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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第二十八章 〈ダン活〉上級中位ダンジョン大調査団結成編

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#1301 金箱回! 〈エデン〉済みの方はとても冷静!




 ここは〈謎ダン〉最奥の救済場所(セーフティエリア)


 そのボス部屋の前には〈救護委員会〉の面々がなにが起こっても対処できるよう入念に準備を重ねて待機していた。


 正面に立つのは〈救護委員会〉の第一上級部隊の隊長、シグマ大隊長。

 腕を組みながらジッと門を見つめていた。


 シグマ大隊長は考える。本当に前人未踏の上級中位ダンジョンボスの初戦をまだ学生である〈エデン〉に任せてしまって良かったのだろうかと。


 否、〈エデン〉はすでに学生の実力にあらず。

 それは自分たちとここにいることがなによりの証明だった。

 そう何度目かも分からない結論を出して首を振る。


〈エデン〉は破竹の勢いでここまで上ってきたギルドだ。

 その勢いはとどまることを知らず、ついには学園のどんなギルドよりも先へと行ってしまうほど、その勢いは凄まじい。

 去年の自分たちが聞けば信じられなかっただろう。上級ダンジョンに出入り出来るようになるどころか、こうして上級中位ダンジョンの最奥に到着しているだなんて。


 しかし、浮かれる気持ちは皆無(かいむ)

 それは上級ダンジョンが如何に危険な地帯か、長年染みこんだ感覚がそうさせていた。その感覚でいえば、学生たちのギルドよりもまず自分たちが調査すべきという結論になるはずなのに、いつの間にか〈エデン〉に先を譲っていた。

 誰も見たことも聞いたことも無いボスとの初の交戦。名誉あることだ。


 だが、本当に学生たちだけで向かわせて良かったのか?

 再び思考がループする。

 そんなシグマ大隊長に声を掛けてきたものがいた。


「心配要りませんよ父上」


「ラムダ?」


 息子のラムダだった。

 出来が良く、この例年とは圧倒的に違う革命的世代で〈戦闘課〉の〈1組〉に在籍できるほどの実力者だった。到達階層は自分と同じなのに、しかも未だ17歳。

 伸び代は十分にある。そして勇者ゼフィルスとは友達関係だというのだから未来の〈救護委員会〉は安泰だ。


〈キングアブソリュート〉解散の時、真っ先に息子を〈救護委員会〉に誘った自分の判断に間違いは無かったと断言できるほどだ。

 そんな息子ラムダが、クスリと笑いながら再び断言する。


「〈エデン〉なら心配要りませんよ。というよりも心配するだけ無駄です。なにしろゼフィルスが付いていますから」


「……それほどか」


 自信満々に、それこそちょっと可笑しそうに言うラムダにシグマ大隊長も意見を聞く。


「これでもクラスメイトですからね。色々とゼフィルスの規格外の様子は間近で見ることが多いんです。その観点から見ると、ゼフィルスはここぞというときはまずミスをしません。負けません」


「負けない、か。それは上級中位ダンジョンの最奥ボスを目の前にしても、か?」


「負けないと思いますよ。というよりもゼフィルスが負けるところをちょっと想像できません」


「それは、分かるかもな。これまでの活躍を見る限り……」


 シグマ大隊長とゼフィルスが一緒にダンジョンを攻略するのはこれが初めてでは無い。その点からこれまでのことを思い浮かべると、シグマ大隊長もまたゼフィルスが負けるという状況が想像出来なかった。そこへさらに〈ハンター委員会〉隊長のアーロンも加わる。


「安心してくれってシグマ大隊長。ゼフィルスならやり遂げるさ。あいつはそういう男だ」


「アーロン君……」


「というよりゼフィルスに任せとけばボスなんて全部丸裸にされるんじゃないかね? ボスだけじゃ無い、ダンジョンの複雑なフィールドさえゼフィルスには無意味に見える」


「ふふ、確かにそうね」


 アーロンの暴論とも言える言葉、しかしなぜか説得力のある不思議。

 そこに〈攻略先生委員会〉隊長、タバサ先生もやって来た。


「アーロンさんの言うとおり。ゼフィルスさんたちなら無事に戻ってきますよ。同じギルドにいたことのある私が断言します。むしろ一発攻略してしまうのではないかしら?」


「一発攻略ぅ? とか普通なら訝しむところだがよ、ゼフィルスならやりかねねぇな!」


「はは、違いない」


「…………」


 タバサ先生の言葉にアーロンが笑い、つられるようにラムダも含み笑いする。

 それを見ていると、先程まで気を張っていたものがとけていき、気持ちが軽くなっていたシグマ大隊長。

 再びボス部屋の門へ視線を移す。

 敗北したのなら、すぐに5人がペッと吐き出されるはず。

 しかし、もし攻略したのであれば、門は光を取り戻す。


 どちらになるのか。

 だが、なぜかゼフィルスが吐き出される光景が思い浮かばない。

 先程までシグマ大隊長が感じていた焦燥にも似た悩みは、いつの間にか見事に解消していた。


 そしてそれを自覚した瞬間――門が光を取り戻した。


「「「……おおおお!?」」」


 シグマ大隊長、ラムダ、アーロンの声が重なった。

 一瞬それがなにを意味するのか分からなくなってしまったほどの衝撃が襲ってきたのだ。そして一拍おいてようやく把握。

 門が光を取り戻したといったらその意味は1つしかない。


 つまり〈エデン〉が―――ボスを倒しちゃったのだ。


「! ゼフィルスさーん!」


「あ! タバサさんが抜け駆けしようとしてます!」


「ルルも行くのですー!」


 そしてまるで動揺してない〈エデン〉済み、タバサ、フィナ、ルルが真っ先に門を潜っていく。

 シグマ大隊長が止める間もない。むしろ潜ってからようやく気が付いたレベルだった。


「僕たちも参りましょうか」


「は、はい! お祝いしましょう!」


「おっと出遅れちゃったね。急がないと」


 続いてセレスタン、ラクリッテ、カイリも続く。


「わ、我々も行きますよ! 十分警戒しながら突入です!」


「「「「は、はい!」」」」


 6人が潜っても門が閉ざされないことで本当にボスが倒されていると把握したシグマ大隊長が慌てて指示を送った。

 門の周りでポカンと口を開けながらそれを見ていた〈救護委員会〉の面々が、それでようやく動き出す。


「突入!」


 準備万端だったこともあって即突入、ラムダやアーロンもそれに続いた。


 そこで見たものは。


「〈金箱〉だーーーー!」


「〈金箱〉よーーーー!」


「〈金箱〉キターーー!」


 宝箱の周りに集まって〈金箱〉出現にバンザイしているゼフィルス、ラナ、エリサと、そこへ集まっていく〈エデン〉組だった。

 攻略者の証は? そんなことを思う〈エデン〉組以外の面々だった。


 ◇ ◇ ◇


「ふぁーはっはっは!! 〈金箱〉が出たぞー!」


「もちろん開けるのは私よね!」


「ご主人様、一緒に開けましょう!」


「はーっはっはっは!」


 笑いが止まらん!

 手に攻略者の証が現れていたが、それは後でもいい。

 まずは〈金箱〉。これ〈エデン〉の常識。


「ゼフィルスさん、攻略したのね。おめでとう」


「ありがとうございますタバサ先生!」


「ふふ、本当に攻略しちゃうだなんて、どう労えばいいかしら?」


「!」


 いつの間にかタバサ先生が駆けつけてくれていた。

 フィナもルルも居て、みんなをお祝いしてくれている。

 だがそれよりも「どう労えばいいかしら?」の言葉が大変気になります。

 どんな労い方をしてくれるのだろうか?


「タバサ先生、私たちも攻略したのだけど?」


「もう、冗談よシエラさん。おめでとう。とても立派だわ」


「ふふ、ありがとうございます」


 しかし労いはシエラに奪われた。

 あれ、シエラ!?


 俺が驚愕している間にも続々と人が到着する。

 そしてボス部屋を見渡し、俺たちが囲んでいる〈金箱〉を見て呆然としたような表情をしている。どうしたんだろう?

 そう思っていると、険しいながらもどこか呆けたような顔をして歩いてくる人がいた。シグマ大隊長だった。


「ゼ、ゼフィルスさん……本当に攻略してしまったのですか?」


 そんな震え声で聞いてくるシグマ大隊長に、テンションの高い俺は大きく頷いて答えた。


「もちろんですよ! 見てください、この〈金箱〉がその証拠です! 〈金箱〉ですよ! 大当たりです!」


「え? いや、はい。そうですね。あの、できれば攻略者の証の方を見せていただいてもよろしいですか?」


「…………もちろん構いません! これが〈謎ダン〉の攻略者の証です!」


 そういえば証明するにはこっちの方が手っ取り早いんだった。

 俺は一瞬「攻略者の証? そんなの持ってたっけ?」と思って、忘れていた手の中にある証の存在を思い出した。あぶねぇ、〈金箱〉の魔力にいつの間にか記憶の隅に追いやられていたんだぜ!


 俺はシグマ大隊長たちに見えるようにして攻略者の証を翳した。


「おお、これが。……記録を取ってもよろしいでしょうか?」


「よろしいです!」


「助かります!」


 俺が攻略者の証を翳すとすぐに〈救護委員会〉の人が来てアイテムを使いスケッチする。ほほう、お絵かきアイテムか。【司書】などの職業(ジョブ)じゃなくても複写のようなことができる便利なアイテムだ。

 ものの数秒で攻略者の証の絵が描かれる。


「ありがとうございますゼフィルスさん。この記録は厳重に保管させていただきます」


「いえいえ~。でもボスの攻略法もわかったので、シグマ大隊長もすぐにゲットできると思いますよ」


「え?」


「おいおいゼフィルス、薄々そうなるんじゃねぇかとは思っていたが、やっぱり一発突破かよ!」


「凄いじゃないか。さすがはゼフィルスだ」


 シグマ大隊長がきょとんとした顔をした辺りでアーロン先輩とラムダが到着。

 口々にお祝いの言葉をもらってしまった。

 俺は大変気分が良くなった。


 一通りお祝いの言葉をもらうと、いよいよ〈金箱〉。

 ラナはシズの説得により次こそ開けると退き、エリサも同じく。

 俺は記念すべきことだとして〈エデン〉代表として1人で開けることになった。

 くぅ! この時をどれだけ待ちわびたか! 俺はこの時まで宝箱を開けるのを我慢してきたんだ!


 スクショは当然のようにシズが構えている。俺を激写する気満々だ。

 さすがはメイド。

 カメラの扱いもバッチリな模様だ。まあ、俺が教えたんだけど。


「では、記念すべき第1回! 上級中位ダンジョン最奥の〈金箱〉を開けたいと思います!」


「第1回……」


「普通は1回でもあれば凄いことなんですが、第2回以降もする気満々ですね」


「ゼフィルスさんですから」


 ということでみんなが見守っている中お祈りして、いざオープン!


「「「「「おお~!」」」」」


「これは! レシピですか!」


 即で取り上げたものは間違いなくレシピだった。

 つまりは二段ガチャ。

 俺はまずシズにレシピを向けてキリッとした顔する。

 パシャパシャ。


「よし、セレスタン!」


「すでに〈幼若竜〉の準備は調っております」


「さすがはセレスタンだ! 頼む!」


「承知いたしました――『解読』!」


 俺が目を向ければ〈幼若竜〉を構えた執事を発見。

 さすがはセレスタン、執事がいつも万能な件。

『解読』スキルが掛かると、すぐにレシピが光り出し、のたくった文字が読める日本語へと変化した。すぐに読み上げる。


「これは――〈アダマンタイト〉系のシリーズ装備レシピだな! しかも――全集だ!」


「〈アダマンタイト装備全集〉ですか!? しかも〈金箱〉産!?」


 それに真っ先に食いついたのはシグマ大隊長。

 前のめりに顔を寄せてくるレベルだったのでレシピを渡すと、驚愕の表情で読み始めた。手が震えているように見える。シグマ大隊長の後ろから一緒にレシピを覗き込む面々ももの凄い緊張した表情だ。


 実はこれまでの道中、数ある発掘ポイントで〈アダマンタイト鉱石〉を入手していた。しかもたくさんだ! しかし、それを活用できるレシピがまだドロップしていなかったのだ!

〈アダマンタイト鉱石〉は上級中位ダンジョンから産出する鉱石。

 上級下位(ジョーカー)なら〈ミスリル鉱石〉が、上級中位(ジョーチュー)なら〈アダマンタイト鉱石〉が出る。


 そしてその鉱石を加工し、装備にできる初めてのレシピが、今俺が引いたやつだったのだ。

 ふはははは! また〈エデン店〉に新たな装備品が並んじゃうな!




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
全集...つまり、新素材を集めて木箱か銀箱クラスの装備を量産できるよということか
[気になる点] ミスリル、アダマンタイトときたか。となると上上でようやくオリハルコンになるのか。
[良い点] アダマンタイト=硬いでしょうから、前衛やタンクからすれば喉から手が出る位に欲しい装備でしょうなぁ…。まぁその分お値段(素材の代金や入手手段も含め)や装備条件も性能相応のモノを要求されるでし…
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