#1303 調査終了! 学園長へ報告して打ち上げだ!
「お、おい! 出てきた、出てきたぞ!」
「学園公式五大ギルドの〈救護委員会〉、〈ハンター委員会〉、〈攻略先生委員会〉――そして〈エデン〉の面々だ!」
「調査から帰ってきたぞ!」
「きゃーゼフィルスくーん、私をギルドに入れてー」
「どこまで調査できたんだろう?」
「それで上級中位ダンジョンは解放されるのか!? どうなんだ!?」
「なぜ〈エデン〉の面々が先頭を歩いているんだ?」
「ゼフィルスくーん!」
「混沌!」
「ん? おい、今混沌って聞こえなかったか?」
「ちょっと待て! 勇者がなんか攻略者の証を掲げてるんだが!?」
「掲示板を見てないのか?」
「え?」
「掲示板に速報が出てるぞ……」
「この時間に帰ってくるというのは周知の事実だったからな。多くの人がここに詰めかけて、ちょっとしたパレードになってる」
「初めての上級中位ダンジョンの調査という大きな偉業の達成。達成? 達成だけだよな? なんか今、勇者と〈エデン〉ならひょっとしてとか思っちゃったんだけど」
「じ、実は俺も」
「ああああああーーーーー! 言った! 言っちゃった! 勇者がこれは上級中位ダンジョンの攻略者の証だって言っちゃった!」
「「「「「きゃあああああああ!!」」」」」
「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」
「うっそだろおい!?」
「マジか!? 本当にマジか!? 攻略しちゃったの!?」
「調査に出向いたら、うっかり攻略しちゃった件!?」
「いやいやいやいやいやいやいや!? どういうことだってばよ!? 未知のダンジョンだぜ!? 未知のダンジョンなんだぜ!? え、本当に?」
「えええええええ!?」
「出た! 〈エデン〉お得意のいつの間にか攻略だ!」
「いやいやいや、まだ入ダンしてから9日しか経ってねぇよ!?」
「9日で攻略までして戻ってきちゃったの!? 調査はどこいった!?」
「あ、勇者の話では学生でも攻略できるダンジョンと証明出来たから、学生もその内自由に入れるようになると言っていまして」
「これ以上ない調査報告だな!?」
「〈エデン〉を他の学生と同じにしないで!?」
「この混沌、すごく心地良い」
◇
ザ・帰還!
ハーッハッハッハー!
俺は帰ってきたー!
調査期間が終了して〈上中ダン〉を出ると、そこは見事に人でごった返していた。
これ、俺たちの帰還を一目見ようと来てくれた人たちらしい。
なんてこった、これはサービスしないと!!
これが調査の結果、〈謎ダン〉の攻略者の証だ!
なぜだろう? さっきまで歓声だったのに俺が攻略者の証を掲げながら結果を簡潔に攻略したと言ったら軽く阿鼻叫喚っぽくなってしまった。
とりあえず手を振っておくか!
「…………」
後ろからシエラのジト目の圧を感じる気がする!
今すぐ振り向いて確かめたい!
「もう、ゼフィルスさんったら仕方がないわねぇ。でもこれ以上無い程成功をアピールできたし、いいのかしら?」
「そうですね……あ、学園長が来られましたね。……少し調子が悪いのでしょうか? 出発の時より覇気がないような」
「ああ。伝令の話を聞いたようだな。俺はちょっと学園長に同情しちまうよ」
後ろの圧を感じながら手を振っているとタバサ先生、シグマ大隊長、アーロン先輩の言葉が耳に入る。どうやら学園長がいらしたようだ。
広場の空間、俺たちの前へ出てきた学園長がこちらを向いて言う。
「…………ごほん。調査団よ、無事の帰還を心より祈っておった。待っておったぞ! しかも、〈謎室の古跡ダンジョン〉を、こ、攻略して戻ってくるとは、あっぱれじゃ! 見事なり」
あれ? 学園長ってこんな口調だったっけ?
まあいいや。見てください学園長! これが〈謎ダン〉の攻略者の証ですよ!
俺は学園長に見えるように手に持って掲げながらアピールした。
学園長が言葉に何度も詰まっていたのはきっと感動していたからに違いない!
今度はクルリと半回転、広場に集まった方々へ振り向いた学園長が締めに掛かる。
「これにて〈謎室の古跡ダンジョン〉の調査を完了とする! 調査団はこれ以上ない成果を持って帰って来た。皆の者よ、上級中位ダンジョンの解放は約束しようぞ! 続報を、楽しみにしているのじゃ!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」」
「「「「「無事の帰還おめでとうーー!!」」」」」
「「「「「わあああああああああ!!」」」」
すると広場が爆発的な歓声に包まれたのだった。
さすがは学園長だ!
上級中位ダンジョンの解放をここで約束してくれるなんて、なんて粋な計らい!
最高だぜ学園長! 解放されたらすぐに入ってもっとたくさん調べてくるからな!
「うひっ!?」
なぜか学園長がビクンとしていたが、俺はそれに気が付かないのだった。
「とりあえず自分たちはギルドに戻りヴィアラン会長に報告したいと思います。タバサ先生は?」
「私はこのまま学園長に付いていって報告みたいです。お迎えが来てしまいました。とりあえずありのままをお伝えしようと思います」
「……そうですね。自分も同じくありのままを報告しましょう」
おっと斜め後ろからタバサ先生とシグマ大隊長の会話が聞こえる。2人ともまだ仕事があるみたいだ。大変だ。
俺? 俺たちはもちろん打ち上げを、あれ? タバサ先生に腕を掴まれちゃった。凄くタバサ先生が近くて腕が幸せ状態に!
「ゼフィルスさん、私これから学園長室にいかなければいけないの。付いてきてくれる?」
「もちろんですタバサ先生!」
俺は二つ返事で請け負った。
「むむむ、ちゃんと返してよねタバサ先生?」
「もちろんよラナ殿下。また後でね。――さ、行きましょうねゼフィルスさん」
「おう。――じゃあシエラ、すまんがあとをよろしく頼む! 打ち上げの準備をしておいてくれ!」
「…………はぁ。分かったわ。ゼフィルスはあまり余計なことを言わないようにね。――タバサ先生、ゼフィルスをお願いしてもいいかしら?」
「ふふ。任せて。ゼフィルスさんが暴走したら体を張って止めるわね」
「いえ、普通に止めて頂戴。あとくっつきすぎよ。もう少し離れてくれるかしらタバサ先生?」
「えー、どうしようかしら?」
「…………」
ん? タバサ先生とシエラの間に何か火花的なものが見える気がする? いや、きっと気のせいだろう。
やはり付いてこようとするシエラを止め、ギルドの方を任せる。
クエストの調査完了報告をするくらいなら俺1人でも十分だ(?)。
結局手は繋いではいけないとシエラに厳命されたのが残念でならない。
もちろんそれを表情に出す俺ではない。いつもよりもキリッとしておいた。
「…………」
するとなぜかシエラにジト目で見られてしまった。ありがとうございます!
その後は学園長たち一行と共に、まるで凱旋するかのように分かれた人の間を手を振りながら通って〈ダンジョン公爵城〉へと向かったよ。
そしたら門のところで門番さんに敬礼で迎えられてしまった。
これは同じく返礼した方が良いのかな?
「ゼフィルスさん、そのままでいいのよ。さ、入りましょ」
そういうことらしい。タバサ先生に促され、いつの間にか横を一緒に歩くタバサ先生をエスコートするような形で城に入った。手は添えるだけ? 繋いでないからセーフ? なるほど。
いつも通りクール秘書さんに案内され学園長室へと向かう。
途中、いつもはクールで案内に徹してくれるクール秘書さんからノーアとクラリスのことを聞かれたよ。そういえば2人は公爵の関係者だったけ?
最近の2人の活躍を出来る限り伝えておいた。上級職になって大活躍中だってな。
ちなみにクール秘書さんの名前はコレットさんと言うそうだ。初めて知ったぜ。
そのまま学園長室に到着。ノックすると渋い声で「入りたまえ」と言われたので入室する。学園長は先に戻られていたのだ。
「学園長先生! 依頼通り〈謎ダン〉を攻略してきました!」
「…………うむ」
その時の学園長先生は、なぜか俺よりもやや上の中空を見ながら頷いていた気がしたが、気のせいだろうか?
とりあえず打ち上げに遅れてはマズいのでしっかり簡潔に報告した。
シグマ大隊長たちからも毎日報告してあったようだが、もう一度俺の口から聞きたいという学園長の要望に応えて35層からは70層まで一気に進んだ話もして、俺たちが最奥ボスを1発攻略したことも報告したぞ。もちろん攻略者の証を見せながらだ!
〈金箱〉を開けて〈アダマンタイト〉系の装備全集をゲットした話もする。
学園長が一度目頭を押さえたあと、入れたばかりの熱そうなお茶をグイッと飲み干していたけど、やけどしてないのかな?
あと、一応シグマ大隊長やアーロン先輩たちも俺たちの後に挑んだのだが。こちらは俺が報告しない方がいいだろう。
それにしても攻略者の情報を元に作戦を練って挑んだはずなのに、2パーティとも10分も経たずにペッて吐き出されていたのはどういうことだ?
アーロン先輩からは「あんなのどうやって勝てばいいんだ!?」と詰め寄られてしまった。しっかり勝ち方を教えたはずなのに、おかしいなぁ。
結局〈救護委員会〉と〈ハンター委員会〉は1戦しただけで終了。「まずは報告です」とシグマ大隊長が宣言したことでこうして〈転移水晶〉で帰ってきたわけだ。
ちなみに学園長は俺の報告を聞く前に知っていたらしい。それは〈エデン〉が〈マジスロ〉をはっ倒して開通した転移門を使って、先に帰ってきた伝令の方から先触れが届いていたからだ。
俺の報告が終わるとそれを静かに聞いていた学園長が威厳たっぷりに……たっぷり? なんだか枯れる寸前の尾花のように見えるような顔で頷いていた。
「…………うむ。ご苦労様じゃった」
気のせいかな? うん、気のせいだな!
「いえいえ、9日間すっごく楽しかったですよ」
「……そうか。……うむ、それはなによりじゃ。――タバサ先生からはなにかないかの?」
「そうですね。ゼフィルスさんたちが攻略した後、〈救護委員会〉と〈ハンター委員会〉が〈エデン〉から情報提供を受けて挑んでいたのですが、そちらは勝てませんでした。ですが手応えはあったのでもう少し回数をこなせば行けるとのことですわ」
あ、タバサ先生がそれ話しちゃうんだ。
「……そうか。つまりは現在の攻略者は〈エデン〉だけ、ということかの?」
「「はい!」」
「……そうか。……そうか」
学園長が紅茶を飲む回数が増える。学園長、そのコップ空ですよ?
「…………報告、ご苦労じゃった。調査依頼じゃったがまさか攻略してくるとは思わなかったわい」
「目標が『学生が攻略できるか』でしたからね。しっかり学生でも攻略できることを証明してきましたとも!」
「いや、目的は学生の安全なんじゃが……」
あれ? そうだったっけ?
まあ、それも証明してきたし問題は無いだろう!
報告を済ませた俺たちは学園長室を出てそのまま〈エデン〉のギルドハウスへと向かう。
なぜかタバサ先生は俺の腕に手を添えたままだ。
残念ながらギルドハウスに入る前に離したけどな。
「あ! ゼフィルスたちが帰ってきたわよ!」
「ゼフィルス君お帰り~」
「わ! タバサ先生だー!」
「2人ともお帰り~」
「準備はすでに整っているよ」
ギルドハウスに戻ると大ホールが打ち上げ会場になっていた。
煌びやかな装飾が部屋中になされ、上を見ればシャンデリアがキラキラと輝いている。あれ本物か!?
いつの間にか〈ハンター委員会〉の面々や〈攻略先生委員会〉の先生たち、ユミキ先輩もいた。
〈救護委員会〉だけは少し遅れてくるそうだ。
そう、〈エデン〉のギルドハウスは今や上級中位ダンジョン調査団の打ち上げ会場となっていたのだ!
大きなイベントが終われば打ち上げは必須! もう超必須!
しかも料理がすっごい豪勢だった。
よく攻略して帰ってきてからすぐこれだけ用意出来たな!?
「ゼフィルス君なら絶対上級中位ダンジョンだって攻略して帰ってくると思ったよ~」
「上級下位ダンジョンの時と同じですわ」
「ハンナもリーナも、ゼフィルスのことをよく分かっているわね」
どうやら俺たちが帰ってくる前から打ち上げの準備は豪勢に進められていたようだ。
ハンナもリーナもシエラも、なんて信頼が大きいんだ!
その信頼、しかと受け取った!
ならばずっと応えてあげねばなるまい!
「こっちの準備は出来てるよ。後はゼフィルス君が音頭を取るだけだよ~。はいジョッキ」
「サンキューハンナ!」
ハンナからジュースがたっぷり注がれたジョッキを受け取って、なぜか設置されているステージへと上がる。
「みんなー! 俺を信じて待っていてくれてありがとう! 期待通り、上級中位の最初のダンジョン、〈謎室の古跡ダンジョン〉を攻略してきたぞーー!! これがその攻略者の証だーーー!!」
「「「「「わあああああああ!」」」」」
俺は攻略者の証を掲げながら成果を示す!
「俺たちを信じてこんな豪勢で素敵な会場を用意してくれてありがとう!」
「「「「攻略おめでとうーーー!」」」」
「「「「調査お疲れ様ーーーー!」」」
「すごく嬉しい! さあ、みんな打ち上げを始めるぞーー!! かんぱーーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
ジョッキを掲げて、乾杯だ!!
第二十八章 ―完―




