#1311 ついに上級中位ダンジョンが一般解放したぞ!
ふう。
思わずテンションが上がってクルクル踊ってしまったぜ。
このテンション、大事にしたいと思う。
結局ラムダやミューから詳しい話が聞けたのは打ち上げの終わり間際だった。
ランク1ダンジョン、〈謎ダン〉がなぜか攻略済み。不思議!
というわけで、〈謎ダン〉は〈救護委員会〉がそのまま調査を続け、ついに〈救護委員会〉〈ハンター委員会〉が〈謎ダン〉の最奥ボス、〈マジスロ〉を撃破したのだという。(ちなみに〈攻略先生委員会〉はテストのため行けていないらしい)
この結果を受け、しっかりとした知識を身につけているならば〈謎ダン〉の突破は学生でも可能と判断し、上級中位ダンジョンの解放を決めたという。
そして上級中位ダンジョンが解放されると聞いて、学生たちもまた大きく動き出す。
ちょっと盛り上がりすぎてしまった打ち上げの翌日。
朝10時に全域放送が流れたのだ。
「諸君、おはよう。わしはヴァンダムド・ファグナー公爵じゃ。今日この放送を行なったのは重大な発表をするためじゃ」
この放送は学園都市全域に流れ、その時間だけは時が止まったようにみんな放送に耳を傾ける。
学園長が重大だと言ったのだ、これは聞き逃せない。
みんな予想は付いているけど!
「先日、我が学園の公式ギルドとあるSランクギルドの合同で上級中位ダンジョンの調査に向かったのじゃ。理由は学生をダンジョンに入ダンさせてもいいか、その安全調査をするためじゃ」
まずは前置き。これについてはニュースを見ている者も、見ていない者も知っている。
大騒ぎというか、大熱狂になったからな。
なにしろ、世界初の試みだ。
俺は知らなかったが、結構お偉いさんなども来園していたようだ。
「そして上級中位ダンジョンのランク1、〈謎室の古跡ダンジョン〉じゃが、すでに調査団が攻略しておる!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」」
ここで再び熱狂の声がそこら中から上がった。
これも知らない人はいない話。
もう大騒ぎになったらしいからな。え? 俺たちが原因だって?
うん、とても気持ちよかったよ!
「静粛に、静粛に、ここからが重要な話じゃ」
おお~、学園長はどこにいるのか、学園都市の喧騒はリアルタイムで把握しているらしい。みなが落ち着くのを待ってから、満を持して発表する。
「すでに耳の早いものは聞き及んでいるかもしれんが、調査団は〈謎室の古跡ダンジョン〉、通称〈謎ダン〉を僅か9日間で攻略してしまった。調査の予定が攻略してしまうとはわしも大変驚いた。さらにここ数日掛けて公式ギルドの方では何回も最奥ボスを撃破し、すでに何人もの猛者が上級中位ダンジョンの攻略者となっておる。この調査報告を加味し、十分検討した上でわしらは、上級中位ダンジョン門の解放を行なうと決定したのじゃ」
「「「「「…………おおおおおおおおおおおお!!」」」」」
一拍遅れて大熱狂!
一瞬意味が良く認識できなかったのだろうか。
しかし、意味を理解していくうちにだんだんと気色が現れ、認識した瞬間――学園都市に大熱狂の渦が巻き起こったのだった。
「いやぁ、大変素晴らしい展開になったな!!」
「ゼフィルスは今まで上級中位ダンジョンを解放しようとたくさん動いていたものね。叶ってよかったわね、ゼフィルス」
「ああ! ありがとうラナ! だがシエラ、この拘束はなんとかならないかな?」
「…………」
放送の後、俺はジーンと来る感動とテンションのままに再び踊り狂いそうになったのだが、それを察していたのだろうか。ラナやシエラに止められてしまったのだ。物理的に。
椅子に腰掛けた俺は、なぜか右手をラナに、左手をシエラに掴まれ、動けなくされていたのである。
え? なんだろうこれ? 俺、今ラナとシエラに拘束されてます!
これはいったい!?
「ゼフィルスが暴走しないよう、当然の処置よ。昨日のあれを忘れたとは言わせないわ。知っているかしら? 昨日のあれは〈ゼフィルスの狂乱〉なんて呼ばれているのよ? しばらくおとなしくしていて頂戴」
「まったくもうよね、誰彼構わず踊り出して! 踊るなら私とだけにしなさいよ!」
「今度はちゃんと求められた人だけにするから!」
「…………」
なぜだろう、シエラがジト目なのに信用されている気がしない? いや、きっと気のせいに違いない!
「ラナ、一緒にクルクルダンスしようぜ?」
「え? えっと、まあ、そこまで言うのならしてあげなくもないけど」
「ラナ様がチョロいです!? ラナ様、そんな簡単に頷いてはダメですよ!?」
「ラナ殿下?」
「あ! やっぱりダメよ! ゼフィルスは世に解き放ってはいけないのよ!」
「俺は怪獣か何かなの!?」
一瞬グラついたかに思えたラナ。しかしエステルの慌てた言葉とシエラの瞳に即立て直してしまった。惜しい。ならば――。
「シエラ。俺はシエラとクルクルダンスがしたいんだ。この手を離して一緒に踊ろう?」
「うっ、そんな、ダメよ。そんなこと言って絶対他の子とも踊り出すに決まっているわ」
「シエラとしか踊らないって約束するさ。今の俺には理性があるんだ。大丈夫だ」
「うっ……」
おお! シエラの拘束が少しずつ緩んで――。
「シエラ!? 騙されちゃダメよ! 相手はゼフィルスなのよ!? 気をしっかり持って!」
「シエラ殿、お気を確かに!」
「……! そうだったわ、ありがとう。危ないところだったわ……」
しかし、ラナとエステルの言葉にシエラも正気を取り戻す。
くっ、あと一歩だったのに! 万事休すか!
周りを見渡せばみんな苦笑しながらこっちを見ていた。
助けてくれそうな人は居なさそうだ。いったいなぜ? 俺は〈エデン〉のギルドマスターなのに!
結局お昼になって俺が落ち着くまでこの拘束は続いたのだった。
「やっと、解放されたぜ」
「えっと、お疲れ様ゼフィルス君?」
「おおハンナ~、ハンナだけが癒やしだ」
「えへへ。もうゼフィルス君ったら~。お腹減ったしご飯食べよ?」
「大賛成~」
ハンナの癒やしの力を借りて元気を取り戻した俺はしっかり昼食を取って午後のダンジョン攻略に備えた。
午後からはいよいよ上級中位ダンジョンの攻略に入る。
準備はすでにほぼ整っているため、後は集合するだけだ。
そうして約束の時間が来る。
昼食を食堂で食べ、俺たちは再びギルドハウスへ集合していた。
「お待たせしたなみんな! これより〈エデン〉の活動内容を説明するぞ!」
「「「おおー!」」」
「「「待ってましたー」」」
ギルド内ブリーフィング、これは非常に重要なことだ。
ここで俺はみんなに聞こえるよう堂々と宣言した。
「みんな聞いてほしい。学園長が朝放送で言ったように、ついに上級中位ダンジョン門が今日から解放されることになった! 普通のギルドはまだ〈氷ダン〉を攻略していないため入ダンはできないが、学園公式ギルドはどんどん上級中位ダンジョンの探索を行なうだろう。〈エデン〉も出遅れてはいられない! 追いつくぞ! そして、追い越すんだ!」
「いえ、追い越しちゃダメでしょゼフィルス」
「ゼフィルスさんなら、軽々と追い越してしまいそうですわね」
ふ、シエラとリーナから信用を感じる!
「ギルド〈エデン〉! 今から上級中位ダンジョンへ行くぞ!」
「「「「「おおおおおおお!!」」」」」




