#1298 最奥ボスのついでに宝箱の中身も調査する!
「みんなー聞いてくれ、〈謎ダン〉の最初の攻略者は〈エデン〉になったぞ!」
「……それは、最初にボスを調査する、の間違いじゃなくて?」
「そうとも言うな! 最初に最奥ボスを調査し! ついでに宝箱の中身も調査したいと思う!」
「…………」
開口一番、戻ってすぐにそう告げたらシエラがジト目で迎えてくれた。やったぜ!
シエラの言うとおり最初にボスへ挑む権利をもらったのが〈エデン〉である!
まああまり違いはないだろう。一発で攻略してやんよ!
「ゼフィルス! 〈エデン〉がボス戦をやってもいいのね!」
「おうよ! 一気に倒しきって初の攻略者になってやろうぜ!」
「上級中位ダンジョンの初攻略者……いいわね! 私は絶対に参加するわ!」
ラナが気合い十分だ。
やる気が満ち満ちていつも以上に笑顔がキラキラしている気がする!
先程「ゼフィルス! 後でしっかり話してもらうんだからね!」とプンスコしていたラナはどこにもいなかった。どうやら上手く気を逸らせた様子だ。
もちろん、ラナには参加してもらう予定だ。
ここで参加させないなんて言ったらどうなってしまうかわからない。俺が。
「ではまずボス戦の希望者を募るぞー! 最初に攻略したい人ー?」
「「「「はーい(なのです)!」」」」
俺が聞くと、ノリの良い〈エデン〉メンバーは全員が手を上げた。
シエラもだ!
「じゃなくて、ちょっと待ちなさいゼフィルス、まだ説明の途中でしょ? シグマ大隊長たちと他になにを話し合ったの?」
おっと、うっかりノリに合わせてしまったらしいシエラが待ったを掛けた。
シエラは完全に〈エデン〉色に染まっているな。とても良き。
「いや、特にこれといって無かったぞ? なんかむちゃくちゃ褒められたけど。詳しく話すとだな」
ということで俺は先程シグマ大隊長とアーロン先輩からべた褒めされた内容をシエラに聞かせる。
するとどんどんシエラは目を輝かせて俺を尊敬の眼差しで見つめ――あれ? どんどんジト目が深まっていくぞ? なんか予想外だったがやったぜ! これがシエラのプレゼント!?
「話はわかったわ」
なんだか溜め息を吐いたシエラが1つ頷いて納得したので先程の続き、誰がボス戦に参加するかを決める!
希望者は10人全員だった。ここからしっかり絞っていかなければ。
「まず絶対に参加してほしいメンバーだが――」
俺がそこまで言ったときのことだった、なんと唐突にイベントが発生する。
「あい!」
「私たち」
「幼女戦隊がお相手します」
なんとルル、エリサ、フィナがシャキンとかっこいいポーズを決めながら、3人でV字隊列を組んでアピールしてきたのだ。
先頭がルル、俺から見て左側にエリサ、右側側にフィナだ。
な、なんということだ。ちなみに〈幼女戦隊〉というのは以前V字隊列でロリレンジャーの写真を撮ったときに俺がうっかり漏らしてしまったネーミングだった。
まさかここで決めてくるとは! 特にエリサは大人の女になりたいんじゃなかったのか!?
「ご主人様の気を引くには、時に幼女になることも必要なのよ!」
な、なんて正しい分析力!!
これでは幼女戦隊を選択してしまう~。
俺が抗いがたい魅力に引き寄せられていると、そこで待ったを掛ける人物がいた。
もちろんラナである。
「何言ってんのよ! 最初に挑むのは王女であり〈エデン〉のヒーラーである私よ! 攻撃もバフもできるのよ?」
おっと正攻法。ラナは自分の有用性を語ってきた! 幼女戦隊という魅力に打ち勝つには実用性ということか! 後ろに控えたシズの「分かっていますよね?」という圧は見なかったことにする。
というかラナはヒーラーという自覚があったんだな! てっきり忘れているものだと思ってたぜ。これは胸の奥に仕舞っておこう。
「バランスを見るなら、タンクも必要よね」
「タ、タンクなら私もできます!」
今度はシエラとラクリッテのアピールだ!
フィナもタンクではあるのだが、彼女はオールマイティでどのポジションもできるので、できればタンクはシエラかラクリッテに任せ、フィナは万が一のスイッチ要員にしたいところ。
シエラとラクリッテのタンクは〈エデン〉で1、2を争うレベルだ。1位がシエラ、2位がラクリッテである。どちらを選ぶかとても悩むぜ。
カイリとセレスタンはさっき手を挙げてはいたものの積極アピールはしない様子。
セレスタンなんてティーを入れ始めたぞ? サポートに徹する気満々じゃないか!
というわけで、今回選ぶのは俺を含めた8人の中からだな。
とても悩ましい。しかし、決めなければいけないだろう。
ちなみにクジで決めるという案は最初からシエラに「ダメよ」と言われている。
名誉をクジ引きで決めるなんてとんでもない、ということだな。
今までも何度かあった気がしないでもないが、それは置いておく。
ならば、俺の独断で選ぶとする!
「では参加メンバーだが、まずギルドマスターである俺は確定だ。そしてタンクはシエラ、頼む」
「私ね、任せて頂戴。どんなモンスターが相手でも防ぎきってみせるわ」
「シエラが頼もしすぎる!」
シエラのキリッとした表情に見とれてしまいそうだ。
選ばれなかったラクリッテは少し落ち込んだ様子だったが、すぐに復活してシエラに「がんばってください」と言って応援していた。良い子だなぁ。
「そしてヒーラーには――ラナ」
「そうこないとね、任せなさい! どんな相手でも吹き飛ばしてやるわ!」
「ヒーラーの話なんだが!?」
明らかにアタッカー思考のラナ。でも大丈夫だ。
こう見えてラナはしっかりバフも切らさずヒーラーとしての腕もバッチリ、余った力でアタッカーのまねごとをしているだけだからな。ちょっとその余力が大きすぎるだけなんだ。うん。
それに、ラナの攻撃魔法はちょっと頼りにしている。今回の相手は魔法にめっぽう強いのだが、色々とやり方があるのだ。
「では続いてアタッカーだが――」
ごくり。
そこでルルとフィナの喉が鳴ったような気がした。多分気のせいだ。
そのくらいの緊張感が場を満たした的な感じ。
だが、ルル、フィナ、すまん。
「これはシズに任せよう」
「にゅ!?」
「へ?」
「私ですか? よろしいのでしょうか?」
「よろしい! 万が一の時はラナを頼むぞ?」
「! お任せください!」
む、シズの忠誠度が上がった予感。
先程の圧が無くなったぞ。
これならボス戦であっても大きく活躍してくれるに違いない。
逆にルルとフィナは「うしょ!?」みたいな表情だった。
しかし、まだ4人目、チャンスはまだある。
「そして最後のメンバーだが」
「「「ゴクリ」」」
残っているのは幼女組のみ。
ラクリッテはシエラがタンクに選ばれた時点で一歩引いている様子。
3人の幼女が並んで前に出てとても緊張した様子だ。
この中から1人を選ばないといけないの? マジで?
くっ、できれば3人とも選んであげたいが、許してほしい。俺は最後の1人の名を呼んだ。
「最後のメンバーは、エリサだ」
「わ、私!? やったわ! 私の大勝利よ!」
「にゅ~。ルルもゼフィルスお兄様と参加したかったのです~」
「…………」
俺が選んだのはヒーラーのエリサ。眷属にめっぽう強い状態異常のスペシャリスト。ボス戦だとボス自体に状態異常攻撃が効かないことも多いためもっぱらヒーラーとして活躍するが、眷属召喚を多用してくるボスが相手だと一掃出来るので非常に頼りになる。
ラナと役割が被るようで、ちょっと違うのもポイント。
しかし、今回はヒーラーが2人だ。これもちゃんと理由があったりする。
ルルとフィナは前回〈火口ダン〉で最初の攻略者になったし、今回は譲ってあげてほしい。
フィナが無言で残念と肩を落としているところに、エリサが近づいた。
「フィナちゃん! 私、フィナちゃんの分までご主人様を支えるわ! たくさん支えちゃうんだから!」
「教官に迷惑は掛けてはいけませんよ姉さま。姉さまは選んでいただけたのですからしっかり務めを果たしてくださいね?」
「お姉ちゃんに任せなさいよ! 一発で攻略者の証をゲットしてきて自慢するわ!」
「……姉さま、やっぱり交代しましょう。私が5人目として参加しますから姉さまは控えていてください」
「フィナちゃん!? さっきしっかり務めを果たせって言わなかったっけ!?」
「前言撤回です」
「撤回しちゃダメでしょ!? ダメよねご主人様!?」
おっとフィナの目がエリサを捉えて放さない。
無表情だったがフィナも実は相当羨ましかったらしい。
だが、今回はエリサを選んだので諦めてほしい。
「フィナは次な。大丈夫だ、すぐに攻略者の証もゲットできるさ」
「……はい。その時は教官も一緒してほしいです」
「そうだな。何戦かしてみんなに攻略者の証を取ってもらわないといけないからな。もちろん構わないぞ」
「ルルもお願いなのです!」
「もちろんだ。ルルも後で一緒に挑もうな!」
「あい!」
そうフィナとルルと約束をし、攻略メンバーでセレスタンのティーを飲んで料理バフを施してもらって、ラナから『プレイア・ゴッドブレス』を掛けてもらいボス部屋の門へと向かった。
門にはすでに〈救護委員会〉〈ハンター委員会〉〈攻略先生委員会〉の面々、そしてユミキ先輩もいた。
「ゼフィルスさんたち、回復は任せてください。もし負けてもすぐに復活させる準備は出来ています」
「ま、ゼフィルスなら一発突破しても不思議には思わないがな」
「ゼフィルスさん、ご武運をお祈りしていますね」
「ありがとうございます! では、いってきます!」
それぞれシグマ大隊長、アーロン先輩、タバサ先生たちに見送られ、俺たちはボス部屋の門を潜ったのだった。




