#1314 ラナの未知の行動が留まるところを知らない!
「ここのゴーレム、喋るの!? じゃあ階層門のある場所教えて頂戴!」
「え? それってあり!?」
さ、さすがはラナなんだぜ。
ゴーレムが喋れると分かればすぐに情報を引き出しに掛かる。
そこに痺れる憧れる!
「イイエ」
問題は、会話が可能だからといって答えをくれるとは限らない点だ。
いや、正直ドキッとしたよ。
ゲームではそもそもそんな言葉をぶつけることなんてできなかったんだ。
故に「これもしかしてワンチャンゴーレム教えてくれるんじゃね? え、ウソ、マジ?」とちょっとだけ思ってしまったよ。
断ってくれてホッとしたのは内緒だ。
「知リタケレバ我ラヲ倒シテミルガ良イ」
「って教えてくれるのかよ!?」
ちょっと待ってくれ! じゃあさっきの『いいえ』は何だったんだ!?
そのまま『いいえ』でいいじゃん! え、ウソ、マジ? 教えてくれるの?
「良い度胸じゃない! 私が直々に相手をしてあげるわ! 私のパーティは集合よ!」
「「「「おおー!」」」
そうしてラナたちパーティと〈アイスクリスタルゴーレム〉たちの戦いは始まった。
そしてボスでもない〈アイスクリスタルゴーレム〉は、気合いの入ったラナたちの大技を叩き込まれまくって、簡単に蹴散らされてエフェクトの海に沈んで消えた。
「…………」
「…………」
「消えちゃったわ」
「まあ、倒すと消えるよね……」
なんとも言えない雰囲気がこの場に流れた。
結局あの〈アイスクリスタルゴーレム〉はなにがしたかったのか、それは永遠の謎になってしまったな。
「まったくもう! 倒したら教えてくれるって言ったのに! あ、そうだわ! 他にもゴーレムが居たわよね? そっちに聞きに行ってみましょう!」
しかし、ラナは諦めなかった。
「それは良いアイディアですわラナ殿下。では〈竜の箱庭〉起動ですわ! 居場所とここからのルートを検索しますわ!」
「私たちは〈アイスクリスタルゴーレム〉が守っていたこの部屋を探索してみるわ。何か良いものが見つかればいいわね」
みんな思い思いに動いていく。
さすがは〈エデン〉のメンバーズ。
上級ダンジョンの探索も慣れたもので、みんなの動きに無駄がない。
〈竜の箱庭〉を出したリーナを囲うように護衛が付いているのがその証拠だ。
警戒を怠らず、情報を抜き出していく。
「この場所から一番近いのは――ここね!」
「一度こっちに戻ってから北へ向かうルートが良さそうですわね」
「部屋の中には〈銀箱〉があったわ。罠もあったけど、カイリが難なく解除してくれたから被害は無しよ」
「おお〈銀箱〉か! 何が入ってたんだ!?」
ラナとリーナが真面目にこれからの移動ルートを模索していく中、俺の心はシエラの〈銀箱〉発言に囚われてフラフラそっちに行ってしまう。
「レシピよ。それも『錬金』系。名前は〈冷聖エリクシールのレシピ〉。一定時間、氷属性耐性と〈氷結〉〈睡眠〉耐性を上昇させて、HPも〈エリクシール〉並の回復力を持つポーションレシピね」
「〈上級耐氷ポーション〉と〈氷結耐性ポーション〉と〈睡眠耐性ポーション〉と〈エリクシール〉が合体したようなポーションだな」
というかその通りだ。
中級ダンジョンから手に入る状態異常を1種類だけ耐性を得ることのできる〈氷結耐性ポーション〉と〈睡眠耐性ポーション〉に加え、上級下位でゲットできる〈上級耐氷ポーション〉と〈エリクシール〉の効果が1本のポーションで得られるのが、この〈冷聖エリクシール〉である。
なかなかの当たりだが、お値段が高すぎて普段使いにし難い高級ポーションだ。
売れるかな? どうだろうか?
いやしかし、錬金系のポーションレシピが当たったというのは素直に嬉しい!
「やったじゃんか! これでハンナに良いお土産が出来たな!」
ちなみに、こういう個室にある宝箱は、隠し部屋にある固定の産出品ではなく、行き止まりにあるランダム宝箱だ。
その中でも上級中位ダンジョンから発生する、こうしてモンスターが門番をしている個室には〈銀箱〉以上が発生しやすい傾向がある。〈謎ダン〉でも不正解を引くとモンスターが発生するコンソールでは、その部屋の中にある宝箱は〈木箱〉よりも〈銀箱〉が多かったんだ。
故に俺も門番のいる部屋へ行くのに大賛成である。
「リーナ、そっちはどうだ?」
「問題ありませんわ! ルートも決まりました。出発してもよろしいでしょうか?」
「よろしい! みんな、次の場所に行こう!」
続いて向かった場所も〈アイスクリスタルゴーレム〉が門番をしていた。
ここではなんと12体だ。いったいこの先に何があるのか気になるところだな。
「そこのゴーレム! 階層門の場所を教えなさい!」
「ビビビ。イイエ。知リタケレバ我ラヲ倒シテ――」
「『大聖光の十宝剣』!」
ちょ、せめてちゃんと言わせてあげて!?
開幕はラナの宝剣から始まった。
相手が12体の2グループだったので、今回は2パーティで挑んだ。
「1体は残すのよ! 状態異常で縛るの!」
「お任せください。『鋼鉄拘束バインド弾』! 『チェーン』! 『連射』!」
ラナがいつになく燃えていて指示を出しまくってるな!?
それに答えたシズが『チェーン』コンボを使って〈五ツリ〉のバインド弾を連射してるー!?
「ビビビ!? 見事、也」
〈拘束〉状態は無事ヒットしたようで3体のゴーレムを縛り上げ、残りは光にした。
ただ抵抗をやめないゴーレムもいたので、そういうのはちょっとレッドゲージまでダメージを与えればおとなしくなることが分かった。
やべぇ、これって新たな裏技発見なのでは? これで階層門が見つかったらマジどうしよう。
「答えてもらうわよ! 階層門はどこにあるの?」
「ビビビ。階層門ハ、ココヨリ、北北西ノ方角」
「ほ、本当に答えちゃったよ……!」
俺は戦慄を隠せない。
確かに〈守氷ダン〉1層の階層門は、北北西の方角にある。
だからこそみんなに気取られないよう北へ進んできたのである。
「そう。不思議ねゼフィルス。私たちが進んできた方角も北北西だわ」
「ほんとだな! いやぁ凄い偶然だな~」
「…………」
シエラがなぜかジト目で俺を見てくる。近い!
俺はテンションが上がっているのを気取られないようクールに答えた。
ちょっと顔が緩んでいたかもしれないかも。
「後はそうね、一番のお宝の在処を教えなさい! 凄いやつよ!」
「何!? それ聞いちゃうのもありなの!?」
すげぇ。
ラナの〈ダン活〉には無かったとんでも行動が止まらない。
その質問、とても興味があります!
「ビビビ。オ答エデキマセン」
「「ええー」」
なお、答えられないようだ。そう上手くはいかないか。
「ビビビ。デハ、サラバ」
「へ? ――ふわ!?」
「ラナ様!? 大丈夫ですか!?」
「く、崩れて消えちゃったわ」
最初の質問に答えたからか?
〈アイスクリスタルゴーレム〉がピコンと目の部分が光ったかと思うと崩れて消えてしまった。
自爆、というより自壊かな。3体のゴーレムが一斉に自壊してドロップアイテムだけ残して光に消えてしまった。
「うーむ。これは最初にラナが『階層門の場所を教えなさい』と言って倒したから、その約束を果たして自壊した可能性があるな。願いは1つのみ? 最初から『宝物の在りか』を聞けば答えてもらえた?」
やっべぇ。これは検証してみてぇ!
「それも良いが、ぼくの『お宝レーダー』にはここに多くの宝箱が眠っていることを示しているんだ。早く開けようじゃないか」
まあ、こっちにはお宝を発見できる支援職が2名ほどいるのだが。
「あ! やっぱりこのゴーレムたちは宝箱を守っていたのね! どんなお宝を守っていたのか、気になるじゃないの! ここはきっと宝物庫に違いないわ!」
「宮殿の宝物庫。言い得て妙じゃないか。さすがはラナ殿下だ」
「ふふん! さ、行くわよニーコ! 宝箱が私たちを待ってるわ!」
「ふおおお突撃だああああ!」
「ちょ、待てラナ、ニーコ! ――俺も行くぜ」
検証なんて後回しだ。それよりも大事なことが目の前にある!
そう、宝箱だ!
「何よこれ、この扉、鍵が掛かっているわ!!」
「安心しろラナ、ここに〈万能鍵(金)〉がある! ――ガチャリ」
「開錠だーー! ふお!? あれは!?」
ふはは! 〈万能鍵(金)〉はダンジョンのどんな部屋でも開けられる最強の鍵!
鍵を掛けるなんて俺たちにとっては無力に等しいのだ!
さあ、お宝を渡したまえ!
部屋の中に入ると、そこにはなんと〈金箱〉が1つ、〈銀箱〉が2つ鎮座していた。
俺、ラナ、ニーコの足が迷わず〈金箱〉へと向かったのは言うまでもない。
なお、じゃんけんによる公正な勝負の結果、ラナが勝利して〈激しい採集シリーズ〉の採取系、〈激しい草刈り鎌〉をゲットしていた。




