#1368 〈食ダン〉合宿5層の湖エリア。食材が山に!
「よーし、そろそろ奥に向かうぞ!」
「「「「はーい!」」」」
芋掘り、稲刈り、お野菜採取。
人数が人数なので少ない時間で食材が山になった。
なんで山が出来てるの?
モナ、ちょっと張り切りすぎだ。これが上級採取職の力か。
みんなで〈空間収納倉庫〉に入れると、奥地を目指す。
と言っても、前回のように真っ直ぐ最奥を目指すのではなく、今回は寄り道を多数企画している。
前回は〈乗り物〉が足りず全員一緒に行動できなかったが、今回は帰省者無しに加え、〈乗り物〉も充実しているからこそできることだな!
「こうしてみると、壮観ですね」
「何しろ約60人を運ぶからな」
セレスタンの言葉に俺も頷く。
並ぶのは〈イブキ〉3台、〈ブオール〉1台、〈クマライダー・バワー〉1台、〈マッシュルーム・キャラバンⅡ改〉1台、〈からくり馬車〉2台だ。
〈イブキ〉はそれぞれエステル、アイギス、アルテが運転。乗車人数16人。
〈ブオール〉は客車が3両くっついてロゼッタが運転。乗車人数30人。
〈クマライダー・バワー〉のパンダ号はミジュが運転。乗車人数12人。
〈マッシュルーム・キャラバンⅡ改〉はマリアが運転。乗車人数14人。
〈からくり馬車〉はセレスタンとカイリが運転だ。乗車人数8人。
合計8台の〈乗り物〉たちが並ぶ光景はまさに圧巻と言っていい。
これが現在〈エデン〉が動かせる〈乗り物〉戦力である。
約60人を運ぶため、〈エデン〉の持つ〈乗り物〉系装備をほぼ全て引っ張ってきたのだ。合計で120人まで乗れるぞ!
乗車人数という面ではだいぶ多いように感じるが、1度にこれを全部使うわけではない。
半々にして交代を予定している。そう、今回は交代要員がいるのだ。
これも途中寄り道しながらピクニックできる理由だな。
〈乗り物〉を並べると〈エデン〉のメンバーも驚きの表情だ。
1年生の反応が特に良き。
〈乗り物〉8台は迫力あるよな~。
さて、まずは最初なので、〈イブキ〉3台とパンダ号を運用しよう。乗車人数は合計で60人分だ。
「ミジュー、先頭の3台が全部蹴散らしてくれるから電撃は切っていいぞー」
「ラジャ」
パンダ号は走るとき雷を落としながら走る。だが、これは切ることも可能だ。
せっかくの畑の光景を雷まき散らしながら進むのもなんなので、これは切っておくことにする。
するとただのパンダ走りになる。ちょっと可愛い。
残りの4台は次の出番まで〈空間収納鞄〉に仕舞って、いざ出発だ!
え? 半分仕舞うならなんで8台全部出したのかって?
そりゃ1年生や〈アークアルカディア〉のみんなにも見せたかったからさ!
あと俺も見たかった。満足だ。うむ。パシャパシャ。
「〈イブキ〉――発進します」
エステルの出発進行が心地良い。
「わーかっくいいのです!」
「ふわわ~」
「あ、アリス、あまり身を乗り出さないでー」
船首部分ではルル、アリス、キキョウがロリーしていた。
すっげぇ和むんだけど! パシャパシャ。
3台はエステル号を先頭に、両翼にアイギス号とアルテ号を引き連れ、後ろにパンダ号が駆けるという布陣で進む。
方向はエステル号が決めて、両翼の〈イブキ〉と後方のパンダ号がそれに続く形態だな。
そのままビュンビュン風を切り、まずは第5層へと突入する。
「このまま南方向へ真っ直ぐ進んでくれ、この先に湖とそれに繋がる滝がある」
「了解しました」
「滝があるの! いいわね!」
「なかなかに圧巻で景観も良い場所だぞ。楽しみにしていてくれ」
エステルに方角の指示を出すと間近で聞いていたラナが反応する。
こういう素直な反応はとても嬉しくなるな!
「見えてきたわ!」
「大きいわね」
「すっごーなのです!」
「滝すごー」
「音がここまで聞こえます」
いつの間にか俺の両サイドにいたラナとシエラが感想を言う。
湖と、それに流れ込む滝が見えてきたのだ。
ルル、アリス、キキョウも目をまん丸にしていたよ。可愛い。
見えてきたのは広大な湖。
水面がキラキラしていて、それだけでも美しさと自然の癒やしが心を楽しませてくれる。
さらには大きな滝だ。
横幅は10メートル、高さは20メートルくらいだろう。
絶えずズドドドドドと水が流れていて、自然の迫力がさらに心を楽しませてくれる。
近くに停車して全員で降りた。ここが第一目的地だ。
「移動お疲れ様! ここが今日の最初のポイントだ! 釣りをするも良し、周囲を散策するもよし、採取を楽しむのも良しだ。滝が落ちて来ているところは山エリア、ここの周囲は畑採取エリア、少し離れた所に家畜エリアがある。罠も無いし、好きなところへ向かい、楽しんでほしい」
「「「「「おおー!」」」」」
「では解散!」
「「「「わー!」」」」
連絡事項を告げたら、みんな一斉に目的の場所に散っていく。
わいわい話し合っていくつかのグループで家畜エリアへ向かうメンバーたちや、早速と言わんばかりに山へ向かい、滝の出所調査へ向かうロリーズ。
この周囲は色々なエリアがあって楽しめるため、初日最初のポイントとして選んだんだ。
さらにはここでゲットできた食材を使い昼飯を作る予定も組んでいたりする。
「さあ釣りをしたい人はこっちに来てくれー! 釣りセットはたくさんあるから安心だぞ! あの滝壺で何が釣れるか試してみようぜ!」
おっと早速【伝説の釣りキング】に就くタイチが釣りの用意を始めたな。
俺も今日は釣りをしてみたかったんだ。
「ようタイチ、盛況だな」
「おおゼフィルスさん! ゼフィルスさんもやりますか!?」
「もちろんだ。釣りセットを貸してくれるか?」
「ゼフィルスさんなら、こっちの上級の〈釣りセット〉を持っていってください!」
「サンキュー。俺の方は後は自分でやるから、分からない子に教えてやってくれ」
「わかりました!」
釣りを選んだメンバーは5分の1くらいだった。
ここは〈食ダン〉だからな。美味しいお魚が釣れるはず。
他のエリアのことは他の人に任せ、とにかく魚を食べたい人が集まっている感じ?
カルアとか。
「いっぱい釣る。今日のお昼ご飯」
「私も手伝おう。ここで釣れた魚は、きっと美味しいだろう」
「ん。とても楽しみ」
おお、カルアの目が真剣で燃えているな。リカの言葉にさらに闘志を燃やすカルア。さっきまで肉を求めていたのに今は魚に燃えている様子。
獲物がビビって逃げなければいいが。
「ゼフィルスも釣りを選んだのか」
「お、メルトも釣りか?」
「聞いてよゼフィルス君、メルト様ったら前に食べた〈ハイイワナ〉の味が忘れられないんだって!」
「ほほう。確かにアレは美味かったからなぁ」
前回、超高級食材にして希少な魚をメルトは3匹釣り上げた。それを2人で食べたのだが、それはそれは美味しいものだった。確かにアレはもう一度食いたくなる。
え? ミサトはって? ミサトはメルトをからかったのでミサトの分もメルトの腹に消えた気がする。
うん。思い出したら腹が空いてきた!
「もう、今回は私も食べるんだからね!」
「あれはそう簡単には釣れん。だが、今回は〈上級釣りセット〉だ。あるいは……」
「うわー、メルト様の目がマジだよ~」
おお! メルトの目がやる気満々だ。
さすがのミサトもからかうことなく一緒に釣り糸を垂らす。
場所は滝壺の周りだ。いったい何が釣れるんだろうか? 楽しみだ。
すると一瞬で当たりが来た。
「フィーッシュ!!!! ってアユかよ!」
あれ? アユって餌に食いつかない魚じゃなかったっけ? 海にも繋がっている様子の無い湖でアユが釣れる不思議。
これが〈上級釣りセット〉の力なのか……!
なんちゃって。
〈ダン活〉では、〈釣り〉をするとその釣果はドロップする仕様だ。
つまり、釣りポイントという採集エリアにアイテムを使ってフィーッシュすると、ランダムドロップする形。アユだろうがなんだろうが実際釣っているのではなくドロップしているのでなんでも釣れるのだ。
なんでもといってもさすがに開発陣も海の魚はドロップに入れてくれなかったけどな。
そしてふと3人で横を見ると。
「『伝説のフィーーッシュ』!!」
ザッバーンという難破船でも引き上げたのかという湖のうねりと音の後、タイチの周りには大量の魚がドロップしていたのだった。
「一撃で……〈ハイイワナ〉が10匹も、だと……!!」
もちろんレアドロップも大量の様子だ。
メルトが戦慄いていたよ。
さすがは本職!
ちなみに、最終的にタイチは、〈ハイイワナ〉を100匹以上釣り上げていた。
なお、メルトの〈ハイイワナ〉はゼロだったよ。
 




