#1307 新しい仲間!? 護衛のヘルプニャーンです!
「ねぇゼフィルス君。セルマさんと何かあったのかな?」
「急にどうしたんだハンナ?」
勉強会も順調に進んで金曜日。
ギルドハウスで会ったハンナから唐突にこんなことを聞かれた。
朝ではなく放課後に聞くということは、今日よっぽどのことがあったっぽい。
詳しく聞いてみる。
「うーん、火曜日だったかな? 実はね、セルマさんがすっごくハイになってたんだよ! それはもうクラスで誰も近づかないくらい」
「ほ、ほほう?」
「〈学生手帳〉をイジりながら「私の時代がー」って言ってるのは聞こえていたんだけどね。多分あの件だろうとは思ってたんだけど」
「ふむふむ」
俺もとても心当たりがありますね。
シエラとセレスタンは、どういうルートを辿ったのかしっかりセルマさんと連絡が取れたようだった。
「それで水曜日、教室に入ってきたセルマさんはもうキラッキラに輝いていたんだよ。念願の上級職【闇の魔女】に就けたんだって、はしゃいでたんだ~」
「ほほほう」
どうやらシエラとセレスタンは上手くやったらしい。
しっかり【闇の魔女】の就き方も、あとビルドの振り方なんかも書いた手紙をしっかり渡してくれた模様だ。一応戦闘用にも育成可能な【闇の魔女】。生産系と戦闘系のルートを書いておいたが、セルマさんはどちらに向かったのだろうか?
シエラに聞いたら答えてくれるかな?
「それで火曜日から木曜日は、「私は用事があるからこれで失礼するわ、オホホホホ!」って言いながらすぐに帰っちゃっててね? みんなでテスト勉強は大丈夫なのかなぁって心配していたんだよ」
「ふむふむ。それで?」
「今日朝登校したらね、昨日までの輝きが嘘のように萎れてたの。「〈エデン〉不合格、〈エデン〉不合格」って小声で呟きながら茫然自失状態だったんだよ!」
セルマさんにいったいなにが!?
「その話、補足させてもらうと――セルマさんが〈エデン〉に加わりたいということで再面接を受けてたの。その不合格の通知を出したのが昨日だったのよ」
「シエラ!」
「シエラさん!?」
話を聞いていたのかジャストタイミングで加わり回答をくれるシエラ。
期せずしてセルマさんの身に何があったのか分かってしまった。
「それとゼフィルス、これ頼まれていたものよ」
「お? おおお? これってまさか」
「…………ええ。〈守護像〉、よ」
そう言ってシエラが〈空間収納鞄〉から取り出したのは、滑らかな流線型フォルム。筋肉は浮き出ておらず女性のような細身の体。
そう――女性型の、人によく似た姿のホムンクルスだったのだ。
そしてその姿は――――セルマさんに酷似していた。
ホムンクルスは奥が深く、ゴーレムと同じように特殊なアイテムなどを使い加工することで強化が可能な特性を持っている。
その作り方は独特で、錬金釜を使用しボディを生成するのであるが。この時、与えられた人を構成する何かの素材によってホムンクルスはその人の姿形を得るのだ。
いわゆるクローンみたいなものだな。ちなみに使われる素材は大体がMPだ。
セルマさんがベースなんだろうなぁ。
本来なら強化の過程でこのクローン(?)をベースにして色々と姿形を変えられるのだが、この〈守護像〉は強化無しのスタンダードだ。〈上級転職〉したばかりのセルマさんではまだ加工アイテム持ってなかっただろうからな。
だからセルマさんの姿のままで届いたのだろう。
とはいえその能力は上級中位級。下手な下級職では簡単に屠られる性能を有しているはずだ。
これがホムンクルス、誰にでも姿を変えられる〈ダン活〉のロマンアイテムである。
「セルマさん似じゃん! というか、もう出来たのか!? すげぇな」
「……まだ試作品みたいだけどね。レベル上げするには時間が掛かるから、一先ず低レベルでもいいから作ってもらったのよ。でもまさか、こんなものが届けられるとは思っていなかったけどね」
あ、シエラの〈守護像〉を見る目が冷たい!
まさかセルマさんが不合格になった原因にはホムンクルスの姿形も要因にあったのかもしれない?
もしかしてシエラはホムンクルスは大体が制作者の姿がベースになるって知らないのかも。
この世界では上級生産職である【闇の魔女】自体おとぎ話の中の世界にしか居ないような存在なので、ホムンクルスのことよく分かっていない可能性もあるな。
後で教えてあげなくては。
……手後れかもしれないけど。
「す、すごいやる気だったんだな。これを上級職になってたった2日で作り上げるなんて」
「……とはいえ色々問題がありすぎるから納品に来た時に不合格の通知をしたのよ。そしたら燃え尽きちゃって……次の作品はもう少し時間が掛かりそうよ」
あ、よかった。ちゃんと次の予定はあるっぽい。
「それでセルマさん、今日はあんなに上の空というか空気が抜けた感じだったんですね」
ハンナ納得。
セルマさん、〈エデン〉に入りたかったのに入れなかったショックでエクトプラズムが出ているっぽい。
……この〈守護像〉はちゃんと使わせてもらうからな!
「それで、完成品の見込みは?」
まあ、完成品が出来るまでの代用品なんだけど。
「……セルマさん次第ね。今度はちゃんとしたものを作ってもらわないと」
ホムンクルスの加工台をゲットする必要がありそうだ。
あとシエラの誤解も解いておかないと。
「えっと、私からも励ましておきますね」
……頼むぞセルマさん、復活しておくれ。
〈幸猫様〉と〈仔猫様〉の安全はセルマさんの腕に掛かっているのだから!
性能を見てみると、さすがは本式の職業。
ホムンクルスとゴーレム、戦わせたらどっちが強い? と聞かれれば大体はホムンクルスが勝つと言われているだけあって、試作品でもなかなかの能力を持っていた。
ハンナは「ガーン!」となっていたが、こればっかりは【闇の魔女】の方が本職だからな。ハンナが対抗意識を燃やして新しいゴーレムを作りそうな予感。
ゲームでは自分好みのホムンクルスを作製するのが流行った時期もあったんだ。
戦わせるも良し。コレクション、観賞用にするもよし。 ギルドでは好きに改造して給仕係のメイドや執事などにしていた人も多かった。まさにその使い方は多種多様。
「〈ダン活〉はキャラクターメイキングが出来るゲームなんだからホムンクルスいらないだろう?」という派閥と「馬鹿野郎! ホムンクルスだからいいんじゃないか!」という派閥が幾度も対峙していたのは有名な話だ。
ちなみに俺はどっちにも属していなかった。「みんな違ってみんな良い派」だ。
「よし。じゃあ早速この〈守護像〉を使ってみよう。〈守護像〉はスタンダードでも武器や防具を装備出来るところが魅力なんだ」
ちなみに納品されたホムンクルスは身体のラインが出るワンピース姿だった。
これにゴツい武器を持たせる。うむ、ロマンがあるな。バトルアックスとか持たせてみようか?
「へ~。私も手伝うね」
「先にヘルムを被せましょう。顔がちょっとダメよ」
え? シエラ今顔がダメって言った?
ということでセルマさんのことは一先ず置いておき、試作品で出来上がったホムンクルスの調整に取りかかることになった。まずは顔を隠すことから始める?
「うーん、もうちょっと可愛くしたいなぁ」
「でも顔を隠すのなら可愛くするのは難しいわよ。ならフルヘルムに合わせた門番風の方が映えるんじゃない?」
あ、どうやらシエラの中では顔を隠すのは確定になっているっぽい。
「門番風では〈幸猫様〉の雰囲気には合わないのではないでしょうか?」
「だったらさ! いっそ猫のぬいぐるみを抱かせようよ! 〈幸猫様〉のボディガードなんでしょ?」
「それなら防具にも猫ちゃんマーク入れるのはどうかな? 猫ちゃん門番、ここに爆誕、的な!?」
「ネコミミも着けよう。〈猫ダン〉でゲットしたやつ」
そしていつの間にか、勉強会をしていたメンバーたちが集まって、息抜きにこのホムンクルスを色々着せかえちゃおう! という流れになってしまっていた。
俺はいつの間にか追い出されてしまった。女性型ボディだしな。
あと、方向性迷走してない? 大丈夫?
まあいい。猫は正義なのだ。
きっと良い方向に進むだろう。多分。
しばらく後。
完成したのは全身甲冑っぽい装備をした、「フルプレート」ならぬ「ヘルプニャーン」と言わんばかりの全身猫まみれの格好。自慢の鎧がピンクと猫マークだらけになっているよく分からない姿になった〈守護像〉が居たのだった。
どうしてこうなった!? あと番人と言えば持っているのは槍、もしくは長い棒の類い。のはずなのにこの子が持っているのは猫のぬいぐるみ。
それでどうやって〈幸猫様〉をお守りするの!?
しかしシエラ曰く、身代わりを差し出すらしい。
な、なるほど。〈幸猫様〉の代わりを差し出すことで見逃してもらうコンセプトなのか……もしくは〈幸猫様〉と猫のぬいぐるみをすり替えることも可能と?
……意外に深かった。
確かに、とりあえず〈幸猫様〉さえ守れればいいのだ。うむ。
そんな感じで、またギルドに心強い仲間(?)が加わったのだった。




