#1371 ある日デンジャラスな時間がゴブリンを襲った
去年なら道案内に利用したゴブリンだが、今回はすでに用済みなので「馬に乗っているなんて、ゴブリンなのに生意気だ」といわんばかりに一瞬で馬ごと光にして1つ目の要塞へと進んだ。
ゴブリン要塞1つ目。
「見えてきたな。リーナ、作戦は?」
「もちろん、戦闘員は全軍突撃ですわ!」
「作戦もへったくれもねぇ!」
「悲しいことですが。〈エデン〉とゴブリンでは戦力差は圧倒的を通り越してもはや象とアリレベルなのです」
「道を通ったらいつの間にか踏み潰していたレベル!?」
まあそうだな!
リーナの言葉には同意しかない。
みんなで一緒に突撃して、えっと、踏み潰してもらって。
「では戦闘員のみなさん、行きますわよ! 『祝砲』!」
「「「「おおー!」」」」
開戦!
〈エデン〉の戦闘員、全46人で突撃です! あれ? 46人?
いつも上級ダンジョンに挑む上級生が32人。
未だ育成途中の新メンバーが13人。合計で45人だ。
1人多くない?
「行くよー! これが上級中位級のレシピで作った、新しい錬金砲だよーー発射!」
「ゴブ!?」
「ゴブー!? ゴブー!?」
1人生産職混じってる! 無論ハンナだ。
ハンナの新作!?
その錬金砲はまるでリーナの兵砲と同じ、もう持ち運べないレベルの巨大さで地面に置かれ、その横に立つハンナが点火するとドーンという発射音と共に砲撃がゴブリン要塞の壁を難なく飛び越えて中で爆発。ゴブリンたちが盛大に吹っ飛んだ模様。
同時に「敵襲! 敵襲ー!」とばかりにゴブリンがゴブゴブ叫び、わらわらと要塞からゴブリンが出てきた。しかし。
「続いてアイクリちゃんだよー! ゴーゴー!」
「ちょ、ハンナちゃん!? なんでいるの!?」
クイナダがそれを見て目を白黒させてた。ハンナは戦闘員なんだよ。
耐久力に自信のある〈アイスクリスタルゴーレム〉、通称アイクリが腕をぶん回しながらゴブリンを蹂躙なさっていた。出たなハンナの新作ゴーレム。
ゴ、ゴブの攻撃がまったくと言っていいほど効いてねぇ! これ、ハンナだけで殲滅出来たんじゃねと思ってしまうのは気のせいだろうか?
「こほん、まずは要塞の城壁を破壊しよう! みんな、遠距離攻撃を叩き込め! 『ライトニングバースト』!」
指示を送りつつ、ちょっと手心を加えて三段階目ツリーの『ライトニングバースト』を発動。うん、さすがにゴブリン相手に〈五ツリ〉は使えなかったよ。
「食らいなさい! 『大聖光の十宝剣』!」
「あ」
ラナは普通に〈五ツリ〉発動の予感!
ラナの上に出た10の宝剣の切っ先が城壁へ向くと、そのまま射出される。
ゴブリンはなんとか矢で迎撃! ああー! 矢が豆鉄砲のように弾かれたー!
そのままゴブリンが目を見開いて驚いているところへ――着弾!
ゴブリンたちと城壁は一瞬でHPをゼロにして光に消えた。
「何よこの要塞、凄く脆いわね! みんな今よ!」
「ラナ殿下が強すぎだよ!?」
「一撃ですの!?」
「これが、上級生の力!」
人差し指をゴブリン要塞に向けて見事なポーズを決めるラナ。
それにクイナダ、サーシャ、カグヤが驚愕と羨望の視線を向けていた。
この3人、相変わらずリアクションが良い!
去年ラナは帰省していてゴブリン要塞攻めに参加していなかったからな。やりたいってずっと言ってたし、やっちゃった模様だ。楽しそうである。
うむ、ダンジョンは楽しめ!
「一番槍ですわー!」
「お嬢様! 一番槍は他の誰かに任せてください! お嬢様が一番槍を取らないでください!」
おおっとノーアが真っ直ぐ要塞に乗り込むー!
そこへクラリスが追いかけるー! 頑張れクラリス!
「最近、クラリスって足が速くなった気がする」
「苦労、しているのだな」
それを見ながら俺が呟くと、メルトが拾ってくれた。ちょっと嬉しい。
結局その後はなだれ込んだ〈エデン〉のメンバーによってゴブリンは全員光にされ、溜め込んだ(?)宝箱は全て回収されたのだった。
うむ、さすがに〈金箱〉クラスでも今の〈エデン〉からするとちょっとしょぼく感じるな。
報酬も経験値も期待できないが、無双が楽しかったので〈エデン〉の侵攻は続く……!
2つ目の要塞では初手からドラゴン襲来。
ゼニスに乗って城壁を軽々と飛び越えたアイギスが『タウントコール』でヘイトを稼ぎ、ゴブリンのタゲを完璧に取ったのだ!
これにはゴブリンもビビリ――いや勇敢にも応戦!
当たらない矢を放ち続けてって――あーー!? ゼニスが要塞内へ『ドラゴンブレス』を叩き込んだーーー! あああああ!?
これが……現代の城塞攻めなのか……!
恐ろしいほど混乱したゴブリンたちはなすすべもなく、突撃した〈エデン〉メンバーによって光にされてお宝は全て回収されてしまったのだった。
3つ目の要塞ではさすがに毎回ドラゴンを突撃させていたら楽すぎる、と少し難易度を調整。
まずは1年生を含む新メンバー組が突撃し、機会を見計らって援軍の上級生メンバーを送り込む作戦で行ったのだが……。
「行くっす! 『キャッスルブレイク・クラッシャー』!」
グワッシャァーーーン!!
「「「「ゴブー!?」」」」
「『暴君のクマラッシュ』!」
「バフも回復もいらないなんて、私はどうしたら良いのでしょうか?」
まずナキキが城塞を一撃で破壊。
ミジュが新メンバーで1番のAGIで飛び込み無双スキルでゴブリンを光にしまくった。シュミネなんかバフも回復もいらないからどうすればいいか分からないみたいだったよ。
あと、ここには大型モンスターの〈ホブゴブリン〉なる、ちょっと強いゴブリンもいたのだが。
「『でんげき~アターック』!」
「ゴブー!?」
満を持して出てきた雰囲気ある強力な大型モンスター。しかし、アリスの三段階目ツリーが直撃して……! 気が付いたらドロップを残して消えていたんだ。
こうして3つ目の要塞も終了。
上級生メンバーが突入したときは、すでに終わっていたんだ。
新メンバーだけでも過剰戦力だった模様……!
「要塞攻めなんて新鮮でいいですわね!」
「……それには同意しますが、お嬢様は前に出すぎだと思います」
「城塞の弱点などを自分で知る良い機会になったであります!」
「確かにこれは勉強になるですの。もうちょっとやりたいですの」
だが、1年生の幾人かは要塞攻めが良い刺激になったようだ。
脆くても要塞。
自分ならどこに戦力を集めて防衛するか、この要塞の弱点はどこか、弱点を相手に知られないようにするにはどうすればいいかなどなど、特に「伯爵」組は勉強になることが多いみたいだな。
そのこともあって4つ目の要塞は希望者だけでゆっくり時間を掛けながら落とすことになった。
まあ、それでも15分ほどで陥落したのだが。
5つ目は楽しさ優先。
1つ目と同じく戦闘メンバー総出で突撃して――開戦の直後に陥落。
というか要塞の存在が無くなってしまうほどの攻撃が降り注いだために、陥落というよりも跡形もない全滅になってしまった。
うむ。空を埋め尽くすクラリスの『千剣の雨』やアリスの電撃のシャワー『ライトニングシャワー』、メルトの氷による災害『ブリザードテンペスト』が合体したときは手に汗握る光景だったよ。
要塞全体に氷の竜巻が発生し、その内側で大量の剣と雷が降るでしょう、またところにより光の剣、砲撃、その他魔法や銃撃などが暴れまわるでしょう。
なんちゃって。向こうからするととんでもない恐怖だっただろうな。
アレを一言で説明するなら、ハルマゲドン? ゴブリンよ、南無南無だ。
そんなこんなでゴブリン要塞攻めイベントは終了した。
「ん~気軽に暴れられて楽しかったですわー」
うんうん。みんな楽しめたようでなによりだよ。
ちなみにだが、戦闘メンバーがゴブリン要塞に挑んでいる間、〈アークアルカディア〉組は黙々と〈食材〉を採集していたようで、合流したら〈空間収納倉庫〉がさらに4箱、いっぱいになってた。




