし、自由に飛ぶことは適わず動きがかなり鈍った。
動きが鈍ればこちらのものだ。
フィナがそこに追撃を仕掛ける。
「いい加減落ちてください――『天落』!」
「―――――!?」
『十倍キログラビティ』を掛けられている最中にこの追撃はかなり痛烈。
さすがのレアイベントボスとて耐えきれず、墜落してダウンした。
「ナイス! 総攻撃だ!」
今回のメンバーは全員がアタッカーになり得るレベルの強力なメンバー。
相当なダメージが入ったな。
「―――!!」
「! 何か、来る!」
復活した〈やーちゃん〉が立ち上がると、槍を天に掲げる。
すると上空が光ってピカッと俺たち全員を照らした。すると。
「な!」
「力が抜ける!?」
「違う。バフが無くなってるよ!」
「来たな――これはバフ消しだ!」
ラナから掛けてもらっていたはずの『大加護』がまだ効果切れまで時間があるのに切れていた。
動きが鈍ったところに攻勢を仕掛けてくる〈やーちゃん〉。
「くっ! 『制空権・刀滅』!」
「バフを掛け直すわ!」
「あ、ラナ殿下、待――」
「『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『病魔払いの大加護』!」
バフが消されたことで動揺したラナがバフを掛け直す。リカが一瞬それに反応して待ったを掛けようとしたが、間に合わなかった。
「―――!」
「くあっ!?」
「リカ!?」
「え!? どうしたの!?」
「防御スキルの速度が上がって、空ぶったようだ!」
「あ!」
ズドンと〈やーちゃん〉の槍の一撃がリカを捉え、2メートルほどズザザザザと吹き飛ばされるリカ。しっかり足で立ち踏ん張ったためダウン無し。あぶねぇ!
まさかの防御スキル『制空権』使用中の出来事にみんながびっくりするが、俺はその理由が分かったので説明。
実はリカの防御スキルは素早さが上がると感覚が狂うらしいのだ。
そのため、バフを切らさないことが大切。バフは最初に掛け、それを維持してほしいと頼まれていた。
今まで問題無く維持できていたためすっかりそのことが頭から離れてしまったのだろう。いや、バフが消されて動揺したせいかもしれない。
バフが2度切り替わったことで感覚がズレたリカの『制空権』が空振り、〈やーちゃん〉の攻撃がリカに直撃したのだ。
「『ハイヒール』!」
「なんのこれしき――『制空権・先流』!」
「―――!?」
だが、〈やーちゃん〉の追撃は空振り。
リカが受け流し、そのまま槍の間合いの内側、懐に入って一閃していたからだ。
ミサトから回復魔法を受け取り回復したリカが、自分は大丈夫だとアピールするように攻勢を掛けた。
「隙が出来たぞ! 『フィニッシュ・セイバー』!」
「『グラビティ・ボール・エクス』!」
「―――!」
リカの攻撃で動きが止まったところを見逃さずに攻撃。
そこで、また〈やーちゃん〉が槍を掲げる。
「な、あれは!」
先程のバフ打ち消しスキルだ。HPが少なくなると、〈やーちゃん〉はこれを使ってくるようになる。
本来、ゲームなどではラスボス級のモンスターが使ってくるとんでもない技として有名。ゲーム時代もバフを打ち消されると厳しかったが、リアルではリカの様に速度やパワーの感覚に狂いが生じて大変よろしくない。
やらせないぜ?
「ラナ! ユニーク『光守られし聖なる奇跡』だ!」
「へ? あ、ああ!! 『光守られし聖なる奇跡』! 発動よ!」
ここでラナのユニークスキルが発動する。初お披露目。
なんか一瞬なにそれみたいな反応があった気がしたが、きっと気のせいだろう。
キリっとしたラナがタリスマンに奇跡を求める祈りを捧げると、相手の魔法が発動するよりも早く、俺たちを聖なる光が包み込んだ。
瞬間天から、相手のバフを打ち消す光が俺たちを照らす。
しかし――ラナの『光守られし聖なる奇跡』はバフ打ち消しの無効化。
要はラスボス級の技、バフ打ち消しを完全に防いでくれるユニークスキルだ。
「これは!」
これにより、バフを打ち消されなかったメンバーが攻勢を仕掛ける。
こんな大技を発動したボスの隙を逃さず、一気にHPを削っていった。
「バフの打ち消しはもう気にしなくていい! ラナが全部防いでくれるからな! ラナのバフも継続できるからもう感覚が狂うことはないぞ!」
「ありがたい! 『二刀斬・陽光桜嵐』!」
「―――!」
〈やーちゃん〉、この大きな隙の代償はデカいぜ?
バフというのは本当に強力で厄介、ボス戦をするときには大抵何かしらのバフを掛けるのがセオリーとなる。というか、バフを掛けて戦うのが前提となっているボス戦もあるくらいだ。
逆にボスが強化してきたら、こっちもバフかデバフ、またはレベル差で対抗しないととんでもやべぇことになるのはゲームでは常識の範囲だろう。
なのに世のラスボスたちはこっちのバフだけ打ち消してくるんだぜ? 鬼畜すぎる! 自分たちは変身とかしてパワーアップしてくるのに!
ここまで言えばバフ継続がどれだけ戦況を安定させ、ボス戦を有利にさせてくれるかが分かるだろう。地味だが、なくてはならないもの、それがバフだ。
そのバフを打ち消されない【大聖女】のユニークスキルは、まさに対ラスボス級特効と言い換えても良い。
ゲーム時代、【大聖女】が大人気だった理由の1つである。
これにより、バフを掛け直さなくてもよくなったメンバーの快進撃は凄い。
一気にダメージを稼いで追い込んでいく。
「――――――――――――!!」
「怒りモードか! だが!」
HPがレッドゲージに突入した〈やーちゃん〉が、スキルを纏わせた強力な槍を2本両手に持ち反撃せんとする。
本来なら、その素早さに手数が2倍となって手が付けられないほどの厄介さになる。が、出だしで止める!
「ミサト! リカ! 反射とカウンターだ!」
「うん! 『リフレクション・ヘル』!」
「ここだ! 『双・燕桜』!」
「――――――!?」
反射とカウンター。
ミサトの反射結界を叩いて片方が弾かれ、苦し紛れのもう1本の突きは、リカが見事にカウンターを取ったのだ。
ズッッッドンと衝撃。
ユニークスキルのカウンターを食らった〈やーちゃん〉が吹き飛ばされるようにして盛大に怯む。
すげぇ、完璧な抑えだ。これを活かす!
そのまま連続攻撃で挟み込む!
「フィナ! エステル!」
「『ミカエルラッシュ』!」
「『戦槍乱舞』!」
ラッシュ系と乱舞系で左右からの連続攻撃。
逃がさないようにして封じ込める。
ここで大技を当てる!
「パメラ、シズ!」
「行っくデース! 『忍法・影分身爆裂丸』デース!」
「そこです――『バードデスストライク』!」
「―――!?」
影分身で5人になったパメラの大技。5つの『炎・爆裂丸』を叩き込む。
そしてシズのスキル、飛んでいる相手に特効効果を持つ『バードデス』がストライクした。これは痛烈だろう。
このタイミングで――カルアと俺が斬り込む。
「いくぞカルア!」
「ん! ――『128スターフィニッシュ』!」
「『聖剣』!」
ズババババババババっという連続攻撃中にズドンと衝撃。
このスキルは、相手を少しの時間ストップさせる。
―――トドメだ。
「ラナ! メルト!」
「これでトドメね! 『大聖光の十宝剣』!」
「削りきれ! 『アポカリプス』!」
まずメルトの非常に強力なユニークスキルが直撃。
その後を追いかけるように10の宝剣が次々と突き刺さると――ついに〈やーちゃん〉のHPがゼロになる。
「――!!」
「おっしゃー!」
膨大なエフェクトを発生させて沈んで消えていくレアイベントボスを見て、俺たちは勝ち鬨を上げた!
後書き失礼いたします。お知らせ。
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