#1367 ビバ〈食ダン〉3回目! 1年生は初体験!
「みんなー! いよいよ夏合宿の、始まりだーーーー!!」
「「「「「おおー!!」」」」」
今日は朝からギルドハウスで気合いを入れて、入れて、超入れまくっていた。
なんと言っても、これから行くのはエクストラダンジョンである。
去年も何度か行ったが、あそこは普通のダンジョンとは違う、ちょっと変わったダンジョンだ。
これから行くのは、もうこれで3回目。
〈食材と畜産ダンジョン〉、通称〈食ダン〉だ!!
前回と同じく、3泊4日の最初の夏合宿である!
「ん、〈肉ダン〉でお肉食べ放題!」
「ピピー! カルア違うぞ、これから行くのは〈食ダン〉だ!」
「カルア? ――だめだゼフィルス、楽しみ過ぎてカルアは聞いてない」
〈食ダン〉をなぜか〈肉ダン〉と勘違いしているカルア。
さっきからキラッキラした目をお空に向けながら妄想の海へとダイブ中だ。
リカが目の前で手を振ってみても反応が無い。
楽しみにしすぎだろう!
帰ってくるまで放っておいてあげるか。
「エクストラダンジョンなんて、入ダンすること自体初めてで、とても楽しみですわ!」
「〈食ダン〉と言えば食材がそこら中にあって採り放題と聞きます。お嬢様、採るのに夢中になりすぎて迷子にならないよう気をつけてくださいね」
「それはクラリス次第ですわ!」
「!」
おっと1年生組は確かに今回がエクストラダンジョン初だったな。
ちょっと育成に集中しすぎた気もしないでもない。
この機会にたっぷりと楽しんでいってほしい!
クラリスはなんか責任重大な様子だけど!
「ルルお姉ちゃん、オススメの見所を教えてくださいな?」
「まっかせるのです! ルルがアリスたちを案内してあげるのです!」
おお、早速幼女が幼女にお姉ちゃん風を吹かせるという大変尊い光景が飛び込んで来ました。
これが続くと思うともう、入る前からお腹が満たされていきます。俺の腹は保つだろうか?
「ゼフィルス、みんな準備出来たみたい。行きましょう」
シエラが近寄って報告してくれるのに頷き、俺は引率者の気分で宣言する。
「ではギルド〈エデン〉――出発だ!」
「「「「「おおー!」」」」」
「お、おい! あれを見ろ!」
「〈エデン〉だ。しかも、完全武装だと!?」
「なんだこの数は!? まさか、全員いるんじゃないか!?」
「どこへ向かう気なんだ!? 先日も1年生たちがもう上級ダンジョンを突破して大騒ぎになったばかりなんだぞ!?」
「大騒ぎというか、阿鼻叫喚というか……」
「あれは凄かったな。上級職のエリート、上級ダンジョンに入ることが出来るような方々がみんな「ヒィーー!?」って叫んでたんだ」
「ちょっと楽しかった」
「1年生がまさかの〈嵐ダン〉攻略。上級ダンジョンには潜れるけどまだ攻略はしていないという上級生は多かったのに……!」
「一瞬で抜かされたからな。むしろほんとにどうやって抜かされたのか。アレが噂に聞く『〈エデン〉お得意のいつの間にか攻略』ってやつか」
「それで、〈エデン〉のあの大所帯は本当にどこに向かってるんだ?」
「待て、あれは、ハンナ様だ! ハンナ様がいるぞ!」
「なに!? ハンナ様も一緒にダンジョンに行くのか!?」
「いや、この方角は上級ダンジョンの方ではない、こっちはまさか、エクストラダンジョンか?」
「ハンナ様だけじゃねぇ! あれは〈横笛のサティナ〉さんに〈採集無双〉の面々だ!」
「生産職もいるぞ!?」
「あれはまさか〈デスマのサトル〉氏では!?」
「〈エデン〉が下部組織を伴って総出で歩いているだと!?」
「おい、至急調査さんへ連絡だ!」
「「「「応!」」」」
うーむ、さすがに総勢60人近いメンバーでの移動は注目を浴びすぎるな。
しかも全員装備済み。
生産・採集メンバーも強力な上級装備で身を固めている。
正直、壮観だ。
マリー先輩には感謝しかない。
でも次は水着もある。
マリー先輩は間に合うだろうか?
この時期は浴衣作りなんかで忙しいはずだが、頑張ってほしいところだ!
そんなことを考えながらざわざわする周囲の声を肩で切りながら歩いていると、目的地である〈エクストラダンジョン門・特伝〉、通称〈エクダン〉へと到着した。
中に入ると、5つのダンジョン門があり、それぞれが学園のエクストラダンジョンへと通じている。
そこで1人、こちらに歩いてくる人物がいた。
「ゼフィルス様、受付が完了いたしました」
「時間ぴったりだなセレスタン!?」
セレスタンだった。
え? セレスタン? なんで?
そう思うだろ?
セレスタンは先触れというかなんというか、先に受付を済ませてくれていたのだ。
まあQPの支払いなど、大きな手続きが必要でもある。何しろ約60人分だ。正確には57人。
俺たちを待たせないため、セレスタンが一足早くここにやって来て手続きを済ませてくれていた、というわけだ。いつものことだ。
「これが、〈エデン〉の執事ですか」
「すごいねセレスタンさん!?」
「執事ですから」
初めて見たのだろう、クラリスとアルテが感心と驚愕していた。
うちの執事は凄いんだ。
「ご苦労セレスタン。――みんな、こっちだ!」
そうして1つのダンジョン門へ来るとそこにはちゃんと〈食材と畜産ダンジョン〉と書かれていた。ほら見ろカルア。お肉の文字は無いだろ?
そのまま俺が先頭で潜っていく。
するとそこには久しぶりに見る、一面の畑が見えるダンジョンが広がっていた。
うわ、なんだか懐かしい!
「ここが、〈食ダン〉なんだね! うわ、すご!」
「周囲全部畑ですの!」
「聞いていた通り、モンスターはいないみたい?」
「ふわ~アレ全部食べて良いのキキョウ?」
「もうアリス、あんなに食べたらお腹壊しちゃうよ」
カグヤがおののき、サーシャがどひゃーと驚きを顕わにする。良いリアクション!
一応〈食ダン〉にはモンスターはほとんどいないことを話しておいたが、まずは警戒するクイナダが頼もしい。
アリスは草食動物かな? 可愛いんだけど。
あとキキョウ、アレ全部食べたらお腹壊すなんて次元じゃすまないと思うぞ。
「よーし、まずは1年生もいるし、軽く散策と採取を体験してみようか! モナ」
「任せてください。――みなさん、僕たちに付いてきてください、採集用のアイテムは〈優しいシリーズ〉も含めいっぱい持って来ていますし、空の〈空間収納鞄(容量:大)〉も人数分あるのでみなさんに配りますね」
ということでまず採取。
これは専門である〈採集無双〉のメンバーに任せる。
この日のために全員分の採集用アイテムや〈空間収納鞄〉、それに大量の〈空間収納倉庫〉を用意してきたのだ。
特に〈空間収納倉庫〉が重要。
前回、〈食ダン〉に来た時は〈空間収納倉庫〉を余裕をもって持って来たつもりだった。さらには馬車が足らず、2回に分けて運行して少し時間が削れてしまったのにもかかわらずその成果は予想を遥かに超え、余裕をもって持って来た〈空間収納倉庫〉があわや足りなくなるくらいギリギリになってしまったのだ。
あの時は、確か23人だった。今回はその時の倍を軽く超える人数。
しかも〈採集無双〉という採集のプロフェッショナルもいる。
いったいどのくらい素材が集まるのか分からない。
ということで物資を採りすぎて持って帰れない、なんて事態を避けるため〈空間収納倉庫〉を大量に持って来ていた。
これでなんとか足りるといいんだが、というかこれだけ用意して足りなかったらヤバい。
何しろ今年持って来たその数、なんと大サイズを120個である!
これで安心出来ないのだから恐ろしい。
また、今日から3泊4日。今回は去年とルートを変える予定。
今回は最奥まで真っ直ぐ行かず、ちょっとこのダンジョンを周りながらゆっくりと最奥へ向かいたいと考えている。
〈食ダン〉は自然の宝庫でもある。そんな自然の豊かさや景色も是非見ていこうという企画だった。
もちろん採集がメインだけどな。
「ではこれを引っ張ってみてください」
「うんしょー! わぁ! お芋出たよー! すっごいたっくさーん!」
「どんだけ出るのですか、40個くらい連なってますよアリス!?」
「ミジュー見てるっすよー! ふん!」
「おおー、こっちは100個くらい連なってる」
「これ、力を入れても千切れないんですね。不思議です」
やっぱ〈食ダン〉って量が出過ぎなんだよ。サツマイモが1株で40とか100とか連なってるってどういうことだ?
まあ、これはモナの【マスター・ファーマー】の力がだいぶ入ってるけどな。
あとアリスたちのお芋を引っ張る姿に和みしか見えないのはどうしてだろうね?
アリス、ナキキはおめでとう。
シュミネはお母さん目線なのか、なんか引率者っぽい視点で楽しんでいるっぽい。
少し慣れたら早速最初の目的地へと向かおう!
ここで〈エデン〉が保有する全ての〈乗り物〉を公開だ!!




