#1370 花畑を走る装甲列車。殲滅戦始まりの予感!
「では次の目的地へと向かうぞ! 今度は〈乗り物〉を交代して、ロゼッタ、マリア、セレスタン、カイリ、頼む」
「お任せください」
「了解ですよ!」
「かしこまりました」
「まっかせて!」
昼食を食べ終われば再び移動開始。
5層まで運んできてもらった〈イブキ〉組とパンダ号をチェンジし、〈ブオール〉と〈マッシュン〉、そして〈からくり馬車〉をセッティングした。
ロゼッタが〈空間収納鞄〉から〈ブオール〉と客車3両を出す光景はまさに圧巻だ。
す、すげぇ迫力なんだぜ。それは他のメンバーも一緒のようで。
「「「「おおー!」」」」
〈エデン〉で一番大きな〈乗り物〉にみんな歓声を上げていたよ。
さらに魅せるのはそれだけでは無い。
「マリアさん、連結です」
「いきますよー! 連結!」
〈マッシュン〉は2台のキノコ型馬車が連結している姿をしている。
だからだろうか、〈ブオール〉とも連結が可能だったりするのだ。
連結部分が完全に謎の力で引っ張られていて、とっても不思議すぎる光景。
これがファンタジー?(混乱)
ちなみに〈からくり馬車〉は連結できないため、後方を走る予定だ。
「〈ブオール〉、〈マッシュン〉、〈からくり馬車〉で合計60人まで乗れる。先頭は〈ブオール〉と〈マッシュン〉。続く形で〈からくり馬車〉が後方を走ってくれ」
要は一列で走行だ。
「みんな好きなところに乗っていいわ。ただ乗車人数をオーバーしたら別の〈乗り物〉に乗って頂戴ね」
「「「「はーい!」」」」
「汽車ポッポさんだよー」
「私も〈ブオール〉に乗りたいかも」
「ルルも一緒に乗るのです!」
「ご主人様が先頭を走ると言うんだもの。もちろんエリサちゃんも一緒に行くわ!」
「姉さま、前衛は私に任せてください。後衛の姉さまは――」
「おっとそれ以上は言わせないよフィナちゃん! 今日の私は前衛だー!」
「あ」
やはり〈ブオール〉は人気だな。特にロリレンジャー5人は見事に車両に乗り込んだぞ。俺も早めに乗り込んでおかないと乗車人数をオーバーして誰かとチェンジするという悲しいことになるかもしれない。
「ゼフィルス、私も一緒に乗るわ」
「え、シエラはサブマスターだから最後尾だって」
「乗るわ」
「あ、了解。それじゃあ後方には――ニーコ、行ってくれるか?」
「もちろん構わないさ。ここはモンスターもほとんど出ないし。ぼくでも軽く倒せるからね。後ろで休ませてもらうとするさ」
ま、まあな!
〈食ダン〉だしな!
後方の警戒はいらないよな! シエラも一緒の車両にご招待だ!
というわけでシエラは1号車に乗り込んだのだった。
まあ、俺はロゼッタに指示するために客車じゃなくて〈ブオール〉に直接乗るんだが。
「では、出発しましょう。よろしいでしょうか、ゼフィルスさん?」
「よろしい! 出発進行だ!」
「オーライです!」
ロゼッタが何かのレバーを操作すると、車輪が回り出し、鉄道が敷いてあるわけでもないのに〈ブオール〉が動き出す。
それに引っ張られる形で客車、〈マッシュン〉が動き出し。続いてカイリの〈からくり馬車〉が、最後にセレスタンの〈からくり馬車〉が並ぶ。
この中で〈乗り物〉に乗りつつモンスターを撃破できるのは〈ブオール〉だけだ。
故の布陣だな。
そのまま指示を出し、一気に6層へ。
6層には花畑エリアがある。食材では無いが、様々な花が採集できるとあって割りと人気のエリアだった。スクショ映えもするしな。
しかし、そこに装甲車現る。
雪かきブレードを装備している〈ブオール〉が花畑のど真ん中を突っ走るーー!
「すっごい大変なことをしている感があります。ゼフィルスさん」
「気にしちゃダメだロゼッタ。それに、みんなちゃんと喜んでるぞ」
観光地では線路の沿いの花畑を楽しめる場所もある。そういうものだと思えば良いのだ。なお、線路なんてないので道は〈ブオール〉が作っているけどな。
明日になればこの花畑も元に戻っているとはいえ心がチクチクするのはなぜだろう?
後ろを振り返って客車を見れば、キラキラした目をするロリレンジャーが5人揃って窓の外を見ている。相変わらずロリーしているよー。
これで花畑とも戦える!
そして花畑な6層を突破し、7層について少しした時のことだった。
そいつは現れたのだ。
「? あれはモンスターでしょうか?」
「お、当たりか? 止めてくれロゼッタ」
「はい!」
遠目だが、ロゼッタが気が付いて教えてくれたので、〈ブオール〉を停止させて双遠鏡で確認する。
あれは、間違いない。ゴブリンだ! しかも馬に乗っていやがる! 明らかな当たりだ!
「ゴブリンを発見したぞー!」
「ゴブリンが居たの!?」
「デンジャーでイベントな時間なのです!?」
「ルル待ってください!? 走ると危ないですよ!」
俺の言葉にすぐに先頭車両へと集まるラナやルルたち。それを追いかけてくるシズやシェリアもセットだ。
あとルル、別に全然デンジャーじゃないぞ。むしろデンジャーだと思っているのはゴブリンの方じゃないかな?
「へ? 急になになに? なにが始まったの!?」
「クイナダさん、イベントです! ゴブリンの拠点殲滅イベントですよ!」
「ハンナちゃん!?」
おおっとここで前回の〈食ダン〉合宿中にゴブリン拠点へ派手に錬金砲を叩き込んだハンナが登場だ! クイナダが「え? ハンナちゃんも参加するの!?」と言わんばかりの驚愕な表情をしている。
「レイド戦ですわね。久々に腕が鳴りますわ」
「え? え? なんですの!? 何が始まるんですの!?」
ふっふっふ。
実は1年生には例のイベントは内緒にしていたのだ。
まあ、ゴブリンに出会えなければ拠点はなかなか見つけられないしな。
期待させて残念ということにならないよう敢えて伏せていたのだが、上級生たちのやる気満々の様子に困惑が見て取れた。
「ふふん! 前回は私抜きで楽しんだそうじゃない。今回は私も参加するわ!」
去年〈食ダン〉に来た時、ラナは帰省中だったんだ。
そのせいか、今日はやる気満々。
「ラナの攻撃なら、一瞬で壊滅しそうな予感」
相手はゴブリンだもの。あんまり本気で攻撃しないであげて?
「とりあえず、リーナ。ここに〈竜の箱庭〉を」
「はい!」
外に出て〈竜の箱庭〉を設置する。
「『フルマッピング』ですわ! 『モンスターウォッチング』!」
そして地図に記載される無数の光点。
あ、最初からこれで探せば良かったんじゃね? と少し思ったが、これは言わないでおいた。
なんと地図には、5箇所もの光点が集まる場所があったのだ。
明らかな縄張り。つまりは拠点!
「ゼフィルス! これは全部倒しちゃっても構わないのよね!?」
「5箇所か~。んじゃ、久々にやっちゃうか!」
「「「「「おおー!!」」」」」
実入りはほとんど無いに等しいが、この夏合宿は慰安旅行でもある。
要は楽しめればなんでもいいのだ!
というわけで、ゴブリンよ。すまんが殲滅させてくれ。
後書き!
久々のハンナ活躍回!?
上級職になった〈エデン〉メンバーたちがゴブ拠点を次々強襲していく!?
次回「第1371話 ある日デンジャラスな時間がゴブリンを襲った」
お楽しみに。




